ウォーロック (ダンジョンズ&ドラゴンズ)
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ウォーロックは、ファンタジー・ロールプレイングゲーム『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(D&D)に登場するキャラクタークラスの一つ。
第3.5版のサプリメント『秘術大全(Complete Arcane)』で、非基本クラスとして導入された。第4版および第5版では基本クラスである。呪文を主体にするクラス(キャスター)の一つだが、同じ「秘術魔法」の使い手でも、この世ならざる何者かと契約して力を得た者であり、研究や修行で身につけた「ウィザード」や、血筋や才能で呪文が使える「ソーサラー」などとは区別される。
Dungeons & Dragons第3.5版
「ウォーロック」は、『D&D第3.5版[注 1]』のソースブック『秘術大全』(2004)で新たに導入された[1][2][3]。この版におけるウォーロックは、デーモンやフェイといった超自然的な存在の影響によって能力を得る[2]。彼らは生まれつきこれらの力を備えているか、あるいは魂を力の源へと変える「契約」によって力を得る。ウォーロックは他のクラスのように呪文を使うのでなく、「invocations(妖術)」と呼ばれる類似的な呪文能力を使用する。これはウォーロックに授けられた力を引き出す行為を表す。最も重要な能力は「エルドリッチ・ブラスト(怪光線)」であり、これはウォーロックの主たる攻撃手段として、対象に魔法エネルギーの光線を放つものである[4][5]。
ウォーロックが第3版の他の魔法使いと大きく異なる点は、妖術を「自由に」使用でき、回数に制限がないことである。これに対し、ウィザードはウォーロックよりも幅広い呪文の中から、毎日決まった数の呪文を使う。『Designers & Dragons』の著者シャノン・アペルクラインは、このウォーロックの「自由に呪文を使う」メカニズムが、「第4版の自由な呪文発動の前兆だった」と指摘している[2]。『秘術大全』の著者リチャード・ベイカーは次のように述べている。
ウォーロックの最大の強みは、1日に能力を使用できる回数に実質的な制限が無いことだ[注 2]。これはほとんどのD&Dゲームにおいて、キャラクターが休憩や呪文回復の合間に戦闘に参加するのは、15~20ラウンド程度であろうという考えによるものだ。そのため、呪文使いが1日に使える呪文が20以上となるレベル(例えば5レベル前後)に達すると、実際の制限は1日に行えるアクションの数、つまり呪文を使える"機会の数"となる。つまりウォーロックも、中級レベルのウィザードが直面するのと同じ制限に縛られているのだ。攻撃手段が尽きないのは確かに便利で、ウォーロックはエルドリッチ・ブラストで何度も攻撃を繰り出せる。彼らが犠牲にしているのは、呪文の多様性だ。ウォーロックが使える技はほんの一部でしかない。しかし光る点として、それらの技はどれも不気味で、独特の味わいに満ちている。[6]
Dungeons & Dragons第4版
『D&D第4版』では、「ウォーロック」は『PHB』(2008)に基本クラスの一つとして収録された[7]。役割は「撃破役」であり[注 3]、「秘術」のパワー源を持つ[注 4]。この版では、ウォーロックのパワーは「呪文(Spell)」として扱われ、標準的なパワー・システムを使用する。ウォーロックは多くの固有能力を持つが、トレードマークとなるのは、依然としてエルドリッチ・ブラストである。また、ウォーロックの呪いを通じて様々な効果を与えることもできる。ウォーロックのその他のクラス特徴により、味方が標的により近い位置にいない場合、遠隔攻撃の命中精度が向上する。また、十分な距離を移動するたびに隠蔽状態を得られる。ウォーロックの攻撃パワーのほぼ全ては、命中精度とダメージを【魅力】か【耐久力】に依存し、一部のパワーは【知力】からのボーナスを得る。
ウォーロックの力の源は、(神聖でない超自然的存在または力との)「契約」である。これは無限回パワー[注 5]の選択肢に影響を与え、特定のパワーの効果を高め、契約の恩恵をもたらす。この効果は呪われた敵が倒されたり行動不能になったりした際に発動する。様々なソースブックには複数の契約オプションが収録されている。
| 契約名 | 解説 |
|---|---|
| The Star Pact | 彼方の領域の存在、あるいはその近傍の星によるもので、星々からの大いなる啓示の力を授け、敵を狂わせる。Star Pactのウォーロックは、攻撃に【耐久力】か【魅力】のいずれかを使用できる。また、攻撃ロールに【知力】を使用するStar Pact呪文も存在する。[8] |
| The Fey Pact | フェイワイルドの非道徳的な力で鍛え上げられ、フェイワイルドの驚異的かつ危険な呪文の両方を操れる。Fey Pactのウォーロックは、攻撃に【魅力】を使用する。 |
| The Infernal Pact | 九層地獄のデヴィルとの契約を表し、地獄や悪魔の力を与える。Infernal Pactのウォーロックは、攻撃に【耐久力】を使用する。 |
| The Dark Pact | アンダーダークとアビスの強力な住人によって、疫病や病気の呪文を授ける。これは『フォーゴトン・レルム・プレイヤーズ・ガイド(Forgotten Realms Player's Guide)』(2008年)で発表された[9]。Dark Pactのウォーロックは、攻撃に【魅力】を使用する。 |
| The Vestige Pact | この契約は、サプリメント『秘術の書(Arcane Power)』(2009)で公開され[2]、かつて偉大であった個人や力の秘術的「残響」との合意を表す。これによりウォーロックは霊媒として機能し、その存在が力を顕現させる媒体となる。 |
| The Sorcerer-King Pact | 『Dark Sun Campaign Setting』(2010)に収録。アーサスの妖術王と結ばれる契約であり、破壊と穢れをもたらす能力を可能とする。Sorcerer-King Pactウォーロックは、攻撃に【耐久力】か【魅力】のいずれかを使用できる。 |
| The Gloom Pact | シャドウフェルのクリーチャーにより、影と繋がり、敵を縛り付ける能力を与える。 |
| The Elemental Pact | 元素の渾沌のプライモーディアルから力を引き出し、混沌の元素の力を得る。 |
ティーフリングとノームは、【知力】と【魅力】(ウォーロックの主要能力値)の両方に種族ボーナスを持つ。第4版においてウォーロックの役割は撃破役であり、反撃を避けつつ大ダメージを与えるように設計されている。ウォーロックはまた、ボーナス効果を持つ多くのパワーを有する。例えば「アイバイト」は、命中すると1ターンの間ウォーロックを不可視化する。ウォーロックのパワーの多くは、攻撃の一部として移動したり、飛行や瞬間移動といった特殊な移動手段を可能にする。
Dungeons & Dragons Essentials
ルールブック『ヒーローズ・オヴ・ザ・フォーゴトン・キングダム 忘れられた国の勇者(Heroes of the Forgotten Kingdoms)』では、ウォーロックの再編集版として「ヘクスブレード」が紹介された[10]。これは、「第3.5版『戦士大全(Complete Warrior)』(2003)に登場した魔法戦士への新たな解釈」であった[10]。 後発のルールブック『プレイヤーズ・オプション:影の勇者(Heroes of Shadow)』では、ウォーロックの別版「バインダー」が導入された[11]。これらのヴァリエーションは、いずれも第3.5版で導入されたクラスを改変したものである[12][13][14]。
Dungeons & Dragons第5版
「ウォーロック」は、『D&D第5版』の『PHB』において基本クラスとして収録された[15]。契約相手から授かった呪文と妖術(Eldritch Invocation)、および契約の種類を組み合わせた魔法系クラスである[16]。 ウォーロックは、呪文発動能力値として【魅力】を使用する。呪文スロットと使える呪文は制限されるが、スロットは小休憩の度に回復する。これは、大休憩を必要とする他の魔法系クラスとは異なる。また、全ての呪文は常に使用可能な最高レベルのスロットで発動される[16]。これらの呪文は、「契約の恩恵」によっても追加される[16]。『ザナサーの百科全書(Xanathar's Guide to Everything)』では高レベルプレイに重点を置き、他のクラス特徴を基にした14の新たな妖術を追加した。『ターシャの万物釜(Tasha's Cauldron of Everything)』も、新たな契約の恩恵と共に、8つの新たな妖術を追加している[17]。
| 契約相手 | ソースブック | 解説 |
|---|---|---|
| アーチフェイ | プレイヤーズ・ハンドブック | フェイワイルドのフェイの貴族と契約を結び、その力を行使する。[18][19] |
| フィーンド | 下方次元界の悪魔と契約・取引し、その魔法を得る。[18][19] | |
| グレート・オールド・ワン | 彼方の領域の異形の古き神と契約し、精神に影響を与える能力を得る。[18][19] | |
| アンダイイング | ソード・コースト冒険者ガイド | 死を超越した存在と契約を結び、死を遠ざける。[18][19] |
| セレスチャル | ザナサーの百科全書 | 上方次元界の存在と契約し、神聖な力や癒やしの能力を得る。[18][19] |
| ヘクスブレード | シャドウフェルの魔剣と契約を結び、呪いの力を使う。[18][19] | |
| ファゾムレス | ターシャの万物釜 | 深海の存在と契約する。[19][20] |
| ジンニー | 強力なエレメンタル、ジンニーと契約する。[19][20] | |
| アンデッド | Van Richten's Guide to Ravenloft | ストラード・フォン・ザロヴィッチのようなアンデッドと契約する。[18][19] |
『PHB』には、「契約の恩恵」の3つの選択肢が提示されている。「鎖の契約」は、呪文「ファインド・ファミリアー」で、通常の限界を超える使い魔を召喚することを可能にする。「書の契約」は、追加の呪文(あらゆるクラスの儀式や初級呪文)を含む影の書を授ける。「剣の契約」は、戦闘用の魔法の武器を召喚することを可能にする[16][21]。『ターシャの万物釜』で導入された「護符の契約」は、ウォーロック自身、または渡した相手を強化する護符を与える[21]。
その他メディア
- ウォーロック(第3.5版)は、Obsidian Entertainmentのコンピュータゲーム『Neverwinter Nights 2』に登場する。
- ウォーロックは、MMORPG『Dungeons & Dragons Online』で提供されている。
- ウォーロックは、第4版を基にしたMMORPG『Neverwinter』のクラスである。
評価
3.5版における新キャラクタークラスの導入について、EN Worldのゲームデザイナー兼管理者であるケビン・カルプは次のように記している。「ウォーロックが発表された際には大きな騒動が起こり、無制限な呪文発動が強力すぎるのではないかという、熱い(時に熱すぎる)懸念が起こった。それでも、これはヴァンシアン魔法[注 6]からの重要な脱却であり、新規プレイヤーにとって比較的習得しやすい、楽しくプレイ可能なクラスの創出であった。ウォーロックは、楽しさのある新メカニクスと卓越したフレーバーを融合させることに成功した。これは決して容易なことではない」[1]
『Designers & Dragons』の著者シャノン・アペルクラインは、第4版では「これまでゲームのコアではなかった」ウォーロックが基本クラスとして登場していることに驚きを表し、「アサシン[注 7]」「バード」「ドルイド」などの古典的な基本クラスが、新しいクラスを入れるために第4版『PHB』(2008)に掲載されなかったことについて、いくつかの論争があったことを指摘している[7]。
ティモシー・モートンは、著書『Dungeons and Dragons and Philosophy: Raiding the Temple of Wisdom』の中で、第4版の魔法システムの欠点を指摘し、次のように述べている。「この機械的なアプローチは、結果的には他のキャラクターの行動とバランスが取れているものの、結果のばらつきがなく、極端に一貫性があることは問題であると思われる。[中略] ウォーロックも、私たちには違和感がある。異世界からやってきた、非自然で非人間的存在と契約を結んだ者は、直接的なダメージを与える「撃破役」を担う他のキャラクターとは、少し違った存在であるべきではないのか?[中略] ゲーム研究的処理は、不自然な存在をゲーム世界やプレイヤーの意識内に自然に取り込んでしまう。それにより、RPGに組み込む価値のある恐怖や神秘性が破壊されてしまうのだ。[中略]そうでなければ、なぜ第4版のウォーロックは、戦闘において他のクラスとさほど変わらないように見えるのだろうか?」[22]
Screen Rantは、第5版の12基本クラスの中で、ウォーロックを7番目に強力なクラスと評価した[23]。
The Gamerは、『ザナサーの百科全書』に登場する32の新キャラクター・オプションの中で、第5版のウォーロックのサブクラス「セレスチャル」を、「13の素晴らしいサブクラス」の1つとして紹介している[24]。
FiveThirtyEightのGus Wezerekによる第5版のレポートでは、 2017年8月15日から9月15日までに、D&D Beyondでプレイヤーが作成したキャラクター10万人あたりのクラスと種族の組み合わせの内、ウォーロックは8,711件で8位だったと報告した。種族別ではティーフリング(2,188)が最多で、ヒューマン(1,714)、ハーフエルフ(1,401)が続いた[25]。