ドラムセット

大小様々なドラムやシンバルなどの打楽器を一人の奏者が演奏可能な配置にまとめたもの From Wikipedia, the free encyclopedia

ドラムセット(Drum kit, Drum set)は、大小様々なドラムシンバルなどの打楽器を一人の奏者が演奏可能な配置にまとめたキットである。通常椅子に腰掛けて演奏し、主にポピュラー音楽で使用される。ドラムキットドラムスともいう。楽曲のパーソネル紹介での短縮形はds、drums。ペダルを使用したキック式バスドラムとキック式ハイハットの開発は、きわめて革新的な発明だった。ラテン・コンボのコンガボンゴティンバレス、マルチタムなど、打楽器を複数配置しただけでは、ドラムセットとは呼ばない。

歴史

1840年代には、ドラム演奏者が複数の打楽器を同時に演奏できるようにする目的で、フットペダルの開発が試行されはじめたが、大量生産が始まったのは約75年後である[1]欧米軍楽隊にて、体に付けたバスドラム(大太鼓)の上にシンバルをセットする発想が生まれた。1894年、には小太鼓奏者“ディー・ディー”エドワード・チャンドラーによって、足でバスドラムを打つペダルが考案された。1904年、1905年ごろには、企業はチャンドラーが考案したようなペダルの特許を取得した。[2]それまではドラムスは、もっぱらバスドラムとスネアドラムによって演奏されるような、マーチング・バンドの延長でしかなかった。そのドラムセットが劇的に変化する切っ掛けになった発明が、ハイハットである。これは、左足で二枚のシンバルを叩き合わせるペダル付の楽器「ソック・シンバル(別名:ロー・ボーイ)」という楽器を改良したものである。[3]これにより、モダンなドラムセットがほぼ完成した。

著名なドラマーとしては、ファンクのクライド・スタブルフィールド[4]、ジョン”ジャボ”スタークス、R&Bのバーナード・パーディー、アル・ジャクソン[5]、ロックのカーマイン・アピス[6]コージー・パウエル[7]ジャズバディ・リッチ[8]ジーン・クルーパ[9]スティーヴ・ガッドらがいる[10]

ドラムセットの構成

ドラムセットの構成
バスドラム(写真内 1)
アクシスパーカッション 英語版のペダル。
Bass Drumと表記することから「バスドラ」「ベースドラム」と呼ぶ場合もある(英語:ベースドラム)。いわゆる大太鼓。他に「キック(Kick)」と呼ぶこともある。ピッチ(音程)や音は、サイズによって大きく異なる[11]。右利きの場合、奏者の右足側に設置し、キックペダルを踏んで演奏する。
フロアタム(写真内 2)
床に直接置くので「フロア(floor) ・タム」と呼ばれる。右利きの場合、奏者の右側に設置するのが一般的。大口径のタムで代用する場合もある。並び順はタムと同様。音楽パレードで使用されることもある[17]
スネアドラム(写真内 3)
スネアのルーツは、13-14世紀にヨーロッパ全域で使用されていた小型の太鼓「タボール」である[18]。いわゆる小太鼓。スネアドラムは座って演奏するので、奏者の膝の高さに専用のスタンドで設置する。「サイドドラム」と呼ぶ場合もある。ボトム側(スネアサイド)のヘッドにスナッピー(スナッピーは日本独自の言い方。正しくはスネアワイヤーなど)と呼ばれるスチールないしブラスなどの金属製の響線が装着されている事が最大の特徴である。胴の深さは一般的に5インチ(約13センチメートル)前後、口径は14インチ(約36センチメートル)が主流である。浅めのスネアドラムは「ピッコロスネア」とも呼ばれている。
トムトム(タムタム)(写真内 4)
ドラムセットでは「タム」と呼ぶのが一般的(クラシックの打楽器奏者は「Tam Tam=タムタム=銅鑼」とを明確に区別するため、「トム」「トムトム」と呼んでいる)。バスドラムやシンバルスタンドに取り付けたホルダー、または専用のスタンドを使い、バスドラムの上付近に設置する。複数設置する場合は、右利きの場合主に左から右へ小さい順に並べるのが一般的である。戦後の音楽界ではジャズビッグ・バンドや、ロックンロール・バンドで、タムのサイズは「ハンギングタム」(9x13インチ)と「フロアタム」(16x16インチ)が一般的だった[19]。口径の異なる2つのタムを設置する右の写真のような構成に限らず、タム1つのみを配した、いわゆる「ワンタム」と呼ばれるシンプルな構成がなされることもあり、設置する個数、口径に決まりはない。テリー・ボジオ真矢LUNA SEA)のように、タムだけで10個以上を配するセットを組む奏者も存在する。
ハイハットシンバル(写真内 5)

ロック、ソウル、ファンクジャズ、ディスコ、ポップなどのポピュラー音楽でドラマーが使用する。[20]右利きの場合、奏者の左足側、スネアドラムの直近に専用のスタンドで設置する。またワイヤーを使って奏者の右側や自由な位置に設置するリモートハットもある。また、ツー・バス演奏時に左足を使用できない状態で、クローズ音が欲しい場合や、常時ハーフ・オープンの音が欲しい場合に使用するクローズド・ハットといったものもある。左側に設置している場合、腕をクロスさせて右腕で叩く「クロスハンド奏法」が一般的だが、腕をクロスさせずに左腕で叩く「オープンハンド奏法」で叩く奏者も存在するオープンハンドの項を参照)。スティックだけでなく、バスドラムと同じようにペダルを使うことが多く大半は左足で操作する。

シンバル(写真内 6)
設置にはスタンドを用いる。シンバルを2枚対向させて打ち合わせるなどして演奏する場合と、1枚のシンバルを吊すかスタンドに固定してスティックや、マレット)で叩く場合がある。前者をクラッシュ・シンバル(合わせシンバルやハンドシンバルと呼ぶ)、後者をサスペンド・シンバル(サスペンデッド・シンバル)と呼んで区別する。[21]マーチングバンドなどにおいては、様々なサイズの合わせシンバルを用い、シンバル・メーカーでも様々な径のシンバルを取り揃えている[22]ライドシンバル(トップシンバルとも)やクラッシュシンバル(サイドシンバル)、エフェクトシンバル(チャイナスプラッシュベル、ゴング、カップチャイム、重ねシンバル)などがあり、ライドシンバルはフロアタムの上付近に設置するのが一般的である。
ドラムスティック
ドラムは、パフォーマンスの延長として手で叩く場合もあるが、主にスティックといわれる(ばち)が用いられる。一般的には、ヒッコリーで出来たものが多く、メイプルオークで出来たものもある。[23]少数派としてアルミ製、プラスチック製、ファイバー製のものや、内部に発光体を入れたものなども存在する。木製のスティックの先端(チップ)は、木製のものが一般的であるが、ナイロン製のものも各社から販売されている。ブラシや、ロッズと呼ばれる細い棒を束ねたもので演奏する場合もあり、イージー・リスニング向けジャズなど、ソフトな表現が求められた時に用いられる。逆に、より太く重い音を出したい場合、先が球状になったマレットで演奏する場合がある。

カウベル

カウベルは、本来は牛などの家畜を見失わないための道具だったが、転じてドラマーらが打楽器としても使用するようになった。

ドラムの構造

ドラムの選択においては、種々の情報を鵜呑みにせず、必ず自分の耳で聴いて選択するべきである。ジャズ・シーンでは小口径の物を使用するのが流行し、バスドラ18インチ、フロアー14インチ、タム12インチ、といったスタイルが好まれている。かつてはトニー・ウィリアムズを筆頭にバスドラ22インチ(28インチ、30インチの強者も)、タム13インチ、フロアタム16インチといったものが流行し[25]、名手バディ・リッチがバスドラ24インチを配していたこともある。またロックでは、バスドラ22インチ以上を基にしたセットが好まれる傾向もある。レイアウトにも流行があり、1960年代は点数の少ない小規模キット、70年代は反対に多点キット、80年代はさらに数が増えた多点キットだった。しかし、1990年代以降は60年代のレイアウトに戻っている。

  • ドラムヘッド

ドラムシェルの両端ないし片側の開口部に取り付ける振動膜である。一般的に、円形に形成された硬質の枠をもち、フープによりこの枠が押し下げられることで振動膜がエッジに押し付けられ、張力が与えられる。古くは動物の皮を使用していたが、1956年 Chick Evans がポリエステルをドラムヘッドとして使用したことに始まり[26]、その優れた耐久性、耐天候性、製造コストの低さから、2013年4月現在、振動膜としてプラスティック素材を使用することが主流となっている。主要なドラムヘッドメーカーには、REMO、EVANS、Aquarianなどがある。ドラムセットを購入する場合はヘッドは生産財として既に組み込まれていることが多い。

  • シェル(胴)

ドラムシェルにはプライ(薄い木板)が用いられる。[27]ドラムシェルには、ウッド、合成樹脂の他、多種の金属(リン青銅、赤銅、真鍮、鉄、ステンレス・スティール、アルミ、チタン、合金)など様々な素材が用いられている。

  • 口径と深さ

一般的にバスドラムは22x18、22x16、20x16インチの機材が多く使用される。[28]ジャズや小規模バンドの場合18インチという小口径を使うこともあり、逆に大音量のロックやジャズのビッグ・バンドでは「24インチや26インチ」の大口径バスドラが使用されることがある。かつては深さ14インチが主流であった。また、タムでは裏面が存在しないタムタム(シングル・ヘッド・タム、またはメロディックタムやコンサートタムともいう)もある。

バリエーション

ツーバス、ツインバス、ダブルベースドラム
右足のみでは不可能な高速かつ力強い連打を実現するため、左足側にもバスドラムを設置する。同口径のものを用いるケースと異口径のバスドラムを設置して幅広い楽曲に対応するケースがある。主にバスドラムは1つが主流だが、2つセッティングして2バスドラムにするドラマーもいる。ダブル・ベース・ドラムはジャズのルイ・ベルソンが最初に使用し、その後キース・ムーンジンジャー・ベイカー[29]カーマイン・アピスナラダ・マイケル・ウォルデンコージー・パウエルテリー・ボジオらも使用した。[30]フィッシュボーンやリヴィング・カラーのドラマーも、ツーバスで高度なテクニックを披露している。ヘヴィメタルバンドでは、2バスが多く見られる。また日本でも、幅広い表現を求めるために、村上 “ポンタ” 秀一が、ツー・バスを使用した。テリー・ボジオは、8台以上のバスドラムを使用する場合がある。
リモートハイハット
ハイハットのシンバル部分とキック部分を切り離し、ワイヤーケーブルでつなげてハイハットを遠隔操作する特殊なハイハットである。[31]自由なセッティングが可能となったラックの普及に伴い、同じく自由なセッティングを可能としたもの。ジェイムズ・ギャドソンは、ハイハットの名手として知られていた。
ツインペダル、ダブルペダル
特殊なペダルを使用し、バスドラム1個でツーバスと同じ奏法を可能にする。ただし、バスドラムが一個のためサスティーンがミュートさせ完全には同じにならない。ドラマーの好みや経済的理由、スペースの関係でツーバスにできない場合などに用いられる。
左利き用セッティング
打楽器類を全て左右逆に配置する。ツインペダルも左利き用のものが市販されている(Ex:イアン・ペイス)。
スタンドプレイ
フルドラムキットに座る代わりに、バスドラム、スネアドラム、ハイハット、クラッシュシンバルだけで立って演奏する(Ex:スリムジムファントム 他ロカビリー系)。
リズム・ボックス

1970年代初頭には、スライ・ストーンティミー・トーマスが、原始的なリズム・ボックスを使用した。

  • 「ホワイ・キャント・ウイ・リブ・トゥゲザー」ティミー・トーマス[32]
シンセドラム/ドラムマシン
シンセドラムは、1980年代の一時期に流行した。ドラムマシンは、電子的に音を合成するもので、複数のパッドと音源から成る。アナログシンセサイザー音源を用いるもの、デジタルサンプリング技術を用いるもの、あるいは音素片を加工するモデリング技術を用いるものなどがある。

ドラム・マシンを使用した楽曲の例

1980年代に発売されたリン・ドラム英語版などが電子回路によって音を作り出していた。打撃面にラバーやメッシュヘッドを用いたこれらのドラムは、打音を演奏音として使うアコースティックドラムに比べて「音が静か」なため、個人の練習用ドラムセットとして人気がある。単体で用いたりアコースティックドラムと組み合わせたりすることもある。「トリガーモジュール」と呼ばれるセンサーを生ドラムに取り付けて、生音とサンプリング音を合成して演奏や録音に使う方法もある。その後ドラムマシンのローランド・TR-808(通称ヤオヤ)が発売され、R&Bニュー・ジャック・スウィングを中心に、大流行となった。シンセドラムは、キーボードやエレキギターなど一般的な電子・電気楽器と同様に、音の出力はスピーカーから行われる。ステージなどで大音量を得るには、PAあるいは楽器用アンプなどの増幅装置付きスピーカーが不可欠である。

ドラムセットに組み込まれる主な打楽器

ドラムセットの楽譜

便宜的にパーカッション記号ないし、ヘ音記号音部記号に持つ五線譜、あるいは音部記号の無い五線譜を用いて表されることが一般的である。ジャズの世界では、バディ・リッチが楽譜を読めないことが知られていた。[36]楽譜自体は音階を持たないリズム譜の集合体であり、音高符頭アーティキュレーション記号などの書き分けと楽器操作との間に、ほぼ一対一の対応関係が有るという点でタブラチュア(Tab)譜の一種である。

記譜例。

ドラム
ドラム
左から、バスドラム、スネアドラム、フロアタム、ミドルタム、ハイタム。
シンバル
シンバル
左から、ハイハットをペダルのみで演奏する場合、ハイハットをスティックで叩く場合、ライド、ベル、クラッシュ、チャイナまたはスプラッシュ(それぞれのシンバルについては、ドラムセットにおけるシンバルの種類を参照)。

ドラムセットの音

さらに見る オーディオサンプル, パーツ ...
オーディオサンプル
パーツ 演奏内容 オーディオ Vorbis: 矢印をクリック)
スネアドラム 消音しないスネアドラム
消音したスネアドラム
リムショット
バスドラム 消音したバスドラム
1タム, 2タム 8インチ(20cm)ラックタム
12インチ(30cm)ラックタム
フロアタム
ハイハット クローズド・ハイハット
オープン・ハイハット
フットペダルでハイハットを開閉(チック)
クラッシュシンバル クラッシュシンバル
ライドシンバル 普通に叩く
シンバルの「ベル」部分を叩く
エッジを叩く
ビート ハイハットの典型的なロックビート
ライドシンバルの典型的なロックビート
ウィキメディア・コモンズドラムカテゴリにさらに多くの例があります
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材質

スネア以外のドラムはウッドが多く用いられるが、スネアドラムはウッドに限らず、金属製のものも愛用者は多い。しかし、なかにはファイバーグラス、アクリル、カーボンなどを使用しているものもある。 セットの主たる材質としてメイプル、バーチが筆頭に上げられるが、上質なマホガニーなども使用される。これらは各メーカーともに高級機種に用いられるが、安価なものにはポプラ、フィリピン・マホガニーなどの安価な材質が使用される。また、高級感を出すために化粧板にアッシュ、コルディアといった木目の美しいものも用いられることがある。

メーカー

ドラムセット

ドラム、シンバル、ハードウェアなどを調達、製造し、自社ブランドとしてセットを販売しているブランドの一覧。

シンバルブランド

ドラムセットに組み込まれるシンバルブランドを記載。

ドラム

ドラムセットに組み込まれる太鼓(シェル)を供給しているブランドを記載。

電子ドラムメーカー

シンセドラムとドラムマシン、双方を掲載

  • Roland(日本)
  • YAMAHA(日本)
  • Highleads(日本)
  • MEDERI(香港)
  • ALESIS(アメリカ)
  • XM edrum(台湾)
  • Go edrum(台湾)

脚注

関連項目

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