オレシュニク (ミサイル)
ロシアの中距離弾道ミサイル。2024年に初使用
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オレシュニク(ロシア語: Орешник、英語: Oreshnik、語意:植物のヘーゼル(ハシバミ属))[2]は、ロシアの中距離弾道ミサイル (IRBM)。ウクライナ軍によれば最高速度はマッハ10 (3.4km/s)を超える[3][4]。
| オレシュニク (Oreshnik) | |
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2024年11月21日、ウクライナのペトロウシク州ドニプロ・ユージュマシュに対するオレシュニクミサイル攻撃とされる映像 | |
| 種類 | 中距離弾道ミサイル (IRBM) |
| 原開発国 |
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| 運用史 | |
| 配備期間 | 2024年 - |
| 配備先 | ロシア戦略ロケット軍 (SRF) |
| 関連戦争・紛争 | ロシア・ウクライナ戦争 |
| 諸元 | |
| 最大射程 | 不明(IRBM相当、3,000km - 5,500km) |
| 速度 | 詳細不明(IRBM相当:マッハ15(5.1km/s)程度)[1] |
| 弾頭 | MIRV核弾頭またはMIRV非核クラスター弾 |
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| エンジン | 固体燃料エンジン(詳細不明) |
このミサイルは、2024年11月21日に、ウクライナの都市ドニプロを攻撃する際に初めて実戦使用された。 ウクライナ空軍は11月21日、ロシア軍がウクライナ東部の都市ドニプロにある重要施設に対しさまざまなミサイルで攻撃を仕掛けたとしたうえで「ICBM1発がロシア南部アストラハン州から発射された」と発表した。
ロシアのプーチン大統領は11月21日、ビデオ演説し、ウクライナ東部への攻撃で「オレシュニク」と名付けた新たに開発した極超音速の中距離弾道ミサイルを使用したと明らかにし、ICBMを発射したというウクライナ側の発表を、事実上否定した[3][5]。
2024年11月21日に、アメリカ合衆国国防総省のサブリナ・シン副報道官は、オレシュニクは RS-26 ルベーシュの派生型と同定されたと述べている[3][6]。
このミサイルは複数個別誘導再突入体(MIRV)を搭載可能であり、これは以前は核兵器でのみ使用されたが、2024年11月21日の攻撃では、子爆弾を包含した6個のクラスター弾頭を搭載していたとされている。MIRVは、現代的な弾道弾迎撃ミサイルでも迎撃は困難であるとされている[7][8][9]。
沿革
開発
オレシュニクは、RS-26 ルベーシュIRBMの派生型と推定されている[3][6]。ルベーシュは過去5回試験発射されたが、実戦配備されたことはなかった[9]。
専門家[誰?]によれば、オレシュニクはRS-26のブースターステージを抜いて、射程を減少させたものだとする[9]。
2025年8月1日に、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、オレシュニクは量産および実戦配置段階に入っており、最初のバッチがロシア軍部隊に配備されたと語った[10]。
モントレー国際大学院のジェフリー・ルイスによれば、アメリカの諜報コミュニティは、オレシュニクの実際の飛行データに基づいて、オレシュニクはRS-26であると結論しているが、ルイス自身は十分な信頼性で、オレシュニクはRS-26の2段式バージョンであると結論している[11][12]。
さらに、RS-26とオレシュニクの戦闘支援車両は同一である[13]。
最初の実戦使用 (2024年11月21日)
ロシア・ウクライナ戦争中の2024年11月20日に、アメリカはウクライナおよび他の同盟国に対して、「潜在的に大規模な空襲」について警告を発した[14]。
同日、アメリカと他の複数の国は、キーウの大使館を閉鎖した[15]。
2024年11月21日、オレシュニクの実戦用ミサイルが、ウクライナのドニプロにあるPA ユージュマシュ機械製造工場の攻撃で使用された[16][17][18]。
ミサイルはアストラハン州の、おそらくカプースチン・ヤール訓練場から発射されたと考えられた[8]。
ウクライナ空軍は2024年11月21日、ロシア軍がウクライナ東部の都市ドニプロにある重要施設に対しさまざまなミサイルで攻撃を仕掛けたとしたうえで「ICBM1発がロシア南部アストラハン州から発射された」と発表した。
ロシアのプーチン大統領は同日演説し、ウクライナ東部への攻撃で「オレシュニク」と名付けた新たに開発した極超音速の中距離弾道ミサイルを使用したと明らかにし、ICBMを発射したというウクライナ側の発表を、事実上否定した[3]。同日、アメリカ合衆国国防総省のサブリナ・シン副報道官は、オレシュニクはRS-26 ルベーシュIRBM の派生型と同定されたと述べている。従って、米ロはこの段階では、ミサイルはICBMではなくIRBMであったという見解で一致している[3][6]。
カプースチン・ヤールからドニプロまで約800kmであり、オレシュニクの最大射程はIRBMの上限(5,500km)に近いか、これを超えると考えられることから、高角度で発射したロフテッド軌道で射程調整していたと推定された[1][9]。
このミサイルは、着弾時の動画の解析によれば、6発の複数個別誘導再突入体(MIRV)ペイロードを搭載していたと推定されている[19][4]。
また、ウクライナ情報機関の分析では、各MIRVはクラスター爆弾で、「1発のミサイルから6発の弾頭が分離し、それぞれの弾頭から更に6個の子弾が分離された」としている[7]。
後で行われた評価では、この攻撃では爆発物は使用されなかった模様であり、政治的デモンストレーションを意図したものであったと推測されている[19][20]。
ウクライナ政府によれば、ミサイルには爆薬を搭載しないダミーの弾頭が搭載された。これをアメリカの専門家[誰?]は「破壊力を持たない高価なデリバリー方法」と表現した[21][9]。
2024年11月21日のオレシュニク攻撃を含むドニプロ攻撃の目撃者は、攻撃が約3時間続いた爆発の引き金になったと証言している[22]。
戦略国際問題研究所 (CSIS) のディレクターの一人[誰?]は、オレシュニクの弾頭は、たとえイナート(非爆発化)されていても、それらの持つ極超音速での運動エネルギーは、多大な損害を発生させ得ると述べている[23]。
後に明らかにされた衛星画像は、PA ユージュマシュ機械製造工場の屋根と、隣接する民間区域への最小限の損害を示している[24] [25][26]。
ウラジーミル・プーチンによれば、これは実射試験であった。プーチンは、この攻撃は、ロシア領内の軍事目標に対する、ATACMSとストーム・シャドウミサイルの使用を、ウクライナの支援国が許容していることに対する対抗措置として実施したと述べた[19][27] [28]。
ただし、ロイターとニューヨーク・タイムズによれば、ロシアのワレリー・ゲラシモフ参謀総長は、アメリカのチャールズ・ブラウン・ジュニア統合参謀本部議長との電話会談の際に、この攻撃はバイデン政権がロシア領内へのアメリカ製ミサイルの攻撃に同意する、はるか以前から計画されていたものであったことを認めたとされる[29]。
発射に先駆けて、発射30分前にロシアはアメリカに、核戦争リスク減少チャネル(ホットライン)を通じて、ミサイル発射を警告した[27][28][3]。
2025年10月31日、ウクライナ国防省情報総局、ウクライナ保安庁(SBU)およびウクライナ軍は、2023年夏の特殊作戦の際に、ウクライナはカプースチン・ヤール試験場で、1機のロシアのオレシュニクを破壊したが、他の2機は使用可能状態で残っていると主張した[30]。
2回目の実戦使用 (2026年1月8日)
2026年1月8日、ロシア軍はオレシュニク・ミサイル1発をカプースチン・ヤール試験場から発射し、リヴィウ市に着弾した。これは、ロシア・ウクライナ戦争における、リヴィウ州への弾道ミサイル攻撃の最初のものとなった[31]。
ウクライナ空軍は、この攻撃は多数のドローンおよびミサイル攻撃と同時に行われたと発表した[32]。
後日[いつ?]、ロシア国防省は、リヴィウ州航空機整備工場へのオレシュニクによる攻撃を確認した[33]。
3回目の実戦使用 (2026年5月24日)
2026年5月23日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアがオレシュニクミサイルによる攻撃を準備している可能性に言及した [34] [35] 。
2026年5月24日午前0時51分(日本時間午前6時51分)、ロシア軍はオレシュニク・ミサイル1発をカプースチン・ヤール試験場から発射し、キーウの南およそ80キロの町、ビラ・ツェルクヴァに着弾した [36] [37]。
SNSに投稿された、このミサイルの着弾の模様とされる動画では、2024年11月21日の攻撃と同じく、6発のMIRVクラスター弾頭と、それがさらに6個の子爆弾に分裂する模様が映されている [37] [38]。
性能と課題
迎撃の困難さ
このミサイルのMIRVペイロードは、オレシュニクを他の核弾頭搭載可能ミサイルとは一線を隔すものにしており、ウクライナが現在のミサイル防衛システムで迎撃することは、著しく困難であると戦略国際問題研究所 (CSIS) のディレクターの一人[誰?]は述べている[8]。
ウクライナの軍事評論家は、オレシュニクは、ウクライナの防空システムでは探知不能な、大気圏上層部を飛行してくると述べている。この性能はウクライナのミサイル防衛システムによる迎撃を極めて困難にしている。まだウクライナには導入されていないが、イスラエルのArrow 3やアメリカのSM-3 Block 2Aなどの現代的な迎撃ミサイルであれば、明確にこのような脅威に対抗できるように設計されている[19][8][9]。
試験的な側面
アメリカ政府は、オレシュニクはその先進的な特長にかかわらず、まだ試験段階にあると述べている。プーチンは、オレシュニクの試験的な側面と極超音速性能を強調して来たが、数人の軍事専門家[誰?]は、この兵器は、ICBMで長年使われて来た古い技術の単なる応用に過ぎないとしている[9]。
核拡散防止の専門家であるジェフリー・ルイス博士によれば、オレシュニクで使われている技術は、どれも新しいものではないし、通常兵器の開発におけるドラマチックな変化を代表するものでもなく、むしろ、「新しい手法で組み合わされた、古い技術のシリーズ」であるとする[9]。
オスロ大学の防衛専門家の一人[誰?]は、新しいコンポーネントは、10%も組み込まれていないだろうと予測している[39]。
ロシアはかなり限られた数のユニットしか保有していないので、ウクライナに対する通常規模の配備は、不可能であろうと考えられている[4][6]。
精度の課題
専門家たち[誰?]は、ドニプロ攻撃時の動画素材から判断して、オレシュニクの精度については、核弾頭攻撃の場合なら十分であるが、通常兵器のデリバリーには不十分であると述べている[9]。
スティムソン・センターのWilliam Alberqueによれば、「ロシアが通常兵器用の平均誤差半径 (CEP)を持つMIRVを開発しているとしても、我々はそれを見たことがない。」としている[9]。
脅迫戦術
専門家たちは[誰?]、プーチンのドニプロに対するミサイル攻撃は、ある種の核脅迫であり[40]、アメリカが供給するミサイルのロシア領内に対する攻撃に対して、アメリカを威圧しようとしてレッドラインを設定しようする、成功しなかった試みに続くものであるとする[41]。
いくつかの報道機関[どこ?]と著名人[誰?]は、11月21日の新型ミサイルによる攻撃は、ある種の核脅迫戦術であると解釈している[19]。たとえば、エコノミスト誌は、「ウラジーミル・プーチンは彼の核脅威を増長するために新型ミサイルを発射した」と題した記事を掲載した[42]。
また、戦争研究所 (ISW) は、プーチンは11月21日のオレシュニク攻撃を、西側諸国がウクライナ支援を続けることを思いとどまらせるために、ロシアの核攻撃能力とレトリック的にリンクしていると主張している[43][44]。
ロシア人の核ポリシー専門家のMaksim Starchakは、ミサイル使用の第一の目的は、軍事的損害ではなく心理的圧力であるとしている。彼は、この攻撃はヨーロッパの住民を恐れさせ、彼らの政府にロシアの要求に従うように圧力をかけさせる意図があると考えている[45]。
ニュースサイトのMeduzaによれば、クレムリンの意図は、次期アメリカ政権にロシアとの紛争激化への恐怖心を植え付け、それによって政権の政策に影響を与えることだったのかもしれない[46]。
ニュースサイトの ザ・モスクワ・タイムズによれば、この中距離ミサイル攻撃は、ロシア軍と情報機関が西側諸国の指導者と国民を威嚇するために画策したプロパガンダ活動の一環だった。この作戦は、ウクライナがロシアの標的に対して長距離ミサイルを使用することを許可されたことへの報復であり、最終的な目的は西側諸国をモスクワの要求に屈服させることだったとしている[47]。
英国のシンクタンクである王立国際問題研究所の軍事専門家であるMathieu Boulegueは、オレシュニクミサイルは戦場の力学を変えるものではないものの、西側諸国を威嚇するというクレムリンの目的を効果的に果たしていると述べた[48]。同様に、新アメリカ安全保障センター (CNAS) の上級研究員であるJames J. Townsendは、このミサイル配備を、ウクライナによる西側諸国製の長距離ミサイルの使用に対するロシアの不満の表明と解釈した。Townsend はまた、これはウクライナと次期アメリカ大統領ドナルド・トランプへのメッセージであり、西側諸国のウクライナへの支援に関わらず、ロシアは自国の目標を追求する姿勢を崩さないという意思表示であるとも述べた[48]。
配備

2025年4月、プラネット・ラブズ社の衛星画像が、アナリストの解析ではベラルーシ領内ミンスクの南60kmの地点における、オレシュニクの発射基地の建設を示していた。かつてのロシア戦略ロケット軍の敷地では、2平方キロメートル (0.77平方マイル)を超える面積から不発弾が除去され、多数の新しい建造物が建てられていた[49]。
2025年12月18日、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は、オレシュニクミサイルシステムが前日にベラルーシに到着し、実戦配備に入ったと発表した[50]。同日、ロシア軍のワレリー・ゲラシモフ参謀総長は、2025年にミサイル旅団を創設すると述べた[51]。
2025年12月、ベラルーシのヴィクトル・クレニン国防相は、これらの計画は西側諸国の「攻撃的な行動」に対する「我々の対応」だと主張した。2026年には、アメリカのタイフォン ミサイル ランチャーシステムをドイツに配備する計画がある[52]。12月26日、ジェフリー・ルイスとデッカー・エベレスは、オレシュニクの移動式発射装置が現場に既に存在していたか、あるいは配備されようとしていたことを90パーセントの確実性で結論付けた分析結果を発表した[52][12]。
2025年12月30日、ロシア国防省は、ベラルーシに配備されているオレシュニクミサイルが戦闘任務に就いたと発表し、関連動画を公開した[53]。