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ガスダーミンD

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ガスダーミンD: gasdermin DGSDMD)は、ヒトでは8番染色体英語版に位置するGSDMD遺伝子によってコードされているタンパク質である[5]。ガスダーミン(gasdermin)という名称は、このファミリーのタンパク質が主に胃腸(gastro-)と皮膚(dermato-)に発現していることに由来している[6]。ガスダーミンファミリーは脊椎動物の間で保存されており、ヒトでは6種類のメンバー(GSDMA英語版GSDMB英語版GSDMC英語版、GSDMD、GSDME(DFNA5英語版)、ペジバキン英語版)から構成される。ガスダーミンファミリーのメンバーは上皮細胞や免疫細胞を含むさまざまな細胞種で発現している。 GSDMDはがん抑制因子として作用することが示唆されている[7]

記号GSDMD, DF5L, DFNA5L, GSDMDC1, FKSG10, gasdermin D
染色体8番染色体 (ヒト)[1]
終点143,563,062 bp[1]
概要 GSDMD, 識別子 ...
GSDMD
識別子
記号GSDMD, DF5L, DFNA5L, GSDMDC1, FKSG10, gasdermin D
外部IDOMIM: 617042 MGI: 1916396 HomoloGene: 12299 GeneCards: GSDMD
遺伝子の位置 (ヒト)
8番染色体 (ヒト)
染色体8番染色体 (ヒト)[1]
8番染色体 (ヒト)
GSDMD遺伝子の位置
GSDMD遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点143,553,207 bp[1]
終点143,563,062 bp[1]
遺伝子の位置 (マウス)
15番染色体 (マウス)
染色体15番染色体 (マウス)[2]
15番染色体 (マウス)
GSDMD遺伝子の位置
GSDMD遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点75,734,176 bp[2]
終点75,739,257 bp[2]
遺伝子オントロジー
分子機能 血漿タンパク結合
phosphatidylserine binding
phosphatidylinositol-4,5-bisphosphate binding
phosphatidylinositol-4-phosphate binding
phosphatidic acid binding
cardiolipin binding
細胞の構成要素 細胞質
インフラマソーム
核質
NLRP3 inflammasome complex
細胞外領域
細胞外空間
細胞質基質
細胞膜

specific granule lumen
tertiary granule lumen
ficolin-1-rich granule lumen
生物学的プロセス cellular response to extracellular stimulus
自然免疫
炎症反応
プログラム細胞死
免疫系プロセス
ピロトーシス
細胞溶解
pore formation in membrane of other organism
好中球脱顆粒
pore complex assembly
defense response to Gram-negative bacterium
defense response to Gram-positive bacterium
protein homooligomerization
出典:Amigo / QuickGO
オルソログ
ヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)

NM_001166237
NM_024736

NM_026960

RefSeq
(タンパク質)

NP_001159709
NP_079012

NP_081236

場所
(UCSC)
Chr 8: 143.55 – 143.56 MbChr 8: 75.73 – 75.74 Mb
PubMed検索[3][4]
ウィキデータ
閲覧/編集 ヒト閲覧/編集 マウス
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構造

ガスダーミンDのC末端ドメインの構造

全長のGSDMDタンパク質は、31 kDaのN末端ドメイン(GSDMD-N)と22 kDaのC末端ドメイン(GSDMD-C)の2つのドメインから構成され、両者はリンカー領域によって隔てられている。GSDMD-Cはリンカーヘリックス、ヘリックスリピートI、ミドルドメイン、ヘリックスリピートIIという4つのサブドメインに分けられ、10本のαヘリックスと2本のβストランドによってコンパクトな球状のフォールドを形成する。ミドルドメインは逆平行βストランドと短いαヘリックスから構成される。GSDMD-Nとリンカーヘリックスの間に位置しているGSDMD-Cの柔軟なループ領域はGSDMD-Nのポケットに挿入され、全長タンパク質のコンフォメーションを安定化している[8]。ドメイン間リンカー領域での切断後のGSDMD-Nは31から34個のサブユニットからなる巨大な膜貫通ポアを形成し、IL-1ファミリーのサイトカインの放出を可能にしてパイロトーシスを駆動する[9]

機能

GSDMDは炎症性カスパーゼ(カスパーゼ-1-4-5-11)の特異的基質であり、またパイロトーシスと呼ばれる細胞溶解性・炎症性プログラム細胞死のエフェクター分子であることが明らかにされている[10][11]。GSDMDは微生物感染やdanger signalに対する宿主の防御機構に必要不可欠な媒介因子である。GSDMD-Nの有するポア形成能は細胞の膨潤と溶解を引き起こすことで細胞内病原体の複製を防ぎ、また炎症性サイトカインIL-1βなど細胞質の内容物を放出して免疫細胞を感染部位へ動員し活性化するためにも必要とされる[12]。さらに、GSDMDはカルジオリピン英語版に結合して細菌の膜にポアを形成することで抗微生物作用を示している可能性もある。

自己阻害

通常の条件下では、GSDMD-NとGSDMD-Cの間のリンカーループが全長GSDMDタンパク質のコンフォメーションを安定化し、GSDMD-CがGSDMD-Nの側へ折り返されて自己阻害を行っているため、GSDMDはパイロトーシスの誘導が起こらない不活性状態となっている[8]。炎症性カスパーゼによるドメイン間の切断によって自己阻害は解除され、GSDMD-Nの細胞傷害性が引き起こされる。

活性化

GSDMDは、古典的・非古典的パイロトーシス経路の双方において炎症性カスパーゼによって切断されて活性化される[13]

古典的インフラマソーム経路

カスパーゼ-1は脊椎動物で保存されており、古典的経路に関与している。カスパーゼ-1はNLRP3インフラマソームNLRC4インフラマソームなど古典的インフラマソームによって活性化される。こうしたインフラマソームは、細胞質基質において病原体関連分子パターン(PAMP)やダメージ関連分子パターン(DAMP)と呼ばれる特定の炎症性リガンドがNOD様受容体(NLR)によって認識されることで形成される多タンパク質複合体である。細菌のIII型分泌装置のロッドタンパク質やフラジェリンはNLRC4インフラマソームの強力な活性化因子であり、細菌毒素であるニゲリシンはNLRP3インフラマソームを活性化する[11]

非古典的インフラマソーム経路

マウスのカスパーゼ-11やそのヒトホモログであるカスパーゼ-4、-5は非古典系経路に関与しており、感染したグラム陰性菌によって分泌された細胞質基質中のリポ多糖に直接結合することで活性化される[10]

これらのカスパーゼの活性化に伴ってGSDMDはAsp275で切断され、この切断はパイロトーシスを駆動するために十分である[11]

機構

ガスダーミンDの活性化とポア形成機構の概要

タンパク質の切断後、GSDMD-Cは細胞質基質にとどまるのに対し、GDDMD-Nは膜脂質に係留されることで細胞膜へ局在する。GSDMD-Nと哺乳類の細胞膜内葉のホスファチジルイノシトール-4-リン酸英語版(PI(4)P)やホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸(PI(4,5)P2)は、負に帯電したホスファチジルイノシトールの頭部と切断後に露出した正に帯電した表面との電荷相互作用によって特異的に強固に相互作用する[14]。細胞膜の外葉にはホスファチジルイノシトールは存在しないため、意図せぬ組織損傷は最小限に抑えられる。脂質の結合によってGSDMD-Nは脂質二重層へ挿入されて膜内での高次オリゴマー化が誘導され、内径10–14 nmのポアが形成される[8]。ポアの形成によって浸透圧は破綻し、パイロトーシスの形態学的特徴となる細胞の膨潤と溶解が引き起こされる。ポアはタンパク質分泌チャネルとしても機能し、急速な自然免疫応答のための炎症性サイトカインの分泌が促進される[15]。GSDMD-Nは細胞質にも分布し、細胞内の細菌の膜の内葉や外葉に存在するカルジオリピンに選択的に結合する。またはパイロトーシスを起こした細胞からポアを通って細胞外環境へ分泌され、細胞外の細菌を標的として死滅させる[16]

臨床的意義

パイロトーシスはガスダーミンを介した壊死的細胞死として定義され、感染に対する免疫防御機構として機能する。GSDMDの発現または切断の欠陥によってパイロトーシスは遮断され、IL-1βの分泌は損なわれ、最終的には細胞内細菌の複製ニッチを除去することができなくなる。GSDMDの変異はさまざまな遺伝疾患や、脳腫瘍肺がん膀胱がん子宮頸がん皮膚がん口腔がん咽頭がん結腸がん肝がん、盲腸がん、胃がん膵がん前立腺がん食道がん頭頸部がん、血液のがん、甲状腺がん子宮体がんなど、ヒトのがんと関連している[17]。GSDMDのダウンレギュレーションによって、細胞の生存や腫瘍の進行に関与しているERK1/2、STAT3PI3K/AKT経路を不活性化することができないために胃がんの増殖が促進されることが明らかにされている[18]。一方、パイロトーシスの過剰の活性化によって敗血症や致死的な敗血症性ショックが引き起こされる場合がある[19]

GSDMDは炎症と関連した骨髄異形成症候群(MDS)の発生と進行に重要な役割を果たしており、GSDMDのノックアウトによってMDSマウスモデルの生存期間は有意に伸長する[20]。パイロトーシス時のポア形成にGSDMDが果たす重要な役割は、炎症性カスパーゼと関連した自己炎症性疾患、敗血症や敗血症性ショックの治療のための将来的な薬剤開発へ向けて新たな道を切り開くものとなる可能性がある[17]

相互作用

GSDMD-Nは次に挙げる因子と相互作用することが示されている[14]

出典

関連文献

関連項目

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