(50000) クワオアー
小惑星
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(50000) クワオアー[8](英語: Quaoar)は、将来的に準惑星(冥王星型天体)に分類される可能性がある太陽系外縁天体の一つである。クワーオワー[9][10]とも表記される。エッジワース・カイパーベルトに位置し、太陽から約60億 km(約 43.7 au)のほぼ真円に近い軌道を、約290年の周期で公転している。
| クワオアー 50000 Quaoar | |
|---|---|
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ハッブル宇宙望遠鏡による撮影。 | |
| 仮符号・別名 | 2002 LM60 |
| 分類 | 太陽系外縁天体 |
| 軌道の種類 | エッジワース・ カイパーベルト (キュビワノ族) |
| 発見 | |
| 発見日 | 2002年6月4日 |
| 発見者 | C. A. トルヒージョ M. E. ブラウン |
| 軌道要素と性質 元期:2019年4月27日 (JD 2458600.5)[1] | |
| 軌道長半径 (a) | 43.6907122 au[1] |
| 近日点距離 (q) | 41.9624948 au[1] |
| 遠日点距離 (Q) | 45.419 au[1] |
| 離心率 (e) | 0.0395557[1] |
| 公転周期 (P) | 288.78 年[2] |
| 平均軌道速度 | 4.52 km/s |
| 軌道傾斜角 (i) | 7.98813 度[1] |
| 近日点引数 (ω) | 146.43067 度[1] |
| 昇交点黄経 (Ω) | 188.83699 度[1] |
| 平均近点角 (M) | 300.68579 度[1] |
| 前回近日点通過 | 1787年頃 |
| 次回近日点通過 | 2066年11月25日[1] |
| 衛星の数 | 1 (+1?[3][4]) |
| 物理的性質 | |
| 直径 | 890 ± 70 km[5] 1,110 ± 5 km(掩蔽観測より)[6] 1,074 ± 38 km[7] |
| 質量 | (1.6 ± 0.3)×1021 kg[5] |
| 平均密度 | 4.2 ± 1.3 g/cm3[5] |
| 表面重力 | 0.276 - 0.376 m/s3 |
| 脱出速度 | 0.523 - 0.712 km/s |
| 自転周期 | (8.840 ± 0.008)[2] or 17.6788 時間 |
| 絶対等級 (H) | 2.4[1] |
| アルベド(反射能) | 0.069 - 0.128 or 0.077 - 0.140 |
| 表面温度 | ~43 K |
| 色指数 (B-R) | 1.58 ± 0.01 |
| 色指数 (B-V) | 0.94 ± 0.01 |
| 色指数 (V-R) | 0.64 ± 0.01 |
| 色指数 (V-I) | 1.28 ± 0.02 |
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概要
2002年6月4日、カリフォルニア工科大学の天文学者チャドウィック・トルヒージョとマイケル・ブラウンによって、カリフォルニア州パサデナのパロマー天文台にあるサミュエル・オシン望遠鏡で撮影された画像から発見された。この発見は2002年10月7日のアメリカ天文学会年会で発表された。その後の調査で、最も古い画像としてはパロマー天文台で1954年5月25日に撮影された写真乾板にこの天体が写っていたことが判明した。
クワオアーは発見当時直径約1,200kmと推定され、冥王星以降に発見された最大の天体であり、またそれまでに知られていた小惑星の中で最大のものだった。後にセドナ、エリス、ゴンゴンにその座を明け渡した。ただしその後セドナの直径は下方修正されており、クワオアーより小さい可能性がある。
2019年6月、東京大学木曽観測所の口径105cmシュミット望遠鏡に搭載された超広視野高速カメラ「トモエゴゼン」を用いた掩蔽の高感度動画観測によって、クワオアーに大気がほとんど存在しないことが判明した[9][11][12]。
名称
組成
クワオアーの平均密度は 4.2 ± 1.3 g/cm3で、太陽系外縁天体としては有意に高密度な天体と考えられている。これはクワオアーは岩石と氷の混合物からなる一般的な外縁天体と異なり氷をほとんど含んでいないことを示している[5][14]。アルベドは0.1程度とかなり低いと推定されているが、これは表面から氷が失われている事を意味する。ニュー・ホライズンズ計画によって2015年に探査機が冥王星を訪れ、続けていくつかの外縁天体の探査が行なわれた後には、これらの事実に関してはるかに多くの知識を得られるはずである。
2004年にクワオアーの表面に水の結晶の存在が確認され、研究者を驚かせた。これは最近1000万年以内に表面温度が-160℃ (110K) 以上に上昇したことを示している。どのような原因で-220℃ (55K) というクワオアーの元々の温度が上昇したのかについていくつかの推測が行なわれている。小天体の衝突によって温度が上がったという説を唱える研究者もいるが、最も議論された説ではクワオアーの中心核に含まれる放射性元素の崩壊熱によって氷火山現象が起きているのではないかと推定している[15]。
分類の経緯
クワオアーの発見によって、冥王星を惑星に分類する根拠はやや弱くなった。当時、既に天文学者たちはクワオアー程度の大きさを持つ外縁天体が10個ほどは存在するかもしれないと考えていたため、冥王星に加えてクワオアーやそれらの天体を惑星に含めるように惑星の定義を変更する必要が出てくる可能性が生じたのである。
クワオアーはある意味では冥王星よりも惑星らしいと言える。クワオアーの公転軌道は半径40auをやや超える円に近いもので、冥王星のような離心率の大きな楕円軌道ではない。また、海王星と同様にクワオアーの軌道も冥王星の近日点と遠日点の間にある。よってある時期には冥王星はクワオアーよりも太陽に近く、ある時期にはクワオアーよりも遠くなる。
クワオアーに続きさらに大きな(90377) セドナが発見され、冥王星よりも直径の大きな (136199) エリスが発見されるに及んで惑星定義の見直しを迫られる事となった。結局、2006年8月24日に国際天文学連合総会で惑星の定義が採択された結果、冥王星など3つの天体が準惑星 (dwarf planet) に分類されることになった。更に、今後の観測によって準惑星と認められるかもしれない天体としてクワオワーなど10数個がリストアップされた。
衛星

ハッブル宇宙望遠鏡で2006年2月14日に撮影された画像から、マイケル・ブラウンと T.-A. Suer の分析により衛星が発見されたことが、2007年2月22日付の国際天文学連合回報 (IAUC) 8812号で報告された。この衛星にはS/2006 (50000) 1という仮符号が付けられた後、2009年にウェイウォット ((50000) Quaoar I Weywot) と名付けられた。この名はトングヴァ族の神話でクワオアーによって創られた神の一柱に由来する。
2025年6月25日、天文学者の Richard Nolthenius と Kirk Bender がアメリカ・カリフォルニア州の観測施設でクワオアーを観測していた際、付近にあった恒星 UCAC4 376-136839 で予想されていなかった掩蔽が1.23秒間に渡って観測された。この掩蔽は衛星ウェイウォットやすでに知られていたクワオアーの環とは掩蔽が起きる時間や位置が一致しなかったため、小型の未知の衛星あるいは周囲に比較的高密度の物質が集まった環状アークが存在することが示唆された[3][4][16]。この掩蔽が第2の衛星に起因しているとすると、直径は少なくとも 30 km 、質量はウェイウォットの100分の1しかないと推定され、この場合だと想定される見かけの明るさは28等級となり、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を含む既存の望遠鏡では直接検出できないほど非常に暗い天体になるとみられている[3][4]。掩蔽観測の結果に基づくと、この衛星候補はクワオアーからは 5,838+512
−326 km 離れた軌道を3.6+0.5
−0.3日で公転しているとみられ、これはウェイウォットと環の間に位置することになり、クワオアーの環に重力的な作用を及ぼしている可能性がある[3][4]。
環

2023年2月、クワオアーの周囲に環が存在することが確認されたという研究結果が科学雑誌ネイチャーにて公表された。惑星以外の天体で、環を持つことが明確に確認されたのは(10199) カリクローと(136108) ハウメアに次いで3例目である(彗星・小惑星遷移天体として知られるキロンも環を持つ可能性が指摘されている[17])。この環は2018年から2021年にかけて発生したクワオアーによる掩蔽観測から発見された。環はクワオアーから 4,148.4 ± 7.4 km 離れたところに存在しているとみられているが、これは惑星も含めた他の天体の環とは異なり、母天体のロッシュ限界から2倍以上も離れた距離に存在しているという特徴がある[18]。
