ヒガシグリーンマンバ

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ヒガシグリーンマンバ[2]学名Dendroaspis angusticeps)は、コブラ科に分類されるヘビ。別名はトウブグリーンマンバ。強力な毒蛇であり、東アフリカ南部の海沿いに分布する。体は細長く、背側は黄緑色、腹側は黄色である。雌の方が大型であり、全長2mに達する。

概要 ヒガシグリーンマンバ, 保全状況評価 ...
ヒガシグリーンマンバ
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
Status iucn3.1 LC.svg
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
: 有鱗目 Squamata
亜目 : ヘビ亜目 Serpentes
: コブラ科 Elapidae
: マンバ属 Dendroaspis
: ヒガシグリーンマンバ
D. angusticeps
学名
Dendroaspis angusticeps
(A. Smith, 1849)
英名
Eastern Green Mamba
     分布域
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攻撃的で素早く、人を追いかけると言われることもあるが、実際には性質は大人しく、木に隠れているため見つけるのも難しい。緑色の体色は、生息地である木の中で擬態の役割を果たす。強い毒を持つものの、猛禽類や他のコブラといった天敵が存在する。積極的に狩りを行う他のコブラ科のヘビとは対照的に、クサリヘビ科のような待ち伏せ型捕食者英語版である。鳥類とそのコウモリネズミなどを捕食する。

神経毒心臓毒の両方を含む。腫れめまい吐き気脱水症状呼吸困難嚥下障害などの症状を引き起こす。その後は不整脈痙攣呼吸不全によって、脳への酸素供給が致命的に不足する可能性もある。重度の場合は素早く治療しなければ死に至る可能性もある。

分類

1849年にスコットランド動物学者であるアンドリュー・スミスによって Naja angusticeps として記載され、当時はナタールからマプト湾まで分布するとされていた[3]。種小名 angusticepsラテン語由来で、「angustus (狭い)」[4]と「ceps (頭を意味する caput の短縮形)」を組み合わせたものである[5]。動物学者のアルベルト・ギュンターは、1865年にモザンビーク北部のザンベジ川流域から Dendroaspis intermedius を記載した[6]。この種は現在本種のシノニムとされている[7]

1896年には動物学者のジョージ・アルバート・ブーレンジャーによって、ブラックマンバと同種とされた[8]。この見解は1946年まで支持されていたが、同年に爬虫類学者Vivian Frederick Maynard FitzSimonsによって別種とされた。彼は約50匹のヒガシグリーンマンバと85匹のブラックマンバを調査し、体格、鱗、色彩、行動の違いから、別種であることを結論付けた[9][10]生物学者アーサー・ラブリッジ英語版南アフリカ産の標本を調査し、鱗の数は重複していたが、別種であるというFitzSimonsの結論を支持した[11]。2016年の遺伝子解析によれば、本種はブラックマンバと最も近縁である[12]。この2種の共通祖先は、ジェイムソンマンバニシグリーンマンバの2種を含む系統から分かれたことが明らかになっている。以下にそのクラドグラムを示す[13]

キングコブラ

基亜種ジェイムソンマンバ

亜種オグロジェイムソンマンバ

ニシグリーンマンバ

ヒガシグリーンマンバ

ブラックマンバ

eastern green mambaの他にも、common green mamba、East African green mamba、white-mouthed mamba、green mambaといった英名がある[14]

形態

体はやや側扁し、細長い。尾は中程度から長く、全長は尾長の4-4.3倍である。尾は先端に向かって細くなる。全長は雄で平均約1.8m、雌は平均2.0mの大型種である。全長2.5mを超える個体は珍しい[15][16][17]。全長3.5mという記録もある[18]。成体の背面は明るい緑色で、一部の鱗は黄色である。腹面は淡い黄緑色である。脱皮前は体色が鈍くなる。幼体の体色は青緑色で、全長約75cmに達すると明るい緑色になる[16]。頭部は細長く、棺桶のような形である。頭部は角張り、頸部と区別できる[17][18]。脅威を感じた際や興奮した際には、首を平たくする[19]。眼の大きさは中程度で、瞳孔は丸い[17]。瞳孔の周囲には、金色か黄土色の細い領域がある。虹彩は緑褐色で、後頭部に向かって明るい緑色になる。口内は白または青白い[15]

南アフリカでは、毒蛇であるブームスラングなど、他の緑色のヘビも「green mambas」と呼ばれる。ヤブコノミ属は本種の小型個体と混同されることがある[16]。鱗の数や模様は、種同定の上で重要である[20]。胴体中央部の背鱗列は17-21列で、腹板は201-232枚、尾下板は2列あり、合計で99-126枚である。肛板は2列ある。上唇板は7-9枚で、4枚目は眼の下に位置する。下唇板は9-11枚である。眼前板は3枚、眼後板は3-5枚である[16]。ニシグリーンマンバは鱗の周囲が黒く縁取られているため区別できる[2]

分布と生息地

南部アフリカ東アフリカの沿海地域に分布する。分布域はケニア南部からタンザニアマラウイジンバブエ東部、ザンビアザンジバルモザンビーク北部まで広がる[14][15]。南部アフリカの個体群は遺伝的に異なり、東ケープ州北東部から、クワズール・ナタール州の海岸線に沿ってモザンビーク南部まで分布する[7]

樹上性であり、その体色により葉に擬態しているため見つけにくい。沿岸付近の低地の熱帯雨林のみに生息するという見解もある[21]。沿岸の低木地帯、砂丘、山地林にも生息するという見解もある[22]。開けた環境を好むブラックマンバとは異なり、植物の密生した日陰の多い環境を好む。森林以外にも、柑橘類マンゴーココナッツカシューナッツなどの果樹で見られる。東アフリカでは、家屋の茅葺き屋根で見つかることがある。海抜1,500mの地域で見つかった例もある[17]

生態と行動

脱皮後の様子

昼行性であり、夜間は主に葉の間、稀に木の洞でとぐろを巻いて眠る[14][16]。動きは素早く、樹上性であるため、地上で見られることは少ない。日光浴によって体温調節をする為に地上に降りることはある[17]。2匹の成体を27日間調査した結果、活動範囲は比較的狭く、積極的に狩りを行う他のコブラ科のヘビとは対照的に、待ち伏せ型捕食者英語版である可能性が高かった。しかし、眠っているコウモリを積極的に狩る個体も存在する[23]

定住傾向が強く、同じ場所に何日も留まることもある。主に索餌や繁殖のために移動するが、1日の移動距離は平均して約5.4mである[21][23]。一般に人間を含む天敵を避けるが、脅威を感じると攻撃を行う[14]

摂餌と食性

主に鳥類やそのコウモリなどの小型哺乳類を捕食する。樹上性のトカゲも獲物となる[15][16]。待ち伏せ型捕食者だが、眠っているコウモリを積極的に狩った記録もある[23]。鳥の巣を襲い、雛を食べることもある[24]。成鳥や齧歯類など、活動的な獲物には待ち伏せが効果的となる。ケニアではウスグロアオヒヨを捕食することが知られている。タンザニアで本種の胃内容物を調査した結果、大きなヤブアレチネズミが見つかった。生息域全体では、7種のアレチネズミを捕食する[23]

天敵

天敵は少ないが、人間、マングース科チュウヒワシ属ジェネット属などが知られる。幼体はサイチョウ科や他のヘビに捕食される[23]

繁殖と成長

繁殖期以外は単独で行動する。妊娠した雌はその場に留まる傾向があるが、雄は4-6月の雨季になると、積極的に雌を探して求愛する。雄同士は闘争を行い、交尾の機会や順位を巡って争う。片方の雄がもう片方の体の上に移動し、舌を素早く動かすことで戦いが始まる。雄同士は絡み合って押し合い、相手の頭を地面に押し付けようとする。闘争は数時間に及ぶ場合もあるが、ブラックマンバほど攻撃的ではなく、相手を咬むことも無い[21]

雄は匂いを探って雌を見つける。雄は雌と並び、舌を素早く動かして求愛する。雌は求愛を受け入れると、交尾の為に尾を上げて総排泄腔を近づける。求愛と交尾は樹上で行われる。雌は10-11月にかけて、4-17個、平均10-15個の卵を産む[21]。卵は小さく縦長で、大きさは通常47-58mm×25-28mmである[15][16]。卵は木の洞に溜まった落ち葉の中に産み付けられることが多い[16]。卵は約3ヶ月で孵化する[17]。孵化したての幼蛇の全長は、野生下では約30-45cm[16]、飼育下では44cmである[21]。全長75cmに達すると、成体の体色になる[15][16]。幼蛇は生後1年で全長50-80cmに成長する。成長率は徐々に低下していくものの、生涯にわたって成長し続ける[21]。飼育下では18.8年生きた記録がある[25]ジャパンスネークセンターで飼育されていた個体は、死亡した際推定20歳以上であった[26]

3種のグリーンマンバのうち、毒性は最も弱いものの、非常に強力な毒を持つ[27]。人間を避ける傾向にあるが、グリーンマンバの中では遭遇率が高い。9-2月の繁殖期には活動的になるため、この時期に咬まれることが多い[28]。1957-1979年にかけて、南アフリカでは2,553件の毒蛇による咬傷が記録されたが、本種によるものは17件であった。そのうち10件では全身に症状が生じたが、死者は出なかった[29]。複数回咬み付く傾向があり[28]、1回の毒注入量は乾燥重量で60-95mgである[30]マウス半数致死量は、皮下注射で1.3mg/kg[17]、静脈注射で0.45mg/kgである[31]。人間の場合、平均して約18-20mgで死亡する[32]。2024年にはYoutuberのDingo Dinkelmanが本種に咬まれ、アナフィラキシーショックによって昏睡状態になり死去した[33]。2008年には日本で本種を飼育していた男性が咬まれる事故が発生し、昏睡状態になったが回復した[2]

咬傷部には痛みや腫れなどの症状が現れ、進行すると局所的な壊死や壊疽となる場合もある[34]。全身ではめまいや吐き気、呼吸困難や嚥下困難、不整脈痙攣などの症状が現れる[17]麻痺などの神経毒性は、軽いか現れないこともある[34]

2015年には本種の毒のプロテオームが明らかになり、42種類の異なるタンパク質アデノシンが含まれていた。主な物質はThree finger toxin familyであり、例えばアミン作用性毒素は、ムスカリンおよびアドレナリン受容体に作用する。またファシキュリン[35]、コリンエステラーゼ阻害薬であり、筋線維束性攣縮を引き起こす[28]デンドロトキシンはKunitz型のプロテアーゼ阻害薬と構造的に似るが、電位依存性カリウムチャネルを阻害し、アセチルコリンを放出させることで、興奮性作用を引き起こす[35]カルシクルジンはKunitz型タンパク質であり、高電位活性化型カルシウムチャネルを阻害する[36]。多くの毒成分は、人工的環境下において、単体ではそこまで強力な効果を示さない[35]。しかし自然界では相乗効果があると考えられる[35]

本種を含む3種のマンバは、毒にThree finger toxin familyを含む。しかしブラックマンバの毒は、強力なα-Neurotoxinを含まない。これは食性の違いによると考えられ、本種を含む3種のマンバは樹上性であり、鳥類を捕食することが多いが、ブラックマンバは地上性で、小型哺乳類を捕食することが多い。多くの毒蛇とは異なり、マンバの毒にはホスホリパーゼA2が少ない[13]

毒蛇に咬まれた場合、包帯で圧迫し、出来るだけ患者を動かさずに、速やかに医療機関に運ぶ必要がある。グリーンマンバの毒には神経毒性があるため、止血帯が有効となる場合がある[37]。主に抗毒素の投与によって治療するが、破傷風ワクチンを投与することもある[38]。南アフリカでは多価抗毒素が生産されている[34]

人との関わり

飼育

樹上性が強く、高さのある大きなケージを準備する。太い枝や生きた植物、照明や水入れがあると良い。飼育下ではトカゲやマウスを食べる。日本では特定動物に指定されており、個人での新規飼育は出来ない[18]

脅威と保全

国際自然保護連合レッドリストでは、低危険種に指定されている[1]。生息域ではよく見られるため、個体数は安定していると考えられる。ケニアの沿岸部とタンザニア南部では生息密度が高く、1haあたり2-3匹が生息している。1本の木に5匹が生息していた記録もある。個体数は安定しているものの、生息地破壊森林伐採が脅威となる可能性がある[17]。南アフリカでは宅地開発によって生息地が分断されており、危急種に指定されている[7]

出典

参考文献

関連項目

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