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ブッダゴーサ

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ブッダゴーサ(巴: Buddhaghosa、仏陀瞿沙[1]、仏音(ぶっとん)[1]、覚音、覚鳴)は、上座部仏教で最も権威ある仏典注釈者であり、仏教学者[1]。

職業 仏僧・仏典注釈者・仏教学者[1]
時代 5世紀前半[1]
代表作 『アッタカター』,『清浄道論』[1]
概要 ブッダゴーサ, 職業 ...
ブッダゴーサ
主席僧侶に貝葉本(自著『清浄道論』)を手渡すブッダゴーサ。 キャラニヤ寺院の壁画、画家ソリアス・メンディス(英語版)の作。
職業 仏僧・仏典注釈者・仏教学者[1]
時代 5世紀前半[1]
代表作 『アッタカター』,『清浄道論』[1]
宗派 上座部仏教[1]
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5世紀前半頃にバラモンの家に生まれるが、仏教に帰依し、三蔵研究のためにセイロン島(スリランカ)に渡る[1]。アヌラーダプラ・マハーヴィハーラ寺(スリランカ上座部大寺派)に所属した。

三蔵(パーリ語経典)の全般に亘るパーリ語の注釈(アッタカター)を書いた。また『清浄道論』(Visuddhimagga、ヴィスッディマッガ)という著書も残している[1]。

ブッダゴーサは在家信者の守るべき戒律(五戒)のうち不飲酒戒を重視し、その戒律を破る者は「重く非難される」とした。飲酒は釈迦の教えの理解を妨げ、自身を狂気に導きうると説いた[2]。上座部仏教の本場スリランカでは不飲酒戒の精神に基づき、現代においても公共の場所での飲酒は法律で禁止されている。

パーリ仏典を巡る論争

『パーリ仏典』の大乗経典に対する優位性(どちらが成立年代が先か、どちらが釈迦直説に近いか)については現在論争が続けられている。上座部の国々で普及している『パーリ仏典』は、スリランカの仏典注釈者のブッダゴーサが正典と定めた仏典から成っている。正典を定めたブッダゴーサは今後新たに別の仏典をパーリ正典に追加することを禁止した。上座部の国々ではブッダゴーサが定めた正典(『パーリ仏典』)のみを正典として用いているため、聖書やクルアーンのように(翻訳されれば言語は異なるが)上座部各国で用いられる仏典の内容は同一のものである[3]。

馬場紀寿は、著書『上座部仏教の思想形成―ブッダからブッダゴーサへ』で上座部仏教の教義の一部は釈迦の直説ではなく『パーリ仏典』の正典化に寄与したブッダゴーサの思惑によって改ざんされたものだとする説を唱えた。馬場によればブッダゴーサが非仏説(釈迦が説いたものではない)として大乗経典を恣意的に排除し、また採用した仏典についてもブッダゴーサが信じる教説にそぐわない箇所は改ざんが行われたという。すなわち馬場説は、現在の上座部仏教の教義はブッダゴーサの思想によって成立したものであり、釈迦の直説が改ざんされ、大乗的な要素が排されて成立したとする説である。この馬場説は大乗非仏説に対する一つの反論(上座部も非仏説論、真の仏説不明論)として機能してきた[3]。

しかし清水俊史は著書『上座部仏教における聖典論の研究』で馬場説に異を唱えた。清水説ではブッダゴーサは独自の仏教思想を打ち立てる意図はなく、仏典注釈者としての本分を務めながら正典を定めたにすぎないとし、ブッダゴーサによる独断的な改変はなかったとする。また清水説では大乗経典は後世の創作であることが明らかであるので『パーリ仏典』に採用されず排除されたとする。中村元は最古とされる仏典スッタニパータに四諦などの仏教の基本教義が見えないことを理由に、『パーリ仏典』の教義や戒律などの大部分は釈迦入滅後に段階的に成立したとする説を唱えたが、清水俊史は言語学的にスッタニパータが最古層の仏典であることは認めるが、スッタニパータのような韻文は大衆向けの通俗的なもので仏教の教義を体系的に網羅したものではなく、『パーリ仏典』に見られる教義や戒律は後年に段階的に発展したものではないとした[3][4]。

馬場・清水論争は、清水説が正しければ『パーリ仏典』の方が釈迦直説に近いということになり、大乗非仏説に根拠を与え日本仏教の教義は全て釈迦の直説ではなく後世に創作されたものだということになるが、清水説を封殺しようとするアカハラ・アカハラ黙殺事件も相まって世間の注目を集めた(○○○○#アカハラ疑惑)。

なお大乗仏説論者(大乗は釈迦の直説であると主張する論者)が馬場説を援用することが多いためしばしば誤認されるが、馬場も「部派経典の方が大乗経典よりも成立が遡ること」自体は学術的に正しいと認めている。馬場説では、仏教の本場インドの部派教団は大乗勢力(大乗思想)と共存していたが、ブッダゴーサの属するスリランカ上座部の大寺派(スリランカの仏教参照)はそれとは異なり、大乗を徹底的に排斥した点が異質である、と見る。

結集仏典として当初認められていなかった「本生」の物語には、ブッダが成仏する前、過去世で「菩薩」だったころの物語が描かれている。その中には、菩薩が利他的行為に身を投じる説話が少なくない。(中略)紀元前後に現れた大乗は、「本生」などが描くこうした菩薩の物語を背景として、菩薩として生き、自らブッダと成ることを目指すよう説き始める。結集仏典の枠外で次々と制作された大乗仏典は、ゴータマ・ブッダに代表される「高貴な者」という理想像に加えて、新たに阿弥陀仏、薬師仏、毘盧遮那仏などの諸仏や、文殊菩薩、普賢菩薩、勢至菩薩、地蔵菩薩などの諸菩薩といった理想像を生み出していった。(中略)中国では『梵網経』『首楞厳経』『円覚経』といった経典が新たに制作され、チベット文化圏では地中に埋蔵されていたという経典が新たに発見されていく。自ら菩薩としてブッダと成ることを目指すこの仏教は、大乗経典という新たな音楽を奏で続けていったのである。

大乗仏典がスリランカにもたらされるようになった頃、この地を拠点とする上座部大寺派は、大乗とは全く異なる画期的な方法によって、「高貴な者」に新たな息吹を吹き込んだ。それは「歴史」を作るということによってである。後四世紀頃、上座部大寺派は『島史』という史書を編纂した。『島史』が創造した歴史によれば、スリランカの大寺(マハーヴィハーラ)こそが、ゴータマ・ブッダが降臨した聖地であるという。また、大寺には、結集された仏説が完全な形で伝承されているとする。(中略)こうして史書により作られた歴史観に立って、五世紀前半、上座部大寺派は、パーリ三蔵の正典化を完了し、大乗仏典を「非仏説」として排除する教理的根拠を作り上げた。ブッダはパーリ語を話したのであり、三蔵という正典は、パーリ語でこそ伝承されるべきだという主張をした。さらに、スリランカから東南アジア大陸部へ仏教が広まると、上座部大寺派が伝承した三蔵は、翻訳されることなく、これらの地域へ伝えられ、今日も生きた「ブッダの言葉」として朗誦されている[5]。
—馬場紀寿『初期仏教 ブッダの思想をたどる』

著書と訳書・日本語訳

ブッダゴーサは、パーリ経典の大部分を翻訳しシンハラ語で解説する大プロジェクトを使命としていた。著書清浄道論(Visuddhimagga)は、今日も読まれ研究されている、上座部仏教の包括的教科書である[1][6][7][8] マハーワンサにおいては、非常に多くの本をブッダゴーサに帰しているが、そのうちのいくつかは彼の仕事ではないと考えられ、後で作って彼に帰したとされている[9]

以下の表は、ブッダゴーサによるとされているパーリ経典アッタカターのリストである[10]。

さらに見る 三蔵, ブッダゴーサの注釈書 ...
三蔵 ブッダゴーサの注釈書
律蔵
(Vinaya Pitaka)
ヴィナヤ (Vinaya) Samantapasadika
波羅提木叉 (Patimokkha)Kankhavitarani
経蔵
(Sutta Pitaka)
長部 (Digha Nikaya) Sumangalavilasini
中部 (Majjhima Nikaya) Papañcasudani
相応部 (Samyutta Nikaya) Saratthappakasini
増支部 (Anguttara Nikaya) Manorathapurani
小部
(Khuddaka Nikaya)
小誦経 (Khuddakapatha)Paramatthajotika (I)
法句経 (Dhammapada)Dhammapada-atthakatha
スッタニパータ (Sutta Nipata) Paramatthajotika (II),
Suttanipata-atthakatha
ジャータカ (Jataka) Jatakatthavannana,
Jataka-atthakatha
論蔵
(Abhidhamma Pitaka)
法集論 (Dhammasangani)Atthasālinī
分別論 (Vibhanga)Sammohavinodani
界論 (Dhatukatha) Pañcappakaranatthakatha
人施設論 (Puggalapaññatti)
論事 (Kathavatthu)
双論 (Yamaka)
発趣論 (Patthana)
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日本語訳は以下
  • 『仏のことば註 パラマッタ・ジョーティカー』全4巻、村上真完・及川真介訳註、春秋社、2009年
  • 『仏の真理のことば註 ダンマパダ・アッタカター』全4巻、及川真介訳註、春秋社、2015-2018年 
  • 『真理のことばの物語集 ダンマパダ・アッタヴァンナナー』全4巻、松村淳子訳、国書刊行会、2021年

脚注・出典

参考文献

関連項目

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