ポタモトリゴン科
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| ポタモトリゴン科 | ||||||||||||||||||
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| 分類 | ||||||||||||||||||
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| 学名 | ||||||||||||||||||
| Potamotrygonidae Garman, 1877 | ||||||||||||||||||
| 英名 | ||||||||||||||||||
| River stingrays Freshwater stingrays |
ポタモトリゴン科(学名:Potamotrygonidae)は、トビエイ目の下位分類群の一つ[1]。アマゾンタンスイエイ科ともよばれる。主に南アメリカの熱帯から亜熱帯域に分布し、河川に生息する種が多い。Styracura 属は西部大西洋と東部太平洋に分布する海産属である。体色は茶色、灰色、黒色で、斑点が入る種が多い。体盤幅は31-200cmで、尾に毒針を持つ。様々な小動物を捕食する肉食魚で、繁殖形式は卵胎生である。5属40種が含まれる[2]。

南アメリカ大陸の北部、中部、東部の熱帯から亜熱帯地域に分布する。カリブ海や大西洋側の河川に生息し、南はアルゼンチンのラプラタ川まで見られる。一部の種は広く分布するが、一つの河川流域の固有種など、分布が限定されている種が多い[3][4]。アマゾン川流域では最も種多様性が高く、ネグロ川、タパジョス川、トカンチンス川流域には、それぞれ8-10種が分布している[5]。いくつかの種の分布域は、滝によって区切られている[3]。
湖沼から急流、黒い川、白い川、緑の川、砂地から岩場まで、幅広い環境に生息する[3][4]。一部の種では、幼魚は成魚よりも浅い場所で見られる傾向がある。ほとんどの種は純淡水性だが、一部の種は河口の汽水域に生息する[3]。
本科で唯一の海産属である Styracura 属の2種はアミメオトメエイ属に分類されていたが、2016年に本科に移された。S. schmardae はカリブ海を含む西部大西洋熱帯域に、S. pacifica はガラパゴス諸島を含む東部太平洋熱帯域に分布する[6][7]。
エイの科の中では珍しく、大半の種が淡水魚である[8][9]。アカエイ科にもプラークラベーンなどの淡水エイが属するが、同科のほとんどの種は海水魚である[10]。
形態
体盤は円形に近く、大きさは体盤幅31cmの Potamotrygon wallacei から[11]、体盤幅2mに達する海産の S. schmardae まで様々である[12]。淡水の最大種はマユゲエイとアハイア・グランディで、体盤幅は1.5-1.6mに成長する[10][13]。アハイア・グランディは最大体重220kgに達し[10]、同じ南アメリカの淡水魚では、ピラルクーとピライーバに匹敵する[14]。性的二形があり、雌の方が大型になる[3]。
背面は楯鱗で覆われる。体色は茶色または灰色の種が多く、特徴的な斑点や模様が入ることもある。一部の種は黒色で、淡色の斑点が入る[5][15]。種によっては幼魚と成魚で体色が大きく異なる[5]。尾の形状は多様で、パラトリゴン属とプレシオトリゴン属は細い鞭状の尾を持つが、ポタモトリゴン属は比較的太い尾を持つ[2]。
生態
昆虫、蠕虫、軟体動物、甲殻類、ナマズ目などの魚類といった、様々な動物を捕食する肉食魚である。胃の中から植物が見つかることもあるが、誤飲した可能性が高い[3]。食性は種によって異なり、ジェネラリストとスペシャリストの両者が存在する。例えばマンチャデオーロやポルカドット・スティングレイは主に巻貝や淡水ガニを捕食するが、飼育下では様々な餌に慣れる[3][10][16]。マユゲエイなどの大型種は、生息域において頂点捕食者となっている[3]。顎関節を動かし、哺乳類と同様に顎で餌を咀嚼する[17]。昼行性の種も夜行性の種もいる[3]。
雄は他の板鰓類と同様、交尾の際に用いられるクラスパーを持つ。卵胎生であり、雌は仔エイを出産する[3]。胎仔は母親の子宮内で、組織栄養を得て成長する[3][18][19]。妊娠期間は3-12ヶ月で、産仔数は1-21尾である[3][20]。繁殖期は一般的に水位と関係がある[18]。
人との関わり
刺傷被害
他のエイと同様に、尾に毒棘を持つ。ただし Heliotrygon 属では退化している[10][21]。毒棘は1-2本で、定期的に生え変わる[22]。刺されると命にかかわる場合もあるため、新熱帯区の淡水魚では最も恐れられている種の1つである[2][23][24]。コロンビアでは年間2,000件以上の刺傷が報告されている[25]。一般的に性質は攻撃的ではなく[25]、毒棘は防衛に用いられる[26]。水浴び中に踏んで足を指される事例、漁師が手や腕を指される事例が多い。毒の症状以外にも、傷口から細菌感染することも多く、細菌感染によって長期的な影響が出る場合もある。刺されると非常に痛み、病院の受診が遅れると命にかかわる可能性もある。毒の成分については不明な点が多いが、一部の種では海生のエイと毒性分が異なることが明らかになっている[26]。毒性成分は種によって大きく異なると考えられている[27]。毒性成分は同種であっても、性別や年齢によって異なることが明らかになった。食性にも影響されるため、環境によって毒性やその成分が変化する[28]。
エイは踏まれる、捕らえられるなどして脅威を感じた場合、防御行動として体を回したり、尾を動かしたり、針を刺したりする。踏んだ場合は足を、捕まえた場合は手を刺されることが多い。初期症状には激痛、紅斑、浮腫などがある。その後壊死が起こり、ゆっくりと患部が深い潰瘍を形成する。全身では吐き気、嘔吐、流涎、発汗、呼吸抑制、筋線維束性攣縮、発作などの症状が起こる。毒棘を引き抜こうとすると、折れて一部が残る可能性もある。刺傷から緑膿菌やブドウ球菌などの細菌感染が起こることが多い。針が内臓に達した場合、命にかかわることもある[29]。
食用
釣りで漁獲されるが、トロール網で混獲されることも多い。アマゾン川流域ではマユゲエイとポタモトリゴン属が多く漁獲されており、マユゲエイの需要が高い[30]。ラプラタ川流域ではアハイア・グランディの価値が高く、地元では「raya fina(上質なエイ)」と呼ばれている[31]。体重2kg未満の個体は逃がされることが多いが、生存率は低い。2005-2010年では、ブラジルのアマゾナス州とパラ州での捕獲量は年間約580-1100トンであった[30]。肉にも毒があると誤解している漁師もおり、食用にされない場合は伝統医学に利用される[32]。

飼育
観賞魚として飼育されることも多いが、非常に大きな水槽が必要であり、小魚を混泳させると捕食してしまう[20][27]。性質は大人しいものの、飼育者が毒棘に刺されることもある[33]。ポタモトリゴン・モトロなどは飼育下でも比較的丈夫だが[34]、マユゲエイ、プレシオトリゴン・ナナ、タイガースティングレイなどは飼育が難しい[27]。
いくつかの種は東アジアと東南アジアの養殖場で繁殖されており、毎年何千匹もの飼育下繁殖個体が生まれている。1990年代後半にはブラジルが野生個体の輸出を制限したため、飼育下繁殖が盛んになった[20]。一部の養殖場では新たな模様を生み出すため、または雄不足の結果、雑種が生み出されている。しかしこれは一般的には推奨されていない[20][27]。アメリカ合衆国のいくつかの州では、淡水エイの飼育が制限されている[27]。
脅威と保全
ほとんどの種の状況は不明だが、全体的には食用および観賞用の捕獲、ダム建設と鉱山による生息地の破壊により、個体数は減少していると考えられる[30]。毒棘を持つため、地元住民に殺されることもある[20]。ヨーロッパと北アメリカの動物園や水族館では、いくつかの種で血統登録が行われている[27][35]。
ダム建設の影響
ダムはエイにとって有益にも不利益にもなりうる。イタイプダムの建設の結果、グアイラ滝が消失したことで、Potamotrygon amandaeとラージスポットリバースティングレイは、パラナ川上流域へと分布域を拡大した[36][37]。トゥクルイダムの建設によって獲物となる動物が増え、一部地域ではマンチャデオーロの個体数が増加した。ただし全体的に見ると、ダムはマンチャデオーロの個体数減少の一要因になっている[38]。Potamotrygon magdalenae では、ダム建設によって個体群が分離され、遺伝子流動が妨げられている[39]。またアハイア・グランディなど、止水域を好まない種はダム湖に生息することが出来ない[14]。
捕獲の影響
食用として大量に漁獲されており、アマゾン川流域だけでも年間数百トンが漁獲される[30]。また毒棘の危険性から多くの個体が駆除されており、エコツーリズムの観光客の安全性のため、数千尾が駆除されていると推定される。しかし駆除は漁獲とは異なるため、当局による規制は行われていない[9]。
ブラジルでは一時期輸出が規制されていたが、2010年から2015年にかけて一部規制が解除され、ポルカドット・スティングレイ、P. wallacei を含む6種が合法的に輸出された。輸出量は年間で約4,600-5,700尾であった[30]。輸出による収入は、小規模な漁村にとって重要なものとなっている[9][40]。コロンビアとペルーからも、野生個体が輸出されている[41]。違法な輸出も一定数存在している[30]。コロンビアのマユゲエイと、ブラジルとコロンビアのポタモトリゴン属数種は、ワシントン条約の付属書IIIに記載されており、国際取引が制限されている。マンチャデオーロやポルカドット・スティングレイなど、ポタモトリゴン属の数種は付属書IIに記載されている[42]。
下位分類
分類は複雑であり、複数の未記載種も存在する。Styracura 属の2種は、2016年にアカエイ科から本科に移された[7]。2025年時点で、5属40種が含まれる[2]。Heliotrygon 属とパラトリゴン属、プレシオトリゴン属とポタモトリゴン属はそれぞれ姉妹属である[43]。
- Styracurinae 亜科
- Styracura Carvalho, Loboda & da Silva, 2016
- Styracura pacifica (Beebe & Tee-Van, 1941) (Pacific chupare) パシフィック・チュペア
- Styracura schmardae (Werner, 1904) (Chupare stingray) チュペアスティングレイ
- Styracura Carvalho, Loboda & da Silva, 2016
- Potamotrygoninae 亜科
- Heliotrygon Carvalho & Lovejoy, 2011[43]
- Heliotrygon gomesi Carvalho & Lovejoy, 2011 (Gomes's round ray) チーナ
- Heliotrygon rosai Carvalho & Lovejoy, 2011 (Rosa's round ray)
- パラトリゴン属 Paratrygon A. H. A. Duméril, 1865
- Paratrygon aiereba Walbaum, 1792 (Discus ray) マユゲエイ
- Paratrygon orinocensis Loboda, Lasso, Rosa & De Carvalho, 2021
- Paratrygon parvaspina Loboda, Lasso, Rosa & De Carvalho, 2021
- プレシオトリゴン属 Plesiotrygon Rosa, Castello & Thorson, 1987
- Plesiotrygon iwamae Rosa, Castello & Thorson, 1987 (Long-tailed river stingray) プレシオトリゴン・イワマエ
- Plesiotrygon nana Carvalho & Ragno, 2011 (Black-tailed antenna ray) プレシオトリゴン・ナナ
- ポタモトリゴン属 Potamotrygon Garman, 1877
- Potamotrygon adamastor J. P. Fontenelle & M.R. de Carvalho, 2017[44]
- Potamotrygon albimaculata M. R. de Carvalho, 2016 (Itaituba river stingray, Tapajós river stingray)[5]
- Potamotrygon amandae Loboda & M. R. de Carvalho, 2013[37]
- Potamotrygon amazona J. P. Fontenelle & M.R. de Carvalho, 2017[44]
- Potamotrygon boesemani Rosa, M. R. de Carvalho & Almeida Wanderley, 2008 (Boeseman's river stingray, emperor ray)[45]
- Potamotrygon brachyura (Günther, 1880) (Short-tailed river stingray) アハイア・グランディ
- Potamotrygon constellata (Vaillant, 1880) (Thorny river stingray)
- Potamotrygon falkneri Castex & Maciel, 1963 (Largespot river stingray) ラージスポットリバースティングレイ
- Potamotrygon garmani J. P. Fontenelle & M.R. de Carvalho, 2017[44]
- Potamotrygon henlei (Castelnau, 1855) (Bigtooth river stingray) マンチャデオーロ
- Potamotrygon humerosa Garman, 1913
- Potamotrygon histrix (J. P. Müller & Henle, 1834) (Porcupine river stingray) アマゾンタンスイエイ
- Potamotrygon jabuti M. R. de Carvalho, 2016 (Pearl river stingray)[5]
- Potamotrygon leopoldi Castex & Castello, 1970 (White-blotched river stingray) ポルカドットスティングレイ
- Potamotrygon limai Fontenelle, J. P. C. B. da Silva & M. R. de Carvalho, 2014[46]
- Potamotrygon magdalenae (A. H. A. Duméril, 1865) (Magdalena river stingray)
- Potamotrygon marinae Deynat, 2006
- Potamotrygon marquesi Silva & Loboda, 2019[47]
- Potamotrygon motoro (J. P. Müller & Henle, 1841) (Ocellate river stingray)ポタモトリゴン・モトロ
- Potamotrygon ocellata (Engelhardt, 1912) (Red-blotched river stingray)
- Potamotrygon orbignyi (Castelnau, 1855) (Smoothback river stingray)コロンビアエイ
- Potamotrygon pantanensis Loboda & M. R. de Carvalho, 2013[37]
- Potamotrygon rex M. R. de Carvalho, 2016 (Great river stingray)[15]
- Potamotrygon schroederi Fernández-Yépez, 1958 (Rosette river stingray)
- Potamotrygon schuhmacheri Castex, 1964 (Parana River stingray)
- Potamotrygon scobina Garman, 1913 (Raspy river stingray)
- Potamotrygon signata Garman, 1913 (Parnaiba River stingray)
- Potamotrygon tatianae J. P. C. B. da Silva & M. R. de Carvalho, 2011
- Potamotrygon tigrina M. R. de Carvalho, Sabaj Pérez & Lovejoy, 2011 (Tiger ray)[48] タイガースティングレイ
- Potamotrygon wallacei M. R. de Carvalho, R. S. Rosa & M. L. G. Araújo, 2016 (Cururu ray)[11]
- Potamotrygon yepezi Castex & Castello, 1970 (Maracaibo River stingray)
- Heliotrygon Carvalho & Lovejoy, 2011[43]