三塩化アンチモン
化合物
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三塩化アンチモン(さんえんかアンチモン、英語: Antimony trichloride)は、化学式 SbCl3 で表される無機化合物である。刺激臭を持つ柔らかい無色の固体で、 錬金術師に「アンチモンのバター (butter of antimony)」と呼ばれていた。
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| 物質名 | |||
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Antimony trichloride | |||
Trichlorostibane | |||
別名 Antimony(III) chloride, Butter of antimony, Antimonous chloride, Stibous chloride, Trichlorostibine | |||
| 識別情報 | |||
3D model (JSmol) |
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| ChEBI | |||
| ChemSpider | |||
| ECHA InfoCard | 100.030.031 | ||
| EC番号 |
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| KEGG | |||
| MeSH | Antimony+trichloride | ||
PubChem CID |
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| RTECS number |
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| UNII | |||
| 国連/北米番号 | 1733 | ||
CompTox Dashboard (EPA) |
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| 性質 | |||
| Cl3Sb | |||
| モル質量 | 228.11 g·mol−1 | ||
| 外観 | 無色の固体、高吸湿性 | ||
| 匂い | 刺激臭 | ||
| 密度 | 3.14 g/cm3 (25 °C) 2.51 g/cm3 (150 °C)[1] | ||
| 融点 | 73.4 °C (164.1 °F; 346.5 K)[2] | ||
| 沸点 | 223.5 °C (434.3 °F; 496.6 K) | ||
| 601.1 g/100 ml (0 °C)[1] 985.1 g/100 mL (25 °C) 1.357 kg/100 mL (40 °C)[3] | |||
| 溶解度 | アセトン、エタノール、ジクロロメタン、フェニル化合物、エーテル、ジオキサン、二硫化炭素、四塩化炭素、クロロホルム、シクロヘキサン、オキシ塩化セレン(IV)に可溶 ピリジン、キノリン、有機塩基に不溶 | ||
| 酢酸への溶解度 | 143.9 g/100 g (0 °C) 205.8 g/100 g (10 °C) 440.5 g/100 g (25 °C)[4] 693.7 g/100 g (45 °C)[3] | ||
| アセトンへの溶解度 | 537.6 g/100 g (18 °C)[3][4] | ||
| 塩化ベンゾイルへの溶解度 | 139.2 g/100 g (15 °C) 169.5 g/100 g (25 °C)[4] 2.76 kg/100 g (70 °C)[3] | ||
| 塩酸への溶解度 | 20 °C: 8.954 g/ g (4.63% w/w) 8.576 g/ g (14.4% w/w) 7.898 g/ g (36.7% w/w)[3] | ||
| シメンへの溶解度 | 69.5 g/100 g (-3.5 °C) 85.5 g/100 g (10 °C) 150 g/100 g (30 °C) 2.17 kg/100 g (70 °C)[3] | ||
| 蒸気圧 | 13.33 Pa (18.1 °C)[4] 0.15 kPa (50 °C) 2.6 kPa (100 °C)[5] | ||
| 磁化率 | −86.7·10−6 cm3/mol | ||
| 屈折率 (nD) | 1.46[1] | ||
| 構造 | |||
| 直方晶系 | |||
| 3.93 D (20 °C)[4] | |||
| 熱化学 | |||
| 標準定圧モル比熱, Cp⦵ | 183.3 J/mol·K[4] | ||
| 標準モルエントロピー S⦵ | 110.5 J/mol·K[4] | ||
標準生成熱 (ΔfH⦵298) |
−381.2 kJ/mol[4] | ||
ギブズの 自由エネルギー (ΔfG⦵) |
−322.5 kJ/mol[4] | ||
| 危険性 | |||
| GHS表示: | |||
| Danger | |||
| H314, H411[2] | |||
| P273, P280, P305+P351+P338, P310[2] | |||
| NFPA 704(ファイア・ダイアモンド) | |||
| 引火点 | 不燃性 | ||
| 致死量または濃度 (LD, LC) | |||
半数致死量 LD50 |
525 mg/kg (経口, ラット) | ||
| NIOSH(米国の健康曝露限度): | |||
PEL |
TWA 0.5 mg/m3 (as Sb)[6] | ||
REL |
TWA 0.5 mg/m3 (as Sb)[6] | ||
| 安全データシート (SDS) | ICSC 1224 | ||
| 関連する物質 | |||
| その他の 陰イオン |
三フッ化アンチモン 三臭化アンチモン 三ヨウ化アンチモン | ||
| その他の 陽イオン |
三塩化窒素 三塩化リン 三塩化ヒ素 塩化ビスマス(III) | ||
| 関連物質 | 五塩化アンチモン | ||
合成
反応
水に触れると容易に加水分解し、塩化水素を発生しながらオキシ塩化アンチモンとなるため、SbCl3試料は湿気を避けなければならない。
さらに多量の水により、Sb4O5Cl2を形成し、アルゴンの存在下で熱するとSb8O11Cl12へ変化する[7]。
SbCl3はハロゲンと容易に錯体を形成するが、化学量論は組成を決定しない[7]。例えば、(C5H5NH)SbCl4はSbIIIのひずんだ八面体形構造を含む陰イオン鎖を持つ。同様に、(C4H9NH3)2SbCl5の塩はSbIIIのひずんだ八面体形構造を含む[SbCl2−
5]nの組成の陰イオンのポリマーを持つ[8]。
塩化物イオン と反応して付加体 を作り、この錯体のブチルアンモニウム塩は固体状態で、ジグザグ状に −Cl−Sb−Cl−Sb−構造が連なった構造をとる[9]。
窒素供与配位子Lを用いると、Ψ-三方両錐形LSbCl3、Ψ-八面体形 L2SbCl3などの立体化学的に活性な孤立電子対を持つ錯体を形成する[10]。
SbCl3は弱いルイス酸にすぎないものの[7]、カルボニル錯体であるFe(CO)3(SbCl3)2やNi(CO)3SbCl3などのいくつかの錯体が知られている[10]。
構造
SbCl3の気体は、結合角97.2°結合長223 nmのCl-Sb-Cl結合からなるピラミッド構造を持つ[11]。それぞれのSbが三つのClを234 pmの位置に持ち、分子単位としてのSbCl3構造が示される。しかし、さらに五つの隣接するCl原子が、二つは346 pm、一つは361 pm、残り二つが374 pmの位置に存在し、これらの計八つの原子は、二頭三角柱状分子構造を形成する。その距離は、250 pmの位置に三つ、324 pmの位置に二つ、平均336 pmの位置に三つの隣接原子を持つBiCl3と比較することができる。注目すべき点は、すべての八つの隣接するBi原子の距離が、隣接するSb原子の距離よりも近いことであり、これはBiがより高い配位数を持つ傾向を示している[11][7]。
利用
SbCl3は、ビタミンAや類似のカロテノイドの検出試薬として用いられ、その方法はカール・プライス反応 (Carr-Price reaction) あるいはカール・プライス試験と呼ばれる。塩化アンチモン(III) はカロテノイドと反応させると青色の錯体を形成するので、これを比色分析によって測定する。
また、アブサンのウーゾ効果を高めるための混ぜものとしても使われる。過去には、仔牛の角芽を切断せずに除去するためにも用いられた。
さらに、重合反応、水素化分解、塩素化反応における触媒として用いられる[12]ほか、媒染剤や、他のアンチモン塩の製造にも用いられる。溶液はクロラール、芳香族化合物、ビタミンAの試薬として使われる[13]。有機合成反応におけるルイス酸触媒として、非常に有用である。
三塩化アンチモンの液体硫化水素溶液は、優れた導体であるが、硫化水素が液体で存在するためには極めて低い温度と高い圧力を要するため、その応用は限られている[14]。
文化
イギリスの人気番組『All Creatures Great and Small』(原作は『All Things Wise and Wonderful』第6章)の第3期第2話において、ケイト・ビリングスの農場で数頭の仔牛が非特異的な胃腸炎で死んだ。後に、死因は角芽の除去のために塗布された溶液に含まれる三塩化アンチモンの摂取によるものと判明した。



