不老不死
永久に死なないこと
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概要
中国では伝統的な生命観の一つとされており[4]、始皇帝は実際に不老不死の薬を求め、かえって死期を早めた[5]。その他にも不老不死を求める話は後述の通り世界各地にある[6]。西洋では「elixir of life」(エリクサー)という錬金術の霊薬がある[7][8]。
現世で叶わずとも来世で永遠の命を望む希求も強く、キリスト教では終末にすべての死者が肉体を伴って復活し、神を信じる者は永遠の命を得られると説かれ、イスラム教では信仰を貫いた者は死後に天国で永遠の喜びを得ることができると説かれ、大乗仏教では阿弥陀如来の教化する極楽浄土に往生した者は永遠の命と至福が得られると説かれるなど、来世では永遠の命を授かることができると説く宗教が広く人々の信仰を集めている。
今後科学の進歩によって仮に不老不死が実現できた場合、人口動態の観点からは、先進国では少子化が進んでいるものの、地球全体の出生率で考えれば人口爆発が起きることが予想されている[9]。
神話・伝承
神話などは経時により老化し継代できない肉体由来ではなく、経時で老いたりはせず継代できる(民族)精神に由来する文字や壁画などの文化(ミーム)であるため、神話における死や不老不死は象徴的なものであることが多く、特に明暗や境界がはっきりと分かれる太陽や月、昼夜などに結び付けられた神は象徴的に死と復活を繰り返し不老ではあるが不死ではないとする[注釈 1]ものが多い。またそれに関連して、その死が現世から立ち去る、あるいは隠れるだけであると、死の断言を回避することで間接的に不死であるとするものもある。またヒト個体においても冥界や煉獄、あるいは輪廻転生といった「肉体は朽ちても個人の精神は不朽である」とする文化がある。
メソポタミア
ギリシア神話及び北欧神話
インド
中国
中国では古くは始皇帝(紀元前3世紀ころの人物)が不老不死を求め、実際に徐福に蓬萊の国へ行き仙人を連れてくるように(あるいは仙薬を持ってくるようにと)命じたことが『史記』に記録されている[10]。『平家物語』は秦皇と不死の薬を言い及ぼすことがある[11]。無論それらを探し出せなかった徐福は始皇帝の怒りを恐れて、そのまま日本に「亡命」したと伝説は語っている[8]。
この世で強大な権力を手に入れた始皇帝は死を恐れ、不老不死を手に入れようと部下達に無理難題を押し付けた。始皇帝によって不老不死の薬を作ろうとする試み練丹術が始まったが、無謀な命令を受けた彼らが作りだしたのは「辰砂(しんしゃ)」、すなわち水銀などを原料とした丸薬であり、それを飲んだ始皇帝は猛毒によって死亡したという話が残っている[5]。
『史記』の他の項では、不老不死の薬が得られなかった代わりに「延年益寿」の薬の名が登場する[12]。
他にも漢の武帝の時代に、「3000年に一度だけ実る西王母の仙桃を食べた」という東方朔の伝説が残っている[6]。また、李白も白居易も「不老不死の薬」を作ろうと努力したと伝えられる。大形徹の『不老不死』という書籍では、中国で仙人の伝説が生まれた状況や、その仙人の謎に包まれた生活様式や修行の内容、また不老不死の仙薬《金丹》がどのように描写されていたかが解説されている[13]。
日本
『古事記』にはイクメイリビコが登場する。食べれば不死になるとされるトキジクノカクという木の実を探すために、タジマモリを常世国に遣わす。タジマモリは苦難の末にそれを手にいれ、木の実を縄に通したものと串に刺したもの八つを作り帰還したが、その時既に天皇は死んでいた。半分を太后に渡し、残りをイクメイリビコの陵墓に捧げるとそのままの姿で息を引き取った、という話が記されている。ここには中国の神仙思想の影響が窺えるという[6]。
宗教
生物学・医学
生物学的な文脈では不老不死と記載されていても、一般的な意味での「不死身(どのような状態でも死なない)」の概念は含まれていないことに注意を払う必要がある。
まず、ヒトにおける「不死」の定義は、精神と肉体の死が分かれているため、サイエンス・フィクションが盛んな現代においては定まっていないという点に注意する必要がある。すなわち、死の三徴候(呼吸停止、心臓停止、脳停止)の永続回避であるか、不老が継続することによる老衰死の回避であるか、宇宙空間などの極限環境でも生命活動が停止しない状態であるか、脳などの重要器官が外的損傷や切断された後からの回復が可能な状態のことであるか、肉体が消滅してもその瞬間と完全に同じ状態を再現した肉体に精神を移植させることであるか、など不死の定義は様々に分かれているのである。
生物学的な見地では、個体の精神的個性を発生させる器官(ヒトにおいては脳)が不可逆的に停止したときが死である。単細胞生物も多細胞生物も一定期間で細胞分裂を行い、子孫となる細胞を作るという方式で種としての生命を繋ぐ。単細胞生物は老衰による自然死は発生しないが、真核生物に属する場合はDNAに損傷を受けるとミトコンドリアによるアポトーシスが誘発されるため細胞機能停止による自然死を迎えうる。多細胞生物の細胞は細胞分裂を重ねるにつれてヘイフリック限界に達して老化を開始し、あるいは前述のように外的要因によるアポトーシスが行われ、この老化現象や細胞死が代謝が遅く代替の効かない脳や心臓などの内臓器官に及ぶと不可逆的に停止して(寿命を迎えて)絶対死に至る。このため細胞老化を司りヘイフリック限界を延長するテロメアやテロメラーゼを活用して細胞死を回避し間接的な不老不死を発生させる研究が行われているが、いまだ動物における成功例はなくその大部分が細胞の癌化によって失敗に終わっている。
なお、ほとんどの細胞は新陳代謝によって常に生まれ変わり、いくつかの内臓器官は数年で完全に新細胞に入れ替わっている。言い換えれば、理論上は、細胞そのものが永久に不老である必要はなく、常に代謝が正常に行われれば不老であると考えられる。
不老、不死の例
いったん個体が老化したのちに若返りができる動物(ベニクラゲなど)も存在するが、きわめて例外的でありまた「常に若いまま」という不老不死の定義にも反する。また一部のがん化細胞が不死株として培養され続けている例があるが、がん細胞は無限の増殖能を持ち正常細胞を侵害する上に、体の機能低下によって栄養供給が断たれれば宿主とともに死ぬため、がん化が直接に不死をもたらすものではない。
現代の医学においても老化の防止は重要な課題である(抗老化医学)が、いわゆる若返りはおろかプログラム細胞死の回避すら困難なものであり、現代医学において長年にわたって老化を押しとどめるものではない。不老症は確認されていないものの、赤ん坊の姿のまま成長が止まっている16歳の女子ブルック・グリーンバーグの一事例が報告されている[14][15]。ただし彼女は2013年に亡くなり、”単に成長が止まっている”のか”能動的に老いを回避している”のかは不明のままである[16] 。
生物としては多くのカメ[17][18][19]やハダカデバネズミ[20][21]やアホウドリ[22][23] などは、ほとんど老化せず年をとっても死亡率が上がらない。
人体冷凍保存
- 近年、人体冷凍保存(クライオニクス)という技術が注目を集めている。海外では、有名メジャーリーガーのテッド・ウィリアムズが自身の死後、遺体を保存している。未来で遺体の細胞を損なうことなく解凍し治療できる技術ができ次第、解凍する予定であるとされている。
デジタル化
- 記憶などをデータに変換するデジタル・イモータリティという考え方がある。Blue Brainプロジェクトでは人間の脳の動きを再現する試みが行われている。
意識の機械へのアップロード(マインドアップロード)
身体を冷凍保存するアプローチとは別に、人間の脳の機能をデジタル化してコンピューター等の媒体へ移す「マインドアップロード」による生命延長の研究も進められている[24]。 日本国内においては、2018年12月に設立された東京大学発のスタートアップ企業「MinD in a Device」が、「20年後までに人間の意識を機械にアップロードする」というヴィジョンを掲げて事業を展開している[24]。 同社の共同創業者である東京大学大学院准教授の渡辺正峰は、脳神経科学の観点から「意識は情報ではなくアルゴリズムである」と定義し、機械に意識が宿る仕組みの解明に取り組む[24]。
渡辺正峰が提唱する「人工意識の機械・脳半球接続テスト」では、人間の脳を半分に切り、残りの半分に人工意識を実装した機械を接続することで、意識が統合されるかを自らの主観を用いて検証する手法が計画されている[24]。 このマインドアップロードの実現には、数千億規模の人工ニューロンをリアルタイムで動作させるコンピューター性能と、高精度なブレイン・マシン・インターフェイス(BMI)の開発が必須要件とされる[24]。 将来的には、意識を機械へアップロードすることでデジタルなシミュレーション世界の中で生き永らえる「不死」の実現や、人工知能に代替されない社会の構築が視野に入れられている[24]。
