党首討論

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2025年4月、国家基本政策委員会における党首討論(内閣総理大臣石破茂(中央右)と立憲民主党代表野田佳彦(中央左))

党首討論(とうしゅとうろん)とは、政党党首同士が討論をすること。議会における公的な制度として行われる場合と、選挙期間においてマスメディアを通じて行われる場合とがある。

日本の国会で行われる党首討論については、予算委員会と同様にテレビ・ラジオ中継及びネット配信が行われる[注釈 1]

歴史

内閣総理大臣岸田文雄(中央右)と立憲民主党代表泉健太(中央左)の党首討論(2024年6月19日国家基本政策委員会合同審査会にて)

日本国会では衆参両院の国家基本政策委員会の合同審査会として首相与党党首)と野党各党首による討論が行われる。連立政権の場合は首相以外の与党党首は参加しないことになっている。国会開会中、週1回(首相が衆議院又は参議院の本会議、予算委員会若しくは重要広範議案審査の委員会に出席する週を除く)、水曜日午後3時から開催すると取り決められている[1]。議事進行を司る会長は、衆議院の国家基本政策委員長と参議院の国家基本政策委員長が交互に務め、原則として会長の属する議院の第1委員室において合同審査会が開会される[1]

予算審議などと違い、首相も野党党首に逆質問することも認められており、野党はただ政権批判をすればいいわけではなく、代案などを提示する必要が出てきている。

導入の経緯

内閣総理大臣福田康夫(中央右)と民主党代表小沢一郎(中央左)の党首討論(2008年1月9日、国家基本政策委員会合同審査会にて)

イギリス議会におけるクエスチョンタイムをモデルにして、1999年7月に国家基本政策委員会を設置することを規定した国会審議活性化法が成立した。政権与党の一角であった自由党の党首であった小沢一郎が設置を強く主張したとされる[2][3][4]

同年11月10日の第146回国会にて自由民主党内閣総理大臣小渕恵三と野党党首(民主党代表鳩山由紀夫日本共産党中央委員会幹部会委員長不破哲三社会民主党党首土井たか子)が参加して初めて党首討論が行われた[5]。当初は二院クラブは参加の申し出をしていたにもかかわらず参加できないなど党首討論に参加する野党の基準が不明瞭であった。

ちなみに党首討論での最初の質疑は、民主党代表鳩山由紀夫の「きょう総理は朝何を召し上がったでしょうか。私は、けさはピザを食べてまいりました。特に、温かい、非常に熱いピザをおいしくいただいてまいりました。総理にまず、これは官僚の皆様方に助けは要らない話でございますから、何を召し上がったか、お尋ねをしたい」という質問に対して、内閣総理大臣小渕恵三は「いつものとおり日本食食事をいたしてまいりました。温かいピザを食べられたということでありますが、アメリカオルブライト国務長官から以前、冷たいピザもまたおいしいと言われたことがあります」と返答したやりとりであった[6]。これは小渕に対しニューヨーク・タイムズが「冷めたピザ」と評したこと、イギリスのクエスチョンタイムが、首相の予定を尋ねることから始まることを参考にしている[7]

これ以降から、現在に至るまで党首討論が続いている。なお、当初は衆参両院の予算委員会の合同審査会として行われており、国家基本政策委員会での初めての党首討論は2000年2月23日に行われた。その際に2月16日の衆参両院合同幹事会の申し合わせにより党首討論は「首相と、衆院または参院において10人以上の議員で構成されている院内交渉団体の資格を有する野党会派の)党首との直接対面方式での討議を行う」となり、前述の二院クラブが党首討論に参加できないことに明白な基準ができた。

課題

党首討論の時間が短い(全体で45分)という批判や、先述のように発言できる野党の資格を院内交渉団体であることに加えて党首が国会議員として国家基本政策委員会に所属している場合に限っており、全政党・会派の参加を認めていないこと、首相の逆質問があまりないことから予算審議との違いが不明確であることなど、制度を生かしきれていないのではないかという声もある。また、本会議や予算委員会などに首相が出席した週は党首討論を開かないことを与野党間で合意しており、党首討論が行われないことも多い。

選挙の結果等により前述の院内交渉団体の要件及び、党首の国家基本政策委員会所属の要件を満たせなかったために、かつて党首討論を行っていた政党の参加が不可となった例も存在する[8]

民主党が野党時代には、自党の時間を他党に割り振ろうとする動きもあったが、公明党の強い反対により実現しなかった。公明党は開始時から2009年9月まで首相を出していない与党であったため、2010年2月に初めて参加した。みんなの党は2010年7月以降に参議院で院内交渉団体の資格を得たものの当初は党首が国会議員として国家基本政策委員会に所属していないため参加できなかったが、2012年4月の党首討論では自民党と所属委員会を融通することで党首が国会議員として国家基本政策委員会に所属することで全会派で合意し、参加を果たした。日本共産党は2004年以降喪失していた院内交渉団体の資格を2013年7月以降に回復したが、党首が国会議員として国家基本政策委員会に所属していなかったため、再度、国家基本政策委員会に党首が所属し直すまでの期間は参加できなかった。国家基本政策委員会に党首が再度所属して以降初めて行われた2015年5月の党首討論によって11年ぶりに日本共産党は党首討論に復帰した。

ただし、イギリス議会におけるクエスチョンタイムは、その名の通り“質問タイム”であり、首相に対し質問し、首相が答弁する質疑でしかない。その中で野党党首に優先質問権があるため、党首同士の論戦が行われるが、首相は逆質問はできず、野党党首が代案を示す義務もなく、党首以外の議員も質問が可能である。これらの点で日本の国会の党首討論は、イギリスと英連邦諸国など、諸外国のものとは大きく異なっている。

開催回数の減少

開始初年の2000年には、党首討論が8回開催されていたが、近年は開催回数が減少している[9][10]。2021年10月に就任した内閣総理大臣の岸田文雄の初の党首会談が行われたのは2024年6月であり、党首会談自体も菅義偉内閣時代の2021年6月から3年振りとなった[10]。理由として全体で45分間という枠があるため、政党数の多い現在の国会では「持ち時間が少なくて議論にならない」ことから、野党側も積極的に開催を求めていない[11]、より質疑時間の長い予算委員会の開催を優先している[10]という実情となっている。

旧立憲民主党は2018年の国会改革提言の中で、「そもそも英国の二大政党制を前提とした党首討論は、現在の日本の国会状況に適していない。党首討論よりも予算委員会等の総理入り質疑の方が、突っ込んだ議論ができる。45分の質疑時間を複数の野党で分けあう現状では、党首討論では実のある論戦は期待しがたい」と述べている[12]。人件費などで3億円以上の税金が使われるとして、日本維新の会国民民主党等は2023年12月11日、党首討論の舞台となる衆参両院の「国家基本政策委員会」を廃止する法案を衆院に提出している[11]。内閣総理大臣の岸田文雄は今後の開催に関しては「行政府の長として開催をどうするか申し上げることは控えなければならない」と答弁している[13]

2024年10月9日に行われた石破茂政権下で初の党首討論では、直後に衆議院解散が控えていたため、全体の制限時間が通常の45分から1時間20分(80分)に延長された[14]

2025年6月11日の党首討論は、野党の提案を踏まえ、初めて午後6時から開催[15]

過去の党首討論

2010年4月21日、鳩山由紀夫首相と、自民党の谷垣禎一総裁・公明党の山口那津男代表の党首討論時の動画
首相討論
回数
最初の討論日最後の討論日
氏名党派
小渕恵三自由民主党6回1999年11月10日2000年3月29日
森喜朗自由民主党6回2000年4月19日2001年4月4日
小泉純一郎自由民主党29回2001年6月6日2006年5月17日
安倍晋三自由民主党13回2006年10月18日2019年6月19日
福田康夫自由民主党2回2008年1月9日2008年4月9日
麻生太郎自由民主党3回2008年11月28日2009年6月17日
鳩山由紀夫民主党3回2010年2月17日2010年4月21日
菅直人民主党3回2011年2月9日2011年6月1日
野田佳彦民主党4回2011年11月30日2012年11月14日
菅義偉自由民主党1回2021年6月9日2021年6月9日
岸田文雄自由民主党1回2024年6月19日2024年6月19日
石破茂自由民主党3回2024年10月9日2025年6月11日
高市早苗自由民主党1回2025年11月26日2025年11月26日
野党党首討論
回数
最初の討論日最後の討論日
氏名党派
鳩山由紀夫民主党24回1999年11月10日2009年6月17日
不破哲三日本共産党10回1999年11月10日2000年11月1日
土井たか子社会民主党28回1999年11月10日2003年10月9日
小沢一郎自由党19回2000年4月19日2012年11月14日
民主党
国民の生活が第一
志位和夫日本共産党26回2001年2月14日2021年6月9日
菅直人民主党8回2003年2月12日2004年4月14日
岡田克也民主党11回2004年10月27日2018年6月27日
民進党
無所属の会
前原誠司民主党5回2005年10月19日2025年6月11日
日本維新の会
谷垣禎一自由民主党9回2010年2月17日2012年4月11日
山口那津男公明党10回2010年2月17日2012年11月14日
渡辺喜美みんなの党3回2012年4月11日2013年12月4日
安倍晋三自由民主党1回2012年11月14日2012年11月14日
海江田万里民主党3回2013年4月17日2014年6月11日
石原慎太郎日本維新の会3回2013年4月17日2014年6月11日
浅尾慶一郎みんなの党1回2014年6月11日2014年6月11日
松野頼久維新の党2回2015年5月20日2015年6月17日
片山虎之助おおさか維新の会4回2016年5月18日2021年6月9日
日本維新の会
蓮舫民進党1回2016年12月7日2016年12月7日
大塚耕平旧・国民民主党1回2018年6月27日2018年6月27日
玉木雄一郎旧・国民民主党7回2018年5月30日2025年11月26日
国民民主党
枝野幸男旧・立憲民主党4回2018年5月30日2021年6月9日
立憲民主党
泉健太立憲民主党1回2024年6月19日2024年6月19日
馬場伸幸日本維新の会2回2024年6月19日2024年10月9日
田村智子日本共産党2回2024年6月19日2024年10月9日
野田佳彦立憲民主党4回2024年10月9日2025年11月26日
斉藤鉄夫公明党1回2025年11月26日2025年11月26日
神谷宗幣参政党1回2025年11月26日2025年11月26日

このうち、鳩山由紀夫、菅直人、安倍晋三、野田佳彦は、首相側と野党党首側の双方に参加している。

2026年3時点で、参加した人物が物故者となっているのは、首相だった小渕恵三、野党の党首だった土井たか子と石原慎太郎、片山虎之助、首相と野党党首だった安倍晋三の5人である。

メディア

テレビやインターネット番組、舞台での講演などで各主要政党の党首が討論を行うことも「党首討論」と呼ばれる。これは国会で行われる公的な制度とは性質が異なる。

例として、国政選挙期間中にNHKならびに各民放テレビ局の主要報道番組において、各政党の党首(なお、これに招かれる政党は国会に議席を有するものに限られることが殆どである)を招いて討論会を行うことを指して「党首討論」と表することがある。

脚注

関連項目

外部リンク

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