口に関するアンケート
背筋の小説作品 (2024)
From Wikipedia, the free encyclopedia
概要
あらすじ
日常的に行動を共にする大学生4人が、心霊スポットとして知られる山奥の墓地で肝試しを行う。しかし、そのうちの1人が翌日失踪した。その後、この事件に関わる大学生2人が新たに現れ、失踪者を除く計5人の錯綜する奇妙な証言によって物語は展開される。
登場人物
- 杏(あん)
- 肝試しに参加した大学生グループの一人。
- 肝試しをした翌日から行方不明となり、後に遺体で発見された。
- 肝試しに向かう途中、美玲に「竜也と別れる気はないが、翔太に寄りを戻したいと持ちかけられている」と相談するなど恋愛にマイペースな面がある。少しトラブルメーカー。
- 村井 翔太(むらい しょうた)
- 本作の主人公。
- 肝試しに参加した大学生グループの一人。
- 杏の元彼氏であり、肝試し前には別れている。
- 竜也に恨みを持っており、呪いの木に「後から来た人間(予定では竜也であったが、恐怖からショートカットをしたため杏がとばっちりを受けることになる)を、セミのように殺してください」と願った張本人である。
- 大学グループ内で「ヤバい場所知ってるから、肝試しに行こう」と切り出した提案者である。
- 原 美玲(はら みれい)
- 肝試しに参加した大学生グループの一人。
- 幼少期に何気なく心霊ドキュメンタリーを観たことをきっかけに、自身に霊感があることを自覚する。また、心霊スポットに限らず、負の感情が充満する環境に弱い傾向がある。
- 恋愛にマイペースな杏を軽く突き放したり、肝試しにはあまり乗り気でないなど、本作の登場人物のなかでは一番常識人のポジション。
- 伊藤 竜也(いとう たつや)
- 肝試しに参加した大学生グループの一人。
- 杏の彼氏である。
- 川瀬 健(かわせ けん)
- オカルト研究部の部員。
- 大学グループ4人の事件を面白がっている。
- 堀田 颯斗(ほった はやと)
- オカルト研究部の部員。
制作背景
本作はポプラ社のウェブ媒体から依頼を受けて執筆された作品であり、その後、急遽書籍化されることになった[10]。著者の背筋によれば分量は約1万6000字ほどの短編である[10]。
創作経緯について、背筋は『近畿地方のある場所について』の後に多くの仕事を受け、執筆が続く中で「無我夢中で書いているなかで生まれた」作品であると述べ、プロットは担当編集者に送った段階でほぼ完成形に近く、やりとりを重ねながら作り上げたというより「急に降って湧いた」ように成立したと語っている[5]。
リアルサウンドのインタビューで、ポプラ社の編集担当者は、WEB媒体向けに依頼した短編が社内で反響を得たことが書籍化につながったと述べており、営業担当者も、紙の書籍として刊行することで「意外性のある怖さ」が読者により伝わるのではないかと判断したと説明している[3][9]。また短編であることから、手軽に手に取れ、読後に貸し借りもしやすいコンパクトさが企画に合うとして小型サイズが採用されたと説明している[3]。
ポプラ社の編集部では、原稿が完成した段階で社内の複数の編集者や営業担当者が即座に読み、読後には作品の解釈をめぐって考察が行われるなど、社内で大きな反響があった[11]。この反響を受け、当時ポプラ社内で議論されていた「出版不況の中で従来の本の形に囚われない新しい形の出版物」という企画と結びつき、短編をミニ本として刊行する案が生まれた[11]。
本作の企画立案にあたっては、ポプラ社が過去に手がけたヨシタケシンスケ『あるかしら書店』や又吉直樹×ヨシタケシンスケ『その本は』といった、従来の小説や絵本の型にとらわれない作品の成功経験が影響を与えた[12]。
仕掛け・装丁
判型はA6変型判で縦115ミリ×横85ミリの小型サイズである[3][9]。文庫より小さい判型で、カバーや帯を持たないシンプルなブックデザインであると述べられている[10]。本文は「3色まで使用可能」で、色を用いた仕掛けが施されている[10]。また、紙ならではの装幀の工夫や本文内の仕掛けがあるとされる[3][9]。表紙のデザインは口をモチーフにしており、見る者に強烈な印象を与えると評されている[9]。
著者の背筋は、作中の「アンケート」について、物語の「種明かしを担う」機能を持たせつつ、説明によって怖さが薄れないよう「恐怖と種明かしを両立」させるための方法として用いたと述べている[5]。また、アンケート形式の特性(問に順に答える形式)を利用し、最後の問いに至ったときに恐怖を味わわせる狙いが語られている[5]。さらに、書名・小型サイズ・装丁の不気味さなどを含めて話題にしやすい要素があるとして、口コミで広まることを期待する意図も述べている[5]。
装丁デザインについては、当初「the 怖いホラー」「エンタメホラー」の方向性で黒や赤を基調としたデザインが検討されていたが、著者の背筋が「ホラーというより、奇妙とか違和感、気持ち悪さのようなキーワードを大事にしたい」と述べたことで方向性が転換された[11]。最終的に採用された口の写真を用いたデザインは、書店での目立ちやすさと「手に取れるギリギリの不快感」のバランスが追求された[11]。また、表紙裏には、注意深く見なければ気づかないレベルでセミの大群が印刷されており、細部まで仕掛けが施されている[11]。
販売戦略としては、あらすじや内容紹介を一切出さず、「前情報なしに体験として楽しんでもらう」ことが重視された[12]。また、文庫売り場ではなく単行本売り場での展開が選択され、小型サイズを最大限に活かす方針が取られた[12]。広告宣伝においては、作中のアンケートという設定に沿って「10万部突破」ではなく「10万人にご協力いただきました」という表現が用いられた[12]。
売上・評価
本作は初版3万部で刊行された[12]。これは小説の初版としては大きな規模であり、背筋の前作『近畿地方のある場所について』のヒットと、KADOKAWAから第2弾が刊行されるタイミングを踏まえた戦略的判断によるものであった[12]。
発売から1か月未満で累計発行部数10万部を突破[3]、発売約1か月後には15万部に到達した[9][13]。2025年6月13日には累計22万部を突破[1]、同年11月25日時点で累計32万部(電子書籍含む)を突破した[4]。
宝島社『このホラーがすごい!2025年版』のホラー小説ベスト20(国内編)で第4位にランクインした[1]。また日本出版販売が発表した「2025年 上半期ベストセラー」(単行本フィクション)で第7位[14]、トーハンが発表した「2025年 上半期ベストセラー」(単行本 文芸書)で第8位を記録した[1]。日本出版販売は、モキュメンタリーの手法を用いた本作を、雨穴の「変な家」シリーズで話題となったモキュメンタリーホラーの流れを汲む没入感の高いフィクション作品として紹介した[14]。
SNS上では読者が自発的にネタバレを避けるマナーが形成され、「お疲れさまでした」「ではさようなら」といった抽象的な感想が共有されるなど、作品の性質を尊重する読書文化が生まれた[12]。
書誌情報
- 背筋『口に関するアンケート』
- 単行本:2024年9月4日発売[2]、ポプラ社、ISBN 978-4-591-18225-3[15]
映画
2026年7月3日に公開された[18][19]。監督は清水崇、主演は本作が実写映画単独初主演となる板垣李光人[6][7]。『近畿地方のある場所について』に続く背筋作品の映画化作品となる[6]。
当初はワーナー・ブラザース映画(ワーナー ブラザース ジャパン)が配給を担当する予定だったが[7]、後に松竹に変更された[19]。
シッチェス・カタロニア国際映画祭のシッチェス・コレクション部門およびプチョン国際ファンタスティック映画祭のシグネチャー部門への出品・上映が決定した[16]。
ストーリー
「お願い。この映画の最後に、アンケートがございます。ご協力下さい。」と観客に協力を求める文言に続き、翔太が仲間と肝試しに向かった経緯とその選択への後悔を証言し始める[22]。
ある夜、翔太は友人3人と共に心霊スポットとして有名な墓地へ肝試しに行く。翌日、そのうちの1人である杏が行方不明となり、他の3人の周囲で怪異が起こり始める。また、同じ場所に行った別の2人の大学生も不可解な現象に巻き込まれて行くこととなる。
刑事の草壁は大学生たちに起こった事件について調査を始める。そして、大学生たちの恐るべき結末が明らかとなる。
キャスト
- 翔太
- 演:板垣李光人[6][23]
- 本作の主人公。大学生グループの一人で、肝試しの提案者。
- 竜也
- 演:綱啓永[7][24][25]
- 肝試しに来た大学生の1人で杏の彼氏。
- 杏
- 演:吉川愛[7][24][26]
- 肝試しの翌日に行方不明となる大学生。
- 美玲
- 演:MOMONA(ME:I)[7][24][27]
- 霊感のような感覚を持つ大学生。
- 堀田
- 演:森愁斗(BUDDiiS)[7][24][28]
- 興味本位で墓地を訪れる大学生。
- 川瀬
- 演:西山智樹(TAGRIGHT)[7][24][29]
- 堀田に連れられて墓地を訪れる大学生。
- 西
- 演:柄本時生[18][19][30]
- 失踪事件を取材する週刊誌記者。
- 草壁
- 演:中村獅童[18][19][31]
- 失踪事件を捜査する刑事。
スタッフ
- 原作:背筋『口に関するアンケート』(ポプラ社)
- 監督:清水崇
- 脚本:山浦雅大[7]
- 音楽:大間々昂[7]
- エンディングテーマ:「呪歌」(作曲・編曲:大間々昂)[32]
- インスパイアソング:オレンジスパイニクラブ「口」(WARNER MUSIC JAPAN)[18]
- 製作:若松央樹、濱田英紀、Jesse Lee、加藤裕樹、細野義朗、髙橋紀行、沖英治[17]
- プロデューサー:田口生己、佐藤孝樹、白石裕菜、石田基紀[18][17]
- 共同プロデューサー:鈴木藍[17]
- 撮影:大内泰[17]
- 照明:神野宏賢[17]
- 録音:原川慎平[17]
- 美術:橋本泰至[17]
- 装飾:貴志樹[17]
- 編集:鈴木理[17]
- VFXスーパーバイザー:井上浩正[17]
- VFXプロデューサー:山田彩友美(白組)[32]
- DIカラリスト:佐竹宗一(東映デジタルラボ)[32]
- スタイリスト:福士紗也佳[17]
- ヘアメイク:風間啓子[17]
- 特殊デザイン:百武朋[17]
- 特殊造形/特殊メイク:並河学[32]
- スタントコーディネート:川澄朋章[32]
- ミュージックエディター:千田耕平[17]
- 音響効果:大塚智子[17]
- 助監督:毛利安孝[17]
- 制作担当:山野寛道[17]
- 配給:松竹[18][19][17]
- 制作プロダクション:ホリプロ[7]
- 製作:映画「口に関するアンケート」製作委員会(フジテレビジョン、BSフジ、ワーナー・ブラザース映画、ポプラ社、S・D・P、KDDI、トーハン)[32]
制作エピソード
監督の清水崇は、大学生たちの証言や記録を積み重ねて真相が明らかになる原作の構成について、証言の断片から恐怖を喚起する点は読み物として成立している面が大きいと捉えていた。そのため、映像として具体化することで、読者の想像に委ねられていた余白が薄れるのではないかという懸念を当初抱いていたという[33]。一方で、映像表現としてどう成立させるかに挑戦しがいを感じ、企画を持ちかけた田口生己プロデューサーも同様に手探りの状態であったことから、共に模索しながら制作できる体制だと考え、監督のオファーを引き受けた[34]。清水は原作を読んだ際、芥川龍之介の『藪の中』や黒澤明の『羅生門』を連想したといい、原作者の背筋も、本作の着想の根底に『藪の中』のような多視点の構造があったと述べている[34]。
脚本開発にあたり、背筋は映像ならではの表現が生まれることを期待し、大幅な変更も許容する姿勢で臨んだ[34]。清水は、原作では詳しく描かれない登場人物の心情や容貌が映像では明確になるため、キャスティングや脚本の進行の節目ごとに背筋の意見を聞きながら制作を進めたという[34]。脚本はホラーを手がけるのが初めてとなる山浦雅大が担当し、清水は、独白による証言が単なる説明に陥らないよう配慮しつつ、自身が思い描いた映像表現を口頭で伝えて文章に起こしてもらうなど、協働で作り上げたと語っている[34]。さらに清水は、背筋が原作の刊行前に検討していた未発表の別案「B案」があり、その発想を映画に取り入れたことを明かしている[34]。背筋は、小説では余白を残して読者に想像させる怖さがある一方、映像では観客に同じ像を共有させることができる点を映画の強みとして捉えていた[34]。
映画化にあたっては、物語を構造的に牽引する存在として、原作には登場しない刑事の草壁や週刊誌記者の西といったオリジナルの人物が加えられた[33]。清水は、学生たちの不用意な行動を発端として平穏な関係や生活が変質していく物語に、語り部となる大人も関わらせる意図があったと説明し、原作の魅力を損なわないよう登場のタイミングには議論を重ねたという[33]。若者たちの人物像については、特殊な人物としてではなく、観客が自身の周囲にもいそうだと感じられるような造形が意識された[33]。
証言を語る大学生たちの表現をめぐっては、企画・プロデューサーの田口が、ジョーダン・ピール監督の『ゲット・アウト』における表情と内面がずれる演出を参考例として清水に提案した[35]。田口は、原作を読んだ際に、淡々と話している人物が次第に追い込まれていく違和感を映画ならではの見せ方として活かせるのではないかと考えたという[35]。この方向性は、本読みの段階で制作陣とキャストに共有された[35]。
主演の板垣の起用について、清水は以前から共演を望んでおり、翔太役として田口プロデューサーから提案された際に即答したと述べている[36]。清水は、登場人物の妬みなど人間の暗い感情も含めて恐怖を描こうと考えており、爽やかな印象を持ちながら屈折した役柄も演じてきた板垣が翔太役に適していると判断した[36]。板垣は、本編の大きな比重を占める証言場面では、翔太の感情とは別に特異なものに左右されている状態を表現する難しさがあったと語っている[37]。
原作者の背筋は撮影現場も見学しており、冒頭のドライブ中にトラブルが起こる場面の撮影に立ち会った[36]。スタジオに組まれた車内のセットで、俳優たちが同じ調子の演技を何度も繰り返し、監督の指示に応じて表現を調整していく様子を見て、映画制作に関わる人数や労力の大きさ、感情がプロの手で作り込まれていく過程に驚いたと語っている[36]。
音楽
サウンドトラック
映画公開日である2026年7月3日に先行配信され、同月29日にCDで『映画「口に関するアンケート」オリジナル・サウンドトラック』がポニーキャニオンから発売予定である[38][39]。
- 収録曲
収録曲と各曲の演奏時間は以下の通り[40]。
| 全作曲・編曲: 大間々昂。 | ||
| # | タイトル | 時間 |
|---|---|---|
| 1. | 「啓示」 | |
| 2. | 「呪木Ⅰ」 | |
| 3. | 「嘘」 | |
| 4. | 「証言」 | |
| 5. | 「疑問」 | |
| 6. | 「杏 -招登-」 | |
| 7. | 「号穴」 | |
| 8. | 「呼索」 | |
| 9. | 「蟬」 | |
| 10. | 「呪木Ⅱ」 | |
| 11. | 「喫茶店」 | |
| 12. | 「呪首」 | |
| 13. | 「囁」 | |
| 14. | 「杏 -呟-」 | |
| 15. | 「呻声」 | |
| 16. | 「嗤声」 | |
| 17. | 「狂言」 | |
| 18. | 「因縁」 | |
| 19. | 「呪詛」 | |
| 20. | 「口災」 | |
| 21. | 「呼応」 | |
| 22. | 「アンケート」 | |
| 23. | 「呪歌」 | |
合計時間: | ||
関連番組
映画「口に関するアンケート」に関するアンケートに関する番組は、映画の公開を記念した特別番組として、2026年6月27日から7月4日にかけてフジテレビほかで放送された番組である[41][42]。映画にも出演するフジテレビアナウンサーの上垣皓太朗が街頭に出て、映画にまつわる「アンケート」を集める街頭インタビュー番組である[41]。
出演(番組)
- 映画本編映像
- 板垣李光人
- 綱啓永
- 吉川愛
- MOMONA(ME:I)
- 森愁斗(BUDDiiS)
- 西山智樹(TAGRIGHT)
- 柄本時生
- 中村獅童
スタッフ(番組)
放送日程
以下の放送日程は、フジテレビ・仙台放送・さくらんぼテレビ・福島テレビ・テレビ新広島・テレビ熊本・鹿児島テレビ。その他の地域での放送日程は異なる[41]。