森になる建築
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| 森になる建築 | |
|---|---|
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| 情報 | |
| 用途 | 休憩所 |
| 設計者 | 竹中工務店 |
| 施工 | 竹中工務店 |
| 構造形式 | 酢酸セルロース造 2棟 |
| 延床面積 | 31.29 m² [1] |
| 状態 | 完成 |
| 階数 | 1 |
| 高さ | 2.95m |
| 着工 | 2024年8月[1] |
| 竣工 |
2024年10月25日(躯体出力完了)[2] 2025年3月27日[2] |
| 開館開所 | 2025年4月13日 |
| 所在地 |
〒554-0044 大阪府大阪市此花区夢洲中1丁目 大阪・関西万博「大地の広場」内 |
| 座標 | 北緯34度39分0.5秒 東経135度22分53秒 / 北緯34.650139度 東経135.38139度座標: 北緯34度39分0.5秒 東経135度22分53秒 / 北緯34.650139度 東経135.38139度 |
森になる建築(もりになるけんちく)は、竹中工務店により大阪・関西万博会場に設置された仮設の休憩所である。植物由来のバイオプラスチックの一種で、生分解性を持つ酢酸セルロース樹脂を3Dプリンターで成形して造られた。「酢酸セルロース造」による建築物は日本初であり[3]、2024年10月に「最大の生分解性の3Dプリント建築」としてギネス世界記録に認定された[4][5]。
2025年(令和7年)8月、一般社団法人日本商環境デザイン協会(JCD) 及び一般社団法人日本空間デザイン協会(DSA)が主催する「日本空間デザイン賞2025」のエキシビション・イベント空間部門において、銅賞を受賞[6]。
2018年11月23日、フランスのパリで開かれた第164回BIE総会で開催国を決める投票が行われ、2025年に大阪での万国博覧会開催が決定した[7]。大阪市に本社を置く竹中工務店(以下、竹中と略記)では2020年から2021年にかけて、社内コンペ「日本国際博覧会(大阪・関西万博)パビリオンに関するアイデア」が行われた[8]。応募チームの一つは、梅田に計画されていたオフィスビルの設計チームであったが、コロナ禍で中断を余儀なくされていた。様々な検討を重ねる中で、北京オリンピックで造られた建築物が廃墟と化し、大量の建設廃棄物となった様子に問題意識を持つようになる。そこで、建築の「終わり」に着目し、自然界の材料で造られ、役割を終えたら自然に還る動物の巣や、木や紙や石など自然素材を用いた伝統的日本家屋にヒントを求めた。現代の建築は多様な素材を組み合わせて造られており、強度を高められる利点がある半面、再利用が難しい課題があった。そこで、単一素材を元に、最新の3Dプリント建築の技術を採り入れ、外装は紙にすることで、陶磁器の金継ぎや衣服の襤褸のように人が手入れすることで使い続けられる建築を提案。「Seeds Paper Pavilion」と呼ばれていた本案は最優秀賞に選定された[9]。コンペは必ずしも建築の実施を前提としたものではなかったが[10]、社内コンペの枠を越えて社外の企業や専門家とも連携し、実現に向けて動き出す。
材質

コンペでは、ペースト状にした紙を3Dプリンターで成形することが考えられていたが、耐候性がなく雨に耐えられないことが明らかになった[10]。3Dプリンターによる成型が可能なバイオプラスチックで、かつ透光性のある素材として、ポリ乳酸(PLA)と酢酸セルロース樹脂の2種が検討された。このうち、紙と同様に植物由来であり、生分解性に優れる酢酸セルロースが採用された。ポリ乳酸は3Dプリンティングの実績が豊富で、強度も優れるが、生分解には高温多湿の条件となる工業用コンポスターが必要で、海沿いの万博会場において万一流出した場合には海洋プラスチック汚染の原因となるおそれもあった[11]。竹中と同じく大阪に本社のある化学メーカーダイセルは酢酸セルロースの技術を有しており、同社の「CAFBLO[注釈 1]」が使われた[14]。「CAFBLO」は木材や綿花など非可食原料から造られており、従来よりメガネフレームや筆記具、ドライバ―の柄、ルアー、使い捨てカトラリーなどに用いられている[12]。
施工

万博会場内での工事に先立ち、2023年5月から千葉県印西市にある竹中の技術研究所で実物大の試作が行われた[15]。家具やボールペンなど比較的小規模な用途で使われてきた酢酸セルロース樹脂を建築用の大型部材に応用することは容易ではなく、出力後の収縮による割れが生じ、出力に成功したのは万博開幕に間に合わせるにはギリギリとなる2024年4月26日であった[16]。
会場内の位置は大屋根リング内側西部の「大地の広場」内で、この立地は会場デザインプロデューサーの藤本壮介により決定された[10]。会場外で作った部材を運び込んで組み立てるのではなく、現地に据え付けた3Dプリンターで出力する方法が採られる。現場では3DプリンティングコンサルタントのBoolean Inc.[17]や、プリンタのヘッドを扱うエス.ラボが参画した[18]。通常は、3Dプリンターは屋内の安定した環境で使用されるが、屋外での施工となるため、現場を覆う作業用の仮設テントが設けられた。建築法規の面でも前例に乏しいことであり、「3Dプリントは建設工事に該当するか」の問いに、行政機関の担当者も明確な回答を持ち合わせていなかった[19]。
2024年7月に、建築基準法第85条第7項に基づく建築確認申請の確認済証を取得[20]。約20日間にわたり24時間体制で出力が行われ[10]、2024年10月25日に躯体の出力が完了[2]。同日付で、「最大の生分解性の3Dプリント建築(一体造形)」としてギネス世界記録に認定された。2025年2月に検査済証が交付され、日本初の「酢酸セルロース造」の建築物が実現した[21]。その後、和紙の貼付や緑化工事が続けられ、2025年3月27日に全面完成した[2]。
「森になる建築」は竹中を代表企業とし、協賛企業・団体にダイセル・エス.ラボ・ニフコ・阪神園芸・大和板紙・兵庫県立人と自然の博物館、協力企業に34社が参加して実現した[22]。
構造


タマネギや動物の巣を思わせる[24]、上部がすぼまった直径4.65m、高さ2.95mの[1]丸みを帯びた建物が二つ並んで建てられた。頂部は3Dプリンターのアームを取り出すための穴が塞がず残され[10]、空や木々を眺めることができ、雨の日にはそこから雨が降り注ぐ[19]。外装には、市民のワークショップや伝統工芸職人、福祉施設関係者により漉かれた和紙が貼られている。「シーズペーパー」と呼ばれるこの紙には[25]、竹中の研修所のある兵庫県川西市の「清和台の森」で採取した植物の種子が漉き込まれている[20]。外装上部と壁の内側には和紙が貼られず、コンクリートでいうところの打放しで、床は三和土とした。外壁にはブロック塀における縦方向の異形鉄筋に相当する部材は用いず、一筆書きの三角形のトラスの繰り返しによるモノコック構造とすることで強度を持たせている[10]。
エアコンのような空調機器は設けず、クールチューブで地中熱を取り込み[26]、夏場は製氷店で生じた氷の端材を併用する。2棟あるうち左側は入り口を大きめに取り、内側の壁に沿って座面がやや高く、奥行きが短めのベンチが並ぶ。右側の棟は茶室の躙り口をイメージして入り口を低くし、ベンチは座面を低く奥行きを深めにしている[23]。
