楽園 (宗教)
From Wikipedia, the free encyclopedia
楽園のイメージは様々な文化で共通しており、しばしば牧歌的であり、終末論的であったり宇宙論的であったりする。
終末論的な観点においては、楽園はしばしば有徳の人の住居と考えられる。キリスト教やイスラム教の理解では、例えばルカによる福音書でイエスがともに十字架に架けられた罪人に悔い改めた彼はイエスとともにパラダイスに入ると述べているように、天国は楽園的な安息であると考えられている。古代エジプトにおいては、死者は審判之後、アアルと呼ばれる狩りや漁に理想的な葦原に住むと考えられていた。ケルト人にとって楽園はマグ・メルという喜びの島であり、古代ギリシャ人にとっては、エーリュシオンが英雄や高潔の士が永遠の生命をおくる楽園であった。ヴェーダでは物理的な肉体が火で破壊されたのち最上天で再構成されると考えられていた。ゾロアスター教のアヴェスターでは「至高の存在」および「歌の家」が最も高潔な魂の住処とされた。
一方、宇宙論的な観点においては、楽園は悪に汚染される前の世界と考えられている。そのため、例えばアブラハムの宗教では楽園は堕落前の世界の完全な状態であるエデンの園と結びついており、来るべき世において回復されると考えられている。
この主題は、特に前近代において芸術や文学で一般的なものであり、よく知られた例としてジョン・ミルトンの失楽園が挙げられる。
楽園は、異なる社会であるユートピアと混同されてはならない。
語源
英語の paradise という語の語源は、アヴェスター語の pairi.daêza- に明らかなように古代イランに遡り、そこからギリシャ語の parádeisos (παράδεισος)、ラテン語の paradisus、フランス語の paradis を経て英語へと移入された。この古代東部イランの言語における字義は pairi- (周囲に)+ -diz((壁を)作る)と成り立ちを持ち[1]、「壁に囲われた」という意味である[2]。スラブ系の言語、およびそれに影響を受けたルーマニアでは raj という言葉が使われるが、この語はペルシャ語の pardeis に由来するものと考えられている。
紀元前5、ないし6世紀までにこの古代イラン語は、「領域」を意味する語として、アッカド語の pardesu、およびエラム語の partetas になった。この語は次第に囲われた土地、とりわけよく世話された王室の庭園、ないし動物園を意味するようになった。その後、この語は動物園の意味で parádeisos としてクセノフォンのアナバシスに登場する。アラム語の pardaysa も「王室の庭園」を意味する。
ヘブライ語の pardes (פרדס) はタナハ(旧約聖書に相当するヘブライ語聖書)に三度登場する。雅歌4:13、コヘレトの言葉2:5、およびネヘミヤ記2:8である。これらの文脈ではこの語は「果樹園」と訳すことができる。紀元前3から1世紀に、七十人訳聖書においてギリシャ語の parádeisos はヘブライ語の pardes と gan(庭)の両方の訳語とされた。この用法から、paradise がエデンの園を意味する用法が始まった。同様の用法はクルアーンにおいて فردوس (firdaws) という形でアラビア語にも見られる。
壁に囲われている、という概念は多くのイラン語の用法で保存されておらず、単純に農園や耕作地を表しており、壁に囲われている必要はない。例えばペルシャ語に残っている pālīz ないし jālīz という言葉は畑の区画を意味している。このような開けた区画と壁に囲われた都市についての語の関係は、ドイツ語の Zaun(囲い)と英語の town(町)、や英語の garden(庭)とノルウェー語の garðr'、スラブ語の gard(ともに都市)の間にも見られる。
