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転売屋

商品の希少性や需給の逼迫を利用・買い占めによって生み出し、利益を得る虚業行為者またはグループ From Wikipedia, the free encyclopedia

転売屋(てんばいや)は、一般に商品を小売り段階で購入し、それをさらに第三者へ転売することによって利益を得る行為を、なかば業として継続的に行う者を指す[1]。日本では売主の同意なしに行われた場合は古物営業法の定める違法行為となりうるほか[2][3]、コンサート等のチケットの高額転売はチケット不正転売禁止法によって禁じられている[4][5]。個人が私物を中古品として処分する行為や、古物商許可を得た者による販売は、通常転売とみなされない[1][6]

他にネットスラングとして用いられてきた「転売ヤー(転売+バイヤー)」の語があり[7]、英語では scalper(チケットを大量購入して高値転売する者、ダフ屋)、arbitrageur(価格差を利用して利益を得る者)などの表現がある(reseller は正規流通の一部として再販売を行う者)[8]

概要

劇場外でオペラのチケットを転売する転売屋(ダフ屋)。(アメリカ、1910年)

転売屋が対象とする商品は、玩具・プラモデル・ゲーム機やトレーディングカード[9]からチケット類、食品・衣料品・高級時計まで広い範囲に及ぶ。おおむね需要が急増しながら供給が追いつかない状況を悪用し、「希望小売価格(ないし定価、相場)を上回る高値」をつけて利益を得るものとされる[8][10]

不要になった商品・チケット類を個人が転売する行為自体には多くの国で違法性がなく、アメリカなどそのための再販売システムを整備する国もある[6]。しかし、それが「業」として継続的・組織的に行われると、その商品を実際に必要とする者へ届かない・売主のビジネスへ打撃を与える等の弊害が大きくなるとされ、しばしば厳しい批判対象となる[11][12]。2010年代からスマートフォンやフリマアプリインターネットオークションの普及により近年急増し、コロナ禍でのマスク買い占め・転売などが日本でも社会問題化した[10][6]

経済学的には、転売は通常の経済行為とみなす立場(商品の価格が低すぎるため生じている需要と供給の不均衡を解消しているにすぎない、買う側があるから売る行為が成立しているにすぎない、等)から[13][14]、転売は社会全体の厚生を増進しない脱法行為とみなす立場(転売屋がいなければ不要だった社会的コストが生じている、転売屋の存在で売買システム自体がダメージを受ける、など)まで、論者によって幅がある[15]

法的規制

バンダイが販売する「ガンプラ」を始めとした人気プラモデル類は、品薄状態が続いたため転売行為が横行し、直営店舗「ガンダムベース」などでは「転売目的の購入を拒否する」旨の方針が掲示されるようになった。(東京都、2023年)[16]

転売屋に対して上述のような批判がある一方で、一律の転売規制は、自由な経済行為の萎縮や独占禁止法への抵触など複雑な問題をはらむとされ[17][18]、現在でも全面的な規制には至っていない。ただし、以下の通り一部の商品については規制法が施行されている。

日本では、チケット・乗車券に関してはダフ屋行為として一部の都道府県の迷惑防止条例で禁止されていたが、2016年8月には、音楽業界団体により、チケットの高額転売に反対する意見広告朝日新聞読売新聞に掲出され、この意見広告には、100組以上のアーティストが賛同人として名を連ねるなど社会的な批判が高まった[19]。これらを背景として2019年に施行された特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律(チケット不正転売禁止法)によって、現在チケットの高額転売は禁止されている[20]。(古物商許可を得て営業する金券ショップは対象外)。

また国民生活安定緊急措置法に基づき、マスク・アルコール消毒製品など国民生活に必要不可欠で重要性の高い物資については、転売が一時的に禁止される場合がある[21][22][23]

免税店・免税制度を悪用した大量購入や転売行為に対しては、消費税の不正還付とみなされるため国税庁が近年摘発を強化し、情報提供を求めている[24][25]

(参照:⇒「法令による規制」)

転売が及ぼす悪影響の例

脱法行為の助長

個人の転売行為でも、半ば「業」として継続的に行うと、上述のとおり日本では違法行為となりうるが、これに加え、転売が組織的に行われる場合、主体がしばしば反社会的勢力となって、そこへ利益が流れこむ問題が指摘されている[26]。実際に東京都では条例によるチケット転売行為の罰金が少額だった時代が続いたため、野球や格闘技の試合での「ダフ屋」行為が長く暴力団の資金源になっていたという[27][28][29]。近年はそうした団体・勢力が、小売店での購入のため行列に並ぶ人員を集めるケースも問題視されている[30]

また転売によって得た所得も、当然消費税などの課税対象となるが、これが適正に行われないケースが増えているとして国税庁が調査と追徴課税の動きを強化している[31]国税庁2020年11月27日に発表した所得税などの調査結果では、転売などのインターネット取引を行っている個人について、1877件中1680件で無申告が明らかになっており、追徴課税は65億円に及んでいる[32]。また、2023年4月までに、トレーディングカードの転売を行っていた神戸市内の男性3人と業者1社が2017年から2021年にかけ、大阪国税局から転売で得た利益について計約1億円の申告漏れを指摘されていたことが判明している[33]

需給バランスの攪乱

転売者が転売目的で購入することによって市場に出回る商品数が減少し、購入希望者が購入できない、購入するために標準価格よりも高値で購入するといった不要な混乱が発生しやすいため、多くの一般的な購入希望者はおおむね不利益をこうむると指摘されている[34]

商品が転売によって高騰し入手困難となる状況が常態化すれば、転売がなければ好調だったはずの需要が押し下げられる悪影響も指摘される[35]。ホビーメディア「HOBBY Watch」は転売問題に触れ、「商品を紹介してもユーザーが買えないという状況は、情報誌の存在意義を大きく揺るがしてしまう。」「ジャンルそのものへの興味を奪いかねない転売屋は情報誌の理念と全く相容れない」と批判している[36]

転売品の品質劣化

販売側の同意なく転売された場合、再販売までの保管や取り扱いが企業側の求める適切な基準を満たしていることはきわめて稀で、そのため多くの企業は転売を禁止したうえで、転売品に対する製品保証を認めていない[37][38]

販売側の業務妨害

転売品の横行によって一般利用者の手が商品に届きにくくなると、批判が売り手へ向かい、販売側が企画の変更を余儀なくされるケースもある[39][40][41]。また転売品が外国へ流れ、メーカーの把握しない流通が肥大化することも問題視されている[42]

また後述のように、そうした転売行為の横行に対してメーカーや販売側に適切な対策を講じない場合、企業の対外イメージを毀損する点でも問題視されている[35][43]。また転売は、販売側がそうした批判を避けるため、抽選や事前申し込みなど、転売がなければ不要だった対策をとるコスト・手間などの負担を販売側に生じさせている[34]。転売が人気商品に集中することで販売場所の店舗周辺が長時間占有されることもしばしば発生し[44]、「古物商の資格も商品知識もない転売屋が、大量転売のためだけに店舗に並ぶケースもある」とも指摘されている[45]

また転売を容認するデジタル・プラットフォーマーが利益を得ることも、しばしば問題視される[44][46]。(⇒「フリマサイトへの批判」)

転売されやすい商品の例

記念品・限定商品

コミックマーケットワールドホビーフェスティバルなどの、いわゆるおたく向けのイベントや、人気芸能人のライブなどの会場で販売される「会場限定商品」、もしくは購入機会が限定される商品を転売目的で購入する。人気が予想される商品は、販売側が1人当たり1点~数点までの購入数を制限をしているが、転売屋が大量のブローカー[47]を雇って買い占めを行う場合もあり[48]、イベント主催者が問題視したこともある[49][50]。また、ライブコマースを通じて需要を把握しながら買い占めるケースもある[51]弁護士福井健策は、組織的に購入するため詐欺罪威力業務妨害罪に問われる可能性があると指摘している[50]。商品自体に希少価値がなくとも、年始に販売される限定販売の福袋などは、販売価格に対して転売価格が上回ることを期待して買い占められることがある[52]

また、観光ガイドなどの無料配布物であっても、大量に確保して転売する事例も発生している[53]

一般市販品では、漫画アニメの限定商品をインターネットショッピングで大量に個別注文し、ショップを倉庫代わりにした、無在庫の転売行為(手元に現物がない状態での出品)を行っていた事例があり、ショップ側が転売屋と見られる顧客に対して警告を送った例もある[54]

2014年に東京駅にて販売された「東京駅開業100周年記念Suica」が、当日の購入希望者の殺到・混雑により販売中止となったのち、10万から20万円もの高額で転売される事例が相次いだ[55]

品薄の商品

通常販売の商品であっても、人気商品または人気が予想される商品が一時的に品薄になると、その間に高値転売が行われることがある。人気ゲーム機玩具や、iPhoneの新機種、転売地域には流通されていない商品(例としては、ごく一部のジャパニーズ・ウイスキーの銘柄)などが狙われやすく、1996年の『たまごっち[56] など、ブームの過熱に伴う転売が問題となった事例はたびたび起こっている。特典付きの雑誌なども転売の対象とされる。また、販売元がドロップシッピングを利用していないにもかかわらず、転売屋が利用して装う転売行為も存在する[要出典]

また、新型コロナウイルス感染症の流行後にはゲーム機、とくにNintendo SwitchPlayStation 5が品薄になったため高値での転売が行われ、特にPS5は影響が深刻となった[57][58]。コロナ禍にともなう中国での生産減少や、世界的な外出の自粛による巣ごもり需要の拡大でゲーム機の需要も増大したためとされる[57]

転売関連の事件・批判

スニーカー転売

スニーカー業界では2010年代から著名人とのコラボレーションモデルなど限定品の増加と、中国ロシアなどでの需要増加により新品の転売市場が急激に成長しており、アメリカではスニーカー専門の転売業者がいる他、ソーホーなど高級ブランド店が軒を連ねる地域に希少性の高い未使用品を扱う転売品専門店も登場するなど、仮想通貨のような代替投資としての「投資商品」となっている[59][60]新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により実店舗が打撃を受ける中、スニーカーの転売市場はネット中心であったことから逆に拡大し、2019年8月のレポートでは2020年に90億ドルとの試算だったが、実際には290億ドル規模となった[59]。またナイキも多くの実店舗が休業する中、ネット販売が好調となり増益となっている[59]。これに関連する不祥事も起こり、ナイキ北米地区副社長の19歳の息子が限定品のスニーカーの転売ビジネスを展開し、辞任する事態となった[59][61]

スターバックス福袋買い占め

2016年1月2日、コーヒーショップ「スターバックス」の店舗において、福袋の販売が行われた。この日は早朝から多くの購入希望者が行列を作って販売開始を待っていたが、列の先頭にいたグループがその日準備されていた福袋を全て買い占めてしまう事例が発生した。さらにこの買い占めを行った者は、テーブルに多くの福袋を並べて買い占めの成果を自慢する写真をSNSに投稿し「個数制限がないのが悪い」として自身の買い占めを正当化した。その後、福袋の多くがフリーマーケットサイトにおいて転売されていることが確認された。このことに対し、買い占めをした者のモラルのなさと、個数制限を設けなかったスターバックスの両方に多くの批判が寄せられた[62]

京都高島屋でのドール買い占め

2018年3月31日、百貨店「京都高島屋」において、球体関節人形「スーパードルフィー」の受注生産受付が行われた。この商品は中原淳一の作画を模した限定品で、1体につき12万4000円と高額であったが、当日は約200人が注文を希望して行列を作った[63]。商品は全部で100体の限定販売とされており、「1人につき2体まで」の制限がかけられ、列の先着50人に整理券が配布された[64]

しかし受付が始まると先頭に居た男性客が自分の分を注文したあとに、後列の者の代金も自分が支払うと申し出て、これを整理券が配られた全員分繰り返した。そのため、先頭の男性とその後に並んでいた49人は人形の入手を目的としたグループであったことが判明した。実際に受付終了後、人形100体の発送先は全て同一の住所となった。そして後に中国の通販サイトに「京都高島屋限定」と題してこの人形の高額転売ページが作成されたため、この出来事に対して、転売屋グループによる買い占めだとする批判がネット上で殺到した[65][66]

京都高島屋は販売方法に不備があったことを認めながらも、同グループが転売屋であることを証明できないとして、通常通りの手続きで人形を手渡した[67]。同年5月に同じ人形の受注生産受付を行った日本橋高島屋は、受付方法を先着順ではなく抽選方式に改め、支払い方法を代金引換のみにする方法に変更している[68][69]

『ホビージャパン』編集者の転売容認騒動

2020年頃からコロナで禍などを契機にバンダイが発売する「ガンダム」関連のプラモデルへの需要が急増し、転売が横行するようになっていたが、2021年7月24日にホビー情報誌「月刊ホビージャパン」および「ホビージャパンEX」の編集者がSNS上で、「メーカーや小売り、問屋の売り上げはしっかり立つので業界的には安泰」「転売を憎んでいる人たちは、買えなかった欲しいキット(商品)が高く売られているのが面白くないだけ」などと転売行為を容認し、転売批判を揶揄する見解を述べ、この投稿に対して批判が相次いだ[70]

同編集者は投稿内容を削除したが[71][70]株式会社ホビージャパン7月26日付で、公式サイトで編集者を退職とする処分を発表、さらに管理監督者である常務取締役編集制作局長と「月刊ホビージャパン」の編集長・副編集長も譴責の上、それぞれ取締役・副編集長・デスクへの降格処分となった[72]。同誌は10月号に「読者の皆様へ」と題する文書を掲載((文書は8月25日付)、「ホビーに関わる企業としてホビー商品のいかなる転売、買い占め行為も容認して」いないと断じ、編集部員の発言を「決して許されないこと」と謝罪した[73]

社会学者大和大学准教授の立花晃は、「『ホビージャパン』はプラモデルの製作テクニックやホビーの楽しさを伝えてきた老舗であり、値段を吊り上げようとしたと受け取られたことは非常にショックだったのではないか。」と述べている[45]

医療用マスク買い占め

2020年より始まった日本における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行においては、感染予防用のマスク消毒用アルコールが大量に転売されるなど、社会問題となった。静岡県議会議員・諸田洋之が自身の経営する会社在庫の大量のマスクをインターネット上のオークションサイトで高額販売し、900万円弱を売り上げた行為には多くの批判が集まった[74]。同年、国民生活安定緊急措置法第26条及び第37条の規定に基づいて政令が改正され、3月10日に衛生マスク[75]5月22日には消毒等用アルコールの転売が禁止された[76]

ヤクルト買い占め

2022年には、株式会社ヤクルト本社が製造・販売する乳酸菌飲料ヤクルト1000」がSNSで好評の口コミが拡散されたことや、 4月4日に放送されたテレビ番組しゃべくり007』(日本テレビ系)でマツコ・デラックスがヤクルト1000の効能について言及した事により、人気に火がついて全国で品薄が続くと、メルカリなどに相次いで高額で出品されるようになった。これに対し、当時ヤクルト本社では商品の高額転売の対策や増産を検討した[77][78]

マクドナルドでの食品放棄

2025年5月、日本マクドナルドハッピーセットに付属する『ちいかわ』の玩具が買い占められた。玩具だけを持ち帰り、ハッピーセットの食品を店内に大量に放置する迷惑行為がSNSで拡散され、転売や食品ロスに対する批判が相次いだ[79][80][81][82]。また、中国のSNSには中国人が日本で大量購入したことを誇示する投稿が複数見られ、中国国内からも非難の声が上がった[81][83]

セブン-イレブンの店舗における不正転売

アニメゲームの人気キャラクター商品について、セブン-イレブンの一部店舗において不正転売が行われていることが、2026年7月に一部報道において明らかになった。同社はこうした行為が行われていた店舗について、フランチャイズオーナーや従業員が、発売前に商品を取り置いたり買い占めるなどした上で転売サイトに出品していたことが確認されたとしている。同社は同年7月13日付で、全国の加盟店に対し警告文書を送付している[84]

フリマサイト等への批判

メルカリLINEヤフー楽天グループラクマ)といった大手フリマサイトフリマアプリオークションサイトやアプリの運営会社(デジタル・プラットフォーマー)が、新規発売商品や転売対象となっている商品の出品を禁止(および自主規制を強化)するだけで転売を抑制できるにも関わらず、手数料で利益を得たいために高額転売を黙認していることや、スマートフォンとアプリだけでどこでも出品できる手軽さが問題を拡大させている。

コロナ禍でのマスク・消毒液、特定興行入場券(チケット類)も、法的規制に乗り出すまで転売屋の儲かる商品となっていた。そのため運営者が販売手数料を目的に転売行為を黙認しているとして、根強い非難の声がある[85]

2025年5月下旬、政府備蓄米の民間販売が注目される中、ヤフオク・メルカリ・ラクマなど大手フリマサイト・オークションサイトが備蓄米の出品禁止を発表した。背景には、米価格の高騰や、減反政策に由来する供給不安と市場の混乱懸念がある。コメの出品は継続して認めるものの、「政府備蓄米」に対してのみ、LINEヤフーは社会的影響の可能性を理由に禁止を明言し、メルカリはAI監視強化と削除・制限対応を明言し、楽天は自社販売品も含めラクマでの出品を停止した[86][87]

任天堂の新型ゲーム機「Switch 2」は2025年6月5日に発売され、公式ECサイト「マイニンテンドーストア」では抽選販売に複数条件が設けられるほどの高い注目を集めた。任天堂はメルカリ、LINEヤフー、楽天と協力を発表するなどし、不正出品対策を強化した。Yahoo!オークションとYahoo!フリマでは「当面の間、出品自体を禁止」する一方で、メルカリやラクマでは高額転売の禁止措置を取らなかったため、高額転売や無断転載画像を使った出品が多発し、すでに転売屋との取引成立も発生している[88]

食品クーポンの転売容認

デジタル・プラットフォーマーが高額転売へ加担している実例として、2023年の東京都が住民税非課税世帯などを対象に物価高対策として無償配布した「東京おこめクーポン」(米や食料品)について、フリマサイトでの転売が相次いで確認されたものの、(罰則や処分がないのをよいことに)削除を拒否した件がある。配布された米袋には大きく「転売禁止」の文言が明記されていたが、一部の出品者は「転売禁止」の文言を隠し、AIによる写真の読み取りを防ぐ対策を施して販売していた。東京都は少なくとも4つのフリマアプリでの転売を確認し、運営企業に「自治体支給物資」の転売問題対策で出品削除を要請した。しかし、削除対応したのは1社にとどまり、他の3社は削除要請に応じなかった。このクーポン事業は、1世帯あたり約1万円相当の食品(米、白米パック、乾麺、飲料など)を選択式で配布するもので、総事業費は約296億円にのぼる。物資の受け取りは2023年3月以降に行われた。この事例は、「経済的弱者支援」の施策が本来の目的を逸脱して、転売屋に悪用されていることを示すものであり、「自治体の要請すら拒否するプラットフォーム側」の対応のあり方が問われていると報じられた[89]

LINEヤフーの転売禁止

2025年6月4日に産経新聞とのインタビューでLINEヤフーは、自社が運営するYahoo!オークションおよびYahoo!フリマにおいて、悪質な転売行為への対策を強化する方針を打ち出した。これにより、以降から発売直後の商品や供給が不安定な物品について、独自の判断で出品禁止措置を講じるとした。特に、買い占めによる一時的な希少性の演出が見られる商品や、災害時の備蓄品などについては、社会的影響を鑑みて取引を制限する取り組みするとし、転売放置姿勢から転換した背景には、2025年に発売した「Nintendo Switch 2」などの人気商品に対する転売需要の高まりがある。LINEヤフーは、メーカーや販売元など一次流通と連携し、フリマプラットフォームとしての社会的責任を強調し、。AIを活用した出品監視や、類似画像の自動検出、不審アカウントの排除などの技術的対応も進めている。この新方針により、後手だけの転売対策からフリマ事業者自身の判断で迅速に講じるとし、一次流通との情報共有も強化を含めて、業界全体での転売抑制の方向にしたいと発表した[90]

転売対策の例

個数制限・購入条件・購入者確認

販売店やECサイトで1人が購入できる個数を制限する(例:「お一人様一点限り」「同一住所への大量発送の注文をキャンセルする」[91])、購入時に特定の条件を設ける(例:「店の会員カードを所持していること」「他支店・系列店舗での購入履歴がある場合は購入不可」「購入希望の商品名を確認する」「中学生以下限定」[92]など)[93][94]。2021年1月、ヨドバシカメラは転売業者対策としてクレジットカード限定の店頭販売を行った[95][96]

2021年から、トヨタ自動車ランドクルーザー(2021年式・300系)の販売時に、「登録後1年以内はオークションへ出品しない」「不適切な輸出につながる可能性がある場合、取引を解消する」「海外に輸出しない」旨の誓約書の記名と提出を購入の条件に加えるようになった。これは、海外に輸出されることでテロリストに行き渡り、「武器」として転用されるのを防ぐため(外国為替及び外国貿易管理法違反を避けるため)としているが、これらの誓約書は法的な拘束力を有せず[注 1]、条項を無視しても違法性がないため、転売の規制が進んでいない[97][98]

人気芸能人の公演チケットや人気イベントの入場チケットなどの転売対策では、施設側および券面において「チケットの転売を禁止する」旨の注意書きを明文化し、チケット購入に際して使用したクレジットカードなどで「購入者」と「来場者」の名義が同じであることを確認するなどの対策をしている例もある[99][100]

さらには、顔認証システムを活用して、チケット購入者本人が来場しているかどうか確認することもある。2014年ももいろクローバーZが、エンタテインメントの入場管理において世界で初めて導入[101]した。NECの顔認証システム「NeoFace」を用いて、チケット購入時に顔写真を登録、会場入り口で顔認証しチケットを発券する[102]。他のアーティストにも広がりつつあり、B’z福山雅治Mr.ChildrenBABYMETALが一部のコンサートなどで採用している[103][104]

転売時の商品価値を下げる

転売に対し、販売店側もそのまま看過していたわけではなく、「商品価値=転売時の買取価格」を下げるため独自の対策を講じ、転売屋の利益を極力発生させない工夫を施すようになった。主な例として、一度「パッケージ(外箱、シュリンクなどの梱包)が開封された」もしくは「使用された」状態にしてから引き渡すことで、「中古品」と査定されるため買取価格が下がるケースもあり、買取価格が購入時の価格を下回れば、転売屋にとっては赤字になる。

2021年8月19日、愛知県名古屋市の玩具店はプラモデルの転売対策として「商品購入時に内袋を開け、中に入っている成型物のランナー[注 2] の一部を客に切り取ってもらい引き渡す」という対策を行った[105]。ランナーは組み立て時に切り離す部品だが、買い取りサービス業者は開封・使用済みとなった商品を「中古品」と査定するため、買取時の商品価値が下がる[106]。玩具店の店主は、「転売目的と思われる客に先に買われてしまい、常連客に売り切れを告げることが辛かった。目先の利益だけでなく、どれだけお店のファンを増やせるかを重視している。スタッフや常連客と相談して考案した」と話した。綺麗なまま保存しておきたいユーザーもいることから悩みもしたが、この対策は客の99%からは好意的に受け取られた。投稿を見たユーザーからも絶賛された[107]

その他、大手家電販売店のヨドバシカメラでは、2021年9月頃からプラモデルについては購入できる商品個数を制限するとともに、外箱に店舗名を記した捺印を行う対策を開始した。また、トレーディングカードゲームのカートン販売については、製品を保護しているビニール製のシュリンクや外箱を廃棄し、中身のカードパックのみを取り出して販売する対策を開始[注 3] 。さらに、ジャンルに関わらず商品名を正確に言えない者を購入希望者の列から排除するなど、転売を目的としない本当に欲しいユーザーに商品を届ける姿勢に称賛の声が相次いだ[94]

神奈川県を中心に店舗を展開している家電量販店のノジマは、2021年10月からPlayStation 5の店頭での引き渡し時に外箱に購入者の名前を書いてもらうなどの、綿密な転売対策を行っている[108][109]。これは「海外への流出を防ぐため」で、客の声などから「箱に名前が書いてある」だけで転売価値が1万円近く下がることがわかったためだという[110]

また、全国にテレビゲーム販売・レンタルビデオ店舗を展開しているゲオにおいても、2021年11月から、PlayStation 5のコントローラーを梱包している袋にバツ印を記入させる対策を取っている[111]

2022年3月、TSUTAYAとゲオはPlayStation 5の外箱に「開封済確認シール」の貼り付けを開始した。このシールはソニー・インタラクティブエンタテインメントが提供し、販売時にハサミなどで切って開封すると、箱の開口部分に剥がすのが難しいシールが残る[112]

2022年6月、NTTドコモはスマートフォンの購入時に外箱への記名や押印を割引施策を適用するための条件とした[113][114]が、割引施策を適用しないのと引き換えに、外箱への記名や押印をしないままでの購入も可能としている。

後述のように、ユーザー側の要望を受けて追加生産を行うことでプレミア価格の成立を困難にするケースも出てきている。

2022年11月、トレーディングカードゲームのパックの上部を切り落としその場で開封する対策が登場した。転売時に写真の撮り方でごまかせないように明らかにわかる程度に切り落とす[115][116]

出品停止

アカウント削除・予約取り消し・情報非公開措置

  • 2021年9月、玩具メーカー「BANDAI SPIRITS」は、バンダイナムコグループ公式通販サイト「プレミアムバンダイ」の会員規約を改訂し、アカウントの取得・使用目的が転売目的であると判断された場合、運営側の判断によりアカウント削除および、既に予約済みの製品予約を取り消し可能とする規約を追加した[118]。また、2022年初頭まではプラモデルの再販情報を自社サイトに掲載していたが、この情報を元に転売目的の客が店舗に押しかけて買い占めを行うなどの事例が多数発生していたため、2022年4月以降は再販情報の掲載を中止することとした。

受注生産

2023年、株式会社ポケモンはトレーディングカードゲームを受注生産方式で販売した[119][120]。2024年には、吉野家ではコラボ商品の抽選に加え、ECサイトでの完全受注生産も提供した[121]

転売品購入者の厳罰化

前述のコンサートチケットでは転売行為が発覚した場合は該当チケットを無効とするだけでなく、購入者をファンクラブからの退会処分とする転売対策も行われていることがある[122]

ユーザー側の対応例

転売行為の通報

2019年2月13日衣料品チェーンストアしまむらにおいて、ゲーム「刀剣乱舞」とコラボしたトレーナーが販売店舗限定で販売されたが、買い占められ転売された[123]高田馬場店では、列の1番目に並んでいた人物が全て購入しようとし、最終的に警察沙汰にまで発展した[123]。これに対し、ファンコミュニティ全体で転売ショップの違反を通報する活動を行い、しまむらへ再販を望む意見を送った[124]。この事態を受け、しまむらが本商品の再販を決定した[125]

転売商品の購入拒否

2021年9月には「刀剣乱舞無双」の数量限定版が転売されたが、ファンコミュニティで転売品の不買運動が広く呼びかけられた[124]。制作陣へ意見を送ったことが功を奏し、代表取締役社長の働きかけを得て、数量限定版の追加生産が決定した[124][126]

2021年10月23日には、VTuberグループ「ホロライブ」と、大手ディスカウントストア「ドン・キホーテ」とのコラボグッズが全国の店舗で数量限定で販売されたが、多数のグッズが転売屋により買い占められフリマサイトで転売された。これに対して、ホロライブのメンバーである不知火フレアらがファンに向け、転売屋からグッズを買わずに再販売を待つようSNSで呼びかけを行い、多くのファンがこれに同調した。ドン・キホーテ側もこの事態を受け、2日後の10月25日に予約通販決定を発表し対応した[127]

法令による規制

日本

古物

原則として、日本国内において、いったん一般消費者の手に渡った物品(「古物」)を転売買して営業を行う者は古物営業法に基づく古物商許可を受ける必要がある[128]。個人であっても、古物商許可を得ずにインターネットオークションその他で継続反復し、大量の転売買営業を行っている場合、古物営業法違反などで有罪となる事例がある[要出典]

※オークションで「販売業者」として認定される基準[129](古物営業法の取締基準と異なることに注意)

  1. 過去1ヶ月に 200 点以上又は一時点において 100 点以上の商品を新規出品している場合
    • ただし、トレーディングカード、フィギュア、中古音楽CD、アイドル写真など、趣味の収集物を処分・交換する目的で出品する場合は、この限りではない。
  2. 落札額の合計が過去1ヶ月に 100 万円以上である場合
    • ただし、「1点で 100 万円を超える高額の商品」(土地、家屋、自動車、絵画、骨董品、ピアノなど)については、同時に出品している他の物品の種類や数等の出品態様などをあわせ、総合的に判断される。
  3. 落札額の合計が過去1年間に 1,000 万円以上である場合

チケット・乗車券

転売対象が乗車券、入場券や観覧券などのチケット類である場合は、古物商許可を取っていたとしても、ダフ屋営業として2020年東京オリンピックパラリンピックを念頭に施行された[130]特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律(チケット不正転売禁止法)違反[131]迷惑防止条例違反[132]物価統制令[133] を適用して検挙される事例もある。特にイベントでは、チケットの譲渡・転売を禁止している場合、購入者以外がチケットを使用すると不正入場として警察に通報される可能性がある。

しかし、鉄道における乗車券は、チケット不正転売禁止法で規制する「特定興行入場券」の対象外とされているため、この不備を突く形で2023年11月23日で運行を終了したJR西日本の観光列車『奥出雲おろち号』の座席指定券[134]や、2024年3月16日金沢駅 - 敦賀駅間が延伸開業する北陸新幹線の指定券[135]が、原価の100倍以上の高値でインターネット上で高額転売されており、乗車できない乗客が多数生じる事態となった。特に後者の件では、JR西日本が、当時ネット出品をしないよう呼びかけていた。

生活関連物資

国民生活安定緊急措置法では、一定の条件下で生活関連物資の転売について特定標準価格を超えた販売に追徴金を科したり、5年の懲役および300万円の罰金をあわせた両方を刑事罰として科すこと等が規定されている[136]。 近年では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行初期であった2020年に、衛生用マスク消毒用アルコールが需要の拡大から供給が著しく不足し、その影響で価格の高騰が起き、高額な転売が横行していたことから同法の一部改正が行われ、マスクは同年3月15日、消毒用アルコールは同年5月26日から、それぞれ同年8月29日までの間高額での販売が禁止されていた[137]

酒類

酒類の販売には酒税法により酒類販売業免許が必要になる[138]

たばこ

たばこの販売にはたばこ事業法により製造たばこの特定販売(輸入販売)又は小売販売には財務大臣の登録・許可を受けなければならない[139]

医薬品

医薬品や向精神薬の販売には医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法、旧薬事法)や麻薬及び向精神薬取締法により、販売地の都道府県知事の許可や免許が必要であり、無許可や無免許で販売することは禁止されている[140][141][142]

外国人の営業活動

販売国を住居としていない外国人が在留資格に反する形で転売を職業とした場合は、出入国管理及び難民認定法(出入国管理法)違反で逮捕された例がある[143][リンク切れ]。この場合は、経営管理査証の取得が必要になる[要出典]

アメリカ合衆国

アメリカ合衆国では、2016年からチケット転売規正法であるBetter Online Tickets Sales Act(BOTS法)が施行されており、ボットを利用してオンライン上で転売する行為を禁止している。2021年1月には、このBOTS法違反に基づく措置として、連邦取引委員会ニューヨーク州にある転売業者3社に罰金を払うよう命じた[144]。前述のようにBOTS法に違反しないスニーカーの転売市場などは好調になっている[59]

転売屋を描いた作品

映画

漫画

  • 『テンバイヤー金木くん』(早池峰キゼン)
  • 『コレクターイズデッド ~転売ヤー撲滅子ちゃん編』(横浜タケル・みらいせいねん)
  • 怨み屋本舗』(栗原正尚

関連文献

  • 奥窪優木『転売ヤー 闇の経済学 (新潮新書 1067)』新潮社、2024年11月18日。ISBN 978-4-1061-1067-2
  • 坂本有芳ほか「新型コロナウィルス感染症拡大時の買い占め行動と消費者トラブル」(消費者庁、2021)
  • 山口真紀子「インターネット上の興⾏チケット転売―⽇本の状況と諸外国の法規制―」(国立国会図書館『調査と情報』1006, 2018)
  • 森大輔「「転売」を法と経済学や法社会学の視点で眺める」(有斐閣、2024)

関連項目

脚注

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