Wikiwand AI

03式中距離地対空誘導弾

日本の地対空ミサイル From Wikipedia, the free encyclopedia

03式中距離地対空誘導弾(まるさんしきちゅうきょりちたいくうゆうどうだん、略称:SAM-4、通称:中SAM)は、地対空誘導弾 改良ホークの後継システムとして開発された、陸上自衛隊が運用する純国産の中距離防空用地対空ミサイル・システムである。三菱電機が主契約者としてシステム取りまとめ企業となり、三菱重工業が誘導弾、東芝がレーダーを製造している。

概要 種類, 製造国 ...
03式中距離地対空誘導弾
高射教導隊による射撃の様子
種類 地対空ミサイル
製造国 日本
設計 技術研究本部
製造 三菱電機東芝三菱重工業
就役 2003 - 現在
性能諸元
ミサイル直径 約320mm、約280mm(改善型)[1]
ミサイル全長 約4900mm[2]
ミサイル重量 約570kg、約454kg(改善型)[3]
信管 近接信管
射程 60km程度(推定)[4][5]
射高 10km[6]
推進方式 固体燃料ロケット(IHIエアロスペース製)
誘導方式 中間指令誘導アクティブレーダーホーミング
飛翔速度 マッハ2.5
テンプレートを表示
閉じる

本ページでは発展型の後継システム03式中距離地対空誘導弾(改善型)と、開発される予定のさらなる発展型である03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上も記述する。

概要

西側諸国では、長らくホークなどの地対空ミサイルに改良を行い使用してきたが、これ以上の性能向上が難しいとの判断により、アメリカドイツイタリア中距離拡大防空システム(MEADS)の開発をスタートさせた。これに日本も参加を求められたが、武器輸出三原則の制約を理由に参加を断念した。そのため防衛庁技術研究本部は、単独で航空自衛隊地対空誘導弾ペトリオット(長距離防空用)と陸上自衛隊81式短距離地対空誘導弾(短距離防空用)の間を埋める存在となる新型地対空誘導弾の研究開発を行った。

1983年(昭和58年)より防衛庁の部内において、ホーク後継ミサイルの検討が開始された[7]。1995年(平成7年)に国内開発が決定し、1996年(平成8年)より本格開発が開始された[7]

試作車両が青野原駐屯地の正門前の広場に展示してある。射撃用レーダー装置搭載車両やレーダー信号処理・電源車の車体には73式大型トラックが使用されている。

発射装置搭載車両
射撃用レーダー装置搭載車両
レーダー信号処理・電源車

2003年(平成15年)度に「03式中距離地対空誘導弾」として制式化され、陸上自衛隊の方面隊隷下の各高射特科群の高射中隊を中心として配備が進められた。1個群を構成する武器システムにかかる価格は約470億円で、同規模のペトリオットPAC-2の調達価格である約850億円より低く抑えられている。本システムで更新されなかった残りのホークを装備する高射中隊は03式中距離地対空誘導弾(改善型)で更新される予定である。

特徴

システムを構成するサブシステムの一部
発射装置搭載車両(射撃姿勢)

  高い機動展開性によって有事に即対応できる。操作に必要な要員も省力化され、20人体制で運用することができるようになった(ホークは50人体制。これに伴い装備する高射中隊は運用上の編成が改められている(改編)。また、非自走部のあったホークと異なり、システム一式の完全車載・自走化により、機動力が向上した[8]

ミサイル本体は発射筒を兼ねた角型コンテナに収められた状態で、発射装置および運搬装填装置に各6発ずつ搭載されており、ロシアS-300や米欧共同開発のMEADSなどと同様の垂直発射方式である。このため、陣地展開に必要な土地面積が従来方式に比べ少なくて済む様になり、展開用地確保が容易になっている。

レーダーはアクティブフェーズドアレイレーダーであり、100目標を捕捉し、12目標を追尾可能である[9]。レーダーは1基で標的捜索のほか、目標の追尾および射撃管制も行う[8]。また、高度なECCM(対電子妨害対処)能力と多目標同時対処能力を持ち、空対地ミサイル巡航ミサイルによる遠距離攻撃に対処する能力も有するとされている。レーダーは回転することにより、全周捜索を行う。2011年(平成23年)より配備された対空戦闘指揮統制システムとのデータリンクによる効率的な対空戦闘が可能である。ミサイル誘導方式は中間指令誘導アクティブレーダーホーミングの組み合わせとなっている[8]

なお、射程については正確な数値は不明であるが、2014年(平成26年)の下志津駐屯地創設59周年記念行事では下志津から横浜や筑波山上空の航空機を射撃可能と解説されていることや[10]米国における射撃試験の報道[4]から射程60km程度とされている[11]

03式がアメリカ空軍敵防空網制圧(SEAD)を任務とする第35戦闘航空団と演習を行った際には、アメリカ空軍のF-16CJ/DJ戦闘機JDAM20mm機関砲による攻撃で中SAMに対抗した[12]。米軍関係者からは「目標空域でミサイルを避けるのは非常に難しかった」、「世界的にも有能で、よく訓練された(防空)オペレーターだ」と評価されている[12]

構成

システム構成は、以下である。

  • 本部管理中隊
    • 対空戦闘指揮装置 2輌(指揮統制部1輌、状況監視部1輌)

  ※73式大型トラックに搭載

  • 高射中隊(1個高射中隊分)
    • 射撃管制装置 2輌(射撃統制部1輌、通信部1輌)
    • 射撃レーダ装置電波通信部 2輌
    • 捜索兼射撃用レーダー装置車 1輌
    • レーダー信号処理兼電源車 1輌
    • 発射装置車 3輌(第15高射特科連隊は4輌)
    • 運搬・装填装置車 3輌(第15高射特科連隊は4輌)

  ※射撃管制装置、射撃レーダ装置電波通信部は、高機動車に搭載。それ以外は、重装輪車両に搭載。

  • 搬送通信中隊(1個高射中隊分)
    • 幹線無線伝送装置 2輌
    • 幹線無線中継装置 2輌(中継部1輌、電源車1輌)

  ※高機動車に搭載。1個高射中隊分なので群全体(4個中隊)ならx4となる。

  ※重装輪車両に搭載

03式中距離地対空誘導弾(改善型)

ミサイル発射

2010年(平成22年)度から2016年(平成28年)度まで、取得コストを抑制しながら、巡航ミサイル(低空目標)や空対地ミサイル(高速目標)への対処能力を向上させ、ネットワーク交戦能力の向上により防衛範囲を拡大させた「03式中距離地対空誘導弾(改)」(中SAM改)の開発が行われた[7][13][14]

中SAM改では低空目標用に窒化ガリウム増幅器を使用した補助レーダーがシステムに追加されているのが特徴である[15]。なお、中SAMで誘導弾を製造していた三菱重工業は中SAM改には参画していない。

2015年(平成27年)夏にアメリカ・ニューメキシコ州ホワイトサンズ・ミサイル実験場で開発中の03式中距離地対空誘導弾(改)の発射試験を行い、巡航ミサイルを模したターゲットに対し10発を発射、全弾が命中し、アメリカ軍関係者を驚かせた。また、10発うち1発は低高度を超音速で飛翔するGQM-163A コヨーテ超音速標的であった[16][17]

2017年(平成29年)度予算で初めて1個中隊分の予算174億円が計上され調達が始まった[18]。開発完了に伴い「03式中距離地対空誘導弾(改善型)」の名称が使われている[19][20][21]

開発については、2022年(令和4年度)防衛基盤整備協会賞を受賞している[22][23]

2026年(令和8年)度から後述の#03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上の開発の途中成果を生かして、既存の03式中距離地対空誘導弾(改善型)に弾道ミサイル対処能力を順次付与していく予定である[24]

03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上

2023年(令和5年)度から2028年(令和10年)度にかけて、新型の短距離弾道ミサイル (SRBM) と極超音速滑空体 (HGV) への対処能力を高めた中SAM改のさらなる改善型を開発する予定である[25]。2022年(令和4年)度事前の事業評価では、新型SRBMおよびHGVへの対処能力を早期に強化する早期研究開発分と、HGV等への対処能力を強化しより広域に対処できる新規研究開発分を取得するとしている[25]。開発費は、事前の事業評価によると598億円[25]、2023年(令和5年)度予算によると758億円である[26]

調達と配備

調達数

さらに見る 予算計上年度, 調達数 ...
03式中距離地対空誘導弾の調達数[27]
予算計上年度調達数 予算額
括弧は初度費(外数)
平成15年度(2003年)0.5個群
(2個中隊)
207億円
平成16年度(2004年)0.25個群
(1個中隊)
252億円
平成17年度(2005年)2個中隊 276億円
平成18年度(2006年)1個中隊 203億円
平成19年度(2007年)1個中隊 221億円
平成20年度(2008年)1個中隊 194億円
平成21年度(2009年)2個中隊 369億円
平成22年度(2010年)1個中隊 195億円
平成23年度(2011年) 1個中隊 215億円
平成24年度(2012年) 1+1個中隊[注 1] 167億円[注 2]
平成25年度(2013年) 0個中隊 -
平成26年度(2014年) 1個中隊 175億円(22億円)
平成27年度(2015年) 1個中隊 164億円
平成28年度(2016年) 1個中隊 189億円
合計 0.75群+14個中隊(17個中隊) 2827億円(22億円)
閉じる
さらに見る 予算計上年度, 調達数 ...
03式中距離地対空誘導弾(改善型)の調達数[27][28]
予算計上年度調達数 予算額
括弧は初度費(外数)
平成29年度(2017年)1個中隊 174億円(150億円)
平成30年度(2018年)1個中隊 182億円
平成31年度(2019年)1個中隊 141億円(9億円)
令和2年度(2020年)1個中隊 120億円
令和3年度(2021年)1個中隊 120億円
令和4年度(2022年)1個中隊+1式[注 1] 137億円[注 2]
令和5年度(2023年) 1式 248億円
令和6年度(2024年) 1式 129億円
令和7年度(2025年) 2式 720億円
合計6個中隊+5式 1,971億円(159億円)
閉じる

改善型の取得については、2017年(平成29年)から2031年(令和13年)度にかけて、約14個射撃単位(約3.5個システム)を基準として取得する計画である[29][21]

配備部隊

初期型はPAC-3が最初に配備された航空自衛隊中部航空方面隊第1高射群第4高射群)との整合をとるため、東部方面隊第2高射特科群)および中部方面隊第8高射特科群)から配備が開始された。改善型は南西諸島防衛の観点から、西部方面隊に展開する高射特科連隊から配備が開始された。2025年(令和7年)4月現在、配備されている部隊は下記のとおり。

※〇印は改善型の配備部隊

陸上自衛隊高射学校

陸上自衛隊後方支援学校

東北方面隊

東部方面隊

中部方面隊

  • 第8高射特科群
    • 第338高射中隊(青野原駐屯地
    • 第339高射中隊(青野原駐屯地)
    • 第340高射中隊(青野原駐屯地)
    • 第343高射中隊(青野原駐屯地)

西部方面隊

配備歴

凡例:甲 = 03式中距離地対空誘導弾、乙 = 03式中距離地対空誘導弾(改善型)

  1. 3月26日:甲を装備する第2高射特科群第337高射中隊を新編。
  2. 7月31日:第8高射特科群に甲の配備を開始。
  1. 甲を装備する第8高射特科群第340高射中隊を新編。
  2. 甲を装備する第6高射特科群第341高射中隊を新編。(→のちの第15高射特科連隊第1高射中隊)
  1. 第3高射特科群第311高射中隊に甲の配備を開始。
  2. 甲を装備する第8高射特科群第343高射中隊を新編。
  1. 甲を装備する第102高射特科隊を新編。(第15高射特科連隊第1高射中隊より管理替え)
  2. 甲を装備する第347高射中隊(竹松駐屯地)が第348高射中隊に称号変更。


  • 時期不明:第15高射特科連隊が03式中距離地対空誘導弾(改善型)へ装備転換[20]
  • 時期不明:高射教導隊第4高射中隊が03式中距離地対空誘導弾(改善型)へ装備転換。
  • 時期不明:第7高射特科群第348高射中隊が03式中距離地対空誘導弾(改善型)へ装備転換。

派生型

23式艦対空誘導弾

23式艦対空誘導弾の想定図

03式中距離地対空誘導弾(改善型)を基に2017年(平成29年)度から2023年(令和5年)度にかけて開発が進められた艦対空ミサイルである。護衛艦部隊の防空能力強化を目的とし、敵爆撃機や対艦ミサイルを撃破し得る長射程ミサイルとして開発された[31]。 弾体は汎用護衛艦に搭載されたVLSから射撃可能で、03式中距離地対空誘導弾(改)からレドームを変更し、中間誘導用データリンクとブースタとブースタ分離装置が付加される[32][33][31]。また、ブースタには07式垂直発射魚雷投射ロケットの技術が活用されている他、既存装備品とのファミリー化により開発リスクおよび経費の低減に努めている[31]。 2023年(令和5年)2月20日、海上自衛隊開発隊群は公式Facebookアカウントにおいて、2022年(令和4年)12月、試験艦「あすか」において新艦対空誘導弾の実弾発射試験が実施されたことを発表した[31]。2024年(令和6年)度予算より、取得を開始した[34]

2023年(令和5年)9月8日、防衛省が発表した「令和5年度 事前の事業評価 評価書一覧」において、2024年(令和6年)度に正式採用予定の新艦対空誘導弾について、高速目標の経路予測技術の確立と高速目標の追尾技術の確立を目的とし、2024年(令和6年)度から2030年(令和12年)度まで新艦対空誘導弾能力向上型の開発、2028年(令和10年)度から2031年(令和13年)度まで能力向上型の各種試験を行うことが示された[35]

情報漏洩事件

2006年朝鮮総連系の科学者団体「在日本朝鮮人科学技術協会(科協)」と関係があると言われるソフトウェア会社に、ミサイル部分の資料が流出したことが、警視庁公安部の捜査により明らかとなった。中SAMが戦術弾道ミサイルへの対処能力を得られるか否かの性能検討に使うためのシミュレーションを、防衛省三菱総研に発注した際に、三菱総研から研究を孫請けした企業が、薬事法違反で前科のある科協所属の在日韓国人が役員を務める会社であった。

警視庁の調べによれば、この会社から「土台人」と呼ばれる在日工作員を通じて北朝鮮に対して情報が流出したとされており、流出した情報には未公開のものも含まれるとみられる。ただし、防衛庁(現:防衛省)は「流出した情報はごく一部であり、異なる部分もあるため、このことが中SAMの運用に悪影響を与えるおそれはない。」としている[36]

登場作品

小説

『中国完全包囲作戦』(文庫名:『中国軍壊滅大作戦』)
81式短距離地対空誘導弾93式近距離地対空誘導弾91式携帯地対空誘導弾とともに、統一朝鮮空軍F-15KKF-16の迎撃に使用される。

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

Related Articles

Timelines

Top Qs

Fact Checks