2026 FIFAワールドカップ開催地決定投票
2026 FIFAワールドカップの開催地を決定するまでの経緯
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概要
FIFAワールドカップ開催国決定は、初期から1974年W杯・1978年W杯・1982年W杯3大会同時開催国決定までは、FIFA総会での投票で決定していたが、1986年W杯開催国決定以降、FIFA理事会(現・FIFA評議会)のFIFA理事投票で決定する方式に変更されていた[2]。その後、2010年12月2日の2018/2022 FIFAワールドカップ開催地決定投票まで、FIFA理事会のわずか24名のFIFA理事の投票(会長は同数の時のみ1票投じる)で決まる方式だったため[3]、買収工作も容易だった(2015年FIFA汚職事件参照)との反省から、2018年6月13日の2026 FIFAワールドカップ開催投票からFIFA総会での開催立候補国を除く全加盟協会での投票方式に再び変更された(FIFA Statutes2016年版P28の28 Ordinary Congress agendaの2.のs)[4]。また、従来の不透明なワールドカップ招致手順を明確化し、各段階で審査プロセス等を公式発表していくとした[5]。
立候補要件
FIFAの意思決定機関であるFIFA評議会(及びその前身であるFIFA執行委員会)は、2013年から2017年にかけて大陸連盟のローテーション制について議論を重ねた。当初は直前の2大会を開催した連盟に所属する国は開催地の提案ができないルールが設けられていたが、一時「直前の大会を開催した連盟に所属する国は開催地の提案ができない」ルールに変更された[6]後に、再び以前のルールに戻された。但し、FIFA評議会で、開催地提案の内容が技術的及び在廷的要件を満たさない場合、2大会前に開催した連盟に所属する国の開催地提案を認める可能性があるという例外規定を設けた[7][8]。2017年3月、FIFA会長のジャンニ・インファンティーノは「2018年大会でロシアが、2022年大会でカタールが開催地に選定されたため、(2026年大会は)ヨーロッパ(UEFA加盟国)とアジア(AFC加盟国)が開催地から除外される」事を確認した[9]。従って、2026年大会は北中米(Concacaf加盟国、直近の開催は1994年)、アフリカ(CAF加盟国、直近の開催は2010年)、 南米(CONMEBOL加盟国、直近の開催は2014年)及び男子大会の開催歴のないオセアニア(OFC加盟国)のいずれかとなり、これらの地域からの提案が要件を満たさない場合にUEFA加盟国からの提案が受け入れ可能になる。
複数の国・地域による共同開催は2022年大会のみの例外とされてきたが、2026年大会に関しては共同開催提案について「個々のケースに基づいて評価される」事を基本原則とした。また、開催提案に関してはFIFAの事務局は競技委員会との協議に基づいて、大会開催に必要な最低限の技術要件を満たさない提案を排除する権限を有することも確認された[7]。
立候補の手続き
開催地選定プロセスは2015年に開始され、2017年5月10日にマレーシア・クアラルンプールで開催されるFIFA総会で決定する予定となっていた[10][11]が、2018年大会と2022年大会の開催地決定に関するFIFA幹部の汚職事件を報じたガルシア・レポートが2014年に公表された[12][13][14][15]ことを受け、FIFA会長のゼップ・ブラッターが辞任する事態となり[16]開催地選定プロセスが一時停止。2016年5月10日のFIFA評議会後にプロセスが再開され、2020年5月に開催地を最終決定する事が公表された[17]。
当初の開催地選定プロセスは、以下の4つのフェーズで構成されていた[17]。
- 2016年5月 – 2017年5月:新たな開催地提案の受付に関する協議段階
- 2017年6月 – 2018年12月:開催地提案に向けた準備と正式提案の受付
- 2019年1月 – 2020年2月:開催地提案の評価
- 2020年5月:FIFA総会において最終決定
協議段階においては、以下の4つの領域に着目することとした。
- 大会開催における人権要件、持続可能な大会の管理、環境保護の取り組み
- 技術的要件を満たさない入札者の除外原則の確認
- 共同提案に対するFIFAの姿勢の検討
- 本大会の参加チーム数
2017年11月7日、FIFAは2026 FIFAワールドカップ開催立候補に関するガイドラインを公表した[18][19]。開催立候補国のコンプライアンスや施設面、人権への配慮、コストや収益などを評価すること、そして、評価の比重は、スタジアムが35%、交通が13%、チケット収入、商業収入、コストが各10%などとした[20]。ワールドカップ招致活動の明確な禁止事項を定め、買収工作や不適切な贈答品やW杯招致に向けたサッカー振興プロジェクト及び親善試合開催などを禁じた[20][4]。これまでのワールドカップ同様、「政府協力保証(日本では閣議決定)」が必要である[20][21][22][23]。
評価タスクフォース
2017年10月27日、FIFA評議会は同年9月6日の評議会事務局の決定を承認し、2026 FIFAワールドカップの新たな立候補要件を承認した。併せて、立候補内容の評価タスクフォースのメンバーも任命した[24]。規程[25][26][27]によれば、以下のメンバーで構成される見込みであるという。
トマシュ・ヴェセル:監査・コンプライアンス委員会委員長
ムクル・ムドガル:ガバナンス委員会委員長
イルチョ・ギョルギオスキ:FIFA大会組織委員会委員
ズボニミール・ボバン:FIFA副事務総長(フットボール担当)
マルク・ヴィリガー:FIFA副事務総長(総務担当)
2018年3月16日の開催提案書(Bid Book)提出締切日までに両候補の開催提案書が提出された。カナダ・メキシコ・アメリカの3カ国共同開催提案書[28]とモロッコの単独開催提案書[29]を、2026年W杯開催提案書評価タスクフォース(以下、評価タスクフォース[30])が、招致手引書の評価基準[20]の下、評価手順[31]に則り評価し、問題ないということで両候補を受け付けた。
手続きの短縮要請
2017年4月以降、対抗する招致案が浮上しなかったことを受け、北中米カリブ海サッカー連盟 (Concacaf) に加盟するカナダ・メキシコ・アメリカ合衆国の各協会は、招致プロセスの迅速化を求める共同要請をFIFAに提出した。3ヶ国は、Concacafによる招致案がFIFAの要件を満たす場合、招致プロセスを簡略化し、2018年6月にモスクワで開催される第68次FIFA総会で決定することを希望した[32][33]。
この要請に対し、FIFA評議会は2017年5月8日、2026 FIFAワールドカップ本大会の開催候補地について、過去2大会のワールドカップを開催していない4大陸連盟(アフリカ、北中米カリブ海、南米、オセアニア)に加盟する協会のみを対象に、2017年8月11日までに開催地立候補を募る手続きを設け、開催候補となる協会を第68次FIFA総会で決定するという新たなプロセスを提示した[34]。
2017年5月11日、第67回FIFA総会において、2026 FIFAワールドカップの開催地選定プロセスを迅速化するというFIFA評議会の提案が可決された[1][35][36]。
これにより、開催地選定プロセスは以下のスケジュールに更新された。
- 2016年5月 – 2017年5月:新たな開催地提案の受付に関する協議段階
- 2017年6月 – 2017年12月:開催地提案に向けた準備と正式提案の受付
- 2018年5月 – 2018年6月:開催地提案の評価
- 2018年6月:FIFA総会において最終決定
具体的には以下の期限が設定された。
- 2017年8月11日:大会招致に関心がある協会の意向表明期限
- 2018年3月16日:正式な開催地提案申請書の提出期限(この日までにFIFAの技術的要件を満たすこと)
- 2018年6月13日:第68次FIFA総会開催日
- 開催地提案の選定を決定し、いずれも選定されなかった場合は(アジア・ヨーロッパを含む)開催地提案を提出しなかった大陸連盟に対して改めて開催地提案の呼びかけを実施する。この場合、開催地決定は2020年5月開催予定の第70次FIFA総会に持ち越しとなる。
立候補要求事項
2026年FIFAワールドカップの開催地選定プロセスの一環としてFIFA事務局が提示した一連の原則が承認された。これには、立候補する加盟協会に求められる事項の概要や、開催に関する主要要件が含まれる。具体的にはスタジアムおよびインフラに関する要件、持続可能なイベント運営・人権・環境保護の原則に加え、政府による支援文書、採用すべき組織体制、レガシー基金の設立規定といった詳細事項が盛り込まれている。立候補要件の全体版は、選定プロセスへの参加を登録した加盟協会に対して、後日送付される予定となっている[34][19]。
スタジアムに関する要件
FIFAは、スタジアムの収容人数に関する最低要件を定めた[19]。
| 試合 | 収容人数 |
|---|---|
| 開幕戦 | 80,000 |
| グループリーグ | 40,000 |
| ラウンド32 | 40,000 |
| ラウンド16 | 40,000 |
| 準々決勝 | 40,000 |
| 準決勝 | 60,000 |
| 3位決定戦 | 40,000 |
| 決勝 | 80,000 |
チーム及び審判に対する施設要件
FIFAは、チームおよび審判用施設に対する最低要件を定めた[19]。
| 設備 | 設備数 |
|---|---|
| 参加チームのトレーニング拠点 | 48箇所(72箇所の候補地) |
| 参加チームの拠点宿泊施設 | 48箇所(72箇所の候補地) |
| 試合会場ごとのトレーニング拠点 | スタジアム毎に2-4箇所(4箇所の候補地) |
| 試合会場ごとの宿泊施設 | スタジアム毎に2-4箇所(4箇所の候補地) |
| 審判のベースキャンプ | 1箇所(2箇所の候補地) |
| 審判の拠点宿泊施設 | 1箇所(2箇所の候補地) |
立候補
CAF
モロッコ
モロッコの青年・スポーツ大臣であるモンセフ・ベルハヤットは「(開催地に内定していた)アフリカネイションズカップ2015 (AFCON) は我々に大規模な大会を開催する能力があるかどうかの試金石となる。これが成功すれば2026 FIFAワールドカップの開催地候補として自信を持って名乗りを上げることができる」と述べた[37][38]。しかし、2014年11月、モロッコがエボラ出血熱の流行を理由にAFCONの開催延期を要請するもCAFがこれを却下したため、AFCONはモロッコでは開催されなかった(赤道ギニアで開催)[39]。
モロッコは過去に1994年大会、1998年大会、2006年大会、2010年大会の招致に名乗りを上げているが、いずれも落選している。一方、FIFAクラブワールドカップでは2度(2013年大会・2014年大会)、アフリカネイションズチャンピオンシップでは1度(2018年大会) で開催実績がある。2017年8月11日、モロッコは公式に2026 FIFAワールドカップの開催地として立候補することを表明する[40]。この招致が実現した場合には、アフリカでは2010年南アフリカ大会に次いで2回目の開催となる[41]。
Concacaf(共同提案)
カナダ/
メキシコ/
アメリカ
3ヶ国についてはそれぞれが別々に立候補するのではないかとの憶測も流れたが、最終的に3ヶ国共同開催で立候補する意向が報じられ[42]、2017年4月10日に3ヶ国共同開催案により立候補する意向が正式表明された[43][44][45]。カナダとメキシコで10試合ずつ、アメリカで準々決勝以降の全試合を含む残り60試合を開催する提案内容となっている[45]。
この提案が実現すれば、2026年大会は3ヶ国で開催される初めての大会となる。メキシコは1970大会と1986年大会の開催地であり、実現すれば3回目の男子大会開催となる初めての国となる[46]。カナダは男子大会としては初、女子大会を含めると2015年大会以来2回目の開催となる。アメリカは1994年男子大会、1999年女子大会、2003年女子大会のホスト国であり、男女通算では4回目の開催となる。
評価報告書
FIFAが重視する主な要件としては、セキュリティ面(GTI)、財政面(外債残高)、ホスピタリティ面(UNツーリズム統計)がある。
2018年4月に、評価タスクフォースが両候補を視察し、施設とインフラ整備等を調査した。5月にモロッコは不備な点があるとして再視察された。評価タスクフォースは、5月30日、両候補の事業計画のヒアリング及び質疑応答、31日に両候補のワールドカップ招致委員会のプレゼンを受けた後、上記の評価基準及び評価手順に則り、2026 FIFAワールドカップ立候補国評価レポート(以下、評価レポート)を作成し、6月1日に公表した[47]。評価レポートでは、最低条件を2点に設定して5点満点で評価。両候補ともに合格ラインを超えたものの、3か国共催側は4点、モロッコ側は2.7点であった[47]。さらに、開催経費や入場券販売、警備などを含めた総合評価は3か国共催側が500点満点中の402.8点で、モロッコ側は274.9点であった[47]。大会関連施設及びインフラは、3か国共催側は「既に運営可能なレベル」で、モロッコ側は「大会関連施設のほとんどが新設で大幅なインフラ整備が必要」と記述された[47]。また、大会収益は、3カ国共催側は143億ドル(約1兆5662億円)で、モロッコ側は72億ドル(約7900億円)が見込まれると評価レポートに記述された[47]。なお、評価レポート発表時点で、競技開催のための最低限の技術的要件に不合格の場合は、FIFA事務局 (FIFA general secretariat) が、その候補を除外していた[48]。
投票
2026 FIFAワールドカップ開催国投票は、2018 FIFAワールドカップ開幕戦前日の2018年6月13日のロシアの首都モスクワでの第68回FIFA総会の13番目の議題として行われた。投票手続き[49]に則り、次のような手順で行われた。最初は議長の紹介および評価レポートの報告、提出された両候補の開催提案書の両候補のプレゼンがある。各プレゼンは最大15分に制限される。プレゼン後、質問など発言の要請があれば、協議を行う。要請が無ければあるいは協議後、投票に入る。立候補国4カ国と資格停止のガーナ(汚職発覚に伴う協会の自主解散と政府による関連組織の解散命令が下されていた。当該項参照)を除いた残り206協会での投票となる。「3か国共催」か「モロッコ単独開催」か「該当国なしとして、両候補以外の国で招致活動やり直し (None of the bids) 」かを投票する。投票は電子投票で行うことができる。投票しなかった場合は、棄権となる。最初の投票で、両候補の内、棄権及び無効票を除く有効投票数の50%以上の票を獲得し、最多票を得た側が2026 FIFAワールドカップ開催国となる[49][50]。最初の投票で、「該当国なしとして、両候補以外の国で招致活動やり直し」が棄権及び無効票を除く有効投票数の50%以上の票を獲得し、最多票を得た場合は、立候補4カ国以外の招致活動を再開する。最初の投票で、3つのいずれも、棄権及び無効票を除く有効投票数の50%以上の票を得なかった場合は、「該当国なしで招致活動やり直し」の選択は破棄し、「3か国共催」か「モロッコ単独開催」のどちらかを2回目の投票で決める。2回目の投票で、棄権及び無効票を除く有効投票数の50%以上の票を獲得し、最多票を得た側が開催国となる。但し、棄権及び無効票を除く有効投票数の50%以上の票を獲得できなかった場合は、評価レポート[47]で優れていた側が、開催国となる[49]。加盟協会は、規模やサッカーの強さに関係なく、1票のみ持つ。その協会所属の代表者本人のみに投票権があり、代理人及び手紙による投票はできない。また、FIFA理事は、任期中は協会の代表者にはなれない[4]。
2018年6月13日午前9時(日本時間同日午後3時)から開始される第68回FIFAモスクワ総会は、FIFA公式YoutubeチャンネルFIFATVで生中継された[51]。開催国投票は13番目の議題[52]で、実際の投票は両候補のプレゼン後に、午後1時50分(日本時間同日午後7時50分)から電子投票で行われた[53]。投票の内訳(どの協会がどこに投票したか)は同日、FIFA公式HPで公開された[53]。2017年1月10日のFIFA評議会で正式決定していた48カ国出場[54]も、確認された[55]。
投票要件
FIFA加盟211協会のうち206協会に投票権が与えられた。投票権が与えられなかった5協会の内訳は下記の通り。
なお、アメリカ合衆国の海外領土に属する3協会(グアム、プエルトリコ、ヴァージン諸島)は投票権を有しながら欠席し、アメリカ領サモアは出席し投票を行っている[59]。
投票の結果、3ヶ国共同開催が134票、モロッコが65票となり、3ヶ国共同招致案が採択された。3ヶ国共同開催案に対しては、所属連盟であるConcacaf加盟国からは反対票が投じられなかった一方、モロッコの招致提案に対しては、所属連盟であるCAF加盟国のうち11ヶ国が反対票を投じた。ブラジルは所属するCONMEBOLが3ヶ国共同招致案を推奨していたにもかかわらず、秘密投票だと勘違いしてモロッコの招致案に投票したと報じられている[60][61]。イランは「該当国なし (None of the bids) 」と投じ、 キューバ・スロベニア・スペインは棄権した[62]。
協会ごとの投票結果
| 大陸連盟 | 3ヶ国共催に投票 | モロッコに投票 | その他 |
|---|---|---|---|
| AFC | 33協会 (右記以外) |
11協会 | 該当国なし - 1協会 |
| CAF | 11協会
|
41協会 (左記以外) |
|
| Concacaf | 29協会 (右記以外) |
0協会 | 棄権 - 1協会
|
| CONMEBOL | 9協会 (右記以外) |
1協会 | |
| OFC | 10協会 | 0協会 | |
| UEFA | 41協会 (右記以外) |
12協会 | 棄権 - 2協会 |