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前骨髄球性白血病タンパク質

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前骨髄球性白血病タンパク質(ぜんこつずいきゅうせいはっけつびょうタンパクしつ、英: promyelocytic leukemia protein、略称: PML)は、PML遺伝子のタンパク質産物であり、 MYL、RNF71、PP8675、TRIM19[5]の名称でも知られる。PMLタンパク質はがん抑制タンパク質であり、PMLボディ(PML体)と呼ばれる核内構造体(英語版)の組み立てに必要とされる。PMLボディは細胞核のクロマチン間に形成される。これらの構造体は哺乳類の核に存在し、1つの核には1から30個程度存在する[5]。PMLボディは多くの細胞調節機能を持っており、プログラム細胞死、ゲノム安定性、抗ウイルス機能、細胞分裂の制御などに関与している[5][6]。PMLの変異や欠失、それに伴うこれらの過程の調節異常は、多くの種類のがんと関係している[5]。

PDBオルソログ検索: RCSB PDBe PDBj
記号PML, MYL, PP8675, RNF71, TRIM19, Promyelocytic leukemia protein, promyelocytic leukemia, Probable transcription factor PML nuclear body scaffold
染色体15番染色体 (ヒト)[1]
概要 PML, PDBに登録されている構造 ...
PML
PDBに登録されている構造
PDBオルソログ検索: RCSB PDBe PDBj
PDBのIDコード一覧

1BOR, 2MVW, 2MWX, 4WJN, 4WJO

識別子
記号PML, MYL, PP8675, RNF71, TRIM19, Promyelocytic leukemia protein, promyelocytic leukemia, Probable transcription factor PML nuclear body scaffold
外部IDOMIM: 102578 MGI: 104662 HomoloGene: 13245 GeneCards: PML
遺伝子の位置 (ヒト)
15番染色体 (ヒト)
染色体15番染色体 (ヒト)[1]
15番染色体 (ヒト)
PML遺伝子の位置
PML遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点73,994,673 bp[1]
終点74,047,827 bp[1]
遺伝子の位置 (マウス)
9番染色体 (マウス)
染色体9番染色体 (マウス)[2]
9番染色体 (マウス)
PML遺伝子の位置
PML遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点58,125,359 bp[2]
終点58,157,069 bp[2]
遺伝子オントロジー
分子機能• SUMO binding
• cobalt ion binding
• 金属イオン結合
• protein homodimerization activity
• zinc ion binding
• 血漿タンパク結合
• SMAD binding
• DNA結合
• transcription coactivator activity
• protein heterodimerization activity
• ubiquitin protein ligase binding
• SUMO transferase activity
細胞の構成要素• 細胞質
• 細胞質基質
• エンドソーム
• 核膜
• 膜
• 細胞核
• 核マトリックス
• 核小体
• 小胞体
• early endosome membrane
• 細胞内
• 核質
• PML body
• endoplasmic reticulum membrane
• extrinsic component of endoplasmic reticulum membrane
• ヘテロクロマチン
生物学的プロセス• regulation of protein phosphorylation
• positive regulation of histone deacetylation
• intrinsic apoptotic signaling pathway in response to oxidative stress
• myeloid cell differentiation
• DNA damage response, signal transduction by p53 class mediator resulting in cell cycle arrest
• negative regulation of telomere maintenance via telomerase
• 周期的プロセス
• interferon-gamma-mediated signaling pathway
• negative regulation of telomerase activity
• positive regulation of telomere maintenance
• 細胞老化
• regulation of cell adhesion
• defense response to virus
• intrinsic apoptotic signaling pathway in response to DNA damage
• positive regulation of extrinsic apoptotic signaling pathway
• activation of cysteine-type endopeptidase activity involved in apoptotic process
• transforming growth factor beta receptor signaling pathway
• proteasome-mediated ubiquitin-dependent protein catabolic process
• negative regulation of cell population proliferation
• positive regulation of defense response to virus by host
• アポトーシス
• response to cytokine
• cell fate commitment
• negative regulation of translation in response to oxidative stress
• regulation of transcription, DNA-templated
• common-partner SMAD protein phosphorylation
• branching involved in mammary gland duct morphogenesis
• extrinsic apoptotic signaling pathway
• positive regulation of fibroblast proliferation
• positive regulation of apoptotic signaling pathway
• endoplasmic reticulum calcium ion homeostasis
• transcription, DNA-templated
• PML body organization
• negative regulation of cell growth
• intrinsic apoptotic signaling pathway by p53 class mediator
• 自然免疫
• viral process
• response to gamma radiation
• response to UV
• regulation of calcium ion transport into cytosol
• positive regulation of protein localization to chromosome, telomeric region
• fibroblast migration
• タンパク質輸送
• 免疫系プロセス
• タンパク質の安定化
• positive regulation of apoptotic process involved in mammary gland involution
• circadian regulation of gene expression
• regulation of MHC class I biosynthetic process
• regulation of circadian rhythm
• negative regulation of transcription, DNA-templated
• maintenance of protein location in nucleus
• cellular response to interleukin-4
• intrinsic apoptotic signaling pathway in response to DNA damage by p53 class mediator
• 低酸素症への反応
• regulation of double-strand break repair
• intrinsic apoptotic signaling pathway in response to endoplasmic reticulum stress
• retinoic acid receptor signaling pathway
• negative regulation of angiogenesis
• negative regulation of ubiquitin-dependent protein catabolic process
• entrainment of circadian clock by photoperiod
• negative regulation of mitotic cell cycle
• positive regulation of MHC class I biosynthetic process
• positive regulation of transcription by RNA polymerase II
• regulation of signal transduction by p53 class mediator
• cellular response to leukemia inhibitory factor
• protein import into nucleus
• protein-containing complex assembly
• positive regulation of nucleic acid-templated transcription
• protein sumoylation
出典:Amigo / QuickGO
オルソログ
種ヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)
NM_033250
NM_002675
NM_033238
NM_033239
NM_033240

NM_033244
NM_033246
NM_033247
NM_033249

NM_008884
NM_178087
NM_001311088

RefSeq
(タンパク質)
NP_002666
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NP_150242
NP_150243
NP_150247

NP_150249
NP_150250
NP_150252
NP_150253

NP_001298017
NP_032910
NP_835188

場所
(UCSC)
Chr 15: 73.99 – 74.05 MbChr 15: 58.13 – 58.16 Mb
PubMed検索[3][4]
ウィキデータ
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歴史

急性前骨髄球性白血病(APL)の患者を対象としたGrignaniらによる1996年の研究での知見まで、PMLの機能はあまり理解されていなかった。この研究においてAPLの患者の90%の核型で相互転座が起きており、17番染色体(英語版)のレチノイン酸受容体(RARα)遺伝子と15番染色体のPML遺伝子が融合していることが初めて明らかにされた。その結果生じたPML/RARα融合遺伝子は正常なPMLとRARαの機能を妨げ、血液の前駆細胞の最終分化を阻害して、がんの進行のための未分化細胞の蓄えが維持されるようになることが示された[7]。この病理学的文脈への示唆によって、PML遺伝子は大きく注目されることとなった。

構造

PML遺伝子はおよそ53kbの長さで、15番染色体の長腕(q)上に位置している。10個のエクソンから構成され、選択的スプライシングによって15種類以上のアイソフォームが生じることが知られている[8][9]。アイソフォーム間ではC末端ドメインに差異が存在する一方、遺伝子の最初の3つのエクソンによってコードされているtripartiteモチーフはすべてのアイソフォームに共通している[10]。tripartiteモチーフは、亜鉛結合性のRINGフィンガードメイン、B1、B2ボックスと名付けられた2つの亜鉛結合ドメイン、そしてRBCC二量体化ドメインと呼ばれる2本のαヘリックスからなるコイルドコイルドメインを含んでいる[9]。

PML遺伝子は、転写、翻訳、翻訳後の段階で制御されている。遺伝子のプロモーター領域は、STAT、インターフェロン調節因子(英語版)、p53の標的配列を含んでおり、細胞機能への関与の複雑さが示唆される[11]。選択的スプライシングによる調節に加え、タンパク質産物はアセチル化やリン酸化といった翻訳後修飾を受ける。C末端はカゼインキナーゼ(英語版)によってリン酸化されるセリン残基を含んでおり、他にもリン酸化の標的となるチロシン残基やスレオニン残基がいくつか存在する[9]。PMLのリン酸化は、SUMO結合酵素(SUMO-conjugating enzyme)UBC9(英語版)によるRINGドメインへのSUMOタンパク質の付加を引き起こす[5]。このSUMO化は細胞周期依存的に行われる。PMLは自身や他のSUMO化タンパク質との相互作用に必要なSUMO結合ドメインを含んでいる[9]。PMLのユビキチン化とSUMO化の双方がプロテアソームによる分解を誘導し、PMLの細胞内における不安定性の調節の手段として用いられている[11]。

PMLは細胞質で翻訳されるが、N末端に核局在化配列が存在するため核内へ輸送される[9]。核内では、SUMO化されたPMLはRBCCドメインどうしの相互作用によって多量体化する。これによって核マトリックス(英語版)に結合するリング状の構造が形成され、PMLボディが形成される。リング状のタンパク質多量体の端からはタンパク質の糸がリングから伸びてクロマチン繊維と接触しており[5]、PMLボディの核内での位置とタンパク質の安定性が維持されている。アポトーシス時のようにクロマチンがストレスを受けると、PMLボディは不安定となり微小な構造へと再配置される。これらの微小構造はPMLタンパク質を含んでいるが、通常PMLボディに結合している相互作用タンパク質の多くは含まれていない[5][12]。

PMLボディは核内でランダムに分布しているのではなく、他の核内構造体であるスプライシングスペックルや核小体、または遺伝子に富み転写が活発に行われている領域と結合しているのが一般的である。特に、PMLボディはMHCクラスI遺伝子クラスターやp53などの遺伝子と結合することが示されている。この結合の正確な意義は不明であるが、PMLボディが特定の遺伝子部位の転写に影響を与えている可能性が示唆されている[13]。

機能

PMLボディはさまざまな機能を持っており、細胞の調節機能に大きな役割を果たす。PMLボディはそこに局在するさまざまなタンパク質との相互作用を通じて広範囲の機能を果たす。PMLボディで行われる特異的な生化学的機能は、他のタンパク質のSUMO化のためのE3リガーゼとしての機能であると考えられている[5]。しかしながら実際の機能はいまだ不明であり、PMLボディの機能については、核内のタンパク質の貯蔵、タンパク質が蓄積して翻訳後修飾が行われる場、転写への直接的な関与、クロマチンの調節など、いくつかのモデルが提唱されている[5]。

PMLボディによる転写調節機能としては、PMLボディはいくつかの遺伝子の転写を増加させ、一方で他の遺伝子については転写を抑制することが示されている[5]。PMLボディはクロマチンのリモデリングの過程を通じてこれらの機能を果たしていることが示唆されているが、不確実である[5]。PMLボディが核内における位置や、核内の特定の領域で相互作用するタンパク質、またはPMLボディに含まれるアイソフォームによって機能が異なる構造体である可能性もある。

この転写調節に加えて、タンパク質複合体がDNA損傷反応を媒介することがPMLボディの観察から強く示唆されている。例えば、PMLボディの数とサイズはDNA損傷を感知するATMやATRの活性の増加とともに増加する。この核内構造体はDNA損傷部位に局在し、そこにはその後DNA修復や細胞周期チェックポイントに関係するタンパク質が共局在する[5][13]。PMLボディがDNA修復機構と相互作用する目的はいまだ不明であるが、DNA修復タンパク質とPMLボディの共局在はDNAが損傷してからしばらく経ってからであるため、PMLボディがDNAの修復に直接関与しているとは考えにくい。むしろ、PMLボディはDNA修復に関与するタンパク質の貯蔵部位としての機能、直接的な修復の調節、またはDNA修復とチェックポイント反応との媒介によって、DNA損傷への反応を調節している可能性がある[5]。しかし、PMLボディがチェックポイント反応の媒介、特にアポトーシスの誘導において役割を果たしていることは明らかである。

PMLはp53依存的・非依存的アポトーシス経路の双方において重要な役割を果たす。PMLはp53タンパク質をPMLボディに呼び寄せて活性化を促進するとともに、MDM2やHAUSP(Herpes virus associated ubiquitin-specific protease)といったp53の調節因子を阻害する[5]。アポトーシスの誘導にp53を利用しない経路においては、PMLはCHK2と相互作用し、自己リン酸化による活性化を誘導する[5]。これらの2つのアポトーシス経路に加えて、Fasによって誘導されるアポトーシスもFLASH(FLICE-associated huge protein)の放出に関してPMLボディに依存している。FLASHはその後ミトコンドリアに局在し、カスパーゼ8の活性化を促進する[5]。

他の研究ではPMLボディの細胞老化(senescence)、特にその誘導への関与が示唆されている[5]。PMLボディは、細胞老化特異的ヘテロクロマチン構造(senescence-associated heterochromatin foci、SAHF)など、老化した細胞における特定のクロマチンの構造的特徴の形成に関与していることが示されており、これらは成長促進因子や遺伝子の発現を抑制すると考えられている。これらの特徴の形成はヒストンシャペロンであるHIRAとASF1によるものであり、ここでのクロマチンリモデリング活性はPMLボディによって媒介されている。HIRAはDNAとのいかなる相互作用よりも前にPMLボディに局在している[5]。

がんにおける役割

PMLの機能喪失変異、特にAPLにおけるPML遺伝子とRARα遺伝子の融合によるものは、がん抑制性のいくつかのアポトーシス経路、特に上述したp53依存的経路との関係が示唆されている[5][14]。PMLの機能喪失は、細胞の生存と増殖に有利となり、SAHFの喪失を通して細胞老化を妨げ、細胞分化をブロックする[14]。

ヒトとマウスの双方において、PMLの機能喪失によって腫瘍形成能が増大することが示されている。PMLの破壊は広範な種類のがんで生じており、より転移性の高い腫瘍となり、それに応じて予後も悪化する[14]。アポトーシスにおける重要性の他、PMLの不活性化は細胞にさらなる遺伝的損傷の蓄積させることによって、腫瘍の進行を促進する可能性があると考えられている。ゲノムの安定性に関与する多くのタンパク質が損傷部位への標的化をPMLボディに依存しており、そのためPMLの喪失は細胞内での修復効率の低下をもたらす[14]。

細胞周期における役割

PMLボディの分布と濃度は細胞周期の進行によって変化する。G0期では、SUMO化されたPMLボディはほとんど存在しないが、G1期からS期、G2期へと進行するにつれて、その数は増加する。有糸分裂中のクロマチン凝縮の際、PMLの脱SUMO化によって多くの結合タンパク質の解離が引き起こされ、PMLは自己凝集し、MAPP(mitotic accumulations of PML proteins)と名付けられたいくつかの巨大な凝集体を形成する[5]。数の変化に加え、PMLボディは周期の段階に応じて異なるタンパク質を結合しており、その構成に関しては生化学的に大きな変化が起こっている[5]。

細胞周期のS期の間、クロマチンの足場がDNA複製を通じて変化するためPMLボディはばらばらになる。PMLボディの小断片への物理的な解体はG2期においてPMLボディがより多く形成されるよう促進するが、一方でPMLの発現レベルは上昇していない[5]。この過程はPMLボディが結合している染色分体の方向性の維持、またはDNA複製フォークの完全性の監視に役立っている可能性があると考えられている[5]。

抗ウイルス機能

インターフェロンα/β、γの存在下でPMLの転写は増加する。このPMLの発現上昇に伴うPMLボディの数の増加は、PMLボディへのウイルスタンパク質の隔離をもたらすと考えられている。PMLボディに取り込まれたタンパク質はその後SUMO化され、ビリオンは恒久的に不活化される[6]。

相互作用

PMLタンパク質は以下のタンパク質と相互作用することが示されている。

出典

関連文献

関連項目

外部リンク

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