エウローペー
ギリシア神話の人物
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エウローペー(古希: Εὐρώπη, Eurōpē)は、ギリシア神話に登場する女性である[1]。ラテン語ではエウローパ(羅: Eurōpa)。日本語では長母音記号を省略しエウロペ[2]、エウロパとも表記される。地名のヨーロッパや木星の第6衛星エウロパはエウローペーの名前にちなんでいる。


ポイニーケーの古代都市テュロスの王アゲーノールとテーレパッサの娘で、カドモス、キリクス、ポイニクス、タソスと兄弟。ゼウスとの間に3人の息子ミーノース、ラダマンテュス、サルペードーンをもうけた[3]。エウローペーは本来ミーノーア系の大地の女神だったと考えられている[4]。
概要
テュロスの王女として生まれたエウローペーは美しく成長した。あるとき、彼女を見たゼウスは一目で恋に落ち、彼女を誘惑するために自身を白い牡牛に変え、エウローペーが侍女と花を摘んでいるときに近づいた。そして白い牡牛を見つけたエウローペーがその背にまたがると、白い牡牛は海を渡ってエウローペーをクレーテー島へと連れ去った[3][5]。そこでゼウスは本来の姿を現し、エウローペーとの間にミーノース、ラダマンテュス、サルペードーンをもうけた。その後、クレーテー王アステリオスが3人の息子たちの義理の父になった[3]。
ゼウスはエウローペーにタロースと必ず獲物をとらえる猟犬となくなる事のない投げ槍の、3つの贈り物を与えた。その後ゼウスは再び白い雄牛へと姿を変え、星空へと上がり、おうし座になった。またエウローペーが海を渡った西方の地域は彼女の名前から「ヨーロッパ」 (Europa) と呼ばれるようになった[6]。なお、エウローペーの兄弟たちは彼女を捜索する旅に出たが発見することが出来ず、それぞれが赴いた土地の支配者となった。特に有名なのはカドモスで、トラーキアにとどまったのち[3]ギリシアに渡り、テーバイ市を創建した[7]。
西洋美術におけるエウローペー
エウローペーは古代ギリシア・ローマ時代には壺絵、モザイク、フレスコ画などで描かれた。それらの多くは牡牛に変身したゼウスによってエウローペーが連れ去られる場面を描いている。この点はルネサンス期においても同じだが、しばしば祝婚、海上進出、領土拡大、子孫繁栄などの意味ともに描かれた。祝婚の例としては、リベラーレ・ダ・ヴェローナが描いたカッソーネの板絵が挙げられる(15世紀後半)。カッソーネとは婚礼用の家具で、その細長い側面に海を渡る牡牛とエウローペーの姿が描かれている。1566年には、コジモ1世の子フランチェスコとジョヴァンナ・ダズブルゴとの結婚を記念する祝賀パレードの山車にエウローペーが描かれた。その一方、ジョルジョ・ヴァザーリがパラッツォ・ヴェッキオの室内装飾で計画した「ユピテルの間」のタペストリーのように、政治的な意味を伴うこともあった(1555年頃)。このタペストリーにはエウローペーが描かれたが、その意図についてヴァザーリはコジモ1世がピオンビーノを占領したことによって、フィレンツェがエルバ島に進出したことを表すと説明している[9]。
エウローペーはオウィディウスの『変身物語』をはじめとする文学作品に挿絵として描かれ、ルネサンス以降、西洋絵画においてもエウローペーは人気のある主題となった。絵画の多くはオウィディウスから主題を取っており、『エウロペの略奪』(Rape of Europe)あるいは『エウロペの誘拐』(Abduction of Europa)などと題されている。最も有名な絵画作品はヴェネツィア派の巨匠ティツィアーノ・ヴェチェッリオの『エウロパの略奪』だが、ここに描かれたエウローペーのポーズは文献的、図像的に説明することが困難であるため、画家の独創によると見なされている。同じヴェネツィア派のパオロ・ヴェロネーゼは異時同図法を用い、牡牛がエウローペーを連れ去る過程を前景・中景・後景の3つに分けて描き込んでいる。また他にもよく知られたものとしてグイド・レーニ、レンブラント・ファン・レイン、クロード・ロラン、ギュスターヴ・モロー、20世紀に入ってからはフェリックス・ヴァロットン、ヴァレンティン・セローフといった画家がこの主題を描いている。
ギャラリー
- パオロ・ヴェロネーゼ 1578年頃 ドゥカーレ宮殿所蔵
- レンブラント・ファン・レイン 1632年 ゲティ・センター所蔵
- ルカ・ジョルダーノ 1675年-1677年 エルミタージュ美術館所蔵
- ノエル=ニコラ・コワペル 1727年 フィラデルフィア美術館所蔵
- フランソワ・ブーシェ 1732年-1734年 ウォレス・コレクション所蔵
- フランソワ・ブーシェ 1747年 ルーヴル美術館所蔵
- フェリックス・ヴァロットン 1908年 ベルン美術館所蔵
- ヴァレンティン・セローフ 1910年 トレチャコフ美術館所蔵
系図
| アゲーノール | テーレパッサ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| カドモス | エウローペー | ゼウス | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| クレーテーの牡牛 | パーシパエー | ミーノース | サルペードーン | ラダマンテュス | アルクメーネー | アイゲウス | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ミーノータウロス | デウカリオーン(en) | アンドロゲオース | グラウコス | ディオニューソス | アリアドネー | テーセウス | パイドラー | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| カトレウス | イードメネウス | クレーテー | モロス | アカマース | デーモポーン | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| アーエロペー | アトレウス | クリュメネー | ナウプリオス | メーリオネース | トアース | ミュリーネー | スタピュロス | ペパレートス | オイノピオーン | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| アガメムノーン | メネラーオス | パラメーデース | オイアクス | イアーソーン | ヒュプシピュレー | モルパディアー | パルテノス | ロイオー | メロペー | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| エウネーオス | ネブロポノス | トアース | アニオス | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||