オタネニンジン
セリ目ウコギ科の植物
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オタネニンジン(御種人蔘)は、ウコギ科の多年草である[8]。原産地は中華人民共和国の遼東半島から朝鮮半島の地域で、中国東北部やロシア沿海州で自生する。
| オタネニンジン(高麗人参) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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| 分類(APG III) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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| 学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
| Panax ginseng C.A.Mey. (1842) [3][4] | ||||||||||||||||||||||||||||||
| 和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
| オタネニンジン(御種人蔘)[1][2] チョウセンニンジン(朝鮮人蔘)[3] | ||||||||||||||||||||||||||||||
| 英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
| Chinese ginseng[5][6][7] Korean ginseng[6][7] Ginseng |
薬用や食用に供し、チョウセンニンジン(朝鮮人蔘)、コウライニンジン(高麗人蔘)[9]、ほかに人蔘(にんじん)など称する[9]。野菜のニンジンはセリ科で本種の近縁種ではない。
名称

本種は元来「人蔘」と称され、中国、朝鮮半島、および日本で旧くから広く知られる薬草であった。枝分かれした根茎の形からヒトの姿が類推されて名称の由来とされる。
10世紀前半の『和名類聚抄』で巻20「草類」に、人参に関して和名が「加乃仁介 久佐」(カノニケ草)と記される[10]。
朝鮮語では漢字語の「인삼」を多用し、特に貴重な野生物を「山蔘」(산삼)[11][12]と称する。別の固有語名称で「シム」(심)もあるが、現代朝鮮語では職業「山蔘採取者」の意味で「シンマニ」(심마니)、感嘆詞で「良いものを見つけた」の意味で「シンバッタ」(심봤다!)、などが僅かに残る[11][12]。中国東北部では「木槌」「洗濯棒」の意味で「棒槌」(bàngchuí)[13]と称する。
御種の由来
「御種人蔘」が冠する「御種」(おたね)は由来が諸説伝わる。
江戸時代の3代将軍徳川家光の時代に、関東地方の日光で栽培に成功し、江戸幕府が各藩に「種子」を与えて「御種人参」と称した[14]。
江戸幕府の8代将軍徳川吉宗が対馬藩に命じて朝鮮半島で種子と苗を入手させ、試植、栽培して結実後に各地の大名に種子を分け与えて栽培を奨励し、これを敬って「御種人参」と称した。[15]。
日本国内で栽培成功以前の「人蔘」は、朝鮮半島から輸入した。
人蔘とニンジン
元来「人蔘」は本種を指したが、江戸時代以降に舶来野菜として広まったセリ科の根菜“胡蘿蔔”[注 1](こらふ、現代のニンジン)は、本種と同じく肥大化した根茎を使用するため、類似視して「せりにんじん」など称した[16]。
「せりにんじん」は時代が進むと基本野菜として広く普及し、「にんじん」と称する事例が多くなった。時代とともに医学が西洋化すると本種の使用例は減少し、日本語で「人蔘」は「せりにんじん」を指すことが一般となった。
のちに区別を明らかにするため、本種は明示的に拡張した「朝鮮人蔘」と称することが一般となった(レトロニム)。
戦後に日本の人蔘取扱業者は、輸入元の大韓民国で忌避される「朝鮮」を避けて「薬用人蔘」と称したが、後年に「薬用」は薬機法に抵触すると行政指導を受けて「高麗人蔘」へ切り替えた。
本種オタネニンジンとニンジンの各国語呼称
特徴
産地 栽培 加工
古くから薬効が知られて珍重されたが栽培は困難で、18世紀初頭の李氏朝鮮で初めて成功したとされるが、それよりも100年以上前の第3代征夷大将軍徳川家光の代[14]、あるいは遅くとも8代将軍徳川吉宗の命により享保14年(1729年)までに、日本で栽培を成功している[19]。韓国は忠清南道錦山郡と仁川広域市江華郡、北朝鮮は開城特別市、それぞれが産地として有名である。中国では長白山(白頭山)の麓で「長白山人蔘」として栽培される[15]。
21世紀初頭の栽培地は、中国東北部、朝鮮半島、日本の長野県、福島県、島根県などである[20]。日本は会津地方、東信地方、大根島などが産地として知られ[15]、近年は栽培農家の高齢化などを原因に栽培面積が急速に減少した[21]。 2〜6年ほど栽培して根茎を収穫し、5年以上が良品とされるが栽培は難しい[9]。日本に野生はなく、栽培地は小屋掛けで直射日光と降雨を除け、多くは6年余栽培する。皮を剥ぎ、根を天日で乾燥させた生薬を白参(はくじん、ペクサム、백삼 / 白蔘)、皮を剥がずに蒸して乾燥させた生薬を紅参(こうじん、ホンサム、홍삼 / 紅蔘)と称する。紅参は、収穫後に選別・洗浄を行い、蒸し工程を経てひげ根の分離、天日乾燥や成型を行い、さらに外観・内部組織・重量などの基準による選別を経て圧搾・包装される工程で製造される。日本薬局方は根を蒸した生薬を紅参としている[15]。濃い砂糖水に浸漬したのちに乾燥した糖参(とうじん、タンサム、당삼 / 糖蔘)は、白参に分類される。
栽培よりも天然が珍重され、野生の採取は非常に困難で希少性から高値で取引される。
高麗人参の実は食用や化粧品として加工される。高麗人参の結実は4年毎で流通量は非常に少なく希少性が高い。ジンセンベリー (ginseng berry) とも称し、高麗人参よりも多くのジンセノサイドを含有する場合がある。成熟した実は赤く、ポリフェノールを多く含む。
利用法

生薬
民間療法
生薬の「人参」として古くから利用され、主要な薬用部位は根茎で、有用成分にオタネニンジンの学名 Panax ginseng から採名されたジンセノサイド (ginsenoside) などの化合物群が挙げられる[注 2]。
民間療法は、1日量 1 - 3 グラム (g) の人参を400 ミリリットル (mL) の熱湯で30分煎じ、3回に分けて服用する[9]。人参酒は、紅参か白参 20 - 100 gまたは生のオタネニンジン 80 - 90 gを、35 摂氏 (℃) の焼酎 1 リットル (L) に浸漬したのちに冷暗所で 1 - 3 か月間保存し、1日に約 20 mLを目安に飲用する[15]。1回浸漬した人参を再度6か月間浸漬して2回目を作ることもある[15]。
高麗人参を浸漬した酒類は薬機法で「薬味酒」に分類され、薬効のある草根木皮などを浸漬した酒または混成酒類(アルコール飲料)として酒販店などで販売する。薬局が販売する「薬用酒」は薬機法が規定する厚生大臣認可製品で、「薬味酒」と異なる[22]。
漢方方剤
漢方薬で他の生薬と組み合わせてもちいる。白参も紅参も原料は同じオタネニンジンだが、収穫後の処理の仕方が異なり、これらは基本的に異なる生薬として取り扱う。漢方薬には「人参剤」と総称される方剤群が存在する。人参湯を始め、補中益気湯、六君子湯、小柴胡湯、参蘇飲など人参を含む漢方方剤は多様であるものの、どちらかと言えば虚証向きの方剤が多い。また、オタネニンジンの場合は、漢方でも例外的に、独参湯と言って、オタネニンジンだけを使う方剤も知られる。ただし、これは漢方薬一般に言える事で人参剤に限らず、いずれの方剤にしても証を見極めた上で使う必要がある。
食材
「개성고려인삼」(開城高麗人蔘)の表記が見られる。
日本においては、朝鮮料理の材料として用いられる他、生のまま短冊切りにして酢味噌和えにしたり、天ぷらの材料にする場合がある[15]。外国での使用例で言うと、韓国では煎じた物を人参茶(インサムチャ、人蔘茶)として飲用したり、サムゲタン(参鶏湯、蔘鷄湯)などの料理にも利用する。また、乾燥させる前の「水参」(スサム、水蔘、수삼)をスライスし、蜂蜜に漬けて食べたりもする。人蔘入りの栄養ドリンクやガムなども市販されている。北朝鮮では開城の人蔘酒が主要な輸出品の1つで、韓国でも京畿道坡州市の烏頭山統一展望台などで購入できる。
成分に関する研究
オタネニンジン植物個体について
胃腸虚弱や食欲不振、嘔吐、下痢、病後の回復期、疲労回復、滋養強壮に効能が有るとされてきた[23][24][15][9]。
各成分について
オタネニンジンの主要な薬用部位である根には、ジンセノサイドと呼ばれるサポニン群だけですら、少なくとも38種の化合物群が存在するとされる。プロトパナキサジオール (PPD) 系サポニンと、プロトパナキサトリオール (PPT) 系サポニンの両方を含み、PPD系ジンセノサイドであるRb1やRb2などは腸内細菌で代謝されてコンパウンドKとして体内に吸収される。腸内細菌叢は日々の状態、個体差、加齢による変化などにより、コンパウンドKへの代謝がスムーズに行われない例もある[25]。
西洋医学による見解
オタネニンジンのヒトを対象とした、西洋医学に基いた質が高いとされる試験は無く、健康的有益性を裏付ける西洋医学におけるエビデンスは限られている[26][27]。
日本の厚生労働省による見解
- これまでに報告されている朝鮮ニンジンに関するランダム化比較試験の多くは、質の高い試験ではない可能性があります。したがって、朝鮮ニンジンの健康促進効果に対する理解には限界があります。
- 朝鮮ニンジンを推奨量で短期間経口摂取する場合(最大6カ月)、多くの人では安全だと考えられます。しかし、長期安全性に関する疑問が生じており、一部の専門家は幼児、子供、妊婦および授乳期の女性に対する朝鮮ニンジンの使用に反対しています。
- 朝鮮ニンジンを含む複数の特定成分が配合された製剤を皮膚に短期間局所使用する場合は、安全だと考えられます。長期間繰り返して局所使用した場合の安全性は不明です。
- 不眠症(睡眠障害)は朝鮮ニンジンで最も多くみられる副作用です。そのほかの副作用には、月経異常、乳房痛、心拍数増加、高/低血圧、頭痛、食欲不振、消化不良などがあります。
- 朝鮮人参が血糖値に影響することを示唆するエビデンスが得られています。糖尿病の人は、朝鮮ニンジンを使用する前にかかりつけの医療スタッフに相談しましょう。
- 朝鮮ニンジンがカルシウムチャネル遮断薬などの降圧剤、スタチン、抗うつ薬といった薬剤と相互作用を有するかどうか、はっきりとはわかっていません。朝鮮ニンジンが抗凝固剤(抗凝血剤)のワルファリン(クマディン)に与える影響を調べた研究では、結果は一致していません。薬を服用している人は、朝鮮ニンジンを使用する前にかかりつけの医療スタッフに相談しましょう。
- 妊娠中の朝鮮ニンジンの経口(口から)摂取は、安全ではない可能性があります。朝鮮ニンジンに含まれる化学物質が、動物で先天異常を引き起こすことが明らかになっています。授乳中の朝鮮ニンジン摂取の安全性については、ほとんど分かっていません。
- Asher GN, Corbett AH, Hawke RL.Asher GN, Corbett AH, Hawke RL. (2017年). “Common herbal dietary supplement-drug interactions(英語サイト)”. Cochrane. 2021年3月12日閲覧。.American Family Physician.2017;96(2):101-107.
- He M, Huang X, Shuying L, et al.He M, Huang X, Shuying L, et al. (2018年). “The difference between white and red ginseng: variations in ginsenosides and immunomodulation(英語サイト)”. Cochrane. 2021年3月12日閲覧。.Planta Medica.2018;84(12-13):845-854.
- Panax ginsengNatural Medicines website.Accessed at naturalmedicines.therapeuticresearch.com on November 25, 2019.[Database subscription].
- Shergis JL, Zhang AL, Zhou W, et al.Shergis JL, Zhang AL, Zhou W, et al. (2013年). “Panax ginseng in randomised controlled trials: a systematic review(英語サイト)”. Cochrane. 2021年3月12日閲覧。.Phytotherapy Research.2013;27(7):949-965.
監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日
厚生労働省の見解は、米国の論文を参照して大野氏にがまとめたもので「本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。」と添え書きがある[28]。
他の生薬との関係
慣用句
- 「人参で行水」:高価な高麗人参の煎じ汁を浴びるように飲む、の例えから、金に糸目をつけず医薬の限りを尽くして治療をすること[29]。
- 「人参飲んで首くくる」:高価な高麗人参を服用して病が治ったのはいいが、支払いに窮して首を吊ってしまう。身分不相応な行い、後先を見ない行いを戒める言い回し。