ガス人間第一号
1960年に公開された日本の特撮映画、その舞台版、及びリブート版配信ドラマ
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『ガス人間㐧1号』[注釈 3](ガスにんげんだいいちごう、英題:The Human Vapor[出典 2][注釈 1])は、1960年12月11日に公開された日本の特撮映画[出典 3]。製作[出典 4]・配給[出典 5]は東宝。監督は本多猪四郎、主演は三橋達也。
カラー、東宝スコープ[9][13][注釈 4]。上映時間は91分[出典 6]。併映は『金づくり太閤記』[出典 7](主演:加東大介、監督:川崎徹広[21])。
変身人間シリーズの第3作[出典 8][注釈 5]。自身をガス化できる異能者「ガス人間」による完全犯罪を描いたSFスリラーにガス人間とヒロインの悲恋を絡めた本作品は、本多の代表作にも数えられる[24][20]。
ストーリー
1960年7月6日[注釈 6]、吉祥寺の銀行で強盗殺人事件が発生し、犯人の自動車は五日市街道の崖から転落するが、放置されたその車内に犯人の姿はなかった[19][17]。付近を捜索する警視庁の岡本賢治警部補は寂びれた屋敷に迷い込み、日本舞踊の没落した春日流家元の美女・春日藤千代の姿を目撃する[出典 9]。
数日後、再び五日市街道付近で強盗殺人事件が発生するが、今回は密室状態の金庫室から大金が奪われたうえ、金庫内にいた銀行員が気管に謎のガスを詰められて窒息死させられるという、前回以上に不可解な犯行だった[20]。
その後、都内で三度目の強盗事件が発生して犯人が現行犯逮捕されるが、一度目と二度目の事件で奪われた大金の隠し場所を吐こうとはしなかった。一方、貧窮していたはずの春日流は絶縁状態だった弟子たちに大金を配って呼び戻し、実行できずにいた発表会の準備を始めるなど、突然羽振りが良くなり始める[19][20]。
岡本は藤千代が事件に関与していると推理し、幼馴染でもある女流新聞記者・甲野京子と共に藤千代の身辺を捜査する[19]。その結果、藤千代の持っていた1万円札の番号と事件で盗まれた1万円札の番号が一致していることが発覚し、彼女は逮捕される[出典 9]。
事件は解決したかに思われたが、警視庁に水野と名乗る男性が自首してくる[出典 9]。水野は自らが一度目と二度目の事件の真犯人であり、三度目の事件は模倣犯に過ぎないと宣言すると、刑事たちの眼前で自身をガス化させて銀行員を殺害し、密室状態の金庫室から脱出してみせる[28]。
水野はかつて生物学の権威・佐野博士による宇宙飛行士を生み出す人体実験を受けたが、その失敗によって偶然にも自身をガス化させる能力を得た異能者「ガス人間」であり[出典 10]、これまでの犯行は恋人である藤千代の発表会を実現させ、世間に彼女を再評価させるための資金を与えるためだったのだ[29][2]。
無実が証明されて釈放された藤千代は水野に凶行を止めるよう説得するが、自らの異能に全能感を抱く彼は聞き入れない。一方、世間の注目はガス人間に集まっており、一連の事件や模倣犯などによる社会不安を重く見た警察は、水野の抹殺を決断する[27]。
警察は発表会の会場である大ホールに可燃性のUMガス[注釈 7]を充満させ、その爆発による抹殺作戦に取りかかる[出典 10]。当初は藤千代とお付きの老鼓師を退避させた後に実行する手はずだったが、彼女たちに退避を拒まれたため、やむを得ずスイッチが押される[29][27]。しかし、水野が事前に起爆装置の配電盤を破壊していたため、作戦は失敗に終わる[27][20]。
やがて演舞を終えた藤千代は唯一観客席に残った水野と抱擁すると、ホールに充満したガスに隠し持っていたライターで点火し、大爆発の業火に包まれる[28]。警察や群衆が見守る中、ホールから這い出てきたガス人間は発光しながら水野の姿に戻り、藤千代の着物の欠片を握りしめたまま焼死体となって息絶えるのだった[20]。
登場キャラクター
キャスト
- 岡本賢治[出典 14]〈岡本警部補[4]〉(警部補[出典 15]):三橋達也
- 藤千代[出典 16][注釈 10](日本舞踊春日流家元[41]):八千草薫
- ガス人間・水野[出典 17](ガス人間[4]):土屋嘉男
- 甲野京子[出典 18](婦人記者[11][41]):佐多契子
- 田宮博士[39][45]:伊藤久哉
- 田端警部[39][45](捜査一課[41]):田島義文
- 稲尾刑事[出典 19]:小杉義男
- 佐野博士[39][42][注釈 11]:村上冬樹
- 猫背の老人鼓師[39](老人鼓師[4]、老鼓師[27][43]):左卜全
- 警視庁幹部1[39][40](警視庁幹部[4]):佐々木孝丸
- 葉山[39][42](東都新報重役[41]):山田巳之助
- 池田[39][27](社会部デスク[41]):松村達雄
- 銀行の支配人[39][27]:宮田羊容
- 藤田刑事[39][42]:三島耕
- 川崎[39][42](警視庁記者クラブ[41]):野村浩三
- 西山[39][42](銀行強盗犯[41]):山本廉
- 紋太夫[39][27](舞踏家[41]):松本染升
- 相見巡査[39][27]:堤康久
- 図書館の男[39][注釈 12]:山田彰
- 留置場の看守2[39][27](看守[4]):広瀬正一
- 戸部[39][42](編集局長[41]):中村哲
- 里代[39][42](紋太夫の妻[41]):塩沢とき
- 梶本[39][42](東都新報重役[41]):熊谷二良
- 大崎刑事[39][42]:坪野鎌之
- 中谷巡査[39][42]:緒方燐作
- 留置場の看守1[39][27](看守[4]、老看守[47]):榊田敬二
- 観客の男1[27](観客[4])[注釈 13]:岡豊
- 警視庁幹部2[39][27](警視庁幹部[4]):山田圭介
- 堀田刑事[39][42]:権藤幸彦
- 警視庁幹部3[39][27](警視庁幹部[4]):草間璋夫
- 鎌田[出典 20](鑑識[41]):松本光男
- 観客の男2[39][27](観客[4]):佐藤功一
- 図書館員[41](図書館上司[51][52]):安芸津広
- 銀行員[41]:澁谷英男
- 記者[41]:橘正晃
- 観客の男3[39](観客[4]):黒田忠彦
- 留置所の女[41]:藤野珠美
- 記者[41]:伊藤実、大前亘
- 藤千代の車の運転手[53][41]:速水洸
- 銀行員[41][注釈 14]:鈴川二良
- 留置場の男[55][41]:広田新二郎
ノンクレジット(キャスト)
スタッフ
製作
怪奇空想科学映画シリーズと銘打たれた検討用台本が『電送人間』の検討用台本とほぼ同時期に完成しており、当初よりシリーズ物として製作が進められた[64][65]。検討用台本では、身体をガス化する宇宙人の話であった[64]。脚本の木村武は、ジョン・メレディス・ルーカスの小説『ガス人間』に着想を得たとされ[20]、クレジットにはないが脚本には原作と明記していた[62]。
『電送人間』では当時多忙であった本多猪四郎に代わって福田純が監督を務めたが、本作品では本多が監督する予定だった『今日もわれ大空にあり』が製作中止になった[注釈 15]ため、監督を務めることとなった[64]。本多は、ガス人間の演出にあたってナメクジが煙とともに空中転移するという伝承をイメージしたという[66]。
小松崎茂は以前の東宝特撮でメカニックデザインやそれに関連したピクトリアルスケッチを手がけていたが、本作品では映画全体のストーリーボードを描いており、画面構成力の高さが映像にも反映されている[22]。
音楽は宮内國郎が担当[出典 21]。宮内は、本多や円谷から具体的な指示はなく、打ち合わせは助監督の梶田興治と行ったと述べている[67]。本作品のBGMは、後に宮内が音楽を担当した『ウルトラQ』や『ウルトラマン』に流用された[出典 22]。『ウルトラマン』の初のサウンドトラック・アルバム『ウルトラマン 総音楽集』(1991年、キングレコード)は、ボーナス・トラックとして本作品のBGMが未使用分も含めて全曲収録されたほか、ライナーノーツには本作品のデータや解説、楽曲メニューなどが記載され、本作品のサウンドトラック・アルバムを兼ねた内容になっている。
劇中で藤千代が披露する「情鬼」は、本作品のために創作された演目である[69]。藤千代役の八千草薫は、宝塚出身で日本舞踊もこなせることから起用された[69]。
水野が務める図書館のシーンは、国立国会図書館支部上野図書館にて撮影された[14]。
水野に対する藤千代の感情について、土屋は一緒に自殺したのだから水野を愛していたのだろうと解釈している[38]。一方、本多は情にほだされただけで根底では男女の愛情に至っていなかったと解釈しており、土屋の解釈については水野の立場であればそういう見方が当然だろうと述べている[69]。
英語版では、水野の独白から物語が始まるなど、原典とは異なる編集となっている[5][8]。土屋は、英題の『The Human Vapor』が好きだと述べており、原典の『ガス人間』では屁をしているようで撮影中から気に入らなかったという[8]。
特撮
本作品の特撮はガス人間の描写が中心となっており[17]、前半部分には特撮が用いられていない[3][注釈 16]。
本作品で最もスタッフが苦労したのは、人体がガス化したりガスが固まって人体に戻ったりする際の視覚効果である。特殊撮影の責任者である円谷英二は、前々作『美女と液体人間』において人間が溶かされていく描写の表現に「膨らませたゴム人形の空気を抜いてしぼませる」という方法を採用したが、本作品でも同様の方法を採用した[出典 23]。
ガス人間役の土屋嘉男の顔面および全身から形取りした本物そっくりの空気ゴム人形を作り、膨らませた状態で衣裳を着せ、ピアノ線で吊り上げて補助しながら立たせておく。衣裳の内側にはドライアイスの粒がいくつも仕込まれており、人形の足元にはぬるま湯を入れたタライがある。人形の空気を抜いてしぼませると衣裳内側のドライアイスが落下し、ぬるま湯の中に沈む。空気の減り具合に合わせてピアノ線の補助をゆるめて下ろしていけば、ゴム人形は衣裳と共にゆっくりとその場にへたり込み、襟や袖の隙間からモクモクとドライアイスの蒸気を吐き出す[23]。この仕掛けを足元のタライが写り込まないように撮影し、その上に光学合成で青白く光るガスを焼きつけ、「自由にガス化する超能力」を表現した[71][17]。このゴム人形が明確に映し出されるのは、予告編のみである[12]。ドライアイスは他のシーンでも用いており、送風などで意志を持ったガスが動いているように演出している[26]。
ガス化した状態の一部は光学合成で表現された[29]。この合成は、『電送人間』のように輪郭に合わせるのではなく、少し大きめに合成することで、膨張したガスの状態を表現している[12]。
照明を担当した高島利雄は、合成の詳細がわからないまま、ここに人が入るのだろうという曖昧な想定で光を当てていたという[72]。
クライマックスにおける会場での火災はミニチュアによって表現されているが[出典 24]、実際の建物からの映像の切り替えに違和感が少ないと評価されている[12]。
続編企画
映像ソフト
舞台版
配信ドラマ
2026年7月2日、『ガス人間』のタイトルで配信開始[90]。
経緯
2024年5月7日、韓国のWOW POINTと日本のTOHOスタジオの共同制作、『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)などの監督で知られるヨン・サンホによる脚本と製作総指揮、『ガンニバル』(2022年)などの監督で知られる片山慎三による演出、Netflixジャパンによる配信のもと、蒼井優と小栗旬が出演するリブート版『ガス人間』の制作開始が報じられた[91]。
元々はプロデューサーの馮年が「東宝は約90年の歴史があるのに、ゴジラ以外の自社IPを活用できている実感があまりなく、勿体ない」と思っていたのがきっかけでプロジェクトが立ち上がった。ヨン・サンホとの協業を熱望し2018年に訪韓した際に、企画案の中からヨンが選んだのが『ガス人間第一号』だった。ヨンは早々に現代版にリブートさせるイメージとしてA4用紙2枚ほどのアイデアメモを用意したという[92]。
当初は劇場公開を想定した企画だったが、新型コロナウイルスの流行で開発が停滞。その折にNetflixがパートナーとなり、2020年頃にプロジェクトが具体的に動き出すこととなった[92]。
プロデュースチームにより片山慎三が監督に選ばれた。通常のドラマシリーズがエピソード監督を複数立てる体制が主流であったが、「全8話を自分が撮る」ことを自ら条件にして参加を快諾した[92]。
2024年3月にヨンと片山がリアルで対面する脚本合宿を行い、4月にヨンサイドから脚本を引き取ったのち、7月までの3か月間で日本仕様に調整して撮影稿とした。撮影が始まってからも細部の改稿作業を並行していたため、2020年の実作業開始時から足掛け4年ほどが脚本制作に費やされた。メインキャラクターを演じる小栗旬と蒼井優へのオファーは「どうしてもこの2人にお願いしたい」との思いから2022年に早々に行われ、快諾を取り付けた[92]。
同年9月にクランクインされ、2025年4月末までの8カ月ほどの間撮影された。ロケ地は約150カ所にのぼり、東京駅前を大規模封鎖したカーアクションシーンは実現までに1年半ほどの交渉と準備期間を要た。同シーンは映画『ダークナイト』のトラック転倒シーンなどを参考にしながら試行錯誤が重ねられた[92]。
ガス人間役には、本作品が俳優デビューとなるモデルのUTAが起用されている[93]。原作映画と違い、ガス人間がタイトルロールだが主人公ではないという位置づけから、「あまり色のついていない真っ新な役者さん」が求められ、片山の推薦でUTAに白羽の矢が立った。オファーは即決され、長期にわたる演技のトレーニングと肉体改造に励んだ。アメリカ生活が長いUTAのためにハリウッドで活動する演技コーチを招へいするなど、制作陣もバックアップした[92]。なお、UTAによれば、本作品のプロジェクトは3年前から極秘裏に進められていたという[93]。
あらすじ(配信ドラマ)
JNTの報道記者・甲野京子が自身の冠コーナーにゲストとして招いた帝都大学名誉教授・佐野久伍が、生放送中に突如不審なガスに巻かれて苦しみだし、肺の内側から爆発四散するという事件が起きる。京子の元恋人である警視庁捜査一課の岡本賢治は不祥事で謹慎処分中であったが、亡き父の友人である警視総監・坂本守直々の命令を受けて復帰し、部下の阿部美智子らとともに爆死事件の捜査担当となる。賢治の不祥事とは、かつてプロポーズ寸前まで進展していた恋人の京子に捜査情報を漏らし、それを元にした京子の強引な取材の結果、当時追っていた被疑者の森靖利を自殺に追い込んだというものであった。
事件と同時刻、JNTと報道各社に犯人を名乗る男からの犯行声明動画が送り付けられる。男は記者会見の開催を予告し、声明をトップニュースで報じたメディアに対してのみインタビューに応じると宣言する。当日、男が会見場所に指定した文庫ラーメンというラーメン屋が現在の店舗ではなく移転前の旧店舗跡地を指すことに京子だけが気づき、インタビューはJNTの一社独占となる。男は、27年前に存在したホワイトセンターという福祉施設の真実を暴露し、関係者に対して復讐することが動機であると告白、これからも殺人は続くと予告し、自らをガス人間と名乗る。ガス人間はJNT取材班と駆けつけた賢治ら警察の目前でガスに変異し、機動隊やSITを制圧して逃走する。
賢治ら警察はガス人間が残した衣服についていたボタンの家紋から指定暴力団「藤代会」を事件関係者としてマークする。一方で京子らの調査によりホワイトセンターは27年前に山梨に存在していた政府支援による施設で、その実態は身寄りのない入居者らを不当な労働力として使用する収容施設であったこと、当時山梨県に落下した隕石による環境汚染を浄化する作業にその労働力が使われたこと、同時に山梨県に招致されていた「世界こども平和博」を無事に開催するべく、政府主導でそれらの事実を隠蔽することにホワイトセンターとその関係者らが加担していたことが判明する。
京子はホワイトセンター元所長の小畑広紀に接触することに成功し、小畑が持つ当時の作業日誌を受け取る約束を取付ける。しかし京子は賢治らがマークしていた藤代会配下の半グレ集団に襲撃される。賢治らの介入で京子らは無事保護されるが、直後に藤代会若頭・大友リキの命令を受けた組員の山崎が小畑を殺害し、日誌を奪い逃走する。死の直前、小畑は京子にホワイトセンターを取り仕切っていた「無風」という裏組織の存在を明かす。
京子は小畑とのやりとりが藤代会に流れたことを不審に思い、同僚局員の西山達也が京子のスマートフォンに盗聴アプリがインストールされていることに気づく。京子はアプリを入れられたのが警察の事情聴取でスマホを預けたときであると気づき、担当刑事の吉田則夫が藤代会と内通している可能性があると賢治に忠告する。一方、山崎は日誌をデータ化してリキに送り原本を焼却するが、そこに賢治ら捜査員が駆けつける。吉田は捜査員の目を盗み、正当防衛に偽装して山崎を射殺する。京子らJNTクルーは藤代会の正面にある空き家からカメラと指向性マイクを使って藤代会組長・大友三郎の動向の監視を始める。
藤川富士太と藤川華歩の兄妹は、動画サイトYTubeで鳴かず飛ばずのオカルト系チャンネル「フジタとカホの恐怖地帯」を運営している動画配信者である。華歩は顔に大きな痣があり人目に触れることを嫌っていたため裏方と声の出演に徹し、富士太が1人で出演者役をこなしている。一躍世間の注目の的となったガス人間のネタを追っていた富士太は、憧れの映像監督・ゴロがある廃倉庫で撮影した地下アイドル・ドリームサキュバスのミュージックビデオに、ガス人間の姿が映っていることに気づく。これを特大スクープとして「恐怖地帯」の配信で公開するも、同時接続者はわずか1桁と不発に終わるが、動画を見た「dadashow」というアカウントから「調査内容を100万円で買い取りたい」という連絡が来る。
dadashowが求める廃倉庫の所在地を明らかにするため、富士太と華歩はアシスタント志望の面接と偽りゴロ監督に接触する。そこで出会った元ドリーム・サキュバスのミミを経由し、当時マネージャーを務めていた謙太という男から廃倉庫の住所を聞き出した2人は、証拠を押さえるべく現地へ向かう。
廃倉庫にたどり着いた藤川兄妹は地下に降りた先にある広い空間で石化したガス人間を発見する。そこへFAXの着信があり、設置されていたピタゴラ装置が作動して「いとしのエリー」のレコードが再生される。曲を聴いたガス人間の石像は涙を流し、人の姿に再生する。FAXから流れる「今写真を送った大友三郎を殺せ」という命令を聞いたガス人間は廃倉庫を去る。ガス人間は自らの意思ではなく何者かの指示で動いているということを突き止めた藤川兄妹は撤収しようとするが、そこで富士太がガス人間を操る黒幕にたどり着けばさらに多額の金を得られると言い出す。
命令を受けて動き出したガス人間は藤代会事務所を襲撃し、張り込んでいるJNTクルーの目前で組員らをなぎ倒し大友三郎に迫る。三郎は組員の運転する車で逃げ出すが、東京駅丸の内口前でガス人間に追いつかれ、車ごと吹き飛ばされ、道路に叩きつけられ死亡する。車で後を追っていた京子は三郎の遺体が握っていたスマホからホワイトセンターの日誌データを奪うことに成功する。
命令を遂行し廃倉庫へ戻ってきたガス人間を追って広間に戻った藤川兄妹は、黒幕の正体を押さえるべく、再び石化したガス人間の前に隠しカメラを仕掛ける。そこへ京子が現れ、隠れていた2人を発見する。ガス人間に指示を出していた黒幕は京子であり、藤川兄妹を廃倉庫に誘き出したdadashowの正体もまた京子であった。
幼少期の甲野京子は母親のネグレクトに遭い、ホワイトセンターに預けられた。そこで隕石の汚染処理作業を命じられた作業員らが有害物質を浴びて死亡したのを見た京子は、作業員の死体を運ぶ車に紛れ込んでホワイトセンターを抜け出し、たどり着いた旧文庫ラーメンで常連の青年・堤田蓮に出会い保護された。蓮をレンおじさんと呼び懐くようになった京子であったが、あるときホワイトセンターの作業を取り仕切るヤクザの森が京子の母親を伴って現れ、京子を連れ戻そうとした。蓮は森と取引を行い、京子の代わりに自身が労働力としてホワイトセンターへ収容されることを決めた。
ホワイトセンターでは落下した隕石の下に掘った横坑を爆破し、有害な隕石を地中に埋めるという計画が進行していた。その最終局面の爆弾設置作業を任された蓮は見事これを完遂するが、隕石の発する有害物質を真下で浴びたことで身体がガス化し、爆弾の爆発に巻き込まれて爆散、そのまま行方不明者として処理される。
成長してJNT局員となった京子はあるとき、廃墟を巡る番組企画に上がってきた廃倉庫がかつて蓮と暮らした場所であると気づく。廃倉庫を訪れた京子はそこで石化した蓮を発見し、倉庫を買い取って定期的に通い詰めるようになる。あるとき倉庫で2人の思い出の曲である「愛しのエリー」のレコードをかけた京子は、蓮が人間の姿で再生するのを目の当たりにし、ガス人間の仕組みを知る。同時期に京子は賢治と出会い交際をスタートするが、賢治が追っていた被疑者がかつて自分や蓮を苦しめた森であることを知り、賢治を裏切ってガス人間に森の殺害を依頼した。森からホワイトセンターの関係者に佐野久伍や大友三郎がいることを聞き出した京子はそのままガス人間に森を殺害させ、自殺の偽装工作をしたのであった。
京子は藤川兄妹に「復讐を完遂するまで真相を黙っていれば2人のチャンネルで全てを独占配信出来るようにする」と取引を持ちかけるが、華歩に拒否される。京子は次なるターゲットとして日誌に記されていた「無風」メンバーである警視総監・坂本守の殺害をガス人間に指示しようとするが、寸前で思いとどまる。坂本と親しい賢治に坂本がホワイトセンターの関係者であると明かして2人で坂本邸に向かうと、坂本は、日本の国益を守るため、ホワイトセンターで死亡した労働者らを行方不明者として処理し隠蔽したと自白した。さらに、賢治の父・岡本信也がホワイトセンターを独自に捜査していることに気づき「無風」に密告、信也が暗殺される遠因を作ったのも坂本であった。
坂本は全てを告白する決意を固めJNTでの緊急記者会見を手配するが、富士太が再生数目当てにガス人間を使って坂本の殺害予告動画を撮影しアップロードしてしまう。さらに真相の暴露を阻止するべく「無風」から送り込まれた吉田が坂本を騙して拉致し、自殺に見せかけて射殺する。
吉田は「無風」メンバー最後の一人であるカイという男の命令で動いていた。吉田の依頼を受けた大友リキ以下藤代会構成員は藤川兄妹を監禁し、拷問の末にガス人間のからくりを聞き出す。同じ頃、京子が坂本の妻・千恵子に行った聞き取り調査から「無風」とは坂本・大友・カイの3人が高校時代に組んでいたバンドの名前であり、カイの正体が現職東京都知事・三浦威であることが判明する。京子は最後のターゲットである三浦の殺害指示をFAXでガス人間に送るが、藤川兄妹を伴って廃倉庫の広間に到着していたリキがレコードの針を止めてこれを阻止する。遅れて廃倉庫にやって来て富士太からガス人間への指示の仕組みを聞き出した三浦は、テストとしてガス人間に藤川兄妹の殺害を命じる。富士太は頭からガソリンを被ってガス人間ごと自らを爆破するという一計を案じ、これにより華歩だけが生存する。
坂本が暗殺の間際に言い残した父・信也の死に関する言葉から信也の遺品である手帳や当時の捜査資料をあたっていた賢治は、信也がホワイトセンターを追っていたこと、森が27年前に文庫ラーメンでトラブルを起こし警察沙汰になっていたことを知る。一方、三浦により京子がガス人間事件の教唆犯として全国指名手配される。文庫ラーメン新店舗を訪れガス人間こと堤田蓮と京子の関係に気づいた賢治は、京子を匿って逃亡を開始する。逃亡中に富士太の死を知った京子は、YTubeの非公開コメント機能を使って華歩との接触を試みる。
東京都知事選の開票日が目前に迫る中、ガス人間が三浦の選挙事務所に表れ、スタッフ3名を殺害、三浦も腕に軽傷を負う。賢治・京子と合流した華歩は三浦が襲われたことを不審に思い、富士太が仕掛けた隠しカメラにガス人間に指示をした人間が写っている可能性に思い当たり、廃倉庫へ侵入する。カメラ映像により、選挙事務所襲撃を指示したのは三浦自身であることが判明する。これは不安を煽ることで世論を安定志向へ誘導し、迫る都知事選で現職である自らの支持率を高めるための行動であった。
廃倉庫に大友リキら藤代会組員が戻ってくる。京子は華歩とともに映像データを持って逃亡し、賢治に「ガス人間を止める方法が一つだけあるので、三浦がガス人間に京子を襲う指示を出すように誘導してほしい」と頼む。リキから「ガス人間に指示を出す様子を撮られている」と報告を受け遅れて到着した三浦は、拳銃を使って賢治を脅し、映像データを持ち去ったのが京子であると聞き出す。三浦はガス人間に京子殺害を指示してその場を去り、リキは賢治を嬲り殺しにしようと凶器の準備を始める。賢治は耳を切り落とされる寸前に拘束を解いてその場の組員ら全員を制圧する。
華歩は映像データを三浦のライバル候補・桐島かずみの選挙事務所に持ち込む。三浦に支持率で劣る桐島はファクトチェックを重んじるスタッフの静止を押し切って起死回生の一手として華歩の提案に乗る決意を固める。華歩は「恐怖地帯」チャンネルで初めて自らの素顔を晒して配信を行い、兄を死に追いやった三浦の裏の顔を告発する。一方京子はホワイトセンターの日誌データを西山に送り、JNTによる後追い報道が始まる。桐島も自身の公式チャンネルから配信を行って追撃し、三浦の失脚は決定的となる。
廃倉庫から生還した賢治は署に戻って捜査員らに三浦都知事逮捕の号令をかけ、都庁へ向かう。都庁ビル内で吉田が賢治に背後から発砲するが、以前から吉田の言動を疑っていた阿部が阻止する。阿部と吉田の格闘の末、吉田は自ら取り出した絞殺用ワイヤーがエレベーターのドアに引っかかり、作動したエレベーター内で首を吊られて死亡する。
賢治は屋上で三浦と対峙する。自身もまた「無風」の上位にある存在のコマに過ぎなかったことに絶望した三浦は投身自殺を図るが、賢治と駆けつけた捜査員により救出され、逮捕される。
ガス人間に追われる京子は賢治に、ガス人間を止める手があるというのは嘘であり、品川にある旧JNT社屋の金庫室にガス人間を誘導して、自らの命と引替えに永久に閉じ込める算段であると告白する。駆けつけた賢治が強化ガラスの窓越しに呼びかける中、京子は全身をガスに飲み込まれ、ガス人間こと堤田蓮もろとも爆発、消滅する。爆発の跡には、かつて京子が賢治を裏切った夜に賢治が用意し、京子が逃亡に使った車に保管していた婚約指輪が遺されていた。
事件の収束から一年後、警視庁に密着取材することになった西山は、担当となった阿部とともに事件について語り合う。賢治は無縁墓地に埋葬されている京子の墓前に花と指輪を供えて帰宅するが、部屋に侵入してきたガスを気配を感じ取ってハッとした表情を見せる。
キャスト
主要キャスト(配信ドラマ)
- 岡本賢治(警視庁捜査一課 警部補):小栗旬[94]
- 甲野京子(テレビ局JNT 報道記者):蒼井優[94]、斉藤柚奈(過去)
- 藤川華歩(動画配信者・妹):広瀬すず[94]
- 藤川富士太(動画配信者・兄):林遣都[94]
- 森靖利(元ヤクザ、上場企業「ビットマネートレード」社長):竹野内豊[94](現在)、野村周平(過去)[95]
- ガス人間(堤田蓮):UTA[93]
- 岡本信也(賢治の父):青木崇高[95]
- 阿部美智子(警視庁捜査一課 巡査部長):芋生悠[95]
- 吉田則夫(警視庁捜査一課 警部):こばやし元樹[95]
- 坂本守(警視総監):ピエール瀧[95]
- 坂本千恵子(坂本の妻):原日出子[95]
- 西山達也(テレビ局JNT 報道記者):伊島空[95]
- 伊花純一郎(テレビ局JNT 報道局長):古舘寛治[95]
- ゴロ監督(映像制作会社「イン・ザ・ソックス」社長):髙嶋政宏[95]
- 謙太 / ケンタ(元「イン・ザ・ソックス」マネージャー、ホスト):賀来賢人[95]
- ミミ(元・地下アイドル「ドリームサキュバス」メンバー):森川葵[95][96]
- ミホ(同上):羽原美優[96]
- ユリ(同上):溝口奈菜[96]
- マイ(同上):愛い姫[96]
- アヤカ(同上):鳴島煌浬[96]
- アンナ(同上):麻倉瑞季[96]
- 佐野久伍(帝都大学名誉教授):モーリー・ロバートソン[95][注釈 19]
- 小畑広紀(憩いの場「うみかぜ」施設長):酒向芳(現在)、中島歩(過去)[95]
- 大友三郎(指定暴力団「藤代会」組長):中野英雄[95]
- 大友リキ(指定暴力団「藤代会」若頭):松浦祐也[95]
- 三浦威(東京都知事):岡部たかし[95]
- 桐島かずみ(三浦都知事のライバル候補):夏川結衣[95]
その他キャスト(配信ドラマ)
- 山口哲雄(テレビ局JNT 報道記者):松本ししまる
- 宮崎加奈(テレビ局JNT 報道記者):新野七瀬
- 桑田(テレビ局JNT 報道記者):藤井宏之
- 松井(テレビ局JNT 報道記者):滝本圭
- 藤井(テレビ局JNT 報道記者):ちすん
- 田中(テレビ局JNT 報道記者):松澤傑
- 落合浩介(テレビ局JNT カメラマン):谷口翔太
- 渡辺百華(テレビ局JNT 音声):瀬戸真莉奈
- ワイドショーの司会:船越雅史
- テレビ局JNTアナウンサー:林みなほ
- ENTテレビニュースキャスター:山田泰三
- 荒木リオン(ENTテレビ記者):彩乃あん
- 川田稔(警視庁捜査一課 係長):川瀬陽太
- 本山(警視庁捜査一課 刑事):足立英
- 刑事:安藤広郎、林田直樹
- 山之内聡志(ブンコラーメン店主):柾賢志
- 翔太(「うみかぜ」で生活する子供):柊木陽太
- 科学捜査研究所の職員:三石琴乃
- 加藤新一(元記者):近藤芳正
- 山崎慎三(指定暴力団「藤代会」組員):三河悠冴
- 轟海斗(指定暴力団「藤代会」組員):市川理矩
- 藤代会組員:阿邊龍之介、細谷雅幸
- さつき(孤児):原寧々
- 半グレのリーダー:堀丞
- オークショニア:山下リオ
- 都知事秘書:北山雅康
- 「三好弥」店主:吉原光夫
- パーム(「三好弥」店員→寿司屋「しゃり王」配達員):ローハン・ジテンドラ・ケムラニ
- 京子の母:和田光沙
- ラーメン屋店主:松崎悠希[注釈 20]
スタッフ(配信ドラマ)
挿入歌
配信日程
| 配信回 | サブタイトル[99] | 配信日 | 配信時間 |
|---|---|---|---|
| 1 | インタビュー | 7月2日 | 52分 |
| 2 | 情報提供者 | 59分 | |
| 3 | 日誌 | 41分 | |
| 4 | 恐怖地帯 | 52分 | |
| 5 | ブンコラーメン | 57分 | |
| 6 | 無風 | 48分 | |
| 7 | Ellie My Love | 51分 | |
| 8 | 願い | 68分 |
評価(配信ドラマ)
小説版
- 乾緑郎著、2026年6月30日発売、講談社文庫、ISBN 9784065439302[102]