ディスプレイ書体

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代表的なディスプレイ書体のジャンル

ディスプレイ書体(ディスプレイしょたい、display typeface)とは、長文の本文英語版組ではなく、タイトル英語版、見出し、プルクオート英語版(抜き出し引用)など、人目を引く要素に大きなサイズで用いるディスプレイタイプ(display type)またはディスプレイコピー(display copy)での使用を意図した書体である[1]

ディスプレイ書体は、本文に一般的に使われるシンプルで比較的抑制の利いた書体と比べ、より個性的で多様なデザインを持つことが多い[2][3][4][5]。手描きの看板やカリグラフィーといった他のレタリングジャンルから着想を得たり、装飾的、異文化的、抽象的、あるいは別の書記体系のスタイルで描かれたりするなど、その用途に適した美学を取り入れることがある[6][7][8]

いくつかのフォントジャンルはディスプレイでの使用と関連が深く、特にスラブセリフスクリプトリバースコントラストなどが挙げられる。また、サンセリフも一定程度関連する[9][10]ウォルター・トレーシー英語版は、ディスプレイ書体を活版印刷の観点から「14ポイントを超える活字サイズ」と定義し、デザイン面では「本文用書体は拡大すれば見出しに使えるが、ディスプレイ書体は縮小しても本文には使えない」と述べている[11]

タイトリングフォント(titling font)はディスプレイ書体の一種で、主に見出しタイトル英語版に使われる。多くは大文字のみで構成されており、大きなサイズでの使用に最適化された線幅を持つ[12][13]

印刷技術の黎明期から数世紀にわたり、ディスプレイ用の活字は一般には存在しなかった。印刷は主として本文英語版を組むために用いられ、見出しにいくらか大きい活字が使われることはあったものの、本文用ではない書体であってもローマン体スクリプト体ブラックレターといった伝統的な書体デザインの範疇に留まっていた。看板の文字などは、手書きで制作されるのが常であった[14]

ポスターの出現や看板の普及は、手書き文字としても、また印刷物としても、新しい種類の書体デザインの登場を促した[14]。歴史家ジェームズ・モズリーによれば、「1750年頃までには、木製の型を用いた砂型鋳造によって大きな活字が何世紀にもわたり作られていたが、イギリスの活字鋳造業者がポスターやその他の商業印刷のために大きな活字を作り始めたのは1770年頃からであるという証拠がある。この時期にトマス・コットレルが『布告用(Proscription)または掲示用(Posting)の大判活字』を、ウィリアム・カスロン2世英語版が『パタゴニアン(Patagonian)』または『布告用活字(Proscription letters)』を鋳造した」[15][16][17]

19世紀初頭から、リベット留めされた「サンスパレイユ(sanspareil)」母型英語版の導入によって、大きなサイズの活字の印刷が容易になった[18]。時を同じくして、19世紀初頭には新しい書体デザインが登場し始めた。例えば、当時のセリフ体を基にしながらも極めて太くした「ファット・フェイス[19][20]、(1817年頃にヴィンセント・フィギンズ英語版によって初めて見られた[21][22]スラブセリフ、そして(手書き文字では既に使われていたが、1830年代以前の印刷物では事実上使われていなかった[23]サンセリフや新しいブラックレター書体[24]などである。19世紀のディスプレイ書体の多くは、人目を引くために極端に、あるいは攻撃的なほどに太かったり、コンデンス体であったりした。その後の重要な発展として、パントグラフ英語版彫刻による木活字英語版が登場し、ポスターに安価で大きな文字を印刷できるようになった。一方で、Cochin英語版Koch-Antiqua英語版のようにエックスハイトが低く、全体に繊細な造形を持つディスプレイ書体もあり、このスタイルは20世紀初頭に大変な人気を博した[11]

かつては、紙以外の装飾的な文字は、そのほとんどが特注制作か手描きで制作されていた。しかし、新たな印刷方式、写真植字、そしてデジタル組版の登場により、フォントを任意のサイズで印刷できるようになったため、文字を手書きする代わりにフォントが使われる機会が増加した。これにより、以前は手書きが最も一般的だった企業ロゴや金属製の切り文字といった場面でも、フォントの利用が可能になったのである[25][26][27][28]。その結果、Neutraface英語版Neue Haas GroteskArnoといった現代の多くのデジタル書体ファミリーには、本文用のスタイルに加え、それに対応するディスプレイ向けオプティカルサイズに最適化されたものが含まれるようになった。それらは本文用スタイルと比べ、より繊細なデザインとなっている[29][30][31][32]。ウォルター・トレーシーは、本文用書体を見出しなどのディスプレイ用途に調整する際、「文字間を適切に詰める」ことで見た目が向上すると述べている[11]

ディスプレイ書体のスタイル

ディスプレイ書体の一般的なジャンルには、以下のようなものがある。

  • スクリプト体スワッシュ付きのデザインなど、手描きに見えるよう意図されたレタリング[33]
  • 文字の中心に空白を設け、立体的な浮き彫り文字を想起させる「シャドウ(影付き)」「エングレーブ(彫刻)」「インライン」「手彫り風」などのレタリング。ディスプレイ書体の初期のジャンルであるインライン・サンセリフは、戦間期のレタリングでも非常に人気があった[34]。また、遠方からは灰色に見える「シェーディング(濃淡処理)」やハッチングを施したデザインも作られてきた[35]
  • バウハウス派のデザイン、ミルトン・グレイザーのBaby Teeth、Indépendantのように、アルファベットを奇抜または抽象的に再設計したもの[36]
  • ShatterやElectric Circusのように、傷ついたり歪んだりしたように見せることを意図した「ダメージ加工」のレタリング[37]
  • ファット・フェイス」書体やCooper BlackGill Kayoなど、従来の字形を極端に細くしたり太くしたりしたもの
  • 大文字と小文字を意図的に混在させたレタリング
  • 従来の文字のコントラストを反転させ、垂直の線よりも水平の線を太くしたリバースコントラスト書体[38][39]
  • モダニズムや自然界、あるいは他のレタリングのジャンルといった特定の美意識を想起させるように作られたレタリング。後者の例としては、ステンシルやエンボステープ英語版のフォントを用いて、工業的な美意識を表現するものがある。
  • 他の書記体系を連想させることを意図した「ミミクリー(模倣)」あるいは「シミュレーション」書体。レストランなどでよく使用される[40][41]

より実務的な性格のジャンルとしては、Johnston英語版Highway Gothic英語版Transport英語版Clearview英語版といった標識向けにデザインされたものがある。これらは判読性を高め、文字同士を区別しやすくするため、しばしば特別な調整が施されている。例えばJohnstonやTransportでは、小文字の「l」(エル)にカールを付けることで、大文字の「I」(アイ)と区別できるようにしている[42]

ドイツ語では、本文用ではなく商業印刷や業務用印刷を目的とした書体に対して、特定のサイズ範囲を意味することなく「Akzidenzschrift(アクツィデンツシュリフト)」という用語が使われる。そのため、帳票やチケットなどに用いられる小サイズのサンセリフもこれに含まれる。著名なサンセリフ書体「Akzidenz-Grotesk英語版」の名称はこれに由来する。「Akzidenz」は、上流階級の社交行事ではなく「何かが起こること」という意味でのイベント(出来事)を指す語であり[43]、そのため商業印刷の用語として用いられるようになった。「Akzidenzschrift」は1870年代までに、こうした用途向けの書体を意味する総称となっていた[43][44]。現代のドイツ語辞書では、広告や帳票類などの印刷物を指すものとして説明されている[45][46]。この語の語源はラテン語の「accidentia」で、ルイスとショートの『ラテン語辞典英語版』によれば「起こること、偶然の出来事、好機」と定義されている[43][47]

なお、これらのジャンルは、本稿の主題と重なるカスタムレタリング(特注の文字デザイン)にも見られることがある。古い時代のレタリングの多くは、フォントではなく特注で描かれたものであった[25][26][27]

書体見本

関連項目

脚注

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