モリソニア

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モリソニア
生息年代: Cambrian stage 5–Tremadocian[1]
Mollisonia plenovenatrix の復元図
保全状況評価
絶滅(化石
地質時代
古生代カンブリア紀ウリューアン期 - オルドビス紀トレマドッグ期フロー期?)[1]
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
亜門 : 鋏角亜門 Chelicerata [2]
: モリソニア目 Mollisoniida [1]
: モリソニア科 Mollisoniidae [1]
: モリソニア属 Mollisonia
学名
Mollisonia
Walcott, 1912 [3]
タイプ種
Mollisonia symmetrica
Walcott, 1912 [3]
シノニム
Houghtonites
Raymond, 1931 [4][2]
  • Mollisonia gracilis
    Walcott, 1912 [3]
    (=Houghtonites gracilis Raymond, 1931 [4])
  • Mollisonia sinica
    Zhang et al., 2002 [5]
  • Mollisonia symmetrica
    Walcott, 1912 [3]
  • Mollisonia plenovenatrix
    Aria & Caron, 2019 [2]

モリソニア[6]Mollisonia[3])は、カンブリア紀オルドビス紀(約5億 - 4億8,000万年前)に生息したモリソニア類化石節足動物の一[2][1][7][8]。発達した眼とほぼ同じ大きさの頭部と尾部をもつ[2]北アメリカ中国で見つかった複数のが知られている[5][1][7]ハベリア等と共に基盤的鋏角類と考えられる[2][9]

学名Mollisonia」は、カナダモリソン山 (Mount Mollison) に因んで名付けられた[10]

形態

Mollisonia symmetrica
Mollisonia gracilis
モリソニアの化石標本

体長1cm前後[5]から約8cm[10]、円筒状の姿をした節足動物である。体は1枚の背甲に覆われる頭部、および分節した前7節と板状の尾部をもつ胴部からなる。2019年現在、詳細の付属肢関節肢)構造は Mollisonia plenovenatrix のみによって知られている[2]

頭部

斜め正面から見たMollisonia plenovenatrix の全身復元図。1対の大きな眼と小さな鋏角が写る。

頭部 (cephalon) の背側は丸い背甲 (carapace, cephalic shield) に覆われ、前方の左右には1対の大きなを備えた窪みがある。付属肢は全て腹側に配置され、1対の鋏角と思われる小さな付属肢、3対の歩脚型付属肢、および3対の顎基型付属肢という計7対が知られている。この頭部は、現生真鋏角類前体先節+第1-6体節)と後体第1節(第7体節)に対応とされる[2]

最初の付属肢は小さく、Aria & Caron 2019 によるとそれは2節の鋏状鋏角 (chelicera) であり、はその間に開いたと考えられる[2]。一方で、その付属肢は非常に小さくて不明瞭であるため、鋏角とは断言しにくく、他の構造の見間違いだった可能性もあることが後に指摘されている[11][12]。直後3対の単枝型付属肢は歩脚型で7節に分かれ、そのうち2対目の第6節は前後の2対より少し長い[2]。残り後3対の二叉型付属肢は大部分が大きな顎基 (gnathobase) に構成され、短い内肢はおそらくその先端近くにあったと考えられる[2]。この顎基型付属肢の背側には短い外肢 (exopod) があり、その基部は顎基から分離したと考えられる[2]

胴部

胴部 (trunk) の前7節は背板(tergite)が分節した胸部 (thorax) で、後方数節(文献により4節[2]もしくは3節[8]とされる)は背板が癒合して頭部とほぼ同じ大きさの尾部 (pygidium) を構成する[2]。各体節の腹側には外肢のみ知られる1対の付属肢があり、丸みを帯びた鰭状で先端の縁に毛束が並んで、後ろは2枚ほどの葉状の構造体 (lamellae) が畳まれ、単調な書鰓と思われる構造をなしている[2]。胴部付属肢のうち胸部の7対はほぼ同じ大きさで、尾部の数対(文献により4対[2]もしくは3対[8]とされる)は後方ほど短い[2]。この胴部は真鋏角類の後体第2節(第8体節)以降の体節に対応とされる[2]

内部構造

中枢神経系消化管が知られている。大きな眼に内包される視神経は鋏角類らしからぬ複雑な構造で、むしろ大顎類に似た3つの神経網からなる(鋏角類は1つのみ)[2]。頭部の付属肢神経は不明だが、を含んだ中枢神経系自体はメガケイラ類カブトガニ類に似て、すなわち全体が縦長いリング状で、途中の神経節は前後に広い食道孔で大きく左右に分かれている[8](Strausfeld et al. 2025 ではクモガタ類と似た中枢神経系をもつと解釈されているが[13]、その説は Bolton et al. 2026 に否定されている[14])。胴部の腹神経索は同規的なはしご形で、各胸節に1つ、尾部に3つの神経節が配置される[8]。胴部付属肢神経は各胴節の神経節に2対、尾部の神経節に各1対をもつ[8]。消化管は体の直径の3分の1に及ぶほど幅広く[2]、各胴節の左右に沿ってやや膨らんだ消化腺がある[8]

生態と分布

Linyi Lagerstätte の海底の生態復元図。右下に2匹のモリソニアが描かれている。

モリソニアは底生性捕食者であり、頭部についた先頭の鋏角と後3対の顎基で餌をちぎり、その間にある3対の歩脚型付属肢で海底を歩いていたと考えられる[9]。胴部付属肢は数枚の構造体により大きな表面積を生やし、書鰓)として用いられたことを示唆する[2]。これにより、同じく基盤的な鋏角類とされるハベリア(全ての頭部/前体付属肢が摂食と感覚を担い、胴部付属肢で移動を担う[15])に比べると、モリソニアの付属肢はより現生鋏角類に近い機能分担を持っていたとされる(頭部/前体付属肢が同時に摂食と移動を担う)[2]

モリソニアは広い分布域をもち、カナダブリティッシュコロンビア州バージェス頁岩バージェス動物群ウリューアン期[10][2]アメリカユタ州Wheeler Formation(ウリューアン期)[16][7]中国貴州省Kaili Formationカンブリア紀第四期[5]Linyi Lagerstätte [17]など、カンブリア紀の複数の堆積累層から発見される。2020年現在、正式に記載されたモリソニアの種は全て前述の堆積累層由来[2]だが、オルドビス紀の堆積累層、すなわちモロッコFezouata Formation[18]トレマドッグ期 - フロー期)と グリーンランドBøggild Fjord Formation[19](トレマドッグ期)からも、同属と思われる未命名の化石標本が発見されている[2][1]

分類

バージェス頁岩で見つかた Mollisonia symmetricaM. gracilis をはじめとして、モリソニアは20世紀初期(Walcott 1912)から既に記載された化石節足動物である[3]が、長い間にほぼ背側の外骨格(背甲背板)のみ知られたため、節足動物での位置付けは不明であった[2]。Aria & Caron 2019 に行われ、付属肢など詳細な構造が知られる M. plenovenatrix の記載以降では、本属は次の通り基盤的鋏角類の一員として認められるようになった[2]

鋏角類

ウミグモ類

ハベリア類

サンクタカリス

ハベリア

モリソニア

真鋏角類

カブトガニ類

ウミサソリ類

クモガタ類

Aria & Caron 2019 に基づいた鋏角類におけるモリソニアの系統的位置[2](†:絶滅群)

基盤的な鋏角類として有力視されるカンブリア紀の節足動物は、2010年代後期までハベリアサンクタカリスなどのハベリア類ハベリア目 Habeliida)が知られるが、この類の先頭の付属肢は鋏角といえるほどの構造ではなかった[15]。そのため、モリソニアは2019年の記載当初に真の鋏角をもつことが判明した初のカンブリア紀節足動物とされていた[9]。同時に、摂食と歩行の役割を担った頭部付属肢や書鰓的な構造をした胴部付属肢も見られ、モリソニアはハベリア類よりも真鋏角類に近い形質を出揃っていたとされる。これにより、モリソニアはハベリア類よりも真鋏角類の系統群(クラウングループ)に近い位置にあったと考えられる[2]。本属の頭部付属肢と同形になった第7付属肢(本属の頭部最終の付属肢)も、真鋏角類の前体祖先形質として先節と第1-6体節だけでなく、通常では後体第1節とされる第7体節をも含んでいたことを示唆する[2]。また、本属は鋏角類であるにもかかわらず、視神経甲殻類フーシェンフイア類のように3つの神経網をもつことも、このような複雑な視神経は真節足動物の祖先形質であり、モリソニアより派生的な鋏角類の系統群で二次的に退化したことを示唆する[2]。本属は頭部がメガケイラ類と真鋏角類に似た中枢神経系をもつことも、このような一見した単調な神経系は(真節足動物の祖先形質ではなく)鋏角類の派生形質だと示し、メガケイラ類と鋏角類の類縁関係にも裏付ける[8]

一方で、2020年代の一部の後続研究は前述の見解(特に鋏角とそれに基づいた系統分類)に疑問を掛けているが[11][14]、少なくともモリソニアは基盤的な鋏角類であることが依然として支持されている[12]

Strausfeld et al. 2025 ではクモガタ類と似た中枢神経系をもつ解釈を踏まえ、モリソニアは他の真鋏角類よりもクモガタ類に近縁とするが[13]、その説の基準は Bolton et al. 2026 に否定されている[14]

モリソニアはセリオペ (Thelxiope) やコーコラニア (Corcorania) と共にモリソニア類モリソニア目 Mollisoniida)にまとめられる[1]。もし前述のモリソニア類からも上述の鋏角類的性質が確認できれば、モリソニアのみならず、モリソニア類全般的に鋏角類として認められるようになる[1]

2020年現在、モリソニア(モリソニア Mollisonia)は次の4が正式に記載される[7]

  • Mollisonia gracilis Walcott, 1912[3] (=Houghtonites gracilis Raymond, 1931[4][2])
カナダバージェス頁岩から発見される[10] [2]
  • Mollisonia sinica Zhang et al., 2002 [5]
中国Kaili Formation から発見される。尾部は丸く、棘がない。体長1cm前後[5]
  • Mollisonia symmetrica Walcott 1912 [3] (=Mollisonia? rara Walcott, 1912[2])
本属の模式種タイプ種[2]。カナダのバージェス頁岩、およびアメリカSpence ShaleWheeler Shale から発見される[10][16][7]。体長約8cm[10]
種小名symmetrica」は「相称」の意[10]
  • Mollisonia plenovenatrix Aria & Caron, 2019 [2]
カナダのバージェス頁岩から発見される。他の種に比べて体型はやや丈夫で、胴部の背側は2列の短い三角形突起が並んでいる。体長約2.5cm[2]
種小名「plenovenatrix」はラテン語の「plenus」(豊満)と「venatrix」(女狩人、女性狩猟家)の合成語で、丈夫な体型と捕食性とされることに因んで名付けられた[2]

脚注

関連項目

外部リンク

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