ヨウジウオ科
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| 分類 | ||||||||||||||||||
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| 学名 | ||||||||||||||||||
| Syngnathidae Bonaparte, 1831 |
ヨウジウオ科(ヨウジウオか、学名:Syngnathidae)は、ヨウジウオ目の下位分類群の1つ。ヨウジウオ類の他にも、タツノオトシゴ属やリーフィーシードラゴン、ウィーディーシードラゴンが分類される。世界中の熱帯から温帯海域にかけて分布し、沿岸域に生息する種が多い。体は骨板で覆われ、細長い管状の口を持つ。雄は育児嚢を持ち、子育てを行う。
学名は古代ギリシア語の「σύν(sún、結合した)」と「γνάθος(gnáthos、顎)」に由来し[2]、管状に融合した顎を指している[3]。
世界中の温帯から熱帯海域にかけて分布する。ほとんどの種は沿岸域の浅場に生息するが、一部の種は外洋に生息し、ホンダワラ属の流れ藻に付く。腹鰭を欠き、細長い吻、癒合した顎を持ち、体は厚い骨板で覆われる。体は硬く、鰭を扇状に広げ、素早く動かすことで泳ぐ。他の魚類に比べて動きは遅いが精密で、その場に長時間留まることも可能である[4]。
雄は雌から卵を受け取り、抱卵する。タツノオトシゴ属は腹部に育児嚢を持ち、シードラゴン類は尾に卵を付着させる。ヨウジウオ類はどちらかの方法をとる[5]。系統によって育児嚢の位置が異なり[6]、尾にある系統と腹部にある系統がある[7]。育児嚢は卵が露出した単純なものから、皮褶が発達した完全な袋状のものまで様々である[8][9]。密閉された袋状の育児嚢を持つ種では、雄は子供に栄養素だけでなく[10]、病原体に対する免疫を与える[11]。より発達した育児嚢を持つ種では、雄が適応度の低い雌の子供を流産することがある[12]。
配偶者の選択と競争は多様である[13]。例えば Hippocampus fuscus は、雄が雌を巡って争うが[14]、イシヨウジではその逆で、雌が雄を巡って争う[15]。雄が争う種のほとんどは一夫一婦制で、雌が争う種のほとんどは複婚制である[7]。「elastic recoil feeding」と呼ばれる独特の摂食方法を持つ。頭部の軸上筋を収縮させ、放出することで頭部が極めて速く回転し、獲物に向かって素早く口を突き出す[16]。
進化
最も古い本科魚類は、始新世のボルカ山の地層から発見された[1]。系統解析によれば、ヨウジウオ科魚類の祖先は育児嚢を持っていなかったと考えられる。カミソリウオ科の雌は、腹鰭が変形して育児嚢となっている。しかし真骨類では雌から雄へと形質が進化した例は無く、それぞれ独自に進化したものと考えられる[17]。ゲノム配列の解析の結果、異なる育児嚢の形態は、それぞれ独自に獲得したものと判明した[18]。
育児嚢の位置によって2亜科に分けられており、胴体に位置するNerophinae、尾部に位置するSyngnathinaeが存在する[17]。ゲノム配列の解析の結果、両亜科内で育児嚢の複雑化が進んでいることが判明した[18]。Syngnathinaeの一部の種も、育児嚢を胴体に持つように進化している。これは収斂進化であり、ピグミーシーホース(コダマタツ、カクレタツノコ、ユリタツノコ)がその一例である。これらの種は体長1-2cmと非常に小さく、胴体で育児を行う。しかし系統的には尾で育児を行う種に近く、かつては尾に育児嚢を持っていた可能性がある。尾は物を掴む役割があるため、育児嚢が胴体に移動した可能性がある[17]。
本科における胎生や雄の育児嚢は、複雑な進化の過程を経ており、類似した形質であっても、独立した起源を持つことが多い。本科の祖先は有害な突然変異の発生を抑制する形質を発達させており、その結果急速な進化が可能になった[19]。複雑な育児嚢を持つ種では、適応度を向上させるため、形態や生態など、雄の妊娠のための形質が共進化したと考えられる。その結果、性の役割が逆転し、雌が雄を巡って競争するようになった[20][21]。