熊害 (1980年度以降の日本)
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クマは本来、山奥を中心とした自然環境で生息する動物であり、里山から離れた森林で暮らしている。しかし、2010年の政府答弁によると、戦後の針葉樹人工林造成や堅果類の凶作、さらに農村の過疎化や耕作放棄地の増加等により、クマが人里に出没する事例が増えているとしている。また、狩猟者の減少もクマが人里を恐れなくなる一因と考えられている。このような背景から、政府は地域の実情に応じたクマの保護管理と、人里での被害防止及び生息地の管理を並行して進めることが重要であると認識しており、森林施業の適切な推進や針広混交林化など多面的機能を発揮する森林整備により、生物多様性を保全しつつクマとの共存を図ることを目指すとしている[4][5]。2000年代以降は地球温暖化などの影響で開発を逃れて残されていた豊かな森にも深刻な劣化がおこり、森の豊かさが急速に失われている。2023年の熊の大量出没は異常な熱波により冬ごもりのための重要な時期に奥山の実りがほとんどないという異例の事態によっておこったと言われる。中山間地域の過疎化と高齢化により、それまで明確だった野生動物と人との境界があいまいになっていることも人身事故の多発を後押ししている[6]。
熊による外傷
熊による外傷では、顔面や頭部への咬傷や爪による挫滅・裂創が多く報告されている。これらの外傷では多くの場合、顔面骨(上顎骨・下顎骨・頬骨など)の骨折や頭蓋底骨折を伴い、軟部組織では眼球破裂や脱落による失明、外鼻の全欠損、口唇や頬の広範囲な裂創などの重篤な損傷が認められる。さらに、咬傷や挫創に伴う創部の汚染により、破傷風を含む細菌感染のリスクが高いため、創部の十分な洗浄が重要である。顔面や頭部の重篤な損傷の治療にあたっては、形成外科による軟部組織再建や骨折整復手術、場合によっては段階的な再建手術や植皮・軟骨移植が必要となる[7][8][9]。
秋田大学医学部附属病院の中永士師明医師が2023年に行った調査によれば、熊による外傷の9割は顔面に集中しており、その原因として、熊が人間を威嚇する際、体を大きく見せるために立ち上がった状態から攻撃してくることを指摘している[10][11]。また、心的外傷として、熊に襲われた被害者の8割がPTSD、不眠、せん妄、動悸などを訴えているとしている[11][12]。
2021年度以降の日本での熊害報道
◆:人間の生活圏内での発生事案
2021年度
- 2021年度(死亡事例:5件)
2022年度
- 2022年度(死亡事例:2件)
2023年度
- 2023年度(死亡事例:6件)
- 2023年5月14日 - 北海道の朱鞠内湖(幌加内町)で釣り人男性がヒグマに襲われ死亡。翌日、同一個体を駆除[21]。
- 2023年7月 - OSO18駆除 →詳細は「OSO18」を参照
- 2023年8月9日 - 岩手県一戸町の山林で女性がクマに襲われ死亡[22]。
- 2023年10月13日 - 長野県飯山市の山林で男性がくくり罠にかかったクマに襲われ死亡[23]。
- 2023年10月17日 - ◆富山市の住宅敷地で女性がクマに襲われ死亡[24]。
- 2023年10月19日 - 岩手県八幡平市の山林で2人がクマに襲われ1人死亡[25]。
- 2023年10月29日 - 北海道の大千軒岳(福島町)山中で男子大学生がヒグマに襲われ不明[26]。
2024年度
- 2024年度(死亡事例:3件)
2025年度
- 2025年度(認定死亡事例:13件、認定行方不明事例:1件、※環境省認定以外の事案:2件[31]、◎人身事故以外の事象、◆:人間の生活圏内事案)
- 2025年6月22日 - 長野県大町市の山林で男性2人がクマに襲われ1人死亡[32]。
- 2025年7月4日 - ◆岩手県北上市で女性が自宅住家内でクマに襲われ死亡[33]。後日、同一個体を駆除[34]。
- 2025年7月12日 - ◆北海道福島町の民家敷地で新聞配達員がヒグマに襲われ死亡[35][36]。後日駆除され、2021年の死亡事故と同一の個体と判明[37]。→詳細は「福島町ヒグマ事件」を参照
- 2025年7月31日 - ◆北秋田市の障害者施設屋外で女性がクマに襲われ、後日死亡[38][39]。
- 2025年8月14日 - 知床半島の羅臼岳(北海道斜里町)で男性がヒグマに襲われ死亡[40]。翌日、同一個体の母クマを含む3頭を駆除[41]。
- 2025年9月1日 - ◎鳥獣保護管理法を改正、「緊急銃猟」の制度を創設。
- 2025年10月2日 - ※長野県大鹿村の山中で男性が不明となり、翌日に遺体発見。クマ被害の可能性あり[42]。
- 2025年10月3日 - 宮城県栗原市の山中で複数人がクマに襲われ女性1人が死亡[43]、女性1人が行方不明[44]。
- 2025年10月7日 - 岩手県北上市の山中で男性がクマに襲われ、翌日に遺体頭部と胴体を発見[45][46][47]。
- 2025年10月9日 - 岩手県雫石町の山林で男性がクマに襲われ、翌日に遺体発見[48]。
- 2025年10月15日 - ◆宮城県仙台市の住宅地で全国初となる緊急銃猟によるクマ類の駆除実施[49][50]。
- 2025年10月16日 - ◆岩手県北上市の温泉施設従業員[注釈 1]が業務中にクマに襲われる。翌日に遺体を発見、同一個体を駆除[51][53][54][52][55]。
- 2025年10月20日から25日 - ◆秋田県湯沢市の市街地で4人を負傷させた後、民家に居座ったクマ1頭を発生6日目に捕獲・駆除[56][57][58]。
- 2025年10月24日 - ◆秋田県東成瀬村の村役場近くで4人がクマに襲われ1人死亡、現場付近のクマ1頭を駆除[59]。
- 2025年10月27日 - ◆岩手県一関市の民家敷地で住民と飼い犬がクマに襲われ死亡、付近のクマ1頭を駆除[60][61]。
- 2025年10月27日 - ◆秋田市雄和萱ケ沢の田んぼ側溝でクマに襲われた女性の遺体を発見[62][63]。
- 2025年10月28日 - ◎秋田県知事が防衛省にクマ捕獲支援のための自衛隊派遣を要請[64]。
- 2025年11月2日 - 秋田県湯沢市の山林で女性がクマに襲われ、翌日に遺体発見[65]。
- 2025年11月13日 - ◎緊急銃猟を目的とした警察官によるライフル使用を可能とする法令改正を公布、施行[66][67]。
◎同日、岩手県と秋田県で機動隊の銃器対策部隊による駆除を目的とした活動開始[68][69]。 - 2025年11月30日 - ◎自衛隊による秋田県内でのクマの捕獲や駆除の支援活動が終了[70]。
- 2025年12月19日 - ※宮城県大和町の山林で男性が不明となり、翌日に遺体発見。クマ被害の可能性あり。付近の罠にかかったクマ1頭を駆除[71]。
- 2026年1月 - ◎環境省が「政府によるクマ被害対策支援メニュー」を公表[72]。
2026年度
日本でのクマ類による人身被害件数
環境省自然環境局作成の「クマ類の出没対応マニュアル」において、国内に生息するヒグマとツキノワグマをあわせてクマ類としている。
以下は、1980年度以降における「クマ類による人身被害」の年度別一覧である。
| 年度 | - | 負傷者数 |
|
北海道以外 発生事例 | 北海道 発生事例 | 出典 | ||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| - | 負傷者数 |
|
- | 負傷者数 |
| |||||||||
| 1980 (昭和55) | - | 10 人 | ( 0 人) | - | 9 人 | ( 0 人) | - | 1 人 | ( 0 人) | [78] | ||||
| 1981 (昭和56) | - | 8 人 | ( 0 人) | - | 6 人 | ( 0 人) | - | 2 人 | ( 0 人) | [78] | ||||
| 1982 (昭和57) | - | 6 人 | ( 0 人) | - | 6 人 | ( 0 人) | - | 0 人 | ( 0 人) | [78] | ||||
| 1983 (昭和58) | - | 14 人 | ( 1 人) | - | 11 人 | ( 1 人) | - | 3 人 | ( 0 人) | [78] | ||||
| 1984 (昭和59) | - | 26 人 | ( 1 人) | - | 25 人 | ( 1 人) | - | 1 人 | ( 0 人) | [78] | ||||
| 1985 (昭和60) | - | 20 人 | ( 3 人) | - | 19 人 | ( 2 人) | - | 1 人 | ( 1 人) | [78] | ||||
| 1986 (昭和61) | - | 27 人 | ( 1 人) | - | 26 人 | ( 1 人) | - | 1 人 | ( 0 人) | [78] | ||||
| 1987 (昭和62) | - | 14 人 | ( 0 人) | - | 14 人 | ( 0 人) | - | 0 人 | ( 0 人) | [78] | ||||
| 1988 (昭和63) | - | 19 人 | ( 3 人) | - | 18 人 | ( 3 人) | - | 1 人 | ( 0 人) | [78] | ||||
| 1989 (平成元) | - | 21 人 | ( 1 人) | - | 18 人 | ( 1 人) | - | 3 人 | ( 0 人) | [78] | ||||
| 1990 (平成2) | - | 14 人 | ( 2 人) | - | 13 人 | ( 0 人) | - | 1 人 | ( 2 人) | [78] | ||||
| 1991 (平成3) | - | 32 人 | ( 0 人) | - | 31 人 | ( 0 人) | - | 1 人 | ( 0 人) | [78] | ||||
| 1992 (平成4) | - | 34 人 | ( 1 人) | - | 33 人 | ( 1 人) | - | 1 人 | ( 0 人) | [78] | ||||
| 1993 (平成5) | - | 25 人 | ( 1 人) | - | 24 人 | ( 1 人) | - | 1 人 | ( 0 人) | [78] | ||||
| 1994 (平成6) | - | 44 人 | ( 1 人) | - | 43 人 | ( 1 人) | - | 1 人 | ( 0 人) | [78] | ||||
| 1995 (平成7) | - | 36 人 | ( 0 人) | - | 36 人 | ( 0 人) | - | 0 人 | ( 0 人) | [78] | ||||
| 1996 (平成8) | - | 39 人 | ( 0 人) | - | 38 人 | ( 0 人) | - | 1 人 | ( 0 人) | [78] | ||||
| 1997 (平成9) | - | 33 人 | ( 0 人) | - | 32 人 | ( 1 人) | - | 1 人 | ( 1 人) | [78] | ||||
| 1998 (平成10) | - | 35 人 | ( 0 人) | - | 33 人 | ( 0 人) | - | 2 人 | ( 0 人) | [78] | ||||
| 1999 (平成11) | - | 65 人 | ( 1 人) | - | 60 人 | ( 0 人) | - | 5 人 | ( 1 人) | [78] | ||||
| 2000 (平成12) | - | 38 人 | ( 3 人) | - | 37 人 | ( 2 人) | - | 1 人 | ( 1 人) | [78] | ||||
| 2001 (平成13) | - | 86 人 | ( 5 人) | - | 85 人 | ( 3 人) | - | 1 人 | ( 2 人) | [78] | ||||
| 2002 (平成14) | - | 55 人 | ( 0 人) | - | 54 人 | ( 0 人) | - | 1 人 | ( 0 人) | [78] | ||||
| 2003 (平成15) | - | 55 人 | ( 1 人) | - | 54 人 | ( 1 人) | - | 1 人 | ( 0 人) | [78] | ||||
| 2004 (平成16) | - | 110 人 | ( 2 人) | - | 108 人 | ( 2 人) | - | 2 人 | ( 0 人) | [78] | ||||
| 2005 (平成17) | - | 57 人 | ( 1 人) | - | 55 人 | ( 0 人) | - | 2 人 | ( 1 人) | [78] | ||||
| 2006 (平成18) | - | 145 人 | ( 5 人) | - | 142 人 | ( 3 人) | - | 3 人 | ( 2 人) | [78] | ||||
| 2007 (平成19) | - | 50 人 | ( 1 人) | - | 47 人 | ( 1 人) | - | 3 人 | ( 0 人) | [78] | ||||
| 年度 | 被害件数 | 被害人数 |
|
種類別 / ツキノワグマ | 種類別 / ヒグマ | 出典 | ||||||||
| 被害件数 | 被害人数 |
|
被害件数 | 被害人数 |
| |||||||||
| 2008 (平成20) | 52 件 | 59 人 | ( 3 人) | 49 件 | 56 人 | ( 0 人) | 3 件 | 3 人 | ( 3 人) | [79] | ||||
| 2009 (平成21) | 52 件 | 63 人 | ( 2 人) | 50 件 | 61 人 | ( 2 人) | 2 件 | 2 人 | ( 0 人) | [79] | ||||
| 2010 (平成22) | 145 件 | 150 人 | ( 4 人) | 142 件 | 147 人 | ( 2 人) | 3 件 | 3 人 | ( 2 人) | [79] | ||||
| 2011 (平成23) | 70 件 | 81 人 | ( 2 人) | 68 件 | 78 人 | ( 1 人) | 2 件 | 3 人 | ( 1 人) | [79] | ||||
| 2012 (平成24) | 75 件 | 77 人 | ( 1 人) | 73 件 | 75 人 | ( 1 人) | 2 件 | 2 人 | ( 0 人) | [79] | ||||
| 2013 (平成25) | 46 件 | 56 人 | ( 2 人) | 42 件 | 52 人 | ( 1 人) | 4 件 | 4 人 | ( 1 人) | [79] | ||||
| 2014 (平成26) | 116 件 | 122 人 | ( 2 人) | 111 件 | 117 人 | ( 1 人) | 5 件 | 5 人 | ( 1 人) | [79] | ||||
| 2015 (平成27) | 52 件 | 56 人 | ( 0 人) | 52 件 | 56 人 | ( 0 人) | 0 件 | 0 人 | ( 0 人) | [79] | ||||
| 2016 (平成28) | 101 件 | 105 人 | ( 4 人) | 100 件 | 104 人 | ( 4 人) | 1 件 | 1 人 | ( 0 人) | [79] | ||||
| 2017 (平成29) | 100 件 | 108 人 | ( 2 人) | 96 件 | 104 人 | ( 1 人) | 4 件 | 4 人 | ( 1 人) | [79] | ||||
| 2018 (平成30) | 51 件 | 53 人 | ( 0 人) | 48 件 | 50 人 | ( 0 人) | 3 件 | 3 人 | ( 0 人) | [79] | ||||
| 2019 (令和元) | 140 件 | 157 人 | ( 1 人) | 137 件 | 154 人 | ( 1 人) | 3 件 | 3 人 | ( 0 人) | [79] | ||||
| 2020 (令和2) | 143 件 | 158 人 | ( 2 人) | 141 件 | 156 人 | ( 2 人) | 2 件 | 2 人 | ( 0 人) | [79] | ||||
| 2021 (令和3) | 80 件 | 88 人 | ( 5 人) | 71 件 | 74 人 | ( 1 人) | 9 件 | 14 人 | ( 4 人) | [79] | ||||
| 2022 (令和4) | 71 件 | 75 人 | ( 2 人) | 68 件 | 71 人 | ( 2 人) | 3 件 | 4 人 | ( 0 人) | [79] | ||||
| 2023 (令和5) | 198 件 | 219 人 | ( 6 人) | 192 件 | 210 人 | ( 4 人) | 6 件 | 9 人 | ( 2 人) | [79] | ||||
| 2024 (令和6) | 82 件 | 85 人 | ( 3 人) | 79 件 | 82 人 | ( 3 人) | 3 件 | 3 人 | ( 0 人) | [79] | ||||
| 2025 (令和7) | 216 件 | 238 人 | ( 13 人) | 211 件 | 232 人 | ( 11 人) | 5 件 | 6 人 | ( 2 人) | [79][80] | ||||
| 表中「 - 」の表記については出典に当該データの表記なし。 | ||||||||||||||
参考文献
- 「クマ類の出没対応マニュアル・改訂版」(環境省 自然環境局)