等エンタルピー定圧系の図式
等エンタルピー定圧集団により説明される単純な物理系としては、熱を通さない断熱ピストンと一定圧力に維持された容積浴を結合させた系があげられる。
この系のエンタルピーの全微分は以下のように書ける。

ピストンは断熱されており、また圧力は一定なので
が成り立ち、したがって等エンタルピーが成り立つ。
この系のハミルトニアンは以下のように与えられる。

ここで、qi, piは各粒子の位置座標および運動量、xw, pwはピストンの位置座標および運動量、Vはシステムの体積、Nは粒子数、Hは系のエンタルピー、Pは浴の圧力である。系の位相空間全体を積分し、それを順列数でわることで位相空間上の体積が得られる。これによりエントロピーが導出できることが保証される。

ここで定数倍は物理量に影響を与えないため省略した。巨視的な系ではdpwの影響は無視でき、dxwはdVで置き換えることができる。

簡単のために体積要素を
と定義し、ヘヴィサイドの階段関数を用いると上式は次のように書ける。
![{\displaystyle \Phi (H,P,N)={\frac {1}{N!}}\int {\Theta [{\mathcal {H}}-(H-PV)]\mathrm {d} \tau }}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/0172264176329d66488c37a6a62c88206d1b43a5)
状態密度は位相空間上の体積を微分することにより簡単に得ることができる。
![{\displaystyle \omega (H,P,N)={\Bigl (}{\frac {\partial \Phi }{\partial H}}{\Bigr )}_{P,N}={\frac {1}{N!}}\int {\delta [{\mathcal {H}}-(H-PV)]\mathrm {d} \tau }}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/d69f3da3ea0c302e55b12fc71635d8e536ac9adb)
ここでδ[ ]はディラックのデルタ関数である。
エネルギーが範囲
にある確率は以下のように計算できる。
![{\displaystyle W(q,p,V)={\frac {1}{\omega \delta H}}={\frac {\delta [{\mathcal {H}}-(H-PV)]}{\omega }}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/79fcf10808082c8cf037c16dd112031ede904b64)
ここでδHはディラックのデルタ関数ではなくエンタルピーの微小変化を意味する。
確率密度分布が得られたので、これを用いて状態量を計算することができる。一般に関数fの期待値は以下のように計算できる。
![{\displaystyle {\bar {f}}=\int {Wf\mathrm {d} \tau }={\frac {1}{\omega }}\int {f\delta [{\mathcal {H}}-(H-PV)]\mathrm {d} \tau }={\frac {1}{\omega }}{\Bigl (}{\frac {\partial }{\partial H}}\int {f\Theta [{\mathcal {H}}-(H-PV)]\mathrm {d} \tau }{\Bigr )}_{P,N}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/e026807b019dc9ae61646f99ee5801af2a6d7a70)
簡単な例としては、エネルギー(ハミルトニアン)の期待値を計算することができ、
のように定義式と一致する。ただし、エネルギーおよび体積はアンサンブル平均であり、系の独立変数ではない。
ミクロカノニカルアンサンブルと同様に以下が成り立つ。

そして理想気体のハミルトニアンを代入すると、NPHアンサンンブルにおける温度が以下のとおり得られる。

ここでTは温度、kBはボルツマン定数である。
ハミルトニアンが追加のパラメータaに依存すると仮定する。このパラメータに共役な一般化力は
であたえられる。一般化力のアンサンブル平均を計算すると、以下を得る。

位相空間上の体積(実際には分配関数)を用いて、系のエントロピーを得ることができる。

ここから熱力学恒等式をもちいれば種々の状態量を導出できる。