精神障害者保健福祉手帳
日本の精神保健福祉法で規定された、精神障害者に対する手帳制度
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制度および手帳の申請
1995年(平成7年)に改正された精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)第45条に手帳が規定された[1]。
障害程度が軽度の順から3級、2級、1級と3段階の等級があり、身体障害者手帳・療育手帳と異なり、手帳の発行日が属する月の2年後の月末までの有効期限が設けられる。縦横がA7サイズ程度の大きさで、一部の自治体(例:東京都)ではカードタイプも発行している[2]。新規および更新申請、障害等級変更の申請時に精神科医または精神保健指定医が記入した精神障害者保健福祉手帳用診断書、または精神疾患を事由とした年金証書の提出が必要になる[注 1]。
新規申請、更新申請共に必ず審査を受けることになり、厚生労働省の元、判定・交付業務は都道府県もしくは政令指定都市の精神保健福祉センター(地域によっては、名称を「精神医療センター」としているところもある)が行う[3]。
年金証書による申請
精神疾患を事由とした障害年金を受給している場合は診断書の代わりに障害年金証書の写しを提出することができ、この場合は年金と同じ等級となる[4]。個人番号による情報連携を利用する場合は年金証書の写しの提出を省略することもできる。
しかし、異なる制度である年金と同じ等級となるため、本来の障害等級よりも低い等級となる可能性があり、必要な援助が受けられなくなる恐れがある。
地方公共団体によっては年金証書の写しによる申請は案内せず、診断書により申請するものとし、(万が一にも年金の等級よりも低く判定されることを避けるために)年金証書の写しを添えることもできるとのみ案内している事例や[5][6]、年金証書の写しを使用して申請する際に本来の等級よりも低い等級となる可能性があることについて同意を得ている事例もある[7]。
また、年金証書の写しによる申請は、年金事務所等へ照会が必要になるため、交付までに相当の時間を要する[8]。
なお、手帳用診断書一枚で自立支援医療 (精神通院医療)の診断書を兼ねることができる。
| 障害等級 | 精神障害の状態 |
|---|---|
| 1級 | 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
| 2級 | 日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
| 3級 | 日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの |
対象疾患
原則、全ての精神疾患が対象とされているが、「精神障害者保健福祉手帳制度実施要領[10]」(平成7年9月12日健医発第1132号厚生省保健医療局長通知、その後、平成23年1月13日障発0113第1号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知「精神障害者保健福祉手帳制度実施要領の一部改正について」で一部を改正し、同年4月1日施行[11])の「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」によれば、下記の疾患が対象であると記載されている[12]。
- 統合失調症
- 気分(感情)障害
- 非定型精神病
- てんかん
- 中毒精神病(有機溶剤などの産業化合物、アルコールなどの嗜好品、麻薬、覚醒剤、コカイン、向精神薬などの医薬品)
- 器質性精神障害(高次脳機能障害を含む)
- 発達障害(心理的発達の障害、小児(児童)期及び青年期に生じる行動及び情緒の障害)(療育手帳の対象となる精神遅滞を伴うものを除く)
- その他の精神疾患
- ※その他の精神疾患にはICD-10に従えば「神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害」、「成人のパーソナリティおよび行動の障害」、「生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群」等を含んでいる。
扶助・優遇・支援の内容
等級や各発行自治体により異なるが、共通して下記の福祉施策が実施されている。
- 年末調整での「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告書」での申告
- 生活保護障害者加算(1・2級)
- 駐車禁止除外指定車標章の交付(1級のみ・住所地所轄の警察署の交通課にて申請)
- タクシー券の交付(対象かどうかは地方公共団体によって異なる)
- 公共交通機関の割引(後述)
- 国や地方公共団体等が運営する博物館[14][15]・美術館[16]・科学館[17]・動物園[18]等の常設展入館・入園料免除(介助者1名を含む)[注 2]
自治体における福祉サービスは、自治体運営交通機関の運賃減免[注 3]・公共施設(市民プールや体育館など[19][20])や市営駐輪場等の利用料減額あるいは免除[21]・公共図書館の貸出点数および期間の加算[22]・地方公共団体運営の公営住宅 (都営・市営アパートなど)への入居優先などがある。
NHK受信料の免除制度が設けられている[23](1級が世帯主でかつ受信契約者の場合は半額免除、等級を問わず世帯全員が住民税非課税の場合は全額免除)[24]。
民間事業者によっては原則、写真を貼付した手帳原本所持者に限るが、一部の水族館[25]、美術館[26]、博物館[27]で入館料が免除されるほか、携帯電話料金(携帯電話料金の障害者割引を参照)、映画館[28]や劇場[29]の入場料、テーマパーク[30]や遊園地[31][32]、展望台入場料[33][34]、カラオケボックス[35]、ボウリング場[36]、日帰り温泉[37][38]と言った娯楽施設等において割引制度を設けている場合がある。等級によって免除・割引率が違う場合もあるが、民間福祉サービスにおいては、概ね手帳の種類や等級における変化はない。一方、レンタカー会社で精神障害者のみを対象外とする事例や[注 4]、日本郵便の青い鳥郵便葉書の無償配布で、重度の身体障害者・知的障害者を対象とし、軽度の障害者や精神障害者は対象外としているような事例もある[39]。
手帳を提示することにより受けられる優遇対象は、公的負担が無ければ運営側の持ち出しであり、実質的な優遇内容は映画興業など業界団体およびカラオケボックスのような運営事業者の理解、各自治体の施設・制度および自治体が依頼する努力度合に依存する。そのため制度の適用範囲に自治体間で相違があり、他地域へ転居した場合など、他の自治体発行手帳では利用できない福祉サービスや地域によっての適用範囲の差も存在する。なお基本的には施設の意思で決定するが、東京ディズニーリゾート[40]は当初「入場するゲストの扱いは(全ての障害者においても)同様で、アトラクションの待ち時間等で配慮する」と言う立場から、支援者や手帳所持者の要望により割引が制定された例もある。
また株式会社ミライロ[41]の事業としてはじめたスマートフォンアプリのミライロID[42]がマイナポータルの障害者情報と目視で連携している。そのため、施設や交通機関で手帳の代わりに呈示して割引を受けられるケースが増えている[43][注 5]。
これまで精神障害者は、法定雇用率の対象とされていなかったが、2006年(平成18年)4月1日の障害者総合支援法施行に伴い、精神障害者保健福祉手帳所持者については法定雇用率の対象とされるようになった。2012年(平成24年)には、雇用の義務付けの方針が厚生労働省内で定まり[44]、2018年(平成30年)4月1日から雇用義務の対象に加わった[45]。
交通機関の割引

新しい様式の手帳に変更されるまではスタンプやシールでの対応が行われた。
交通機関では身体障害者・知的障害者と同等の割引を実施している場合もあるが、精神障害者のみ対象外としている場合もある[46]。JR・大手私鉄全社については、2025年(令和7年)4月1日までに精神障害者に対する割引制度が導入された。
発達障害者・知的障害者の手帳取得
交付台帳の整備
制度の諸問題
制定時の問題
一部の精神障害者患者会が、当時の大きな圧力団体である全国精神障害者家族会連合会および全国精神障害者団体連合会が、厚生省に要望して強引に制定したとの証言がある。また病者総番号制、結局精神病者分断(行政に都合の良い精神病者と都合の悪い精神病者を分けるだけ)と批難している[52]。
認定条件
行政行為として障害者施策の推進に手帳があるが問題として挙げられている、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律には、身体障害者福祉法第15条に定めている指定医制度のような制度がなく、精神科医でなく事実上知識が浅くても、手帳申請用の診断書が書けてしまい、その診断書によって正しい判定がされず、精神障害者の権利侵害につながると言われてる[53][54]。諸事情で申請や更新をしない場合、または申請をしても不支給の認定を受けた場合は有効期限満了で手帳が効力を失う。手帳が失効した場合は、都道府県知事が記載する精神障害者保健福祉手帳交付台帳から個人記録は削除される。即ち障害者としての公式な認定は無くなるが過去の交付及び返還の記録はずっと残される。都道府県知事には、あらかじめ指定された医師の診断に基づいて、精神障害の状態にないと判断した場合は手帳の返還を命令できる権限がある[55]。また、申請を受け、精神障害と認定せず、手帳を支給しない場合は都道府県知事は申請者に理由を通知する義務がある[56]。障害者基本法第2条に規定された障害者(身体障害・知的障害・精神障害(発達障害を含む)が支援される。発達障害者は、ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)の「第5章:精神と行動の障害(F00-F99)」に含まれる。

