越後・会津殺人ルート
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十津川警部が携わってきた事件の中には、スケープゴートを立てて自らの罪を未来永劫隠滅しようとする不届きな輩がしばしば登場する。
『寝台急行銀河殺人事件』に登場する同級生・井崎や、『下り特急「富士」殺人事件』に登場する橋本豊元刑事のように、十津川の顔なじみの人物が事件の容疑者となってしまい、その無実を証明する為に十津川班が奔走することになるケースも多かった。
そして、今回は何と十津川警部自身が事件に巻き込まれてしまい、その容疑者として身柄を拘束されてしまう事態が勃発してしまうのである。
「追いつめられた十津川警部」という副題が示す通り、この物語で十津川は自らにかけられた福島県と新潟県にまたがった連続殺人の容疑を晴らさなければならない事態に陥ってしまう。
なお、本文中で亀井刑事が自身の事を『警部がいなければ何もできない』と発言しているが、彼を含めた十津川班の人物は「組織物」にありがちな【トップがいなければ何もできない烏合の衆】などではなく、自らの手で十津川と因縁を持つ容疑者の割り出しに成功している。
そのチームプレイもまた、作品の見どころの一つであろう。
ストーリー
5月3日の早朝、井の頭公園で若い女性の刺殺体が発見された。被害者は原田みゆき、近くに住むクラブホステスだった。
初動捜査を担当した佐伯警部は、被害者の遺留品の中からスペーシアの切符とともにとんでもないものを発見してしまい仰天する。
・・・なんと、それは警察学校時代の同期・十津川省三警部の名刺だった。
連絡を受けた十津川警部は、自らの名刺とともに発見されたスペーシアの切符に着目。亀井の制止を振り切り、被害者の背後関係を調べるために彼女の乗るはずだったと思われるスペーシアに乗車した。
途中で列車を乗り換え、会津若松に差し掛かったころ、十津川のもとに女性の声で「今日は喜多方に泊り、明日は新潟周りで岩室温泉へ向かえ」という電話がかかってくる。
被害者であるみゆきと十津川には面識がなく、彼女の捜査を始めた途端に謎の電話がかかってきたことから、十津川はこの殺人事件そのものが自分をおびき出す為に仕組まれた罠であったことを確信した。
自分を会津におびき出すためだけに、人一人を殺した犯人の残忍性に憤りつつ、取りあえず謎の声の指示に従う事にした十津川警部。
その日は東山温泉に一泊し、翌日に喜多方のとあるラーメン店で食事をしていたところ、女性カメラマンを名乗る渡辺ひろみという女性が接近してきた。
女性が事件に関係しているのではないかとにらんだ十津川は、女性の行き先が自分と同じ岩室温泉であることを聞き出すとこれに同行。
ところが、その夜なんと岩室温泉で渡辺ひろみが殺害されてしまい、その容疑者として十津川自身が身柄を拘束されてしまう。
しかも、十津川の荷物の中から見覚えのないフィルムが発見され、それを現像してみたところ十津川が東山温泉付近の神社で一人の女性を絞殺する一部始終が撮影されていたのだ。
慌てた福島県警が、渡辺ひろみが殺害された当夜に連絡を取っていた友人に確認してみたところ、なんと友人宅の留守電に「東山温泉で殺人を犯した男と再会した。男の正体は警視庁の十津川という刑事で・・・」というメッセージが残されていたことが判明する。
こうして、【東山温泉で女性殺しを撮影された十津川が、口封じの為に目撃者をはるばる新潟まで追いかけてきて殺害した】という構図が完成してしまった。
当然、敬愛する上司の連続殺人容疑を信じられない亀井刑事は十津川班のメンバーを叱咤激励して捜査を開始。
やがて、小坂井めぐみの背後関係から、十津川と因縁のある『とある人物』の存在が浮かび上がってくる。
登場人物
警視庁捜査一課
新潟県警
- 広田刑事
- 坂口刑事
事件関係者
- 原田みゆき - クラブホステス。最初の犠牲者。
- 渡辺ひろみ - 第三の犠牲者。女性カメラマンで殺人犯・十津川を尾行して返り討ちにされた。
- 小坂井めぐみ - 第二の犠牲者。素性に謎が多く、無職なのにも変わらず優雅な生活を送っている。
- 小暮明 - 中性的な雰囲気を持つ俳優。ゲイ疑惑がある。
- 仙堂肇 - 大会社「城南ポンプ」の社長。美青年コレクターのような人物で、ゲイ疑惑を持たれている。めぐみのパトロンでもあった。
- 浦辺 - 元警視庁刑事部長で、今では城南ポンプの監理部長の職についている男。
- 早見明 - 元野球選手。情婦だったホステスを事故に見せかけてひき殺したのを十津川に暴かれ、逮捕された。