名探偵も楽じゃない
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話題性
日本に、「MMM(Member of Mystery Mania)」という推理小説マニアの同好会があった。定員は10名だが、「原書で読めること」などと参加資格が厳しく、9人しか会員はいなかった。会長の岡部弘毅は名探偵の復古を望んでおり、4人の名探偵を日本に招待する。彼は世界に支店を持つ「ホテル・オカベ」の会長でもあり、資金に不足はなかった。
都内にあるホテル・オカベの32階を会場にし、名探偵たちを迎えた5月20日、左文字京太郎という「名探偵」を自称する青年が飛び入りで参加してくる。「何かが起こる」と主張する左文字だが、MMMのメンバーは相手にしない。しかし、名探偵を歓迎するため、岡部が用意させておいた花束に添えられていたカードは、連続殺人を予告するカードに摩り替わっていた。不安と不快感の入り混じる中、岡部の音頭で乾杯が行われる。そして、彼は急死した。医者が呼ばれたが、「青酸による中毒死」と判明しただけだった。
連続殺人の予告は悪戯ではなかったのか? やがて、第2、第3の事件が起こり、次々に人が死んでいく。老いたる名探偵たちは、若い左文字に推理を任せ、動こうとしない。果たして、その真意は? そして犯人は? 動機は? 最後に名探偵たちが下した決断とは…?
「名探偵シリーズ」4部作の第3作だが、他の3作が以下の通り話題性に富んでいるのに対し、本作ではその点が地味である。
- 名探偵なんか怖くない(1971年) - 4人の名探偵の共演、3億円事件の再現。
- 名探偵が多すぎる(1972年) - アルセーヌ・ルパンと怪人二十面相が挑戦してくる。
- 名探偵も楽じゃない(1973年) - 本作。
- 名探偵に乾杯(1976年) - ポアロ2世を名乗る、ポアロそっくりの青年(ポアロ・マードック)が登場。『カーテン』の結末に対し、アーサー・ヘイスティングズの前で異を唱えている。
以上の内、第1作以外は「閉ざされた環境ので事件」(クローズド・サークルもの)である。また、本作と次回作は連続殺人事件を扱っているが、トリックや謎解きにアンフェアなものが含まれている。
若い名探偵への待望論に対し、本書の「解説」で中島河太郎は、「筆者は(中略)皮肉な答えを用意している」と説明している[4]。