遺産の資源利用
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1998年に京都で開催された第22回世界遺産委員会において、オーストラリアの世界遺産であるカカドゥ国立公園におけるウラン掘削による環境破壊(生態系への放射能汚染)の実態を「Resource development in the world heritage(世界遺産における資源開発)」として報告した際に用いられた「Heritage resource utilization(遺産の資源利用)」が発端となり[1][2][3][4]、以後世界遺産委員会での危機遺産討議やユネスコ総会などでもしばしば議題で引き合いに出される言葉となった。
その後、ウガンダの野生生物研究者であるMoses Wafula Mapesが国際自然保護連合(IUCN)などで発表した『HERITAGE: CONSERVATION VS DEVELOPMENT - CHALLENGING OUR AND ATITUDES』等の関連論文とそれに伴う講演により、「resource use」という簡易な言葉に置き換わった[5]。
実害
利用促進の要因
産業遺産の産業資源化
遺産の資源利用は産業用途が主であるが、対象が産業遺産である場合、鉱業系の地下資源を除けば、その遺産は建物(工場)と設備類などに限られるが、操業中の稼働遺産であれば多くが民間企業のため公共性ある利用は困難である。むしろ廃工場のスクラップリサイクルのような資源利用(再利用)は積極的に行われるべきであるが、所有権が曖昧になっていることが多く困難な状況にある[8]。
人的資源の利用
産業遺産の理念は、ニジニータギル憲章が定めた「歴史的・技術的・社会的・科学的な遺構(建物・機械・土木施設・土地・輸送伝達手段などと製品を消費する生活・社会活動の場)」における「構築物・設備・製品サンプル・景観・記録そして人間の記憶や習慣に刻まれた無形の記録」の保護を目的とする。産業用ロボットの普及による機械化(オートメーション)は著しく、コンピュータや人工知能による生産管理が進むことで、これまでの人間による労働生産(特に第二次産業)の足跡は❝過去の遺産❞となる。
しかし、「人間の記憶や習慣に刻まれた無形の記録」は狭義では文書記録を補う証言だが、広義では運動学習(反復動作)によって体に刷り込まれた手続記憶や筋肉の記憶、実務経験に基づく品質管理・安全管理体制、生産性向上と就労環境を両立させるアイデア、工程における人間工学やサイバネティックス、工学的発明(知的財産)まで含まれる。これは野中郁次郎が「暗黙知マネジメント」として指摘した「言葉などで表現しにくい、経験や勘に基づく知識」であり、日本では自発的に作業効率を工夫する「改善」や従業員のコツやノウハウに頼る職人的な暗黙知に支えられてきた企業風土があり、それを活かした人材経営論がある。こうした産業分野での人的資源(ヒューマン・キャピタル)の利用は人間性の観点から重視される。
持続可能な開発
遺産における天然資源の利用が過度に進むと資源枯渇による資源リスクが危惧される。日本では知床において漁業規制による水産資源の確保が[9]、白神山地では緩衝地帯となる里山での入会地など[10]、ローカル・コモンズ管理が意識されている。遺産の資源利用は環境経済学に基づく持続可能な開発が求められる。
こうしたことをうけ、2012年(平成24年)にユネスコ文化遺産の諮問機関国際記念物遺跡会議(ICOMOS)が「Energy and Sustainability in Heritage(遺産のエネルギーと持続可能性)」に関する国際科学委員会を設立し検討を開始した[11]。
また2022年(令和4年)に自然遺産の諮問機関国際自然保護連合(IUCN)も既存の自然遺産と今後登録を目指す地域を含め、開発に伴う遺産影響評価(HIA)を緩衝地帯やさらにその外側に至る広範囲まで言及するよう求め、その審査次第では間接的な余波であっても登録抹消や新規登録見送りが生じる可能性があることを示唆した[12][13]。