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阪神9000系電車

阪神電気鉄道の優等列車用電車(1996 - ) From Wikipedia, the free encyclopedia

阪神9000系電車(はんしん9000けいでんしゃ)は、阪神電気鉄道(阪神)が1996年(平成8年)に導入した優等列車用の電車である。急行・特急運用が主体であるため、急行形車両に分類されることがある。1995年の阪神・淡路大震災で被災し廃車となった急行系車両(赤胴車)の補充用として製造された。2007年からは阪神なんば線(2009年開業)・近鉄奈良線乗り入れ対応車に改造されている。

製造所 川崎重工業
製造年 1996年[1]
製造数 5編成30両
概要 基本情報, 運用者 ...
阪神9000系電車
阪神9000系電車
(2018年9月8日、大物駅)
基本情報
運用者 阪神電気鉄道
製造所 川崎重工業
製造年 1996年[1]
製造数 5編成30両
運用開始 1996年3月20日
投入先 阪神電気鉄道:本線・神戸高速線・阪神なんば線
山陽電気鉄道:本線
近畿日本鉄道:難波線・奈良線
主要諸元
編成 6両編成(4M2T)
軌間 1,435 mm(標準軌)
電気方式 直流1,500 V(架空電車線方式)
最高運転速度 阪神電鉄線内:106 km/h
山陽電鉄線内:110 km/h
近鉄線内:105 km/h
設計最高速度 110 km/h[1][2](準備で120 km/h)
起動加速度 3.0 km/h/s[2]
減速度(常用) 4.0 km/h/s[2]
自重 9101形:34.5 t
9001形:32.5 t
9201形:25.0 t[2]
車両定員 先頭車:120(座席46)[2]
中間車:132(座席50)[2]
全長 先頭車:18,980 mm[1][2]
中間車:18,880 mm
全幅 2,800 mm[1][2]
全高 9001・9201形:4,060 mm[1][2]
9101形:4,160 mm
車体 ステンレス鋼
台車 SS-144A、SS-044A
主電動機 東洋電機製造製TDK-6146-A
主電動機出力 130 kW[1]
駆動方式 TD平行カルダン駆動方式
歯車比 97:16(6.06)
制御方式 GTO素子VVVFインバータ制御[1]
制御装置 三菱電機 MAP-118-15V59
制動装置 MBSA 回生制動併用全電気指令式電磁直通空気制動
保安装置 阪神・山陽・阪急形ATS、近鉄形ATS(旧・新併設)
備考 電算記号:HQ
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本項では解説の便宜上、大阪梅田・近鉄奈良方先頭車の車両番号 + F(Formation=編成の略)を編成名として記述(例:9201以下6両編成=9201F)する。乗り入れ先の近畿日本鉄道(近鉄)が制定している本系列の電算記号(各社の編成番号に相当)は「HQ」である。

登場の経緯

1995年(平成7年)1月17日に発生した兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)により、阪神では急行系33両・普通系8両の計41両の被災廃車が発生した。このうち普通系の2編成8両は5500系を、急行系のうち3両は8000系を武庫川車両工業で代替新造して対応したが、他に急行系の30両(8000系2編成、2000系2編成、初代3000系1編成)の補充が必要となった[3]。この30両の代替車両として製造されたのが9000系である[4]。

9000系は1996年(平成8年)に6両編成×5本の計30両が製造された。補充が急務であったことから、当時製造ラインに余裕のあった川崎重工業兵庫工場での製造となった[3]。また、この製造ラインがJR東日本209系などの製造に充てていたステンレス車体向けであったことから、工期短縮のためにステンレス車体を採用した[3]。

本形式は震災復旧用として急遽製造されたことから増備は行われなかったが、主電動機や台車などは2001年(平成13年)3月に導入された9300系に継承された。9300系は鋼製車体に戻ったが、2006年(平成18年)に登場した1000系ではステンレス車体が再び採用されている。

車両概説

先に普通系車両の震災廃車補充用として登場した5500系に続く、急行系車両初のVVVFインバータ制御車であるとともに、「ジェットシルバー」の愛称を持つ5201形試作車5201 - 5202以来30数年ぶりとなるステンレス車体の車両である。なお5201形はスキンステンレス車両であり、オールステンレス車両の導入は阪神では初であった。

車体以外は先に登場した8000系「タイプIV」や5500系をベースとしており、従来から在籍している車両仕様を継承している。

本項では、落成当時の仕様について述べる。

車体

登場当時の9000系
(2007年7月1日、香櫨園駅)

5201形5201 - 5202以来のステンレス製となった[3]。構体は前述の209系などと同様の2シート工法を用いた軽量ステンレス車体である[5]。妻板はビードあり、側板はビードなしのベルトグラインド仕上げとして、汚れの付着を抑えている[5]。外板は無塗装で、車種識別用として腰部にオータムレッドとオフィスグレーの帯を入れている[3]。

床面高さは5500系と同様、8000系に対し約40 mm下げられている[3]。側面窓は8000系タイプIVと同様の連続窓風であるが、一部の窓が固定窓となった[3]。

前面は、構体の加工に配慮した普通鋼製となっており、他系列同様裾部にRを持たせ、ストレートな側面や妻面の裾部とは異なる印象となっている。前面デザインは8000系や5500系をベースとしているが、窓ガラス支持を接着工法により平滑とし、ブラック部分を下部まで延長することで精悍なイメージを出している[6]。8000系よりも後退角が50 mm大きくなり、乗務員室が拡大された関係で乗務員扉直後の客用窓の幅が狭くなっている[6]。

9000系の車内
(2013年12月9日)

内装は、座席が8000系8233F以降と同様のバケット式ロングシートを採用するが、モケットの赤みを強くしている。その後、9300系や8000系の座席更新車と同様に茶色を基調としたモケットに変更されている。ただし、優先座席は灰色である。床材も8000系と同様に着座時のフットラインを表示したデザインとされたが、グレーの濃淡となった。シートの袖仕切り形状も、8000系「タイプIV」と同じ形状の仕切りとその延長上のスタンションポールであるが、上部は荷物棚まで延長された。

車内案内表示装置は、5500系で採用した路線マップ併用LED式車内案内表示装置を千鳥配置で設置[注 1]された。車両間の貫通扉は、それまでの700 mm幅から820 mm幅に拡大されている[3]。そのほか、運転台は5500系と同様にデスクタイプで、前後動作式(水平回転軸)の主幹制御器と左右回転動作式(鉛直回転軸)のブレーキ設定器から構成される縦横軸併用2ハンドル式が採用された。

主要機器

台車は5500系と同じボルスタレス台車であるが、高速運転に対応してヨーダンパ取付対応のSS-144A(電動車用)・SS-044A(制御車用)となっている。

主電動機は1時間定格出力130 kWの東洋電機製造製 TDK-6146-A を搭載している[1]。制御装置は三菱電機製のGTOサイリスタ素子方式VVVFインバータ制御装置である MAP-118-15V59 を9101形に搭載しているが、同じ制御装置を搭載している5500系の MAP-118-15V55 とは異なりソフトを高速運転寄りに設定しており、形式も変更している。

また、補助電源装置である静止形インバータ(SIV)は東芝製の140 kVAの INV094-LO を、電動空気圧縮機(CP)は C-2000-ML をそれぞれ9001形に搭載している[7]。

連結器は、8000系と同様にユニット端の両先頭車前面にバンドン式密着連結器を、9101形奇数車の神戸方、偶数車の大阪方には廻り子式密着連結器を、その他は半永久連結器を装備するほか、9101形奇数車の神戸方、偶数車の大阪方には工場入場時の構内入換に考慮して簡易運転台を取り付けている。

屋根部は、5500系と同様にステンレス製だが、長手方向につけられたビードの間隔は5500系より細かくなっている。屋根上はセミ集中式の冷房装置であるCU-703を2基[3]、パンタグラフは9101形で奇数車・偶数車とも大阪寄りに1基搭載[3]、9001形の大阪方にもパンタグラフの搭載準備工事を行っている[3]。

編成

8000系と同様の6両固定編成である[4]。9201形(制御車、Tc)- 9001形(電動車、M1)- 9101形(電動車、M2)の3両ユニットを背中合わせに2組連結し、奇数の車両番号が大阪方、偶数番号が神戸方に組成される。

さらに見る ← 梅田山陽姫路 →, 形式 ...
編成図[1][2][8][9]
← 梅田
山陽姫路 →
形式
9201
(Tc1)

9001
(M')
 <

9101
(M)
 <

9101
(M)

9001
(M')

9201
(Tc2)
自重
(t)
25.032.534.534.532.525.0
定員
(座席)
120
(46)
132
(50)
132
(50)
132
(50)
132
(50)
120
(46)
搭載機器 SIV
CP
VVVFVVVFSIV
CP
閉じる
凡例
  • VVVF:主制御器
  • SIV:補助電源装置 (静止形インバータ)
  • CP:空気圧縮機
  • ◇:集電装置(下枠交差式)
  • < >:集電装置(シングルアーム式。関節の向きも示す)

改造工事など

9203Fの試験装備

9203Fは、9203を中心に装備品の長期試験が行われた。

まず、9203の先頭寄り台車にヨーダンパを取り付けてヨーダンパのない台車との長期比較試験を実施した。さらに、9203と9003の連結部に阪神で初の乗客転落防止用外幌を試験的に設置し、長期試験を実施した。この外幌は後に9000系全車に設置されている。

直通特急対応改造

1998年(平成10年)2月15日のダイヤ改正からの直通特急の運転開始に際し、本系列も8000系と同様に山陽電鉄全線への直通対応改造が施工された。

直通特急の運行開始後、9203に長期試験で装着されていたヨーダンパは、直通先の山陽電鉄の都合で、検査時に取り外された。一方、転落防止用外幌については長期試験の結果が良好であったことから、他系列についても設置されるようになり、本系列では2006年(平成18年)8月に9201Fで本格的に設置され、その後、編成中試験装備の1か所のみという変則的な設置であった9203Fも全車間に設置され、試験部分も交換された。

近鉄線乗入れ改造

近鉄線乗り入れ改造が行われた9201F。1000系との併結用に貫通扉部分が大きく改造されている。
(2021年12月25日、香櫨園駅)

9000系は2009年(平成21年)の阪神なんば線開業に伴う近鉄線相互直通運転の対象車となり、2007年(平成19年)より順次直通対応改造が行われた[3]。

阪神なんば線や近鉄線内で10両編成での運転を実施することから、1000系2両編成との併結に対応するため、大阪方先頭車に貫通幌を取り付ける工事や近鉄形ATS(パターン式新型)の設置を行った。この改造に先立ってバンドン式密着連結器から廻り子式密着連結器への換装が完了した。

外観は近鉄乗り入れ用新造車の1000系とイメージを合わせ、「ヴィヴァーチェオレンジ」帯が採用されたほか、正面の帯は腰部の赤帯から前照灯周り・裾部へのオレンジ色に変更された[3]。また、前面および側面の種別・行先表示器はフルカラーLED式に変更された[10]。

1000系の2両編成との増結・解放運用に備えて、9201形奇数車は増解結に対応した構造となった[11]。前頭連結器には電気連結器が装備され、排障器(スカート)は切り欠き付きとなった[12]。貫通扉には幌枠が設置され、運転台と客室の仕切り扉も1000系同様引き戸に変更された[12]。偶数車(元町・山陽姫路方)は増解結対応改造を行わず、連結器は通常の廻り子式、貫通幌枠は未設置、乗務員室と客室の間の仕切扉は開き戸が存置されている[12]。

運転台も1000系に合わせた仕様変更が行われた。近鉄線仕様の保安装置や、線区に応じて装置の切り替えを一括で行う相直切替スイッチが設置された[10]ほか、近鉄シリーズ21に合わせた横軸2ハンドル式への交換[11]、タッチパネルモニターの設置など、1000系に合わせた改造工事が施工された。

両先頭車への保安機器等の増設により、乗務員室内に収まらず客室側の天井・座席部に大きな張り出しが発生した[12]。この機器搭載スペースを確保するため、乗務員室後部の客席は従来の3人掛けから2人掛けに変更され[10]、この箇所の蛍光灯は小型のものに取り換えられた。客用扉上の路線マップ併用LED式車内案内表示装置は、運転区間の拡大に伴って路線マップを撤去しLEDスクロール表示のみとした[3]。

改造工事は9201Fを皮切りに実施され、2008年(平成20年)4月初頭に9201 - 9001 - 9101の大阪方3両が出場して試運転を実施[13]、旬日を経ずして9102 - 9002 - 9202の神戸方3両も竣工したことから、4月下旬より営業運転を開始した。改造工事も2編成目となる9203Fが7月に竣工し、その後も9205F、9207F、9209Fの順で順次施工された。

9201Fは、2008年(平成20年)5月中旬に1000系に続いて近鉄へ陸送され[14]、同年6月5日から近鉄奈良線内での試運転が開始された[15][16]。2009年(平成21年)1月11日深夜から1月12日未明にかけて、9201Fは近鉄奈良方に1000系1504F・1503Fの計4両を併結し、10両編成で近鉄西大寺検車区からの阪神尼崎車庫まで回送された[17]。

案内表示器の換装

2023年(令和5年)3月より、9000系を対象に表示器の換装工事が順次施工された[18]。車内ドア上部のLED表示器が大型化かつ上下2段表示となり情報量が拡大し視認性も向上した(武庫川線用5500系改造車のものよりサイズは横長)。また、側面の行先表示器が交換され大型のものとなり、普通用車両と同様に次停車駅の表示が出るようになった(ただしフォントは普通用車両のものとは異なる)。

工事に際して、車いすスペースに近い客用扉横へのピクトグラムステッカー、靴摺り部への黄色テープの貼り付けが行われている。なお、8000系および5500系で行われたようなモケットやつり革の交換、床材の変更等によるリノベーション工事および塗装変更は実施されていない。9203Fを皮切りに順次施工され、2025年(令和7年)1月現在、全編成に施工されている。

その他の改造

2016年(平成28年)以降、パンタグラフが下枠交差式の PT4802 からシングルアーム式に順次換装され、全編成での換装が完了した[19]。

運用

1996年(平成8年)3月7日に復旧した石屋川車庫で9201Fを使用してお披露目が行われ、阪神本線が完全復旧した同年3月20日のダイヤ改正で営業運転を開始した[3]。当初は本線の特急から準急までの急行系運用に投入され、1998年(平成10年)からは直通特急として山陽姫路駅への乗り入れを開始した[3]。

2009年(平成21年)3月20日に阪神なんば線が開業し、近鉄奈良線との相互直通運転を開始した。これ以降も引き続き本線系統の急行・特急系運用や山陽電鉄線への直通、イベント時の臨時列車にも使用されており、1000系との共通運用となっている[3]。本形式は他の急行用車両とともに「赤胴車」という位置付けであるが、阪神なんば線と近鉄難波線・奈良線では普通・区間準急・準急の運用にも使用される。

1998年(平成10年)7月12日にハービスOSAKAで開催された『Train Simulator 阪神電気鉄道』(音楽館)の発売前体験イベントに合わせて、9000系6両編成による貸切イベント列車「トレイン・シミュレーター号」が梅田駅 - 高速神戸駅間で運転された[20]。

2015年(平成27年)の「きんてつ鉄道まつり」では本系列の9203Fの「Yellow Magic トレイン」が展示されたが、その際は五位堂検修車庫への回送のため通常は走行しない近鉄大阪線を走行した[21][22]。

2025年(令和7年)4月1日現在、6両編成×5本の30両全車が在籍している[8][9]。

車体装飾

9207Fは、2009年(平成21年)7月14日から約1年間「神戸PRトレイン」として運行されていた。車体には「観る」「憩う」「楽しむ」をテーマに、神戸市の有名観光名所をあしらったラッピングが施されていた[23][24]。

9203Fは、2012年(平成24年)1月21日に「平清盛ラッピングトレイン」として運行されていた[25]。

9201Fは、2014年(平成26年)3月中旬より阪神電鉄が2013年(平成25年)に導入したキャッチフレーズである「“たいせつ”がギュッと。 阪神電車」のラッピングとして運行されていた[26]。

9203Fは、2015年(平成27年)3月16日から同年12月まで、阪神タイガースの球団創設80周年を記念し、タイガースの選手などを側面にラッピングした「Yellow Magic トレイン」として運行されていた[27][28]。

9205Fは、2024年(令和6年)3月25日より、「阪神グループのブランド価値経営」のPRラッピング列車として運行されている[29][30][31]。

2025年(令和7年)4月1日から2027年(令和9年)3月31日(予定)まで、9209Fが「カーボンニュートラル運行」ラッピングトレインとして運行されている[32][33][34]。

編成表

2025年(令和7年)4月1日現在[8][9]

さらに見る ← 大阪梅田・近鉄奈良山陽姫路 →, 電算記号 ...
← 大阪梅田・近鉄奈良
山陽姫路 →
電算記号 9201
(Tc1)
9001
(M1)
9101
(M2)
9101
(M2)
9001
(M3)
9201
(Tc2)
竣工[35]近鉄直通改造[36]備考
HQ02 920190019101910290029202 1996/02/272008/04/10
HQ04 920390039103910490049204 1996/03/182008/06/23
HQ06 920590059105910690069206 1996/03/062008/09/30阪神ブランドラッピング[31]
HQ08 920790079107910890089208 1996/03/122008/12/29
HQ10 920990099109911090109210 1996/03/152009/03/04カーボンニュートラルラッピング[34]
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脚注

参考文献

外部リンク

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