(805997) ヴォルシュチャン

From Wikipedia, the free encyclopedia

仮符号・別名2016 LL106 , 2012 XP157[1]
見かけの等級 (mv)22.5[2]
(2016年の発見時、iバンド)
分類小惑星
ヴォルシュチャン
805997 Wolszczan
仮符号・別名 2016 LL106 , 2012 XP157[1]
小惑星番号 805997
見かけの等級 (mv) 22.5[2]
(2016年の発見時、iバンド)
分類 小惑星
軌道の種類 小惑星帯(外側)[3][4]
発見
初観測日 2007年11月3日[2][3]
発見日 2016年6月12日[2][3]
発見者 COIAS[2][3]
発見場所 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
ハワイ州マウナケア山[2][3]
発見方法 すばる望遠鏡の観測データの解析
軌道要素と性質
元期:JD 2,460,800.5(2025年5月5.0日[3]
軌道長半径 (a) 2.878 au[3]
近日点距離 (q) 2.817 au[3]
遠日点距離 (Q) 2.938 au[3]
離心率 (e) 0.0210[3]
公転周期 (P) 1782.559 日[3]
(4.880 [3]
軌道傾斜角 (i) 5.572°[3]
近日点引数 (ω) 224.767°[3]
昇交点黄経 (Ω) 229.598°[3]
平均近点角 (M) 168.300°[3]
ティスラン・パラメータ (T jup) 3.288[3]
物理的性質
絶対等級 (H) 17.92[2]
Template (ノート 解説) ■Project

(805997) ヴォルシュチャン英語: Wolszczan)は、小惑星帯公転する小惑星の一つである[3][4]ハワイ島にあるすばる望遠鏡において2016年に得られた観測データ内から、未発見小惑星解析アプリケーション『COIAS[注釈 1]による市民科学プロジェクトでの捜索を通じて新天体として検出され、2025年12月15日に命名が発表された[1]

太陽からの軌道長半径が約 2.878 au(約4億3170万 km)離れた、軌道離心率が約 0.02 の楕円軌道を約4.88年(約1,783日)の公転周期公転している、小惑星帯内に位置する小惑星の一つである[2][3]。軌道は黄道面から約5.57度傾いており[3]、小惑星帯の中では比較的外側付近を公転している[4]ため、地球には最小でも1.836 auまでしか接近しない[3]絶対等級は約17.92等級とされる[2][3]。この絶対等級を基にアルベドを 0.15 と仮定すると、直径は約 890 m と推定される[注釈 2]

観測と登録

すばる望遠鏡によって得られた観測データの一部は、未発見の小惑星や太陽系外縁天体などの天体の探索を研究者に限らず一般市民からでも行えるようにするために開発され、2023年7月末から運用されているアプリケーション・このアプリを用いた市民科学プロジェクトである『COIAS』による解析が行われている[7]

ヴォルシュチャンは2016年7月5日ハワイ島マウナケア山山頂にあるすばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ (HSC) によって撮影された画像から、COIASのユーザーによって初めて検出・測定・報告された[2][3]。COIASからはその日のほかに、同年6月12日7月9日7月12日の画像からも検出され報告されている[2]。その後の精査により、2007年11月3日にアメリカアリゾナ州キットピーク国立天文台にあるスペースウォッチによって観測されていたのが最も古い観測記録であると判明し[2]、正式な発見日として認められている2016年7月5日までにはこの初観測の分も含めてCOIAS以外に26回の観測記録がある[2]。また、COIASで最後に測定された撮影日の画像である同年7月12日より後にも番号登録までの時点で、ハワイのハレアカラ山山頂で行われているパンスターズが行ったものなど、19回の観測記録がある[2]

小惑星の観測を一元管理する国際天文学連合所属機関である小惑星センター(MPC)に同一の未知天体の観測報告が同じ年(衝期間)に複数夜で集まると、MPCはその天体に仮符号を与え仮登録を行う[8]。COIASによる解析で、2016年夏に撮影された複数夜の画像からこの天体が検出・報告された結果、スペースウォッチやパンスターズが行っていた過去の観測と連結された状態でMPCが2024年8月29日に公開した Minor Planet Supplement (MPS) にて仮符号 2016 LL106 が付与された[9]。仮符号付与時点でCOIAS以外の観測は1年に1夜だけしか報告されていなかったため、これらの観測が同一天体と気づかれず孤立した状態でMPCにストックされており、すばる望遠鏡の2016年の観測が契機で連結されている。この他、2012年12月17日パンスターズが1夜だけの観測から発見報告を行い仮符号登録された小惑星2012 XP157とも同一の天体であることが分かっているが[10]、1夜のみでの報告者は発見者とならず(後述)、2016 LL106の観測にひとまとめに統合されている。

仮符号状態では小惑星は正式に登録されたわけではなく、正式な番号登録には多くの観測が集まり軌道が正確に確定する必要がある[11]。仮符号登録後に、チリセロ・トロロ汎米天文台にある口径 4 m のビクター・M・ブランコ望遠鏡に搭載された ダークエネルギーカメラ2014年、2016年に撮影した画像にこの天体が写っていたことが報告された[12]ことで、軌道がさらに精査された結果、2025年5月22日付で小惑星センターより公開された小惑星回報「MPC 181535-183282」にて、小惑星番号805,997番が与えられた[13]。 番号登録と同時に、それまでの観測報告者から小惑星の発見者が決定されるが、ルール上最初に複数の観測報告が集まった衝期間を対象に、その中で最初の報告(報告日が基準で観測の先後は関係ない)を発見観測、報告者を発見者とすることになっており、この天体の発見者はCOIASと決定された[14]。これで、COIASが発見者として登録された6例目の確定番号小惑星となった[15]

命名

発見者にはその小惑星への命名提案権が与えられるも、測定・報告者よりも観測者が優先されるためCOIAS発見天体の命名権を持つのは原初的にすばる望遠鏡HSCの観測チームだったが、このチームはCOIAS開発チームによる命名を快諾していたため、COIASでこの天体を測定したユーザーと開発チームの話し合いで提案する名前を決定することができた[16]

この天体の測定者は日本、アメリカ、中国、ポーランドから参加していた4人で[17]、このうちポーランド南部カトヴィツェの私立高校クラウドスクールポーランド語版に通う命名当時高校2年生のMaria Wicherが提案した「ヴォルシュチャン」が命名申請された[18]。これはミリ秒パルサーPSR B1257+12とその周囲を公転する太陽系外惑星PSR B1257+12 APSR B1257+12 BPSR B1257+12 Cの発見者の1人であるポーランド出身の天文学者、アレクサンデル・ヴォルシュチャンにちなんだ案である[19]。ポーランドアマチュア天文学者協会(PTMA)やポーランド宇宙生物学会(PTAstroBio)の青少年部門「AstroYouth」に所属する彼女は2023年7月14日にポーランドのクラクフで開催されたヨーロッパ天文学会英語版年次総会でのヴォルシュチャンの公開講演を聴講し感銘を受け[20]、いつか新天体を見つけ命名権を得たらヴォルシュチャンの名前をつけたいと望んでいた[21]。 なお、COIASが公開され、学生含め誰でもその新天体発見のチャンスを掴めるようになったのが、奇しくもその講演のわずか約2週間後のことである。

そして国際天文学連合の小天体の命名に関するワーキンググループ (WGSBN) より2025年12月15日に発行された『WGSBN Bulletin Volume 5, #28』にて命名が公表され、正式にヴォルシュチャンと命名された[1]

この命名はポーランドのラジオ局やテレビなどで大きく報じられ[22]、ポーランドの天文界の巨匠と若いエネルギーの組み合わせによる成果と評された[23]

脚注

関連項目

外部リンク

Related Articles

Wikiwand AI