あなたへ (映画)
From Wikipedia, the free encyclopedia
高倉にとって2006年の『単騎、千里を走る。』以来6年ぶりの主演映画、205本目の出演映画であり、高倉が監督の降旗と組んだ20作目にあたる。元々は高倉の主演作の企画が持ち上がった際、『夜叉』(1985年)、『あ・うん』(1989年)などをプロデュースした故・市古聖智[3]が遺したシノプシスを、市古の関わった数々の作品でカメラマンを務めた林淳一郎が降旗に紹介。降旗が興味を示した事に始まる。オリジナルのストーリーは非常に長いものだったため、脚本の青島武、降旗、東宝側のプロデューサー、そして林の4名で内容を整えていったものである。企画者として、市古と並び、撮影監督の林の名前が列挙されているのはこうした経緯による[4]。
あらすじ
富山の刑務所で指導技官を務める倉島英二に、亡くなった妻・洋子から届いた絵手紙。そこには今まで知らされることの無かった“故郷の海に散骨して欲しい”という洋子の想いが記されていた。洋子の遺言は依頼人により、平戸の郵便局に7日間保管されていた。亡くなった洋子の真意を知るために、故郷へ向けて自分で内装をしたワンボックスカーで、一人旅を始める英二。その旅は富山[6]から始まり飛騨高山、京都、大阪、竹田城、瀬戸内、下関、北九州市の門司、そして洋子の故郷である長崎県平戸の漁港・薄香へと続く。風光明媚な地で出会うさまざまな人々と、さまざまな人生。出会いと別れ。そしてそれは、英二が洋子の深い愛情に改めて気付かされる旅でもあった[7]。「このみちや いくたりゆきし われはけふゆく 種田山頭火」。
キャスト
- 倉島英二 - 高倉健
- 倉島洋子 - 田中裕子
- 南原(なんばる)慎一 - 佐藤浩市
- 年齢は上だが田宮主任の部下。過去に何かを抱えている。
- 平戸で困ったことがあったら大浦吾郎を訪ねろと教える。
- 田宮裕司 - 草彅剛(SMAP)
- 北海道の物産展を出店するため日本を回っている。
- 車の故障で困っているところを英二に助けてもらう。妻に不倫の噂があり、真実を知るのを恐れて、自らすすんで出張している。
- 濱崎奈緒子 - 綾瀬はるか
- 英二の頼みを聞いて、散骨のための船を探してくれる女性。
- 父を海で亡くした。
- 濱崎多恵子 - 余貴美子
- 奈緒子の母で濱崎食堂を営む。
- 夫が海で遭難して行方不明になって以来、奈緒子を一人で育てている。
- 大浦卓也 - 三浦貴大
- 薄香の漁師。
- 祖父大浦吾郎の対応に腹を立て、英二のため無理やりにでも船を出そうとする。奈緒子と来月結婚の予定。
- 漁協の役員 - 石倉三郎
- お好み焼き屋の客 - 岡村隆史(ナインティナイン)
- 笹岡紀子 - 根岸季衣
- NPO法人 遺言サポートの会のスタッフ。
- 洋子から預かっていた絵手紙を英二に渡す。
- 大浦吾郎 - 大滝秀治[9]
- 散骨のために船を出すことを頑なに断った薄香の漁師。
- 「久しぶりにきれいな海ば見た」という。
- 塚本和夫 - 長塚京三
- 英二の後輩。
- 英二の辞表を預かり休暇扱いとする。
- 塚本久美子 - 原田美枝子
- 和夫の妻。
- 警官 - 浅野忠信
- 杉野輝夫 - ビートたけし
- 不破万作
- 掛田誠
- 井上康
- 芦川誠
- 井上肇
- 御供信弘
スタッフ
- 監督 - 降旗康男
- 脚本 - 青島武
- 音楽 - 林祐介
- 製作 - 市川南、平城隆司、服部洋、見城徹、山本晋也、岩本孝一、冨木田道臣、宮坂学、吉川英作、笹栗哲朗、樋泉実、中井靖治
- 企画 - 市古聖智・林淳一郎
- プロデューサー - 佐藤善宏・前田光治・小久保利己・進藤淳一
- 撮影 - 林淳一郎
- 別班撮影 - さのてつろう
- 照明 - 中村裕樹
- 録音 - 本田孜
- 美術 - 矢内京子
- 装飾 - 鈴村高正
- 助監督 - 宮村敏正
- 編集 - 菊地純一
- VFXスーパーバイザー - 立石勝
- スクリプター - 阿保知香子
- 音楽プロデューサー - 和田亨
- 音響効果 - 佐々木英世
- ロケ協力 - 富山県ロケーションオフィス、富山フィルムコミッション、射水市、氷見市、岐阜フィルムコミッション、飛騨フィルムコミッション、米原市、大阪フィルムカウンシル、下関フィルムコミッション、岩国市フィルムコミッション、山口県フィルムコミッション、北九州フィルムコミッション、福岡フィルムコミッション、佐賀県フィルムコミッション、長崎県フィルムコミッション、平戸市 ほか
- プロダクション統括 - 金澤清美
- アソシエイト・プロデューサー - 藤原恵美子
- ライン・プロデューサー - 傳野貴之
- プロダクションアドバイザー - 山田健一
- 小説「あなたへ」森沢明夫(幻冬舎文庫)
- 制作プロダクション - 東宝映画
- 制作協力 - ブリックス
- 配給 - 東宝
- 製作 - 「あなたへ」製作委員会(東宝、テレビ朝日、電通、日本経済新聞社、幻冬舎、朝日放送、メ〜テレ、TOKYO FM、Yahoo! JAPAN、日本出版販売、九州朝日放送、北海道テレビ放送、静岡朝日テレビ、中日新聞社、北海道新聞社、北日本新聞、北日本放送、富山テレビ放送、チューリップテレビ、広島ホームテレビ、北陸朝日放送、東日本放送、長崎文化放送、山口朝日放送、瀬戸内海放送)
封切り・受賞
第36回モントリオール世界映画祭のワールドコンペティション部門に正式出品。エキュメニカル賞特別賞を受賞[10]。高倉は1994年に「四十七人の刺客」でヴェネツィア国際映画祭を訪れて以来18年ぶりに海外の映画祭の現地で会見した。
全国339スクリーンで公開され、2012年8月25、26日の初日2日間で興収2億3,723万1,500円、動員21万9,164人になり映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第2位となった[11]。
2012年11月27日、主演の高倉が本作により「第37回報知映画賞」主演男優賞を受賞。「第25回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞」においても、高倉が主演男優賞、本作は石原裕次郎賞を受賞した。
2013年3月8日、第36回日本アカデミー賞にて優秀作品賞、優秀監督賞(降旗康男)、優秀脚本賞(青島武)、優秀助演男優賞(佐藤浩市)、最優秀助演男優賞(大滝秀治)、最優秀助演女優賞(余貴美子)、優秀美術賞(矢内京子)、優秀撮影賞(林淳一郎)、優秀照明賞(中村裕樹)、優秀音楽賞(林祐介)、優秀録音賞(本田孜)、優秀編集賞(菊池純一)を受賞[12]。
小説
- 『あなたへ』著:森沢明夫(幻冬舎文庫 2012年2月24日) ISBN 978-4344418240
東宝サイドから小説化の話を持ちかけられた幻冬舎が、『虹の岬の喫茶店』や映画化された小説『津軽百年食堂』などで注目される森沢明夫に依頼した。快諾した森沢は自らレンタカーを駆って富山ロケから撮影現場を巡り、登場人物のディテールを肉付けしていった。
本作は脚本をベースに1冊の本に仕上げようという試みがなされた。「この物語に出合い心が動きました。人が人を思いやること、生きることの切なさを思いました」と語る高倉の意も受けて作業が進み、出版にこぎつけた幻冬舎は「脚本も素晴らしいものですが、単なるノベライズではなく、オリジナル小説として読んでほしい」と話している。
著者である森沢自身も「映画の尺ではどうしても表現しきれない部分を、小説ではできるだけ丁寧にすくいとっていこうと思いました」と語り「読了後に、自分の一番大切な人のことを思い浮かべてみてくれたらうれしい」と話している。
関連本
- 『もういちど あなたへ』編著:石飛徳樹(朝日新聞出版 2018年2月20日) ISBN 978-4023316355
- 高倉健がこの世を去って3年、降旗康男監督や共演者らに新しくインタビューした高倉健追悼本。