アノマロカリス科

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アノマロカリス科Anomalocarididae[4])は、ラディオドンタ類節足動物を大きく分けた分類群)の一つ[10][7]。約5億年前のカンブリア紀に生息したアノマロカリスなどが分類され、長い触手様の前部付属肢をもつ種類が含まれる[11][12][7]

本科はアノマロカリス類[6]anomalocaridid[13][14][15][6][7][16][17])と総称されるが、かつてラディオドンタ類の全ての構成種を含んだ[18][19][20][21][22]ため、これらの呼称は一時期では本科の構成種のみ(狭義のアノマロカリス類)ならず、ラディオドンタ類全般の別名でもあった(広義のアノマロカリス類、後述)[18][19][20][21][22][23][24][25]

アノマロカリス科はラディオドンタ類における4つの[注釈 2]の一つであり、その中でも本科は唯一に21世紀以前で創設されたものである[注釈 3][4][10]学名Anomalocarididae」(「Anomalocaridae」と表記されることもある[22])は、本科の模式属タイプ属)であるアノマロカリスAnomalocaris[5])に因んで名付けられた[4]

なお、創設当初(Raymond 1935[4])から1970年代にかけてラディオドンタ類の全貌と多様性は未解明で、本科もその頃ではまだ甲殻類と誤解釈されるアノマロカリス(アノマロカリス#発見史を参照)のみを含んでいた[4]。本科の模式属であるアノマロカリスは1980年代でラディオドンタ類であると判明したが、当時唯一に知られるラディオドンタ類であるアノマロカリスは科所属不明とされ、本科はその分類体系に採用されなかった[26]。1990年代では、ラディオドンタ類(Radiodonta)が創設され、本科もその下位分類群として再び採用されるようになったが、2010年代前期まででは、ラディオドンタ類の全ての構成種は本科のみに含まれた[18][19][20][21][22]。そのため、2010年代後期まででは、ラディオドンタ類全般は一般に「アノマロカリス類」(anomalocaridid)と総称された[18][19][20][21][22][23][24][25]

しかし、ラディオドンタ類の構成種が Vinther et al. 2014 で本科含めて4つの科[注釈 2]を基に再分類された以降では、本科は一部のラディオドンタ類のみを含めるようになった[10]。例えば Wu et al. 2021a では、本科の構成種として認められるのはアノマロカリスとレニシカリスLenisicaris)の種類のみである[7]。これにより、ラディオドンタ類全般を指す総称も徐々にこの分類体系に反映した「radiodontan」[3][25][27][28][29][30][31][13][32][33]や「radiodont」[34][35][14][36][15][37][38][39][7][40][16][8]に変更され、前述の本科由来の総称「anomalocaridid」(アノマロカリス類)はラディオドンタ類全般ではなく、代わりに本科の種類のみを指すのに狭義化されつつある[13][14][15][6][7][16][17]。なお、この分類体系の中で、本科は長らく系統学のみに基づいた(国際動物命名規約の条項的には無効である)定義のみ与えられ[注釈 4][10]、他のラディオドンタ類の科から区別させるほど、形態学に基づいた有効の再定義がなされていなかった[注釈 5][7]。Oxman et al. 2025 はアノマロカリス、レニシカリスとヴェロカリスの特徴を元に本科を定義したが[注釈 6]、前部付属肢の識別形質はバリエーショが多く、他の識別形質はたった1種 (Anomalocaris canadensis) のみに基づいているため、懐疑的とされる[9]

形態

アノマロカリス科のラディオドンタ類前部付属肢(frontal appendage)は十数節(柄部1-2節と残り13~15節[11][12][7][9][注釈 7][8])の肢節に分かれ、全体的に長い触手様の形をもつ[11][12][14][7]。柄部以降の各肢節は可動的で、背側1対の関節丘と腹面の三角形の節間膜を介して連結される[11][12][14][7]。少なくとも柄部と先端以外の肢節はそれぞれの腹側に1対の内突起(endite)があり、ヴェロカリスを除き[9]先端ほど短くなりながら長短を繰り返している[11][12][14][7]。例外もある[注釈 8][36]が、内突起の長さは原則として該当肢節の高さを超えない[36][7]。内突起のうち柄部直後の方が往々にして最も発達であるが、アンプレクトベルア科の種類ほど強大に特化した形ではない[7]。内突起は種類によって前後の縁にそれぞれ1本以上の分岐(auxiliary spine)をもつ(アノマロカリス[41][11][12]、もしくは単純の棘状で分岐を欠く(レニシカリス[36][7]

前部付属肢以外の構造はアノマロカリスのみによって知られ、中でも全身が判明したのは Anomalocaris canadensis という1種のみである[注釈 9][42][43]。流線型な体をしており、小さな頭部にある3枚の甲皮はいずれも楕円形で目立たない[11][15]。口の歯(oral cone)は不規則な三放射状で、32枚を超えた総数不定の歯のうち、前方の1枚と両後方の2枚が最も大きく、小さな開口近くの表面にはうろこ状の隆起、外縁には溝が密生している[44][45][32]。十数節の胴節のうち、首のように短縮した前3節は退化的なのみをもつ[11][46]。それ以降の13節は各胴節の横幅と同じほど発達した鰭をもち、ダイヤモンド形の輪郭を描くように3-4番目から後方ほど幅狭くなる[11]。鰓のような構造体(setal blades)は各胴節の背側で左右に別れて配置される[11]尾部は3対の発達した尾鰭でできた尾扇(tail fan)をもつ[11][15]

本科の流線型な体・小さな頭部と甲皮・歯の隆起と外縁の溝・前部付属肢の可動的な肢節と長短を繰り返した内突起は、ラディオドンタ類の中でアンプレクトベルア科の種類に共通した特徴である[33][14][15][8]。一方、本科の3対の尾鰭と歯における三放射構造は、知られるラディオドンタ類の中でそれぞれインノヴァティオカリスタミシオカリス科エキドナカリスのみに共通である[43][47]

生態

イソキシスを捕食するアノマロカリスの生態復元図

アンプレクトベルア科の種類と同様、アノマロカリス科のラディオドンタ類は流線型の体・発達した鰭・頑丈な内突起をもつ前部付属肢により、フルディア科の種類より活動的で、獰猛な遊泳性捕食者であったと考えられる[25][35][33][39][7][48]。能動的な前部付属肢を下向きに湾曲し、活動的な獲物を巻き付けるように捕獲していたとされ[49][19][50][36][16][48]、小さな甲皮は、その可動域を制限せずに防御の役割を果たしていたと考えられる[28][33]。また、本科のアノマロカリスに見られる不規則で小さな開口部をもつ歯は、蠕虫状の柔らかい小動物を吸い込むのに向いたとされる[44][25]。発達した尾扇は、遊泳中の横安定性を維持することや急速な方向変更に用いられたと考えられる[51]

分布と生息時代

バージェス頁岩から発見された Anomalocaris canadensis の化石標本

ラディオドンタ類の中で、アノマロカリス科の化石標本中国南部(雲南省[7]湖南省[41])、北アメリカカナダ[5][49][52]アメリカ[53][12][36])とオーストラリア[45]から発見され、次の通りに列挙される[7]

本科としての本質が不確実の記録は「*」で示す。

カンブリア紀第三期(約5億2100万 - 5億1400万年前)[注釈 10]
カンブリア紀第四期(約5億1400万 - 5億900万年前)[注釈 11][41][8][56]
カンブリア紀ウリューアン期(約5億900万 - 5億450万年前)
カンブリア紀ドラミアン期(約5億450万 - 5億50万年前)
カンブリア紀ガズハンジアン期(約5億50万 - 4億9700万年前)

分類

脚注

関連項目

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