アバカビル

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アバカビル
Chemical structure of abacavir
臨床データ
発音 [əˈbækəvɪər] ( 音声ファイル)
販売名 Ziagen, others[1]
AHFS/
Drugs.com
monograph
MedlinePlus a699012
医療品規制
胎児危険度分類
    投与経路 By mouth (solution or tablets)
    ATCコード
    法的地位
    法的地位
    薬物動態データ
    生体利用率 83%
    代謝 Liver
    消失半減期 1.54 ± 0.63 h
    排泄 Kidney (1.2% abacavir, 30% 5'-carboxylic acid metabolite, 36% 5'-glucuronide metabolite, 15% unidentified minor metabolites). Fecal (16%)
    識別子
    CAS登録番号
    PubChem
    CID
    DrugBank
    ChemSpider
    UNII
    KEGG
    ChEBI
    ChEMBL
    NIAID ChemDB
    CompTox
    Dashboard

    (EPA)
    ECHA InfoCard 100.149.341 ウィキデータを編集
    化学的および物理的データ
    化学式 C14H18N6O
    分子量 286.332 g/mol g·mol−1
    3D model
    (JSmol)
    融点 165 °C (329 °F)
      (verify)
    テンプレートを表示

    アバカビル(abacavir, ABC)はHIV/エイズの予防と治療に用いられる薬剤である[1][2]。他の核酸系逆写酵素阻害薬(NRTIs)と同様に、アバカビルはその他のHIV治療薬と併用され、単体での使用は勧められない[3]。投与法は錠剤または液体の経口であり、3か月以上の子供にも投与できる[1][4]

    アバカビルは一般的に忍容性が高い[4]。主な副作用は嘔吐、不眠症、発熱、疲労感などである[1]。重度の副作用には過敏症肝障害乳酸アシドーシスが挙げられる[1]遺伝子検査により過敏症になるリスクが高いか診断できる[1]。過敏症の症状は発疹、嘔吐、息切などである[4]。アバカビルはNRTIの類型に分類される薬剤であり、その作用機序はHIVウイルス複製に必要な酵素である逆転写酵素を阻害することで効果がある[5]。NRTIに分類されるアバカビルは炭素環式ヌクレオシドである[1]

    アバカビルは米国で1988年に特許認可され、1998年に使用認可された[6][7]。日本では1999年9月に承認された[8]世界保健機関の必須医薬品リストに掲載されており、最も効果的で安全な医療制度に必要とされる薬剤である[9]後発医薬品として入手できる[1]開発途上国での2014年の卸売価格は1日分$0.36~$0.83米ドルである[10]。米国での2016年の卸売価格は通常量1か月分$70.50米ドルである[11]。一般的にアバカビルはその他のHIV治療薬と混合され、アバカビル・ラミブジン・ジドブジンドルテグラビル・アバカビル・ラミブジンアバカビル・ラミブジンなどの合剤で販売される[4][5]

    アバカビル錠
    • HIV感染症[12] - アバカビルを用いる際には、他の抗HIV薬と併用しなければならない[12]

    副作用

    重大な副作用として知られているものは、過敏症(約5%)、膵炎(1.09%)、皮膚粘膜眼症候群中毒性表皮壊死融解症乳酸アシドーシス(0.16%)、脂肪沈着による重度の肝腫大(脂肪肝)(0.16%)である[12]。この内過敏症については時に致死的な経過を辿るものがある旨の警告欄が設けられている[12]。この過敏症は多くは治療開始後6週以内(中央値11日)に発現する。また、免疫再構築症候群英語版が生じ、投与後の免疫回復に伴い症候性・無症候性日和見感染への炎症反応や自己免疫疾患が発生することがある[12]

    一般的な副作用としては、嘔気頭痛疲労感嘔吐下痢、食欲不振、睡眠障害などがある。まれに、ASTALTの上昇、抑うつ不安発熱悪寒上気道感染、乳酸アシドーシス、高トリグリセリド血症リポジストロフィーなどが起こる[13][14]

    肝障害のある患者は、アバカビルを使用することで症状を悪化させる可能性があるため、注意が必要である。肝疾患の兆候としては、吐き気や嘔吐、腹痛、濃色尿、黄疸、白目の黄変などが挙げられる。アバカビルなどのヌクレオシド系薬剤の使用により、ごくまれに乳酸アシドーシスを引き起こすことがある。乳酸アシドーシスの兆候としては、速いまたは不規則な心拍、異常な筋肉痛、疲労、呼吸困難、嘔気や嘔吐を伴う胃痛などがある[15]。他にも、心臓発作のリスク増加に繋がる可能性がある[要出典医学]

    アバカビル耐性ウイルスは、ラミブジンジダノシンザルシタビンなどの他のHIV特異的抗レトロウイルス薬にも耐性を示す場合がある[16]。プロテアーゼ阻害薬との交差耐性を示す可能性は低い[12]

    アバカビルを生後3ヶ月未満の乳児に投与する際の安全性は知られていない[12]

    過敏症症候群

    アバカビルに対する過敏症は,ヒト白血球抗原B遺伝子座の特定の対立遺伝子、即ちHLA-B*5701と強く関連している[17][18][19]。HLA-B*5701の保有率と人種との間には関連性が認められる。HLA-B*5701の保有率は、ヨーロッパ系アメリカ人で平均3.4~5.8%、インド系アメリカ人で17.6%、ヒスパニック系アメリカ人で3.0%、中国系アメリカ人で1.2%と推定されている[7][20]。アフリカ系集団におけるHLA-B*5701の保有率には大きなばらつきがある。アフリカ系アメリカ人におけるHLA-B*5701の保有率は、平均で1.0%、ナイジェリアのヨルバ族では0%、ケニアのルヒヤ族では3.3%、ケニアのマサイ族では13.6%と推定されているが、これらの平均値は標本集団内での頻度の変動が大きいことに由来する[10]

    過敏症症候群では以下の症状が多臓器および全身に発現する[12][21]

    • 皮疹
    • 発熱
    • 胃腸症状(嘔気、嘔吐、下痢、腹痛など)
    • 疲労感、倦怠感
    • 呼吸器症状(呼吸困難、咽頭痛、咳など)

    など。

    過敏症症候群の症状は、通常、アバカビルを使用した治療後6週間以内に現れ、HIV、免疫再構築症候群、他の薬剤に関連する過敏症症候群、感染症の症状と混同されることがある[22]米国食品医薬品局(FDA)は、2008年7月24日にアバカビルおよびアバカビルを含む医薬品に関する注意喚起を行っており[23]、FDAが承認したアバカビルの添付文書では、HLA-B*5701対立遺伝子の治療前スクリーニングと、この対立遺伝子を有する被験者に対する代替療法の使用が推奨されている[24]。さらに、臨床薬理遺伝学実装コンソーシアム(CPIC)およびオランダ薬理遺伝学作業部会(DPWG)もまた、HLA-B*5701対立遺伝子を持つ個人に対して、代替療法の使用を推奨している[25][26]

    パッチテスト

    アバカビルに対する過敏性反応の有無を判定するために、皮膚パッチテスト英語版が行われることがあるが、AHSを発症しやすい患者でもパッチテストに反応しない場合がある[27]

    アバカビルに対する過敏症の疑いが生じた場合、HLA-B*5701対立遺伝子を持たない患者を含む全ての患者で、アバカビルの治療を直ちにかつ永久に中止する必要がある。2011年3月1日、FDAは、アバカビルの安全性に関する継続的なレビューを行い、本剤に関連して心臓発作のリスクが増加する可能性があることを通知した[28]。しかし、FDAが実施した26の研究のメタアナリシスでは、アバカビルの使用と心臓発作との関連性は認められなかった[29][30]

    免疫病原性

    アバカビル過敏症症候群のメカニズムは、HLA-B*5701から生成されるタンパク質の変化に関連している。アバカビルは、HLA-B*5701タンパク質に高い特異性で結合し、抗原結合部位の形状と化学的性質を変化させる。この結果、免疫寛容度が変化し、その後、アバカビル特異的な細胞傷害性T細胞が活性化され、アバカビル過敏症症候群として知られる全身性の反応が生じる[31]

    相互作用

    アバカビルや一般的なNRTIは肝代謝を受けないので、CYP酵素やこれらの酵素に作用する薬剤との相互作用はごく少ない(ないに等しい)。とはいえ、アバカビルの吸収や利用可能性に影響を与える相互作用の僅かな例が知られている。以下に、アバカビルの投与中に起こりうる一般的な薬物・食品の相互作用の例を示す。

    • チプラナビル英語版リトナビルなどのプロテアーゼ阻害薬は、グルクロン酸抱合代謝の誘導によりアバカビルの血清濃度を低下させる可能性がある。アバカビルは、アルコール脱水素酵素とグルクロニド化の両方によって代謝される[32][33]
    • エタノールは、アルコール脱水素酵素を阻害することで、アバカビルの濃度が上昇する可能性がある[32][34]
    • メサドンは、アバカビルの治療効果を低下させる可能性がある。一方、アバカビルは、メタドンの血清濃度を低下させる可能性がある[35][36]
    • オルリスタットは、抗レトロウイルス薬の血清濃度を低下させる可能性がある。この相互作用のメカニズムは完全には解明されていないが、オルリスタットによるアバカビルの吸収低下が原因と考えられている[37]
    • アバカビルなどのMRP2阻害薬(多剤耐性関連タンパク質2阻害薬)ファミリーの薬剤が、カボザンチニブの血清濃度を上昇させる可能性がある[38]

    作用機序

    アバカビルは、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬で、ウイルスの複製を阻害する。アバカビルはグアノシンアナログであり、リン酸化されてカルボビル三リン酸(CBV-TP)となり、ウイルスのDNAに組み込まれる。CBV-TPがウイルスDNAに組み込まれると、転写およびHIVの逆転写酵素が阻害される[39]

    薬物動態

    アバカビルは経口投与され、速やかに吸収され、83%の高いバイオアベイラビリティを有する[40]。アバカビルは食事の有無にかかわらず服用できる[41]

    アバカビルは血液脳関門を通過することができる。アバカビルは、主にアルコール脱水素酵素グルクロン酸転移酵素という酵素によって代謝され、不活性なカルボン酸塩グルクロニド代謝物となる。半減期は約1.5~2.0時間である。肝障害がある場合、アバカビルの半減期は58%増加する[42]

    アバカビルは、尿(83%)および糞(16%)への排泄により除去される[43]血液透析腹膜透析でアバカビルを除去できるか否かは不明である[39]

    関連文献

    外部リンク

    出典

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