アンデッド (ダンジョンズ&ドラゴンズ)

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ファンタジーロールプレイングゲーム(RPG)『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(D&D)におけるアンデッド(Undead)は、プレイヤー・キャラクターが遭遇する可能性があるモンスターの広範な分類[1] 。

アンデッド・クリーチャーのほとんどは、かつて生きていたクリーチャーが、霊的または超自然的な力により、活動を始めた存在である。その形態は、スケルトンやゾンビのような知性無き死体の残骸から、ヴァンパイアリッチのような、高度な知性を持つクリーチャーまで多岐にわたるが、どのような姿をとろうとも、通常は悪意を持ち脅威となる存在である。他の多くのD&Dモンスターと同様、様々な種類のアンデッドは「古典、中世、そしてフィクションの資料から取り入れられて」おり、他のゲームにおける同種モンスターにも影響を与えてきた[2][3]

歴史

アンデッド(undead)」という言葉は、ブラム・ストーカーの1897年の小説『吸血鬼ドラキュラ』で、吸血鬼を指す言葉として初めて広く知られるようになり、やがてその意味は拡大し、ゾンビや幽霊など、概念的に関連すると見なされるあらゆるものを含むようになった[3]。アンデッドが「確固たる特徴を持つ、非常に特異な種類のモンスター」として現代に発展したのは、RPGにおける登場に起因するとされる。「ゲームメカニクスの要件として、本来は抽象的な概念を明確化する必要があった」ためである[3]。ある分析はこう指摘する。

ヴァリエーションは非常に一般的だが、多くの場合、RPGの草分け『Dungeons & Dragons』が提唱したモデルに従っている。すなわち、アンデッドはモンスターの明確な分類であり、何らかの形で死んだクリーチャーの霊魂や肉体が戻った存在であり、動き、言語、知性、飢えなど、生前の側面を一部保持している。この分類のアンデッドには、毒や自然現象への耐性、日光への一般的な脆弱性、聖印による退散効果、その他多くの共通点を持つ傾向がある。[3]

アンデッド・クリーチャーは、ゲームの初期から存在していた。例えば「スケルトン」と「ゾンビ」は、『Dungeons & Dragons[注 1](OD&D)』の「white box[注 2]」セット(1974)という、最初の版で導入されたモンスターの一つであり、両方とも通常はマジック・ユーザーや“混沌”属性クレリックといった、「motivator」の指示下で行動するとされていた[4]。同セットで登場した「ヴァンパイア」は、単に強力なアンデッドとして記述されていた。ヴァンパイアの詳細はサプリメントGreyhawk』(1975)でさらに掘り下げられた[5]。同セットに登場するその他のアンデッドモンスターには、触れた者を麻痺させるとされた「グール」[4]、触れると腐敗の呪いを引き起こすとされた「マミー」[4]、触れると生命力を吸収するとされた「ワイト」[6]、そしてより機動性の高い上位のワイトとされた「レイス」が含まれる[4]。同セットで初登場した「スペクター」は、実体を持たず生命エネルギーを吸収する能力を持ち、トールキンの「指輪の幽鬼」に例えられた[7]。「ゴースト」は、1975年にTSRの公式ニュースレター『The Strategic Review』で初登場した[8]

D&D第3版[注 3]』では、「アンデッド」が「クリーチャー種別」となった。この版のアンデッドは、全て60フィート(約18メートル)までの暗視能力を持つ。アンデッドは多様な耐性を有し、全ての精神に作用する効果、[毒]、睡眠効果、麻痺、朦朧、病気、死の効果に対して完全耐性を持つ。またクリティカルヒット、非致死ダメージ、能力値吸収、エネルギー吸収の影響も受けない。ほとんどのD&Dのアンデッドは、“善”のクレリックによって「退散させる(追い払う)」か「破壊」することができ[9] 、“悪”のクレリックによって「叱責(怯ませる)」か「強化する」ことができる。『D&D第4版』では「アンデッド」はクリーチャー種別ではなく「キーワード」となった。後の版では、プレイヤーが「死霊術士(necromancer)」としてプレイし、戦闘支援用の独自のアンデッド軍団を創造できるようにもなった[10]

アンデッドとは

アンデッドは、ゲーム内における死の存在を体現する存在である[9]。最も一般的なものは、知性が無いかほぼ持たない存在であり、そのためより強力な敵の支配下で行動するか、本能的な衝動に基づいて行動するよう仕向けられる[1]。一方、最も強力な部類のアンデッドは、高度な知性と狡猾さを備え、多様な魔法能力を有し、「D&D最強のクリーチャーの一角」を成す[11]。アンデッドに対する主な対抗手段はクレリックであり、このクラスは神聖魔法を用いてアンデッドを「退散」させたり、支配下に置いたりできる[9]。キース・アマンは、戦術ガイド『The Monsters Know What They're Doing』において、アンデッドを他のモンスター種と区別する特徴として、生きたクリーチャーは進化によって特性を獲得し、進化生物学に則った行動を取る一方、アンデッドは自己保存を顧みない不自然な行動様式を示すと指摘している[1]。アマンは不死状態を「呪い」と定義し、アンデッド・クリーチャーは魔法や状況によって「それを駆り立てる特定の強制力」に従って行動せざるを得ないとする[1]

ゾンビは一般に超自然的存在として描かれることが多いが、一方で『Advanced Dungeons & Dragons[注 4]第2版』では「イエロー・マスク・クリーパー」と呼ばれるクリーチャーも登場する。これは這うように広がる植物で、犠牲者の知性を奪い、植物の支配下で「ゾンビ」へと変貌させることがある。ベン・ウッダードはこれを、ゲーム内に存在する「菌類の広がりと毒性能力の、終わり無き形態変化」の表現と見なした[12]

影響

アンデッドは、「D&Dの最も古典的なモンスター」の一つと見なされてきた[13]。D&Dにおけるアンデッド・クリーチャーのゲームメカニクスは、後の文化、特にコンピュータゲームやその他RPGにおける、同種の存在の描写に影響を与えている[2][3]

ゲームの一側面としてのアンデッドの存在は、『D&D』に反対する者達によって引用されてきた[14]。哲学者達は、ゲームで表向きは英雄的な目的のために、死霊術や死者蘇生を行う道徳性について議論してきた[15]

種類

  • アルフーン: アンデッド化したマインド・フレイヤー。「既に恐るべきサイオニック能力を増強する強力な魔術」を発達させているため、通常のイリシッドよりもさらに強力である[16]
  • デス・ナイト: 強力なアンデッド戦士[17]。シャノン・アップルクラインは、チャールズ・ストロスが生み出したこのクリーチャーを、「このゲームで特に注目すべきモンスターの一つ」と評した[18]
  • ドラコリッチ: アンデッド化することでさらに強大となったドラゴン。魂を収めた「経箱(phylactery)」を別次元へ持ち去る」ことでのみ滅ぼせる。Screen Rantのスコット・ベアードは、「D&D最強モンスター10」の一つに挙げている[19]。また、フォーゴトン・レルムキャンペーン設定向けに導入された、最初の新種クリーチャーの一つでもある[20]
  • ゴースト: ゴシック小説の影響を受けた、レイヴンロフト設定の典型的な住人[21]
  • グール: "恐ろしい爪"を持つアンデッド[22]
  • リッチ: やせ細った容姿の[23]、アンデッド化した魔道士[24]。ゲームの「古典的」モンスター[23]
    • デミリッチ: リッチを越えて進化したした存在。頭蓋骨のみが残った、強大な力を持つクリーチャー[25]。Cracked.comのタイラー・リンは2009年、デミリッチを「D&D史上最も馬鹿げたモンスター15」の一つに挙げ、「デミリッチは『パイレーツ・オブ・カリビアン』の目覚まし時計みたいな見た目以外に、戦術的優位性を一切持っていないようだ。ただ宙に浮かんで、英雄たちがピニャータみたいに叩き落とすのを待っているだけ。噛みつくことはできるかもしれないが、上のイラストでは顎が固定されているように見える。もはや可哀想に思えてきた」と述べている[26]。 一方それに対し、Screen Rantの「D&D最強(そして最弱)モンスター10」では、"最強"側の一つに挙げられている。「浮遊する頭蓋骨なら簡単に粉砕できると思うかもしれないが、それは間違いだ。デミリッチは、ゲーム内で最も頑強なクリーチャーの一種だからだ」と評されている[19]
  • マミー: 包帯に身を包んだ、通常は砂漠地帯に現れる強力なアンデッド。ゴシック小説の怪物や現代の娯楽作品への登場を基にした、レイヴンロフト設定の典型的な住人[21][27]。イギリスの雑誌『ホワイトドワーフ』#8(1978年8月/9月号)における『モンスター・マニュアル(『MM』)』のレビューで、ドン・ターンブルはマミーが以前のモンスター・データから改訂され、視認しただけで(恐怖の結果として)麻痺を引き起こすようになったとしている[28]
  • シャドウ: 英国の雑誌『ホワイトドワーフ』#8における『MM』のレビューで、ドン・ターンブルはシャドウがアンデッドに分類され、クレリックのアンデッド退散能力の対象となる点に失望を表明した。ターンブルは「シャドウと初めて遭遇した頃、退散できないものを退散させようと、無駄な努力をするクレリックを見るのが楽しかったものだ」と述べている[28]。io9のロブ・ブリッケンは、シャドウを「D&Dで最も嫌なモンスター12」の一つに挙げた[注 5]
  • スケルトン: 死んだクリーチャーの骨格が、アンデッドとして動き出したもの。スケルトンは『Dungeons & Dragons For Dummies』の著者らによって、「低レベルモンスターベスト10」の2位にランクし、「プレイヤーにアンデッドモンスターの特殊な利点と弱点を紹介する」存在だとしている。また、レイ・ハリーハウゼンに「彼の功績により、人々はスケルトンとの戦闘がどうあるべきかを知っているのだ」と感謝を述べている[30]。Screen Rantは、「tiny skeleton」を「D&D最弱モンスター10」の一つに挙げ、「スケルトンは「超小型(Tiny)」のクリーチャーにまで存在するため、冒険者パーティが、アクションフィギュアと同サイズのスケルトン集団と戦う可能性すらある」と評している[19]
  • Skeleton warrior: 評論家のジェイミー・トムソンは、「トールキンの指輪の幽鬼に似た存在」と評した[31]
  • スペクター: ゴシック小説の影響を受けた、レイヴンロフト設定の典型的な住人[21]
  • ヴァンパイア: その描写は、1930年代から1940年代のハリウッドドラキュラ映画[32]、および民間伝承[27]やゴシック小説に基づいている。レイヴンロフト設定の典型的な住人であり[21][33]、本作における「象徴的」モンスターである[23]
  • ワイト: 痩せた人型アンデッド[34]。直接的な原型はトールキンの『指輪物語』に登場する「塚人(Barrow-wight)」であり[18][32]、コンセプト自体はアイスランドサガから着想を得ている[35]。io9のロブ・ブリッケンは、ワイトを「D&Dで最も嫌なモンスター12」の一つに挙げた[注 6]
  • レイス: トールキンの伝説体系に登場する「ナズグール(Nazgûl)」に着想を得て、改称したものである[36]。また、ゴシック小説からも着想を得ている。レイヴンロフト設定の典型的な住人[21]
  • ゾンビ: 民間伝承や、現代の娯楽作品のゾンビを基にしている[27]

関連文献

脚注

関連項目

外部リンク

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