アースバウンド

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リリース
録音
時間
『アースバウンド』
キング・クリムゾンライブ・アルバム
リリース
録音
ジャンル プログレッシブ・ロック
時間
レーベル イギリスの旗 アイランド・レコード (HELP)
プロデュース ロバート・フリップ
専門評論家によるレビュー
キング・クリムゾン アルバム 年表
  • アースバウンド
  • (1972年 (1972)
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アースバウンド』(英語: Earthbound)は、1972年6月9日に発表されたキング・クリムゾンの初のライブ・アルバム。通算5作目のアルバムに相当する。

背景

1971年4月、キング・クリムゾンは新しい編成でフランクフルトのズーム・クラブのステージに4夜連続で立ち[1][注釈 1]、ライブ活動を再開した[注釈 2]。顔ぶれはオリジナル・メンバーのロバート・フリップ(ギター、メロトロン)とピート・シンフィールド[注釈 3](作詞、照明、VCS3シンセサイザー)、セカンド・アルバム『ポセイドンのめざめ』(1970年)の制作から加わったメル・コリンズ(サクソフォーン、フルート、メロトロン)[注釈 4]、新メンバーのボズ・バレル[注釈 5](ベース・ギター、リード・ヴォーカル)とイアン・ウォーレス(ドラムス、バック・ヴォーカル)の5名。彼等は5月11日のプリマス公演[注釈 6]を皮切りに、オリジナル・メンバーによるアメリカ・ツアー以来1年5か月ぶりになるツアーを開始した。

リーダーのフリップはライブによって産み出される力や想像力を重視し、「全てのクリムゾンでは即興演奏(インプロヴィゼーション)が重要で決定的な役割さえ担って」[2]いると捉えていた。しかしこの編成はベースの演奏経験が全くなかったヴォーカリストのバレルを11週間でベーシスト兼任に仕立てた[3][注釈 7]こともあって、かなり危ういものだった[4][注釈 8]。彼等は未発表の新曲も披露しながら6月まで国内ツアーを続け、7月にはスタジオ入りして新作アルバムの制作を開始[5][注釈 9]。8月からはスタジオでの作業と並行して国内ツアー[注釈 10]を再開し、アルバム『アイランズ』が完成すると、11月からはカナダ・アメリカ・ツアーを開始した[注釈 11]。このような活動の中で、『ポセイドンのめざめ』の制作から曲作りのチームを組んでいたフリップとシンフィールドの関係は悪化し[6][注釈 12]、12月にツアーが終了して帰国すると、フリップはシンフィールドに決別を通告した[7]

フリップは帰国する前にコリンズら3名にシンフィールドとの決別を予告して、これからは金銭は4名に均等に分配され、曲作りは自分の独占領域ではなくなる旨を伝えた[8]。しかし翌1972年1月早々のリハーサルの初日、彼はコリンズが持参した曲[8][注釈 13]を弾いてみようともせずに一方的に拒否した[注釈 14][9]。この出来事がきっかけで彼は3名と対立して管理会社のEGに解散を伝えたが、アメリカ・ツアーを行なう契約が残っていることを指摘され[10][注釈 15]、やむを得ず同ツアーの開催に同意した。

彼等は2月11日のウィルミントン公演を皮切りに計38回の公演[11][注釈 16]を行なった。解散が決まったこともあって、3名は時にフリップを無視して好き勝手に演奏した[10]

ある晩、アンコールでステージに戻った時、私はボズとメルに向かって「Gの12小節のブルース」と叫んだ。ボズは「駄目だよ」と応えたが、私は「まあ見てな」と言い単純な6/8拍子を叩き始めた、こうなるとボズはもはや演奏に加わるほかなく、メルはアルト・サクソフォーンでブルースらしきソロを吹き始める。ロバートは椅子に座って下を向いて床を見つめるだけで、曲が終わるまで一切動こうとしなかった。私が彼を怒らせてしまったことは間違いないが、悪意でやったのではない。単に若さゆえの無謀さの発露だった。結局、何か失うものがあっただろうか。我々は既に解散して、彼のフリップネス(Frippness)の潜在的な力は萎え、足枷ははずれていたのだ。それに我々には何か楽しいことをした方が良かったのだ。
ライヴ・アット・サミット・スタジオ 1972』(2000年)ライナーノーツ"Notes From The Drum Stool"の抄訳
クリムゾンのレパートリーはメル、ボズ、イアンには馴染まなかった。(中略)メル・コリンズの卓越した演奏を例外として、このキング・クリムゾンには他のキング・クリムゾンほどの過激さはなかった。他のメンバーはヨーロッパから得られるものに目を向けていた私よりもずっと多く、アメリカの伝統に目を向けていた。彼等はパーティーもずっと上手だった。
ライヴ・アット・ジャクソンヴィル 1972』(1998年)ライナーノーツ"Notes From The Guitar Stool"の抄訳

フリップが望んだキング・クリムゾンの音楽と、より感情を解放していく音作り、ある意味でロック・ミュージシャンらしい指向が根底にあった3名が望んだ音楽の違い[12][注釈 17]は明らかだった。人間関係はツアーが進むにつれて多少改善した[13][注釈 18]が、フリップは新しいメンバーを迎えてキング・クリムゾンを再編成する構想を既に練っていた[14][注釈 19]

彼等は「太陽と戦慄[15][注釈 20]を演奏できただろうか。彼等にそれに足る演奏技術があっただろうかということでなく、彼等は望んで演奏しただろうかということだ。
ロバート・フリップ[13]

ツアー最終日に当たる4月1日のアラバマ州バーミングハムでの公演が終わると、フリップは帰国してロンドンのコマンド・スタジオ[16][注釈 21]で"Live in USA"と仮称されたアルバムを編集する[17]と共に、新メンバーを探した。3名はアメリカに残り、ツアーで何回か会場を共有して意気投合したアレクシス・コーナーとスネイプ[18]を結成した[19]

1972年6月9日、イギリスのアイランド・レコードは本作を廉価盤シリーズであるHELP[注釈 22]に入れて発売した。一方、アメリカのアトランティック・レコードは音質を理由に本作の発売を拒否した[17]

内容

本作の収録曲は全てカセット・レコーダーによって録音されており、音質は劣悪である。録音年月日と場所を以下に示す。録音方法の詳細と各収録曲の録音年月日および場所については、下記のクレジットの英文を参照のこと。

全5曲の内訳を以下に示す。

21世紀のスキッツォイド・マン」と「船乗りの話」は原曲と同じ構成で、前者では間奏部で4分近くに亘ってフリップのギターとコリンズのサクソフォーンの即興演奏が繰り広げられる[注釈 24]。一方、「グルーン」の即興演奏部分とメンバー全員にクレジットが与えられた「ピオリア」[注釈 25]「アースバウンド」[注釈 26]にはコリンズのサクソフォーン・ソロ、バレルのスキャット、ウォーレスのドラム・ソロが含まれる[注釈 27]。後者3曲でより鮮明になるのはフリップとリズム・セクションのウォーレスとバレルが持つ資質の根本的な違いで、フリップの求める構築性[独自研究?]インプロヴィゼーションが複雑な絡まり合いを繰り返しながら変幻多様な音空間を創出するという点では、彼ら二人は明らかにスタイルが合わない[24]

黒っぽいフィーリング[独自研究?]で勝手に暴走する3名とフリップの間の亀裂があからさまに見える本作を、当時のバンドの人間関係の険悪さを思い出させる記録だからか、フリップはずっと嫌っていたと思われているが、他メンバーの反対を押し切って本作を編集してプロデューサーを務めたのは彼だった[25]

再発盤と関連アルバム

フリップは長年に亘って本作が廃盤になるように積極的に働きかけていた[26]。唯一「21世紀のスキッツォイド・マン」は異なるメンバーによる1969年と1974年のライブ録音[注釈 28]と共に、ヴァージン・レコードから発売された5曲入りの編集アルバム『スキッツォイド・マン』[27](1996年)に収録された。しかし本作の再発を望む声がファンの間で高まっていく中で[26][注釈 29]、彼は2002年3月26日と27日にロンドンのSanctuary Mastering[28]でサイモン・ヘイワース[29]と共に24ビットのマスタリングを行なった[30]。同年、”30th Anniversary Edition”[31]と銘打たれたCDがヴァージン・レコードから発売された[注釈 30]

2017年11月に"40th Anniversary Edition"としてCDとDVDのセットが発売された[32]。CDには同ツアーから3曲[注釈 31]が追加され、DVDには同ツアーからの7曲[注釈 32]を含むハイレゾ音源の他、同ツアー中にコロラド州のサミット・スタジオで行なわれたレコーディング[注釈 33]や、2002年に発表された『レディース・オブ・ザ・ロード』に収録された'Schizoid Men 1-11'[注釈 34]などのボーナス音源が収録された。

「船乗りの話」が録音されたジャクソンヴィル公演[21]と「アースバウンド」が録音されたオーランド公演[22]の全編は、それぞれキング・クリムゾン・コレクターズ・クラブのアルバム『ライヴ・アット・ジャクソンヴィル 1972』(1998年)と『ライヴ・イン・オーランド、FL 1972』(2003年)として発売された。「21世紀のスキッツォイド・マン」と「グルーン」が録音されたウィルミントン公演[20][注釈 23]と「ピオリア」が録音されたピオリア公演[23]の全編は、CDボックス・セット"Sailors' Tales (1970–1972)"(2017年)に収録された[注釈 35]

収録曲

SIDE ONE

  1. 21世紀のスキッツォイド・マン   "21st Century Schizoid Man" (including "Mirrors") - Fripp, Michael Giles, Greg Lake, Ian McDonald, Peter Sinfield - 11:45
  2. ピオリア   "Peoria" - Boz Burrell, Mel Collins, Fripp, Ian Wallace - 7:30
  3. 船乗りの話   "Sailor's Tale" (instrumental) - Fripp - 4:45

SIDE TWO

  1. アースバウンド   "Earthbound" (instrumental) - Burrell, Collins, Fripp, Wallace - 6:08
  2. グルーン   "Groon" (instrumental) - Fripp - 15:30

メンバー

40周年記念盤

脚注

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