イペ
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イペ[1]あるいはイペー[2](ipe; ポルトガル語: ipê)は、シソ目ノウゼンカズラ科の広葉樹。別名パオロペとも呼ばれる[3]。木材としてはタベブイア属(Tabebuia)の数種類から得られたものを指す語である[1][4]が、一部はHandroanthus属に分類し直されている。イペとは南米先住民語のトゥピ語で〈皮の厚い木〉を意味する[2]。
場合によってはラパチョ(lapacho)やグリーンハート(greenheart)、アイアンウッド(ironwood)とも呼ばれるが、グリーンハートとして有名であるのはイペとは分類学的にも離れているクスノキ目クスノキ科の Chlorocardium rodiei(シノニム: Ocotea rodiei)であり[1]、またアイアンウッドはこれまた互いに分類学的な類縁関係の薄い何種類もの樹種を指して用いられる語である。
樹としての特徴
そもそもイペの名で呼ばれる樹木は以下のように複数種が存在する。分類情報は World Flora Online による[5]。
| 学名 | シノニム | 原産地 | 主な特徴 | 日本語名 | ブラジルポルトガル語名 | スペイン語名 | 英語名 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Handroanthus chrysanthus (Jacq.) S.O.Grose | Tabebuia chrysantha (Jacq.) G.Nicholson | ホンジュラス、エルサルバドルから南米北部[6] | 葉は5出掌状複葉[6]、花は濃い黄色で枝先につく総状花序[2][7]または円錐花序[8][9] | キバナノウゼン[2][10]、キバナイペー[7]、イエロー・トランペットツリー[9] | 〔ベネズエラ〕araguaney[7] | yellow trumpet tree[9] | ベネズエラの国樹[9]。ウォーカー (2006) がイペ材の得られる樹種として挙げたうちの一種。 | |
| Handroanthus chrysotrichus (Mart. ex DC.) Mattos | Tabebuia chrysotricha (Mart. ex DC.) Standl. | コロンビアからブラジル[2][6] | 葉は5出掌状複葉、花は濃い黄色で枝先に散形状に[6]8-10個つき、果実は20-35センチメートル[2] | コガネノウゼン[2][10]、キバナイペー[2] | ipe-amarelo[2]〈黄色いイペ〉 | golden trumpet tree、gold tree[2] | ||
| Handroanthus guayacan (Seem.) S.O.Grose | Tabebuia guayacan (Seem.) Hemsl. | 中米および南米北部[7] | 葉は5出掌状複葉、花は黄色で総状花序[7] | グアヤカン[7] | 〔中米、コロンビア〕guayacán;〔エクアドル〕madera negra[7]〈黒い材木〉 | ウォーカー (2006) がイペ材の得られる樹種として挙げたうちの一種。 | ||
| Handroanthus heptaphyllus (Vell.) Mattos | Tabebuia heptaphylla (Vell.) Toledo、Tabebuia ipe (Mart. ex K.Schum.) Standl. | ウォーカー (2006) がイペ材の得られる樹種として挙げたうちの一種。 | ||||||
| Handroanthus impetiginosus (Mart. ex DC.) Mattos | Tabebuia avellanedae Lorentz ex Griseb. | ブラジル、ボリビア、パラグアイ、アルゼンチン | 花は微紅から濃い紅紫色[2]で散形に多数つく[6]か円錐花序[7] | イペー、モモイロイペー[2]、イペーロッシヨ[7]、ピンク・トランペットツリー[9] | ipe-rosa[2][7]、ipê-roxo[7]〈紫イペ〉、ipe[2] | 〔パラグアイ、アルゼンチン〕lapacho[7] | pink trumpet tree[9] | ブラジルの国花[7]。村山 (2013) は本種のみをイペ材(あるいはタベブイア)として紹介。 |
| Handroanthus serratifolius (Vahl) S.O.Grose | Tabebuia serratifolia (Vahl) G.Nicholson | キューバ[2]、プエルトリコ、トリニダード・トバゴ、南米[6] | 葉は卵形で先端がぎざぎざした薄い小葉4-5枚からなり[2]、花は黄褐色で散形花序[7]あるいは密生した円錐花序[8]、果実は長さ20センチメートル[2] | パウドアルコアマレロ[7]、ワシバ[9] | pau d'arco amarelo[7]〈黄色い弓の木〉 | 〔コロンビア〕guayacán polvillo[11];〔ベネズエラ〕flor amarillo[11][7]〈黄色い花〉;〔エクアドル〕madera negra[7]〈黒い木材〉 | yellow poui[2][6][9];〔アメリカ合衆国〕bastard lignum vitae[7]〈偽リグナムバイタ〉 | ウォーカー (2006) がイペ材の得られる樹種として挙げたうちの一種。河村・西川 (2014) は本種をイペ(あるいはラパチョ)材が得られる樹種の例として挙げている。 |
| Handroanthus umbellatus (Sond.) Mattos | Tabebuia umbellata (Sond.) Sandwith(タベブイア・ウンベラタ)[2][6] | ブラジル[2][6] | 葉は3または5出の掌状複葉[6]、花は黄色く短い散形花序で多数つき、果実は長さ40センチメートル[2] | ipe-amarelo[2]〈黄色いイペ〉 | ||||
| Tabebuia heterophylla (DC.) Britton | Tabebuia pentaphylla Hemsl.(ゴヨウノウゼン[10])、T. riparia (Raf.) Sandwith | ジャマイカ[2]含む西インド諸島からベネズエラ[6]、ブラジル[2] | 花は淡い桃色または桃色で大輪に咲く[6] | カワリバノウゼン[10] | ipe-roxo[2]〈紫イペ〉 | white(-)wood[2][6] | 坂﨑 (1998) は T. heterophylla を T. pentaphylla ではなくモモイロノウゼン[10](T. pallida)と同種とする説があると述べている。またブリッケル (2003) は T. pentaphylla をキダチベニノウゼン(T. rosea; 別名: ピンクテコマ)の園芸名としている。 |
キバナノウゼン(学名: Handroanthus chrysanthus)は樹高30メートル[2]、パウドアルコアマレロ(学名: Handroanthus serratifolius)[9]やイペーロッシヨ(ポルトガル語: ipê-roxo〈紫イペ〉; 学名: Handroanthus impetiginosus)は樹高45メートルにまでなる場合がある[7]。イペーロッシヨにはラバコールと呼ばれる成分が含まれており、防腐効果や防虫効果を発揮するとされている。南米の原住民は、紫イペの樹皮の内側の層を削って煎じてラパチョと呼ばれる民間煎じ飲料として使用する。解熱・消炎・妊娠中絶・健胃効果があるとされる。
木材としての特徴
年輪や杢目に乏しく、南方材らしく密に詰まった材質をしている。色は薄褐色から暗色の帯のものまでかなり幅広く、辺材は黄白色である[1]。腐りにくい反面加工しづらく、ドリルで穴あけしないとビス打ちも困難なほど硬い。水につけても腐りにくいが、乾燥すると割れたり狂いが出やすい。シロアリや湿気に強い。気乾比重は0.91-1.20であり[4]、水に沈むハードウッドである。
アレルギー
イペに含まれる含まれるラバコールは人によってはアレルギーを起こすため、加工時にはマスクを着用したほうが良いとされる。舞った木屑で炎症を起こす可能性があり[1]、木工家の河村寿昌は「マスクをしないと鼻がむずむずする」と語っている[4]。木屑が皮膚に接触すると、接触性アレルギーを起こすこともある。
用途
木材建築物の基礎、ウッドデッキ、フローリングなどに使用される。用途としてはウリンなどと同様の分野に使用される。
特記事項
- 横浜大さん橋(くじらの背中)でも、フロア材として大量に使用されたが、乾燥すると割れやすいという性質が考慮されなかったために亀裂が多数発生し、来客が転倒した際に怪我をするという問題が多数発生した。
ギャラリー
Handroanthus属:
- キバナノウゼン、イエロー・トランペットツリー(Handroanthus chrysanthus)
- コガネノウゼン(Handroanthus chrysotrichus)
- グアヤカン(Handroanthus guayacan)
- イペーロッシヨ、ピンク・トランペットツリー(Handroanthus heptaphyllus)
- パウドアルコアマレロ、ワシバ(Handroanthus serratifolius)
タベブイア属:
- カワリバノウゼン(Tabebuia heterophylla)