カナダヤマアラシ

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カナダヤマアラシ
生息年代: 中期更新世 - 現世, 1.3 - 0 Ma[1]
保全状況評価[2]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
Status iucn3.1 LC.svg
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 齧歯目 Rodentia
亜目 : ヤマアラシ形亜目 Hystricomorpha
: アメリカヤマアラシ科 Erethizontidae
: カナダヤマアラシ属 Erethizon
: カナダヤマアラシ E. dorsatum
学名
Erethizon dorsatum
(Linnaeus, 1758)
シノニム
  • Hystrix dorsata Linnaeus, 1758
和名
カナダヤマアラシ[3]
英名
North American porcupine
Canadian porcupine
亜種
  • E. d. dorsatum
  • E. d. bruneri
  • E. d. couesi
  • E. d. epixanthum
  • E. d. myops
  • E. d. nigrescens
  • E. d. picinum
分布域

カナダヤマアラシ (学名:Erethizon dorsatum) は、アメリカヤマアラシ科に分類される齧歯類の一種。アメリカビーバーに次いで、北アメリカ大陸で2番目に大きな齧歯類である。テンジクネズミ型類であり、その祖先は3,000万年前に大西洋を横断し、アフリカからブラジルに到達した[4][5]。その後は300万年前のアメリカ大陸間大交差でできたパナマ地峡を通り、北アメリカに進出した[6]

「porcupine」という英名は、「porcespin」という古いフランス語名に由来する。これは「棘のある豚」を意味し、ラテン語の「porcus(豚)」と「spina(棘)」を起源とする[7]。「quill pig (棘のある豚)」や、Canadian porcupine、common porcupineとも呼ばれる[8]。学名は「刺激性の背中を持つ動物」という意味である。ラコタ語では「pahin (針を意味)」[9]ホー=チャンクの言葉では「waxąhį」、チペワイアン語では「tsʼl」と呼ばれる[10]

分類と進化

新世界のヤマアラシ類は南アメリカで進化し、本種は第三紀後期のアメリカ大陸間大交差により、南アメリカから北アメリカに進出した。他のヤマアラシも北米へ進出したが、現生種は本種のみである。新世界のヤマアラシ類は漸新世後期に初めて出現し、アフリカから渡ってきたと考えられている[11]

メキシコアグアスカリエンテス州から、前期-中期更新世の化石が発見されている。しかし、この化石をオマキヤマアラシ属のものとする見解もある。確実な記録としては、アーカンソー州から約13万年前の中期更新世の化石が発見されている[1]

亜種

7つの亜種が知られている[12]E. d. dorsatum は最も一般的な亜種で、ノバスコシア州からアルバータ州バージニア州からユーコン準州まで分布する。E. d. picinumケベック州北東部とニューファンドランド・ラブラドール州の一部に分布する。E. d. couesiメキシコ北部からコロラド州まで分布する。E. d. bruneriアーカンソー州からモンタナ州にかけて、北アメリカの中西部に分布する。西部には3亜種が分布し、南から順に E. d. epixanthumE. d. nigrescensE. d. myops が見られる[1]

分布と生息地

北アメリカ大陸東部では、カナダからウェストバージニア州メリーランド州アパラチア山脈まで分布し[2]、アパラチア山脈の東側では、ニュージャージー州北部以南には分布しない[13]。西部ではアラスカ州からメキシコ北部の山岳地帯まで分布する。針葉樹林混交林に多いが、低木林やツンドラにも適応している。木の洞や岩場に巣を作る[2][14]

形態

色は濃い茶色から黒色で、一部は白い。体はずんぐりとしており、顔は小さく、肢は短く、尾は太短い。新世界のヤマアラシ類では最大で、アメリカビーバーに次いで、北アメリカ大陸で2番目に大きい齧歯類である。頭胴長は60-90cm、尾長は14.5-30cm、後肢は7.5-9.1cm、体重は3.5-18kgである[1][15]。針の色は黄色味のある白色で、先端は黒または褐色である。頭部では針の長さは8cmになることもある。長い針からなるたてがみを持つ。四肢は短く、足の裏には毛がない[14]。雌の平均体重は約7kg、雄5匹の平均体重は10.67kgであった[16][17]

本種やクズリスカンクなどは、白と黒の対照的な体色を持ち、暗闇でも他の動物に自分の場所を知らせることができる[18]E. d. epixanthum 亜種の一部では、黄色の針を持つ個体が出現する。眼と鼻の色は通常通りであるため、アルビノではない色彩変異と考えられる[19]

約3万本の針状の毛を持ち、下腹部、顔、足を除く全身が針に覆われる。これは体毛が変化したもので、鋭くかぎ状で中空である。主に防御の役割があるが、冬の間は体を断熱する役割もある。通常は体に密着しており、抜けにくい。脅威を感じると筋肉が収縮し、針が立ち上がる。尾を天敵に向けて振り回すと、針が刺さりやすくなる。針を抜くのは難しく、痛みを伴う[20]。針は脂肪酸に覆われており、これが抗生物質となるため、自身の針が刺さったとしても感染症を予防することが出来る。枝の先端にある芽や小枝を食べようとし、頻繁に木から落ちるため、その際に針が自身に刺さることがある[21]

生態

行動

視力が低く、動きも緩慢である。夜行性であり、昼間は休息している。夏は木の上で休息し、冬は巣穴付近で休息する。冬眠は行わない。草食動物だが防御力が高いため、単独で生活する。記憶力が高く、複雑な迷路を学習し、100日後でも覚えていることができる[18]。冬には数頭で巣を共有することもある。他のヤマアラシ類に比してよく鳴き、特に初冬の求愛期には様々な声で鳴く[14]

食性

植物食である[22]。夏は小枝、果実、特定の昆虫も食べる。冬は主に針葉樹の葉と樹皮を食べる[15]

防御

複数の防御方法を持っており、まず臭いがある。強い人間の体臭、ヤギの臭い、チーズの臭いに似ていると言われる。この臭いは皮膚の脂腺から発せられる[23]。脂腺は腰に存在し、針が臭いを拡散させる[24]。この臭いはΔ-デカラクトン光学異性体に由来する[25]。脅威を感じると針を逆立て、歯を鳴らして警告音を発する。攻撃されると捕食者に尾を向け、顔に向かって尾を振り回す。針は簡単に皮膚に突き刺さり、簡単には抜けない。針には微細な棘があり、肉に突き刺さる。針が刺さった捕食者は、多くの場合逃げ去る[26]

天敵

天敵はフィッシャー[27]クズリ[28]コヨーテオオカミ[29]アメリカクロクマ[30]クーガー[31]人間である。鳥ではイヌワシアメリカワシミミズクが天敵である[32][33][34]。捕食者はヤマアラシを狩っても、針が刺さって負傷または死亡することがある[35][36]

主にフィッシャーが天敵である。フィッシャーの雄は体重5.5kgを超えることもあり、素早く木に登ってヤマアラシを木から落とす。地面に落ちたヤマアラシは、尾と肢を突き出して反撃する。フィッシャーはその周囲を旋回する。ヤマアラシは徐々に弱っていき、フィッシャーは針に刺さらずヤマアラシを食べることが出来る[37][38]。フィッシャーは雄の体重が雌の二倍と大型で、ヤマアラシを狩るのは雄だけである可能性が高い[39][40]

クーガーも主要な天敵である。クーガーは針をあまり気にせず、何十本もの針が刺さっている個体も、問題なく生存している。クーガーは木登りが可能であり、ヤマアラシを木から落とす。オオカミやコヨーテなど、他の天敵は大きな脅威にはならない[32][34]。一部地域の森林ではクーガーからの捕食により、ヤマアラシの個体数が大きく減っている[31][39]。クーガーが針で死亡した例もあるが、ヤマアラシも既に捕食された後であった[40][41]

繁殖と成長

雄は雌の下の枝に留まる

雌は秋の繁殖期を除いて、一年の大半を単独で過ごす[42]。雌は繁殖期になると、尿とともに粘液を排出し、その臭いで近くの雄を引き付ける。雄は雌の下の枝に留まり、他の雄が近づくと、雌を巡って争う。優位な雄は雌に尿をかけ、発情させる。交尾は地面で行われ、その際は針を平たくして怪我を防ぐ[15]。雌が興味を失って木に戻るまで、交尾は繰り返される。

妊娠期間は平均202日と、他の齧歯類に比べて長い[43]。同程度の大きさであるアメリカビーバーでも、妊娠期間は128日である[44]。小型のトウブハイイロリスでは、妊娠期間は44日である[45]。一匹の子供を産む。出生時の体重は約450gで、生後2週間で1kgに成長する。2年で体重は約4.5kgになる。生後すぐに針は硬化する[15]

子育ては雌が行い、幼獣は最初の2週間は授乳のみで生活する。その後は木登りを学び、自分で餌を探し始める。授乳期間は最大4ヶ月間で、秋の繁殖期まで続くこともある。幼獣は秋に母親から離れ、独り立ちする[46]。寿命は比較的長く、30年ほど生きることもある[47]。天敵からの捕食、飢餓、木からの落下、自動車事故などが死因となる[48]

人との関わり

出典

関連項目

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