スキューズ数

From Wikipedia, the free encyclopedia

スキューズ数(スキューズすう、Skewes number)は、南アフリカの数学者スタンレー・スキューズ素数の個数に関する研究において用いた、極めて大きな数である。具体的には、x 以下の素数の個数 π(x) および 対数積分 li(x) について、 π(x) > li(x) を満たす最小の自然数 x の上界としてスキューズが与えた数を指すが、このような x 自体を指すこともある。2021年時点で、このような x は 1014 より大きく[1] 1.3983 × 10316 未満[2]であることが知られているが、正確な値は不明である。

素数定理によれば、π(x) は漸近的に li(x) に等しい。実際の値を比較すると、現実的に計算が実行可能な程度に x が小さいあいだは常に li(x) の方が大きいように見える。このことから、π(x) > li(x) となる x が存在するか、という問題が自然に考えられる。ガウスリーマンはそのような x は存在しない、と予想していた。スキューズの指導教官であるリトルウッドは、1914年の論文において、そのような x が存在することのみならず、π(x) li(x) の符号は無限回変わることを示した。すなわち、π(x)li(x) は無限回抜きつ抜かれつするのである。しかし、リトルウッドの証明は、いつ初めて π(x)li(x) を追い抜くか、という見積もりを与えるようなものではなかった。

スキューズは、1933年の論文において、リーマン予想が真であるとの仮定の下に、π(x) > li(x) となる x は、次の数以下に存在することを証明した。

これがオリジナルのスキューズ数であり、第一スキューズ数とも呼ばれる。

後にグラハム数などにその座を譲ることになるが、当時としては意味のある数学的議論に登場する最大の数であった[3]。なお、この見積もりは非常に大雑把なものであり、後述のように評価は大幅に改良される。

さらに、スキューズは1955年には、リーマン予想が真であると仮定することなしに、x は次の数以下に存在することを証明した。

これは第二スキューズ数と呼ばれる。よりシンプルな表現の近似 も第二スキューズ数の近似値としてしばしば用られる。

リーマン公式との関係

リーマン公式によるとについての明示公式を与えた[要説明]。その主要項は(いくつかの微妙な収束の問題を無視すれば)次のようになる。

ここで和の はゼータ関数の全ての非自明な零点をわたる。

近似式 の主な誤差項(リーマン予想を仮定すると)は であり、 は通常 より大きい。他の誤差項はそれより小さく、複素偏角も見かけ上ランダムなため、ほとんど互いに打ち消し合う。ただし、まれに偏角がいくつか揃うと の寄与を上回ることがある。

スキューズ数 が極めて大きいのは、これらの項が小さく、かつ最初の複素零点(非自明な零点)の虚部が大きいため多く(数百個)が同時に揃う必要があるからである。もし偏角がランダムであれば、 個の零点があるとき、それらの偏角が互いに打ち消さない確率はおよそ となる。

そのため、 を上回るのは非常に稀である。また、このような現象が起こる位置を特定するには、リーマンゼータ関数の零点を数百万個規模で高精度に計算する必要がある。

ここまでの議論は厳密ではなく、リーマンゼータ関数の零点は実際にはランダムではない。事実、リトルウッドはディリクレの近似定理を用いて、多くの項の偏角がほぼ一致する状況が実際に起こり得ることを示している。

一方、リーマン予想が偽である場合は、実部 を超える零点が存在し、その零点に対応する項 は、やがて よりも大きくなり、支配的になる。

という項が現れるのは、大まかには、 が本質的には素数そのものではなく、素数の冪 を重み で数えていることによる。このとき、 は、特に素数の二乗の寄与を補正する項、すなわち二次の補正項に対応していると考えられる。

評価の改良

スキューズの与えたこれらの見積もりは非常に大きいため、より小さな評価を与える研究が進められた。それは、コンピュータを用いてリーマンゼータ関数零点を計算することによって行われる。Lehman (1966) が示したところによると、1.53 × 101165 から 1.65 × 101165 の間に π(x) > li(x) となるような整数 x が連続して 10500 個以上ある。H. J. J. te Riele (1987) は上からの評価を約 7 × 10370 にまで、Bays & Hudson (2000) は約 1.3983 × 10316 にまで下げ、その付近に π(x) > li(x) なる x が存在することを示した。

一方、Rosser & Schoenfeld (1962) は、x < 108 においては常に π(x) < li(x) であることを示した。この記録は Brent (1975) によって 8 × 1010 にまで、Kotnik (2008) によって 1014 にまで更新された。

正確にいつ初めて π(x)li(x) を追い抜くのかは、未解決の問題である。それどころか、π(x) > li(x) となる具体的な x の値はひとつも知られていない。

Wintner (1941) は、π(x) > li(x) なる x の割合は正であることを示し、Rubinstein & Sarnak (1994) はその割合がおよそ 0.00000026 であることを示した。

出典

参考文献

関連項目

外部リンク

Related Articles

Wikiwand AI