スコットレール・トレインズ
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概要

スコットランド政府傘下の国営企業、スコティッシュ・レール・ホールディングスの子会社であり、2022年4月1日よりスコットランドの旅客鉄道網(スコットレール)の運行を担っている[1]。
歴史
設立背景
スコットレール・プランチャイズでは、2015年以降はオランダ鉄道子会社のアベリオ傘下「アベリオ・スコットレール」によって運営されていた。2019年12月にスコットランド運輸局はアベリオが7年間の契約を更に3年間延長するための業績基準を満たしていないために2022年3月31日に契約を終了すると発表した。
2021年3月、スコットランド運輸局はスコットレールの運営権を民間事業者に移管しない方針とし、スコットランド政府傘下の国有企業が運営すると発表した。この動きは、ASLEF、RMT、TSSAといった各労働組合から歓迎された。
2022年2月に当時のジェニー・ギルルース運輸大臣は、スコットレールの運行を公営体制に戻す方針であると正式に発表した。同氏は主要な関係者に関して将来的なサービスに関する協議への参加へ呼びかけ、「スコットレールがスコットランド政府の管理下へ移行することは、2022年4月1日に行われると明言できる。これは喜ばしいニュースではありますが、今後なすべき課題が山積していることも明らかです……パンデミック後の世界において、スコットランドの鉄道旅客事業が、手頃な価格で持続可能、かつ利用者を第一に考えたものとして、どのような『新たな始まり』を迎えるべきか、そのあり方について『国民的対話』を本格的に開始したいと考えています。」と語った。
スコットランド保守党の交通担当のグラハム・シンプソンは計画されている協議に対し、「運賃の値下げ、運行サービスの回復、切符売場の削減停止など、人々が公共交通機関の利用を促進するような施策を議論すべきだ」と批判した。スコットランド自由民主党も、国有化が決定された2年前から議論を始めるべきであったと指摘した。
2022年4月4日、新型コロナウイルス感染症の流行により停止状態であった、鉄道車両内での飲食販売・提供サービスが再開された。
2022年5月に鉄道運転士の労働組合であるASLEFはストライキ実施の是非を問う組合員投票を行い、運転士らは時間外労働を拒否した。同年5月には、運転士不足により日曜日の多くの便が運休となった。スコットレール側は、新型コロナウイルス感染症の流行により、130名(推定)の運転手訓練を実施できなかったと説明した。2022年6月1日、ASLEFはスコットレールから提示された改善後の賃金案を拒否したと発表した。
2022年5月23日に暫定的な運行ダイヤへ移行し、1日の運行本数は約2,150本から1,456本へ約3分の1が削減され早朝や深夜の多くの便が運休となった。2022年6月、ASLEFは組合員に対して修正案を受け入れるように推進した。ファー・ノース線のウィック - インヴァネス間で本数が1日各方向4本から2本に削減された。2022年5月、ステージコーチ・ハイランズは、鉄道の減便を補完するため、インヴァネス- サーソー間で平日に代行バスを暫定運行すると発表。インヴァネスを11時50分に出発し、復路はサーソーを19時00分に出発するダイヤとなっていた。
ピーク料金の撤廃
スコットレールは、2023年10月から2024年9月にかけて、ピーク料金の撤廃に関する試験運用を実施。当初は6ヶ月間の予定だったが、2度延長された。これにより乗客数は6.8%増加したが、自己資金で運営するには10%の増加が必要であった。 2025年9月1日から、スコットレールのピーク時運賃は恒久的に廃止され、通勤客は最大50%の節約が可能となった。
不正乗車対策
2026年2月にスコットレールは、7月から有効な乗車券を持たずに不正乗車した乗客には最低10ポンドの運賃を課すと発表した。不正乗車を防ぐことを目的としている。ただし乗車駅に切符売り場及び自動販売機がない場合は最低賃金は適用されない。現金でしか支払えない乗客は自動券売機で「支払い約束書」を入手し、車内で乗車券を購入する必要となっている。
AI自動案内音声の導入
2025年5月22日、スコットレールはエアシャーおよびインバークライド地域の特定路線において、AI音声「アイオナ」を車内アナウンスに導入した。HOYA「ReadSpeak」を用いて生成されている。女優のガヤン・ポッターが2021年に行った録音データを学習されている。当時、ポッターは自身の声がアクセシビリティやeラーニング用ソフトウェアにのみ使用されるものと認識されていた。スコットランドの女優フレッチャー・マザーズによる従来の自動放送音声に代わるものであった。マザーズは、このAI音声のイントネーションについて「どこか不自然に聞こえる」と述べた。2025年8月25日、スコットレールは「アイオナ」の音声を変更すると発表。同年12月には、ペイズリー在住の同社従業員ヴァネッサ・スローンの声を基にしたAIアナウンスの運用を開始した。380形電車から導入が行われ、2026年には対象範囲を拡大する予定である。
路線
スコットレール・トレインズは、アベリオが運営していた全ての運行業務を継承した。2025年5月現在、スコットレールが月~金曜日の日中時間帯の運行は以下の通りである。
| グラスゴー・エディンバラ近郊 | |||
|---|---|---|---|
| 路線名 | 使用車両 | 区間 | 毎時 |
| アーガイル線 | ダルミュア - ラークホール | 2 | |
| ダルミュア - ハミルトン・セントラル - マザーウェル | 1 | ||
| ダルミュア - ハミルトン・セントラル - カンバーノールド | |||
| ダルミュア - ウィフレット | |||
| ダルミュア - ウィフレット - マザーウェル | |||
| グラスゴー・セントラル - ラナーク | 2 | ||
| ノース・クライド線 | ヘレンズバラ・セントラル - エディンバラ・ウェイバリー | 2 | |
| バロック - エアドリー | |||
| ミルンガビー - スプリングバーン | |||
| カンバーノールド線 グラスゴー - ファルカーク - エディンバラ線 メアリーヒル線 |
グラスゴー・クイーンストリート - カンバーノールド | 1 | |
| グラスゴー・クイーンストリート - フォルカーク・グラハムストン | 2 | ||
| グラスゴー・クイーンストリート - エディンバラ・ウェイバリー | |||
| グラスゴー・クイーンストリート - アニーズランド | |||
| キャスカート・サークル線 | グラスゴー・セントラル - ニュートン | 2 | |
| グラスゴー・セントラル - ニールストン | |||
| グラスゴー・セントラル -キャスカート - グラスゴー・セントラル | |||
| ペイズリー・カナル線 | グラスゴー・セントラル - ペイズリー・カナル | 2 | |
| ショッツ線 | グラスゴー・セントラル - エディンバラ・ウェイヴァリー - ショッツ | 2 | |
| インバークライド線 | グラスゴー・セントラル - グーロック | 2 | |
| グラスゴー・セントラル - ウェミス・ベイ | |||
| エアシャー ・コースト線 | グラスゴー・セントラル - エア | 2 | |
| グラスゴー・セントラル - アードロッサン港 | 1 | ||
| グラスゴー・セントラル - ラーグス | |||
| グラスゴー・サウスウェスタン線 | グラスゴー・セントラル - イースト・キルブライド | 2 | |
| グラスゴー・セントラル - バーヘッド | 1 | ||
| グラスゴー・セントラル - キルマーノック | 1 | ||
| グラスゴー・セントラル - カーライル | 1/2 | ||
| ダンフリーズ - カーライル | |||
| キルマーノック - エア | 7 | ||
| エア - ガーバン | 1/2 | ||
| エア - ストランラー | |||
| カーステアーズ線 ノース・ベリック線 |
グラスゴー・セントラル - エディンバラ・ウェイヴァリー - カーステアーズ | 1/2 | |
| エディンバラ・ウェイヴァリー - ダンバー | |||
| エディンバラ・ウェイヴァリー - ノース・ベリック | 1 | ||
| ボーダーズ鉄道線 | エディンバラ・ウェイヴァリー - ツイードバンク | 2 | |
| スコットランド全域 | |||
| ウェスト・ハイランド線 |
|
グラスゴー・クイーンストリート - オーバン | 6 |
| グラスゴー・クイーンストリート - マレーグ | 3 | ||
| フォートウィリアム - マレイグ | 1 | ||
| ダルマリー - オーバン | |||
| クロイ線 エディンバラ - ダンブレイン線 |
グラスゴー・クイーンストリート - アロア | 2 | |
| エディンバラ・ウェイヴァリー - ダンブレイン | |||
| ファイフ・サークル線 | エディンバラ・ウェイヴァリー - ダンディー | 1 | |
| エディンバラ・ウェイヴァリー - パース | |||
| エディンバラ・ウェイヴァリー - カウデンビース | |||
| エディンバラ・ウェイヴァリー - リーベン | 2 | ||
| グラスゴー-ダンディー線 エディンバラ - ダンブレイン線 |
エディンバラ・ウェイヴァリー - アバディーン | 1 | |
| グラスゴー・クイーンストリート - アバディーン | |||
| グラスゴー・クイーンストリート - ダンディー | |||
| ダンディー - アーブロース | |||
| ハイランド本線 | グラスゴー・クイーンストリート - インヴァネス | 5 | |
| エディンバラ・ウェイヴァリー - インヴァネス | |||
| アバディーン-インヴァネス線 | モントローズ - インヴァルーリー | 1 | |
| アバディーン - インヴァルーリー | 1/2 | ||
| アバディーン - インヴァネス | |||
| エルギン - インヴァネス | |||
| ファー ・ノース線 カイル・オブ・ロハルシュ線 |
インヴァネス - ディングウォール | 1 | |
| インヴァネス - インヴァーゴードン | |||
| インヴァネス - テイン | |||
| インヴァネス - アードゲイ | |||
| インヴァネス - ウィック | 4 | ||
| インヴァネス - カイル・オブ・ロハルシュ | |||
車両
スコットレールは、多種多様な形式の電車や気動車を運用している。
2021年にスコットレールの前身となるアベリオ・スコットレールは、大規模更新された153形気動車を5本導入した。156形気動車2両編成に増結する形で運行される。「ハイランド・エクスプローラー」と名付けられ、車両スペースの半分を自転車用ラックに当てた車両となっている。通常運賃に追加で10ポンド必要となる他、軽食や飲み物が提供され、自転車をテーマにした内外装となっており、スコットランド西部を自転車で巡る旅行者向けの地図が提供されている。
現在の車両
| 形式 | 画像 | 最高速度 | 車両数 | 運行路線 | 製造年 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| mph | km/h | |||||
| ディーゼル機関車牽引の客車列車「Inter7City(インター・セブン・シティ)」 | ||||||
| 43形 HST「インターシティー125」 |
125 | 200 | 52機 | アバディーン-インヴァネス線 ハイランド本線 ・グラスゴー - アバディーン |
1975–1982 | |
| マーク3客車 | 120両 | |||||
| 気動車 | ||||||
| 153形 「スーパースプリンター」 |
75 | 120 | 5両 | ウェスト・ハイランド線 | 1987–1988 | |
| 156形 「スーパースプリンター」 |
2両編成48本 | グラスゴー・サウスウェスタン線 メアリーヒル線 ショッツ線 ウェスト・ハイランド線 |
1987-1989 | |||
| 158形 「エクスプレススプリンター」 |
90 | 145 | 2両編成40本 | アバディーン-インヴァネス線 ボーダーズ鉄道線 ファー ・ノース線 ファイフ・サークル線 ハイランド本線 カイル・オブ・ロハルシュ線 メアリーヒル線 ショッツ線 レブンマウス・レール・リンク |
1989-1992 | |
| 170形 「ターボスター」 |
100 | 161 | 3両編成34本 | アバディーン-インヴァネス線 ボーダーズ鉄道線 エディンバラ - ダンブレイン線 ファイフ・サークル線 ハイランド本線 メアリーヒル線 レブンマウス・レール・リンク |
1998-2005 | |
| 電車 | ||||||
| 318形 | 90 | 145 | 3両編成21本 | ノース・クライド線 ウィフレット線 カンバーノールド線 インバークライド線 ペイズリー・カナル線 アーガイル線 キャスカート・サークル線 ・グラスゴー - ラナーク - マザーウェル |
1986-1987 | |
| 320/3形 | 3両編成22本 | 1990 | ||||
| 320/4形 ※321/4形からの改造編入車 |
100 | 160 | 3両編成12本 | 1989–1990 | ||
| 334形 コラディア 「ジュニパー」 |
90 | 145 | 3両編成40本 | ノース・クライド線 アーガイル線 |
1999-2002 | |
| 380形 (380/0・380/1) デジロ「デジロUK」 |
100 | 160 | 3両編成22本 4両編成16本 |
エアシャー ・コースト線 ペイズリー・カナル線 ノース・クライド線 ノース・ベリック線 |
2009-2011 | |
| 385形 (385/0・385/1) Hitachi AT200 「エクスプレス」 |
3両編成46本 4両編成24本 |
グラスゴー - ファルカーク - エディンバラ線 ・グラスゴー/エディンバラ -ノース・ベリック/ダンバー ・グラスゴー/エディンバラ - ダンブレーン / アロア キャスカート・サークル線 カンバーノールド線 ・グラスゴー- マザーウェル - カーステアーズ - エディンバラ ・グラスゴー - マザーウェル - ラナーク ショッツ線(グラスゴー - ショッツ - エディンバラ) インバークライド線 アーガイル線 |
2015–2019 | |||
導入予定の車両
2025年にスコットレールは、新型の近郊型車両の調達を開始した。2040年までに同社の保有車両の3分の2を置き換えること計画したものである。調達要件は、最低69本(37本の増備オプション付)とされ、内訳は電車と蓄電池電車で構成されている。2030年初頭に投入し営業運転を開始する計画となっている。新型車両の導入資金を調達するプロセスが2026年2月に開始された。
2026年3月19日にスコットレールは、現在の「Inter7City」用車両を置き換えるため、222形気動車を5両編成22本をリースすると発表した。アルストムによる8,000万ポンド規模の改修と大規模更新を経て2027年後半に営業運転を開始する予定である。
| 形式 | 画像 | 最高速度 | 車両数 | 転属元 | 運行路線 | 製造年 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| mph | km/h | ||||||
| 222形 (222/0・222/1) ボイジャー 「メリディアン」 |
125 | 200 | 5両編成18本 5両編成4本 |
イースト・ミッドランズ・レールウェイ | アバディーン-インヴァネス線 ハイランド本線 ・グラスゴー - アバディーン |
2003–2005 | |
設備
電化工事
スコットランド交通局は、スコットランド政府の政策として「国内の旅客鉄道事業の脱炭素化」を推進しており、一環として2035年までにディーゼル気動車・機関車を置き換える予定である。第一段階の事業では、総額5,500万ポンドを投じられ蓄電池電車での運行に対応するため、2022年6月にファイフ・サークル線(ヘイマーケット - ダルメニー間、全長:140 km)の電化工事がティッシュ・パワーラインズにより着工した。当初は2024年12月での電化完了をしていたが、工事の遅延が続いて2026年4月時点での完了月が2027年3月となっている。以降は、キングホーン、ソーントン、レディバンク、ロッホゲリーの各駅を結ぶ区間の電化が予定されている。
駅
2022年3月時点で、スコットランド国内の355駅を運営している。空港が所有・運営するプレストウィック国際空港駅や、ネットワーク・レールが管理するエディンバラ・ウェイヴァリー駅およびグラスゴー・セントラル駅は含まれていない[注釈 1]。ロッカービー駅とレストン駅については、現在スコットレールの列車が停車しないにもかかわらず、同社が運営を行っている。
車両基地
エディンバラ・ヘイマーケット、グラスゴー・イーストフィールド、グラスゴー・シールズ・ロード、グラスゴー・コーカーヒル、ヨーカー、エア・タウンヘッド、バスゲート、インヴァネスの各拠点のほか、ミッドロージアンのミラーヒルに新設された電車用留置線、およびカダー・ヤード車両基地で整備・保守が行っている。
受賞
2026年、スコットレールはナショナル・レール・アワードの「パッセンジャー・オペレーター・オブ・ザ・イヤー」賞にノミネートされた。