フロントグリル
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自動車のフロントグリルは車体の最前面にあり、真正面から空気に当たる部分であるために、この部分にラジエーターを配置することも多く、その場合はラジエーターグリルとほぼ同義である。ラジエーターは細いパイプで設計されることが多く、飛び石などで変形しやすいため物理的に保護するべきだが、全て覆ってしまうと放熱の効率が低下するため、大きな開口部を設け、空気の流れを阻害しにくい網で覆ったのがグリルである。
しかし一般的にはそうした機能以上に、自動車の「顔」としての役割のほうが取り沙汰される事が多い。ヘッドライトと合わせ統一したグリルデザインを採用することにより、ブランドとしての統一感を向上させることを狙う場合がよく見られる。
2000年代後半からは開口部を大きく見せようとする車両が多く登場した。主に冷却性能のよさそうな印象を持たせ、高性能な印象を持たせる戦略や、単純に見た目で周囲を威圧する厳つい印象を持たせたい(そう言った印象を好むユーザー向けの)車両に見られる傾向にある。2010年代以降はよりそうしたグリルが好まれるようになったためか、華美な高級車から手の届きやすい大衆車まで、大きなグリルを備える車種が増えている。
一方で二次電池式電気自動車(BEV)は内燃機関車(ICE)と比較して作動には空気(酸素)は不要で熱的にも厳しくないため積極的に外気を取り入れる必要がないことと、先進性の訴え掛けも含めあえてグリルの無い(グリルレス)デザインを採用する場合が多い。グリルそのものがメーカーアイコンととなっている場合、グリルと見えるデザインは採用されていても機能上はグリルレスと同等になっている。
過去にはボンネットの鉄板をそのまま曲げて延長したような、デザイン性を一切追求しないものもあった。そのようなリアエンジン車では逆に後端がグリル状のものも存在した[注釈 1]。
車体の開口部は空気抵抗の要因ともなるため、冷却効率と空気抵抗の低減を両立したデザインが要求される。またチューニング車で冷却率を上げる目的でグリルを撤去する者もいるが、かえって冷却効率を悪化させていることが多い。近年ではグリルに自動で開閉するシャッターを設け、速度や熱状態により開閉させ、空気抵抗の低減を図る例も見られる。
- 開口部そのものが無い例
- バンパーには大きな開口部があるものの、グリルのないデザインとされる例
- 性能よりも、見た目を重視し非常に大きなグリルを採用した例
- 開口部があるものの、「網」が無い例
デザインの変遷
意匠上はグリルがボンネットやバンパーのどの面に連続しているかによって分類されることが多い。[1]こうしたグリル一体化の流れは、歩行者保護基準への対応、空力性能の最適化、車両ブランドの同一イメージ形成など、技術的・意匠的両面の要因により発展してきた。[2]
一般的に自動車において、フロントグリルはラジエーターの冷却開口部として独立して設けられ、ボンネット(フード)とは明確に分離していた。この形式は、ボンネット先端でグリルが終端しデザインとして面が変わる為、「独立グリル」または「ボンネット分離グリル」と呼ばれることがある(例:三菱・ランサーエボリューションIV(1996年)など)。[3]
車体前部の造形を一体化するデザイン手法が進展すると、従来のボンネット分離グリルと構成としては似通っている、ボンネットとフロントグリルが連続した造形の「ボンネット連続グリル」はボンネットパネルの前縁がグリル上部と続いて整形され、連続している構成である(例:トヨタ・セルシオ〈30系〉など)。[4] この形式は、独立グリルの派生形として位置付けられ、視覚的統一感の向上やブランドデザインの強調を目的として採用されている。[5]
さらに2000年代以降は、ボンネットと前バンパーは形状としては表面をなめらかに繋ぎ、グリルの機能をバンパー部に統合し、グリル開口部をより前方、もしくは下方にデザインされた「バンパーグリル」または「ロアグリル」と呼ばれる構成も一般化した(例:トヨタ・クラウン〈15代目〉など)。[6] 部品カタログ上では依然として「ラジエータグリル」や「グリルASSY」として登録されている。鉄板プレスではなく射出成形の樹脂による造形なのでデザインの自由度は高く、新型の車両で採用されるケースが多い。
- ボンネット分離グリル 三菱・ランサーエボリューションIV
- ボンネット連続グリル トヨタ・セルシオ〈30系〉
- バンパーグリル トヨタ・クラウン〈15代目220系〉
