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市民革命

封建制を打倒し資本主義への道を開いた変革 From Wikipedia, the free encyclopedia

市民革命(しみんかくめい、英語: bourgeois revolution[1][2][3], civil revolution[4][2][5][6][7], フランス語: révolution bourgeoise[8], ドイツ語: bürgerliche Revolution[8])は、日本語辞典で「封建社会から近代資本主義社会への移行期に、新興の市民階級が主体となって行なった急激な政治的変革絶対王制領主権など封建的関係の打破、近代市民法の実現などをめざす」とされており[9]、この日本語は人文社会科学で使われている[10][注釈 1]。日本語辞典で「ブルジョア革命」とも表記される市民革命は、代表例としてイギリス革命(17世紀)やアメリカ独立革命フランス革命(18世紀)などが挙げられている[9]

「市民革命」という用語を使う分野は、例えば歴史学(『歴史学事典』)[8]法学(『法律学小辞典』)[14]政治学(『政治学事典』)[15]経済学(『岩波 現代経済学事典』)がある[2][注釈 2]。歴史学では「市民革命」は、「社会主義革命」と対照的であり[24]、また「市民運動」の始まりとも関わっている[25]的には「市民革命」は、西側諸国(米・仏・日など)の「ブルジョア憲法」(資本主義憲法[26])の由来とされており[27]、これは社会主義憲法と対比される[27][26]芦部『憲法』では、「市民革命」は憲法立憲主義民主主義[28]人権[29]国際法などと強く関連しているとされる[30][注釈 3]

「市民革命」は、『人文社会37万語英和対訳大辞典』および『岩波 現代経済学事典』では英語「bourgeois revolution」(ブルジョア・レヴォリューション[1][2]と「civil revolution」(シヴィル・レヴォリューション)に相当する[4][2]。なお、米・仏の革命は「大西洋革命」にも分類されている[36][37][38]

概要

学術的な概略・表記

「市民革命」という日本語は、歴史学では一般に経済政治において個人的な権利自由などをめぐる変革を指す[8]。「市民革命」は、法学では人権概念[39]および民主主義と一体的であるとされており[40]政治学では古典的な自由主義の現れとされる[15]経済学では、前近代的な体制を崩壊させ資本主義を確立した変革過程を指す[2]

日本語学術論文で「市民革命」は、「civil revolution」(シヴィル・レヴォリューション)に相当することもある[5][6][7]。また「ブルジョア革命」が「資本主義革命」[41]や「民主主義革命」として[42]、「資本主義革命」が「民主主義革命」・「ブルジョア革命」として言い換えられている論文もある[43]。他の論文では英・米・仏の革命が「民主主義革命」[44]、フランス革命が「資本主義革命」と表記される[45]

英語学術論文・学術書で英・米・仏などの革命は「bourgeois revolution」(ブルジョア・レヴォリューション)[46]、「civil revolution」(シヴィル・レヴォリューション)[47][48][49][50][51]、「citizen revolution」(シティズン・レヴォリューション)といった用語で記載されている事例がある[52][注釈 4]

なお「市民革命」は、『人文社会37万語英和対訳大辞典』で「bourgeoisie revolution」(ブルジョアジー・レヴォリューション)にも[1]、『研究社新和英大辞典』で「people’s revolution」(ピープルズ・レヴォリューション)、「popular revolution」(ポピュラー・レヴォリューション)、「citizens’ revolution」(シティズンズ・レヴォリューション)にも相当する[3]

歴史学

『山川 世界史小辞典(改訂新版)』(山川出版社) によれば「市民革命」という用語には、資本主義確立を目指すというマルクス主義的な「ブルジョワ革命」としての側面と、個々人の自由に基づく市民社会を目指す変革としての側面があり、戦後日本の歴史学では二つの意味が混同・折衷されたという[57]

『歴史学事典』(弘文堂)によると、「市民革命」は自由権・民主主義などへの変革を指し、それは東欧の変革をも含み得る[8][注釈 5]。「市民革命」は「社会主義革命」と対比されている他[24]、イギリスやフランスの「市民革命」は「市民運動」の始まりともなった[25]。歴史学はおおむね古典的には「市民革命」を、ブルジョワ対貴族としての「ブルジョワ革命」と割り切る[59]。これがマルクス主義史学として批判修正を受けて以降は、貴族層への上昇を阻まれた「革命的ブルジョワ」の政治的・文化的・経済的な不満が革命の主原因だと説かれる[59]

また複数の歴史学資料でアメリカとフランスの革命は、「ブルジョワ」主導の「大西洋革命」の一部とされている[36][37][38]。『主権国家と革命 15~18世紀(岩波講座 世界歴史)』によれば、この文脈で米・仏の革命は再注目されている[37]

法学

法律学小辞典』(有斐閣)において「市民革命」は、自然権思想や社会契約論に基づいて人権概念と共に成立したのであり[39]、またこの革命は、民主主義を「人類の普遍的価値」とする主張の基礎だとされている[40]。市民革命は個人の自由(特に精神活動の自由権私的所有権を核とする自由)を保障しようとする自由主義と関係が強く、その影響は現在も続いている[40]芦部『憲法』では、近代の「市民革命」が立憲主義および民主主義を憲法化(実定法化)し[28]、人権を的に規定し[29]、それが各国の内外で人権を保障する国際法国際連合へ繋がっていったとされている[30]

ブリタニカ国際大百科事典』では、アメリカ合衆国憲法フランス憲法日本国憲法などの西側諸国の憲法は「市民革命 (ブルジョア革命)」に由来するブルジョア憲法とされており、それは社会主義憲法と対比される[27](法学論文では、社会主義憲法に対比して「資本主義憲法」とも表記される[26])。

『法律学小辞典』によればアメリカ革命の独立宣言は、個人の権利や契約革命権を基礎づけている[60]。この宣言は国家の土台として重要であると同時に、「その影響は広くヨーロッパに及び,近代民主主義の記念碑となった。今日でもこの宣言から学ぶものは多い」[61]。フランス革命において憲法制定議会に採択された人権宣言の場合、「このような宣言は世界各国の憲法に多大の影響を与えた」と同辞典にある[62]

経済学

『岩波 現代経済学事典』(岩波書店)によれば、「市民革命」は一般に「ブルジョア革命」という[2]。「市民革命」は絶対王政と封建制を崩壊させて資本主義を確立した変革過程であり、代表例はイギリス革命、アメリカ独立革命、フランス革命、ドイツ三月革命などがある[2]

こうした革命は封建制から資本主義への過程で、土地・経済・金融を近代化していった[2]。「市民や市民社会の多義的・複合的性格」により「市民革命」の民主化は、経済だけでなく政治および精神にも起こり、政治的にはそれは絶対主義権力の打破・議会制の導入・「支配の極小化」であり、精神的には「良心の自由」を中心とする人権思想である[63]

歴史学

革命史学における市民革命

『山川 世界史小辞典(改訂新版)』(山川出版社) によれば「フランス革命をモデルとするマルクス主義の概念」では、「ブルジョワ革命」はブルジョワジーによる資本主義確立のための変革を指す[57]。日本では、世界大戦中に「ブルジョワ」が「市民」へ変えられて「市民革命」という用語が生まれた[57]。「市民革命」は、「ブルジョワ革命」と「まったく同じ意味」を指すことも、市民社会(「自由な個人が自由に取り結ぶ平等な関係」)を生むための政治変革を指すこともある[57]。戦後日本の史学は、多義的な「市民革命」を「混同ないし折衷した」という[57]

歴史学事典』(弘文堂)では「市民革命」は、フランス語「révolution bourgeoise」(レヴォリュシオン・ブルジョワーズ)とドイツ語「bürgerliche Revolution」(ビュルガーリヒェ・レヴォルツィオン)に相当している[8]。一般的に私的所有権法の下の平等自由経済や資本主義、議会制民主主義言論の自由を実現する変革を指し、1989年以降の東欧社会主義諸国の変革をも指し得る[8]。「市民革命」という用語は「社会主義革命」との対比で、「ブルジョワ革命」という用語は「プロレタリア革命」との対比で使われている[24]。また「市民運動」は、「イギリスやフランスの市民革命期」において、君主権に対し自由権などを通して対抗する流れで成立した[25]

上記の史学事典によれば、史学はおおむね古典的には「市民革命」について、マルクス主義史学に基づき、ブルジョワ貴族の対立としての「ブルジョワ革命」であると比較的単純に捉える[8]。「古典的とも言える」この定義・立場以降では、マルクス主義史学に対する批判や修整が、フランス革命研究を中心に存在する[59]。さらにそれ以降はジョルジュ・ルフェーヴル、そしてルフェーヴルの研究を発展させた柴田三千雄らが居り、彼らの考えでは「市民革命」の指導層は、経済面に留まらない「政治文化的な集団」としての「革命的ブルジョワ」である[64]。この考え方では、ブルジョワの社会的地位の上昇や貴族との融合が「新エリート層」を生み出した一方で、18世紀半ばには貴族的上昇が困難になり、そこで蓄積された不満が革命的ブルジョワを発生させたと説かれる[64]

「近代民主主義」という概念は、主にアメリカ革命やフランス革命から生じた「ブルジョワ民主主義」とも見なされており[65]、この概念は「プロレタリア独裁」と対立的関係にある[66]。『歴史学事典』では、「プロレタリア独裁」と「プロレタリア民主主義」は同義だとされており[66]C・B・マクファーソンが民主主義と社会主義を統一することに未来像を見出そうとした反面、

1989年の「ベルリンの壁の開放」に象徴される現実の社会主義の崩壊は,共産党の独裁と市民的自由の抑圧の行き着く先でもあり,社会主義の徹底した見直しを迫るものだった。

と記載されている[66]

アメリカとフランスの革命は、『西洋の歴史 基本用語集』[36]および『主権国家と革命 15~18世紀(岩波講座 世界歴史)』(2023年)では、「ブルジョワ」が率いた「大西洋革命」にも分類されている[37][38]。上記の岩波史学書によれば、大西洋革命としての米・仏の革命はグローバル化と共に再注目されている[67]

なお日本語の史学資料では、「市民革命」と外国語との対応関係について異論もある[68]

大西洋革命

『西洋の歴史 基本用語集』(ミネルヴァ書房)では、アメリカとフランスの革命、ラテンアメリカの諸革命、ハイチ革命、ほとんどのヨーロッパ諸国で起きた革命を指す用語として「大西洋革命」がある[36]。大西洋革命は「貴族制に対するブルジョワ民主主義革命」であり、18世紀後半に「全西洋世界」へ影響したとされる[36]

この革命は『主権国家と革命 15~18世紀(岩波講座 世界歴史)』(2023年)では、国際的にを横断する「大西洋世界」において「ブルジョワジー」が主導した「民主的革命」とされている[67]。同書によると革命研究において1960年代までは、資本主義の発展に注目するマルクス主義史学の「ブルジョワ革命論」が支配的だった[69]。それに対し1950年代半ばから「ブルジョワ革命否定論」が広まり、1980年代後半までブルジョワ革命をめぐる論争が激化した[70][注釈 6]。また1970年代末から1980年代にかけて、革命を政治的・文化的な現象として捉える「政治文化論」(フランソワ・フュレリン・ハントなど)が通説化した[71]。ただし、ブルジョワ革命論から政治文化論へ至る研究はおおよそいずれも、革命を「国内的要因」によって説明していた[71]

一方で1950年代半ばに現れた「大西洋革命論」は、現代(2023年時点)では政治・経済・文化・思想情報などの点で取り上げられている[67]。『主権国家と革命』によれば、様々な批判や議論を経て「グローバル化が進展する近年、大西洋革命論はふたたび脚光を浴びている」[67]。現代の大西洋革命論は植民地奴隷制とそれに対する革命という要素をも含んでおり、イギリスの転換やアメリカ・フランスの革命などは大西洋両岸の「大西洋文化」における革命の文脈で研究されている[67](大西洋革命という概念はイギリスを含み得るほか、産業革命と合わさって「二重革命」だと考えられている[38])。

翻訳

西洋史学者の遅塚忠躬[72]の論文上、フランス語や英語では「révolution bourgeoise」(レヴォリュシオン・ブルジョワーズ)や「modern revolution」(近代革命)といった用語が用いられており、

フランス語と英語には、「市民革命」に相当する用語は存在しない。

と記載されている[68]第二次大戦中の日本で「マルクス主義的な表現」を避けて「ブルジョワ」を「市民」と言い換え、「市民社会」や「市民革命」という語が作られて、それが戦後へ継承されたと同論文にはある[73]

法社会学

日本法社会学会学術誌法社会学』における広渡清吾の論文では、

1980年代以降,世界の社会科学において「市民社会論のルネッサンス」と評される状況が生まれた.

と記載されている[74]。例えば市民社会論においては、欧米と違って「市民革命」を経ていない日本では「市民法のブルジョア法化」がより顕著だという研究があり、これは史学的・法史学的に批判や支持を受けているとされる[75]

社会学・社会史学

社会主義的革命

南米エクアドルについての研究で、大文字のCとRで表記される「Citizens' Revolution」(シティズンズ・レヴォリューション)は、2007年から2017年までの政治的・社会的・経済的な変革の過程を指す[76]。この革命の主導層は活動の核心として、「a form of twenty-first-century socialism」(21世紀社会主義の一形態)を置いた[77]

脚注

参考文献

関連項目

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