ペミカン
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加熱溶解した動物性脂肪に粉砕した干し肉やドライフルーツなどを混ぜ、密封して固めることで保存性を高めた食品である。毛皮交易の際に携帯保存食として広く利用された。
材料は使用可能なものなら何でも用いられた。例えば、ペミカン用の肉としてしばしばアメリカバイソン、ヘラジカ、シカ(アメリカアカシカやオジロジカなど)の肉が使われた。ドライフルーツは、クランベリーやサスカトゥーンベリーがよく使われた。チェリー、スグリ 、セイヨウカマツカの実、ブルーベリーが使われたペミカンは、インディアンたちの間でもっぱら冠婚葬祭などの特別な場合に食べられるもので[5]、現在でも同様に特別なときのものとして食されている。パウワウにも供されることが多い。
脂肪分の少ない肉と骨髄の脂肪で作られたペミカンが最上級とされるなど、毛皮交易時代の購入者の間では厳格な仕様が存在した。
製造方法

ペミカンに使用する肉はまず薄くスライスし、固く脆い塊状になるまでゆっくりと火で炙るか、もしくはよく晴れた日が続く季節に熱い太陽の下に長時間晒して乾燥させる。 このようにして作られる薄い脆い肉は、クリー語で「Pânsâân」と呼ばれ、これは「干し肉」を意味する[6]。この過程で水分が抜けることにより、肉は大幅に体積と重量を減じる。ペミカン用に1ポンド(約454グラム)の乾燥肉を得るには、約5ポンド(2.268キログラム)の生肉が必要になる。
前述の方法で獲られた干し肉を、石を刳った鉢に入れ、小型の石を用いて粉砕し、あらかじめ加熱して溶かしておいた獣脂と概ね1:1の体積比で混ぜ合わせる[7]。ドライフルーツを混ぜ込む場合には、それらを別個に砕いておき、肉と脂肪を混ぜたものに加える。
上述のように混ぜ合わせたものを生皮の袋に詰めて貯蔵し、保存食とする。ペミカンについて法律的に定められたレシピは存在しないため、賞味期限や保存期間の限界は用いられた肉や脂肪、および調理法や貯蔵条件に応じて変化するが、北米地域の低温低湿の環境では、直射日光に晒されない通気の良い室内に保管されたものであれば1年から5年ほど保存することができるとされる[8]。なお、一年の大半を雪に閉ざされるような環境では、低温の地下室に保管されたペミカンが10年以上経ったものであっても安全に食べることができた、という逸話があり、現代において適切に冷凍または冷蔵されたものであればペミカンの貯蔵寿命はそれ以上になるであろう、と推測されている。
※なお、上述の保存期限や逸話は北米の低温低湿な地域においてのものであり、他の地域や環境においては前提となる条件が異なるため、あくまで参考である。
極地探検・登山用保存食としてのペミカン
ペミカンはロバート・スコットやロアール・アムンセンのような極地探検家の間で、高カロリー食品として利用された。適切に包装されたペミカンは、長期間保存することができた。多くの場合、砕いた極地用ビスケットとともに湯に溶き、一種のシチューであるフーシュとして供された。
日本におけるペミカン
日本においても、大学山岳部などによる長期に及ぶ冬季登山などにおいて、伝統的によく利用されてきた。ただし、この場合におけるペミカンは本来の物とは異なり、現地での調理の手間の省略や燃料の節約のための簡易料理の一種と言える。 ただし、レトルト食品やフリーズドライ食品が発達・普及したことであまり作られなくなったため、現代では存在自体を知らない者も多い。
