アメリカバイソン

偶蹄目ウシ科の動物 From Wikipedia, the free encyclopedia

アメリカバイソンBison bison)は、哺乳綱 偶蹄目鯨偶蹄目とする説もあり)ウシ科バイソン属に分類される偶蹄類ヘイゲンバイソン英語版シンリンバイソン英語版の2亜種または2形態が認識されている[7][8]アメリカ合衆国国獣に指定されており[9]、合衆国では毎年11月の第一土曜日はバイソンの日英語版に制定されている。

概要 アメリカバイソン, 保全状況評価 ...
アメリカバイソン
生息年代: 完新世現世
ヘイゲンバイソン シンリンバイソン
ヘイゲンバイソン Bison bison bison
シンリンバイソン Bison bison athabasca
保全状況評価[1]
NEAR THREATENED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 NT.svg
Status iucn3.1 NT.svg
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 偶蹄目 Artiodactyla
: ウシ科 Bovidae
: バイソン属 Bison
: アメリカバイソン B. bison
学名
Bison bison
(Linnaeus, 1758)[1][2][3]
シノニム
  • Bos bison Linnaeus, 1758[2]
  • Bison americanus (Brisson, 1762)[2]
  • Bison americanus (Gmelin, 1788)
  • Bos americanus Gmelin, 1788
  • Bison bison montanae Krumbiegel, 1980
和名
アメリカバイソン[4][5]
英名
American bison[1][6]
本来の分布のグレート・バイソン・ベルト英語版
  ホクチヤギュウ英語版
  シンリンバイソン
  ヘイゲンバイソン
閉じる

バイソン属の多様性は第四紀の大量絶滅を経て激減し、現生では本種とヨーロッパバイソンのみ生存している。これらのバイソンはどちらもステップバイソンの子孫であり、各々が現生種として生存する過程で小型化したにもかかわらず、(他のより大型のメガファウナ大量絶滅を経た結果)現代の北米大陸シベリアヨーロッパにおける最大の陸棲野生動物である[10]

現代に生きる「アメリカバイソン」の多くまたは全てが家畜ウシとの混血である。また、1920年代を契機に遺伝的・形態的に純粋なシンリンバイソンが消失(絶滅)し、現代の「シンリンバイソン」とされる個体はすべてヘイゲンバイソンおよびウシの血統を持つ雑種である可能性がある[7][8]

呼称

別名「アメリカヤギュウ」。また、特にアメリカ合衆国カナダの一部では一般に「バッファロー」とも呼ぶが[10]、厳密にはスイギュウを指す単語であってバイソンに使うのは誤称とする意見もある[11]。しかし、例えば「Ralphie the Buffalo」などのように現在でも混同されて使われることが多い。「バイソン」という呼称は当初はヨーロッパバイソンを指すものであり、後にアメリカバイソンなど他のバイソン属にも使われるようになっていったとされる[12]

アメリカ先住民諸語では主にラコタ族に由来する「タタンカ」と呼ばれ[13]、その他にも「Iinniiwa(ブラックフット族)」や「Ivanbito(ナバホ族)」や「Kuts(パイウーテ)」などの部族ごとに異なった呼び名が存在する[14]

分類

以下の亜種の分類は(Meagher, 1986)に従う[2]。和名は(丸山, 1992)に従う[15]。一方で生息環境が異なる多型にすぎないとして、亜種を認めない説もある[3]

バイソン属の現生種には本種とヨーロッパバイソンが存在し、どちらもステップバイソンを共通の祖先種に持つ。アメリカバイソンは、ステップバイソンが北米大陸に到達して以降に誕生したジャイアントバイソンムカシバイソン英語版ホクチヤギュウ英語版も祖先に持つ[16][17][18]

現生ウシ族においてバイソン属と最も近縁なのはヤクであり[19]、アメリカバイソンとヤクの交配個体はヤカロー英語版と呼ばれる一方で、家畜のウシとの交配種はビーファロー英語版またはキャタローと呼ばれる。この他に、ヨーロッパバイソンの絶滅亜種の一つであるコーカサスバイソンの復元を目的として人為的に交配された個体群には新亜種としての学名Bison bonasus montanusポーランド語版が提案されたが[20]、これには科学界から批判が出されている[21][22][23]

アメリカバイソンとヨーロッパバイソンは共に1758年カール・フォン・リンネによって記載され、当時はウシ属Bos)として分類された。現在でもバイソン属をウシ属に内包することへの議論は継続しており、仮にウシ属に再分類されるのであればアメリカバイソンの学名は「Bos bison」になり得る[2][24]

また、家畜ウシとの交配が進行したことにより「純粋なアメリカバイソン」そのものがすでに存在しない可能性も指摘されているが[7]、一方でウシとの交配そのものは個体数が激減したアメリカバイソンにとっては遺伝的多様性などの観点から決して悪いことではないともされている[25]

一方で、ウシとの交配だけでなく生息環境の破壊も含めた個体群同士の隔絶による遺伝的多様性の低下が将来的に重大な被害を発生させかねない懸念要素として挙げられており、体外受精などを駆使したより包括的な保護活動が提示されている[7][8]

シンリンバイソンとヘイゲンバイソンの違い

ヘイゲンバイソン英語版近危急種[26]に、シンリンバイソン英語版危急種[27]に指定されているが、完全に純粋な遺伝・形態的な特徴を保持するシンリンバイソンが現代も存続している可能性は低い[7][8]

両種または両形態が分離した時期と経緯については長年に渡って不明であり、ヘイゲンバイソンの一部が北方の森林地帯に流入した結果数百年前に誕生した新しい存在であるという説も存在したが、2026年の解析では気候変動、または当時の人類の影響などを受けて約3,000年前に分離した可能性が浮上した[7][8]

シンリンバイソンは現生のウシ科の野生種ではノヤクガウル(通称インドバイソン)と並ぶ最大級の種類であり、ヘイゲンバイソンよりも大型化する傾向にあるだけでなく、体躯・形態的にもステップバイソンにより近いなどヘイゲンバイソンよりも原始的ともされている[28]1986年に発表された調査結果では、体重の中央値に関してもヘイゲンバイソン(雄で792キログラム、雌で497キログラム)とシンリンバイソン(雄で943キログラム、メスは記録不足)と明確な違いが見られた[28]

ヘイゲンバイソンとシンリンバイソンの間には体毛の生え方や量などの他にも複数の形態的な差異が見られ、もっとも特徴的な首から背中の棘突起にかけてのこぶ(筋肉の隆起)の形状、角の形状、前脚の体毛、毛並みと毛色、などの違いが確認されている[28][29][8]。一方で、ヘイゲンバイソンの中でも個体群によって形態的な違いが報告されており、とくにより北方の個体群では(より南方のヘイゲンバイソンよりも)シンリンバイソンにより近い計測結果を示すこともあるとされている[28][29]

シンリンバイソンとヘイゲンバイソンでは鳴き声のパターンにも違いが存在し、発情期における雄同士の競争においてもシンリンバイソンの方が暴力性が低いとされる[30]

純粋なシンリンバイソンとヘイゲンバイソンの消失

シンリンバイソンの崩壊に帰結した1920年代のウッド・バッファロー国立公園へのヘイゲンバイソンの大量移送[28][29]

1920年代に当時のカナダ政府が主導したウッド・バッファロー国立公園世界自然遺産)へのヘイゲンバイソンの大量移送とそれによって発生した大規模な交配と遺伝子攪乱によって、1920年代以前の本来の姿と遺伝子を保持するシンリンバイソンが現存するのかは不明となっており、純粋なシンリンバイソンはすでに消失した可能性が指摘されている。また、シンリンバイソンの多くにこれらのヘイゲンバイソンが罹患していた家畜に由来するの感染症が伝播・拡散したために保全活動に大きな悪影響を及ぼしている[7][8][28][29]

この大量移送は当時の生物学者たちの抗議にもかかわらず実行されたが、これはバッファロー国立公園英語版という別の保護区におけるヘイゲンバイソンの大量の屠殺(間引き)を回避するためでもあった。この大量交配を経て、ウッドバッファロー国立公園の内部でも、各個体群の間で形態的な違いが生じたとされており、ヘイゲンバイソンの影響がより強く変貌した個体群が存在する一方で、完全ではないが比較的に本来の形質を強く保持した個体群も確認されている。その後、本来の形態に比較的に近い群れがウッド・バッファロー国立公園の僻地で発見され、保護の為にエルク・アイランド国立公園英語版に移送・隔離されて個体数を増やし、今日の各地における保護活動などの基盤の一つになっている。しかし、この隔離された個体群にもヘイゲンバイソンからの影響が見られ、発見・保護された時点ですでに交配が発生していた可能性もある[28][29]

分布

近年の分布状況。

ツンドラから森林、山岳地帯[31]、草原、砂漠など多様な環境に生息が可能である。以前はアラスカからカナダ西部・アメリカ合衆国からメキシコ北部にかけて分布していた[1][2]ワイオミング州イエローストーン国立公園ノースウェスト準州ウッド・バッファロー国立公園を除いて野生個体群は絶滅し、各地で再導入が行われており[3]、現在ではアメリカ合衆国(アイダホ州アラスカ州アリゾナ州カリフォルニア州コロラド州サウスダコタ州モンタナ州ワイオミング州ユタ州フロリダ州など)、カナダメキシコなどに再導入された個体群が見られる[1]

一方で、ニューヨーク州ペンシルベニア州などアメリカ合衆国の東側や東海岸にも別亜種「Eastern bison(B. b. pennsylvanicus)」が存在していたとする説もあり、「Wood(s) bison」や「Woodland bison」とも呼ばれていたがシンリンバイソン(Wood bison)とは関係ない[32]。この「eastern bison」は別亜種ではなく、本来生息していた土着の個体群だがあまり知られずに地域絶滅を迎えた可能性、またはネイティブ・アメリカンや白人の影響でより東側に少数のバイソンが拡散・定着し、その後に再度絶滅した一時的な地域個体群の可能性がある[33]。一方で、現在もフロリダ州などいくつかの東海岸の各州にもヘイゲンバイソンが再導入されて分布している。

メキシコに再導入が開始されたのは2009年であり[34]、その後も保護策が継続されている[35]

また、エルク・アイランド国立公園英語版で飼育されて個体数を増やしたシンリンバイソンロシア連邦サハ共和国ステップバイソンホクチヤギュウ英語版[36]などの絶滅種のニッチを埋める代用として野生導入されて保護対象になっている[37]。同様にカザフスタンブイラタウ国立公園英語版[38]ウクライナエラネッツ草原自然保護区英語版などでもアメリカバイソンの試験的な野生下または半野生環境への導入が行われている。

形態

大きさ

アメリカバイソンは大型のウシ科動物であり、大きさにも性的二形が見られ、雌は雄よりも小型である。湾曲した角は最大で角長60~66センチメートルに達する[39][40]

雄は体長は2.0-3.5メートル、体高は186-201センチメートル[28]、尾の長さは30-95センチメートル[28]に達する[41][28][42]。野生の雄の体重は確認されている限りでは390-1,270キログラム(ヘイゲンバイソン)の範囲であり[41][28][42]、未計測の事例を含めれば推定1.4トン以上とさらに大型化した可能性のある個体も報告されている[39]。飼育下では肥大化する場合が見られ、体重が1,724キログラムに達した個体が記録されている[2]

大型の雌は頭胴長2.85メートル[28]、体高172センチメートル[28]、体重はヘイゲンバイソンで640-680キログラム[28][43]になる[2][4][5][28]

一方で、ステップバイソンジャイアントバイソンムカシバイソン英語版を中心に、現生のアメリカバイソンの祖先となったより大型のバイソン属はとくに人類の到達以降に絶滅しホクチヤギュウ英語版[36]などの生き延びたバイソン属が小型化を経て、それらの末裔が今日のアメリカバイソンになっている[19][44][45]

また、地球温暖化の影響によってアメリカバイソンを含む多くの生物が小型化しているとも指摘されている[46][47][48]

体毛と寒さへの適応

成獣とくに雄は頭部や肩部、前肢が長く縮れた体毛で被われる[15]。とくに成熟した雄に顕著だが、個体ごとに頭頂部や顔面や顎先や首元の体毛の量や長さや「髪型」などに差が大きいために外見の印象が異なり、シンリンバイソンとヘイゲンバイソンの間にも体毛の生え方や量などに差異が見られる[28]。なお、アルビノも含めて白い毛並みを持つ個体は「ホワイトバッファロー英語版」として特別視されている。

年間を通して換毛が行われ、冬の厳しい寒さと強風を耐えるために発達した冬毛と夏毛では全体的な毛量や風体が異なる。とくに冬場は気候条件が厳しい環境に生息することもあり、マイナス40度もの低温と猛烈な強風に適応した消化・生理機能と行動パターンを保持している。分厚い冬毛は貯蔵した脂肪と併せて断熱効果に優れる。また、強風からも身を守る手段にもなり、嵐や吹雪に直面すると意図的に風上(嵐の方向)を向いて身をかがめる。毛皮と低く保った姿勢によって風雨をやり過ごすことにより、家畜ウシが耐えられない気象条件を生存することができる[49]

また、大きな頭、発達した首と肩の筋肉を雪の除去に用いることで、1.2メートルもの積雪の中でも餌を探す。餌は冬場にとくに乏しくなる一方で、それらの限られた餌から効率的に栄養源を摂取するために消化機能を適応しており、餌の消化によって体内で発熱を促す能力も持つ。冬場の消化しにくく量も少ない餌を腸内に保存する時間を延長させ、また代謝を低下させるなど消費エネルギーを最小限に節約することで生存率の向上に繋がっている。妊娠中の雌は冬の間に体重が著しく減少し、より栄養を必要とする妊娠期間の後期にはそれまで蓄えてきた脂肪をエネルギーとして消費する。しかし、これによって免疫機能が低下することも多く、限られた栄養を胎児の成長に用いるため、冬場はこれらの母牛が病気を罹患する確率も増加する[49]

生態

バイソンとプレーリードッグは、草原の生態系の維持面において互いに影響し合っている[50]
バッファロー・ワロー」と呼ばれる、バイソンの砂浴びなどによって形成された窪み。これらの地表を攪乱する行動も含め、キーストーン種生態系エンジニアとして在来生態系の多様性の確保に貢献している[10]

現代の北米大陸(およびシベリア)の自然界に野生生息する最大のメガファウナであり、キーストーン種生態系エンジニアであるバイソンの行動や生態が周囲の様々な生物や植生に影響を与える[10]

概して草原森林などに生息するが[15]、急こう配であったり標高が高い山岳地帯を重点的に利用する場合も存在する。カナダバンフ国立公園にヘイゲンバイソンが再導入された際には、平地で育てられた個体で形成された群れであるにも関わらず、急こう配の山岳地帯に速やかに適応したことが確認されている[31]。また、以前は季節により南北へ大規模な移動を行っていた[6]

食性は植物食で、草本や木の、芽、小枝、樹皮などを食べる[15]

メスと幼獣からなる群れを形成する[15]。オスがこの群れに合流するが、これらが合流して大規模な群れを形成することもある[15]。オス同士では威嚇したり、突進して角を突き合わせる等して激しく争う。

繁殖形態は胎生。6 - 9月に交尾を行う[6]。妊娠期間は285日[2][6]。4 - 5月に1回に1頭の幼獣を出産する[6]。オスは生後3年、メスは生後2 - 3年で性成熟する[6]。子育てはメスが行う[51]

人間への危険性

キャンプ場に現れたバイソンと人間。

警戒心が強くヒトの行動が刺激を与えやすい。ヨーロッパバイソンよりも跳躍力は劣るが走力と持久力でより優れているとされており、最高時速は70km/hに達し、8キロメートルもの距離を走り続け、高さ1.8メートルもの物を跳び越えるなど脚力でヒトを上回るため[52][53][54]、バイソンが攻撃をやめない限りヒトが逃げ切るのは難しい。

アメリカバイソンは北アメリカの国立公園にて人間が遭遇しうる最も危険な野生動物である。1980年から1999年の間では、イエローストーン国立公園にてバイソンとの接触で事故になった事例はヒグマの3倍以上も記録されているが、これはバイソンが駐車場キャンプ場ホテルや人間用の道路などを訪れることが多いことと、人間側が定められたルールを無視してバイソンに至近距離に近づくことが多いのが主な要因である[55][56][57]

国立公園ではバイソンに接近できるのは25ヤードまでとされているが、バイソンが自身から近づく場合もあり、たとえ拳銃を携帯していたもバイソンが銃撃に驚かないためさらなる注意が必要である[58]

また、観光客がルールを破って間近にバイソンに近づいたり触ろうとすることが多く[55]、これらの人間の中には自分撮り(セルフィー)を目的としていたり[59]飲酒による判断能力の低下でバイソンに接近する場合もある[56]。場合によっては意図的にバイソンを挑発したりバイソンを攻撃する(蹴る)者もいる[56][57]

接近事故が起きた場合は人間側がルールを守っていたのか否かが争点になる場合も多く、該当者が罰則を受ける事もあるだけでなく逮捕に至る場合もある[57]

一方でこのような接近遭遇は人間だけでなくバイソンにとっても危険であり、バイソン側が死亡したり、子牛が人間に慣れてしまった結果として殺処分される事例も存在する。また、人間が厚意でバイソンの子供を保護した結果として子牛が殺処分されるだけでなく、保護した人間側も罰せられる可能性がある[60][61]

天敵

ヒグマにとって、バイソンの死骸は魅力的な餌であるが、生きたバイソンは手強く、接触(襲撃)はヒグマ自身の死に繋がりかねない[62][63]
写真手前はバイソンの遺骸を漁るヒグマ。

通常の成獣であれば捕食されることはないが、幼獣は老齢個体、病気・怪我をした個体はヒグマタイリクオオカミに捕食されることもあり[6]、バイソンを襲撃する可能性の最も高い捕食者はオオカミである。なお、バイソンはピューマが一般的に避ける傾向が強い低地の谷間や標高の高い台地などの開けた草原地帯を利用しており、ピューマがバイソンを狙うことはほぼ(または全く)ない[64]

上記の通り、通常の場合は健康なバイソンの成体が捕食者の餌食になることはない。オオカミの場合、単独のオオカミがバイソンの赤子を狙っても捕食には至らなかったり、オオカミの群れがバイソンを狙ってもバイソンが逃げる姿勢を見せない場合は諦める傾向にあり、バイソンもオオカミが攻撃してこない場合は無視をする[65][66]

ヒグマの場合は、オオカミが仕留めたバイソンの死骸を盗むことがあるが、直接の狩りは子供を狙わない限りほとんど成功しない。群れからはぐれた怪我をしたり病気である若い個体を狙っても仕留めることは稀であるだけでなく、バイソンを狙うことはヒグマにとっても危険であり、ヒグマがバイソンに殺されることもある[67][68][69][62][63]

バイソンとワピチの個体数が捕食者同士の関係性に与える影響

冬場のアメリカアカシカ(ワピチ)の移動と雪や餌の減少によるバイソン・ワピチの弱体化がオオカミやヒグマによる襲撃を増加させる要因になる[64][65]
なお、他の季節においても、バイソンがワピチと共に行動する場合もある。

ヒグマオオカミピューマは歴史的にワピチを最も好んで襲っていたが、ワピチの個体数の減少によってミュールジカオジロジカ英語版、(オオカミのみ)バイソンを狙う傾向が強まった可能性がある[64]

ワピチの数が減り弱ったバイソンの個体が見られがちな冬や春先にオオカミによる狩りが集中する(同様にピューマも冬にシカを狙う頻度が増加する)。バイソンの個体数の大幅な増加に伴って、冬の間の襲撃の頻度も1990 - 2000年代よりも大きく増加している[64][65]

オオカミがバイソンを狙う傾向が強まったことによって、オオカミがピューマの生息密度の高い地域を利用する頻度や、ピューマの獲物をオオカミが横取りする頻度も減少した。また、ヒグマはスカベンジャーとしてバイソンの死骸やオオカミの獲物の残骸を利用し、バイソンの増加によってそのような機会も増加し、ヒグマがピューマの獲物を横取りする頻度も減少した[64]

結果的に、バイソンの個体数の増加は、ヒグマ・オオカミ・ピューマの間の関係性にも変化を促し、これらの捕食者の間での競合の程度も下降したことになる[64]

人間との関係

狩猟

北米大陸に白人が移入する以前のアメリカバイソンの生息数はおよそ6,000万-7,000万頭だったと推定されている[70]が、上記の通りこの膨大な生息数は人類の到達以降に他の大型動物相が大量に絶滅して生態系が大きく変化したことに起因する可能性がある[44][45]ネイティブ・アメリカンはバイソンの肉は食用、毛皮は服・靴・テントなど、骨は矢じりとして用いた[15]。特にスー族など平原インディアンは農耕文化を持たず、衣食住の全てをバイソンに依存していたものの、大規模な狩猟は行わず、生活に必要な分のみを狩っていたため、絶滅の恐れはなかった。

バイソンの激減には白人の影響がクローズアップされることが目立つ一方で、政治的や産業的や社会情勢などの背景から白人自身によるバイソンの保護への気運が阻害されたり、ネイティブ・アメリカン自身も白人によってもたらされたウマを用いて白人から日用品のみならずなども手に入れる交換材料のためにバイソンの乱獲を行ったり、アメリカバイソンという現生種の誕生に帰結した生態系の崩壊にもネイティブ・アメリカンの先祖が大きく関わってきたのも事実である[15][44][45]

白人の到来以前

北米大陸における人類の到達とそれによるメガファウナの減少・絶滅などの相関図。
アメリカバイソンの歴史にも大きく関わっているウマ類も含まれている[注釈 1]

バイソン属は故郷であるユーラシア大陸および氷河期を経て到達したブリテン諸島日本列島北米大陸などに広く分布し、ステップバイソンハナイズミモリウシジャイアントバイソンなど多くの種類が生まれるなど繁栄を遂げた。北米大陸ではステップバイソンが定着した後にジャイアントバイソンやムカシバイソン英語版などが生まれ、とくに後者の個体数が非常に多かった。しかし、後期更新世完新世を中心に多くの種類が他の多数のメガファウナ(大型動物相)と共に絶滅し(第四紀の大量絶滅)、バイソン属では小型化を経たアメリカバイソンとヨーロッパバイソンのみが生存した。これらの大量絶滅とバイソン属の小型化は、気候変動の影響、または人類による狩猟圧などが主な原因と考えられている[19][71][44]

北米大陸では、人類(ネイティブ・アメリカンの先祖に該当する)の到達以降、ジャイアントバイソン[72]やステップバイソンやムカシバイソンやホクチヤギュウ英語版[36]が絶滅しているが、上記の通り北米大陸の多数のメガファウナの絶滅にも人類が大きな影響を及ぼした可能性が指摘されており、さらに現在のアメリカバイソンはこれらの種類が人類の影響で絶滅や激減の結果として小型化を経て生存した可能性があるため、本来の状態の北米大陸の生態系とバイソン属バイオマスなどには不明な点が多い[19][44]。これらの大型生物相の大量絶滅の後に、ロッキー山脈や草原地帯を中心に生活していたネイティブ・アメリカンは、食糧源を(他のより大型のバイソン属やメガファウナの絶滅や激減によって生態系のニッチに大量の空白が生じたために)大きく生息数が増加し豊富に生息していた小型化バイソン[注釈 2]に注目する様になったとされる[45]

また、人為的な影響でこの小型化したバイソン以外のメガファウナが激減・絶滅した影響により、アメリカライオンホモテリウムスミロドンなどが身を隠す場所に乏しい草原に住むバイソンへの依存度を高めた可能性がある。このことが、これらの頂点捕食者共絶滅英語版に拍車をかけた可能性もある[12]

17世紀以降

白人と共に家畜のウマが北米大陸に到来(帰還)したことで、ネイティブ・アメリカンの狩猟対象の中心がバイソンになったとされる。
ウマと銃を白人から得た原住民も日用品だけでなく銃やなどのためにバイソンの乱獲に加担するようになった[15]

ネイティブ・アメリカンによる追い込み猟などを中心とした現生のアメリカバイソンへの重点的な狩猟は、クリストファー・コロンブスを筆頭とする白人の航海者や入植者が家畜ウマを持ち込んだことで可能になったため、それ以前のネイティブ・アメリカンが食糧源として依存していた動物が現生のアメリカバイソンに集中していたわけではない[45][73]

17世紀に白人が北アメリカ大陸に移入を開始すると、食用や皮革用の狩猟、農業や牧畜を妨害する害獣として駆除されるようになった[15]。18世紀に白人による、主に皮革を目的とする猟銃を使った狩猟が行われるようになると、バイソンの生息数は狩猟圧で急激に減少する。1830年代以降は商業的な乱獲により大平原の個体も壊滅的な状態となり、ネイティブ・アメリカンも日用品や酒・銃器などと交換するために乱獲するようになった。白人入植者は毛皮や骨などを商品として売るため、大量かつ継続的に狩猟した。また、白人に限らずネイティブ・アメリカンの間でも、日用品、銃、などを白人から得るために交換材料として以前の生活スタイルには不要な大量乱獲が行われるようになった[15]

1860年代以降は大陸横断鉄道の敷設により肉や毛皮の大規模輸送も可能となり、列車から銃によって狩猟するツアーが催されるなど娯楽としての乱獲も行われるようになった[15]。当時のアメリカ政府はネイティブ・アメリカンへの飢餓作戦のため、彼らの主要な食料であったアメリカバイソンを積極的に殺し、多くのバイソンが利用されず放置された。この作戦のため、白人支配に抵抗していたネイティブ・アメリカン諸部族は食糧源を失い、徐々に飢えていった。彼らは、アメリカ政府の配給する食料に頼る生活を受け入れざるを得なくなり、これまで抵抗していた白人の行政機構に組み入れられていった。狩猟ができなくなり、不慣れな農耕に従事せざるを得なくなった彼らの伝統文化は破壊された。

バイソン駆除の背景には牛の放牧地を増やす目的もあったとされ、バイソンが姿を消すと牛の数は急速に増えていった[74][75][76]

保護

保護活動の一環としてのバイソンのリリースの一例。
モンタナ州を中心に、農地などを買収してバイソンを中心とした草原生態系の復元に特化した広大な自然保護区を樹立しようとする試みである「アメリカン・プレーリー英語版計画」。

1860年代以降は保護の動きが始まるが、開拓期の混乱が継続していたこと・ネイティブ・アメリカンへの食料供給の阻止・狩人や皮革業者の生活保障などの理由から大きな動きとはならなかった[15]1890年には1,000頭未満まで激減した[6]。19世紀末から20世紀になりフロンティアの消滅に伴い保護の動きが強くなりイエローストーン国立公園などの国立公園・保護区が設置されるようになり、1905年にアメリカバイソン協会が発足された[15]。1970年には15,000 - 30,000頭まで増加した[15]。2014年の報告では北アメリカの約4,000の農場や牧場で、約300,000頭が商業的に飼育・繁殖されている[1]

一方で、国立公園や保護区に分布する野生個体や保全目的で飼育されている個体群は非常に少なく、商業的に飼育・繁殖されている個体が現存する個体の大部分を占めている[1]。飼育個体が時折脱走することもあり、野生個体と交雑する可能性も示唆されている[1]。近年は生息地の破壊だけでなく、亜種間の交雑などによる遺伝子汚染、牛結核やブルセラ症などの感染症の伝播による影響が懸念されている[1]。1975年のワシントン条約発効時から亜種シンリンバイソンがワシントン条約附属書Iに、1977年から2017年までは亜種シンリンバイソンが附属書IIに掲載されていた[78]。2017年に亜種シンリンバイソンの掲載は抹消されている[78]

2016年にはアメリカ合衆国の「国獣」になっており、象徴的な存在の一種として機能している[9]。また、これによって毎年11月の第一土曜日が「バイソンの日英語版」として制定された[79]

バイソンと家畜ウシの交配が深刻化したが、「種」としてのバイソン自体にとっては恩恵を受ける部分もあり、これらの牧場主たちがバイソンの保護に貢献してきた側面もある[25]

上記の通り、ロシア連邦サハ共和国では2006年からシンリンバイソンをカナダエルク・アイランド国立公園英語版から運搬して繁殖させ、絶滅種の代用としての野生導入が行われており、同国のレッドリストに登録されて保護対象になっている(ロシア語版[37]

飼育

東山動物園で飼育されている個体。
戦時中の国内各地の動物園では戦時猛獣処分が行われた。上野動物園も事件現場となり、アメリカバイソンの親子が名前が原因となって一際残忍な手段で処分されている[80][81]

日本では2020年の時点でバイソン属単位で特定動物に指定されており、2019年6月には愛玩目的での飼育が禁止されて2020年6月に施行された[82]

動物園などで飼育を行う際は、以下の措置が取られる場合がある[51]

  • 体調不良による投薬給餌を行う場合、強い警戒心を考慮して、薬を混入させる固形飼料の給餌トレーニングを行い、警戒心を緩和させてから投薬を行っている。
  • オス同士は喧嘩をしやすく、力の差による給餌量の不平等を避けるため、複数の距離間隔を開けた給餌場を設ける工夫を行っている。
  • 人工保育で育った個体は、力加減や群れのルールを学べないため、ヤクなどの同じウシ科の動物と同居させて、接し方を学ばせる取り組みを行う場合がある。

その他

太平洋戦争の勃発に際して、日本国内の動物園の一部では戦時猛獣処分が強行された。童話『かわいそうなぞう』の主題にもなった、恩賜上野動物園における1943年の実例では、当時飼育されていたアメリカバイソン(アメリカ野牛)の親子も犠牲になっている[80][81]

この際、呼称に(当時の大日本帝国と敵対関係にあったアメリカ合衆国を連想させる)「アメリカ」が付いていたこともあって、この親子は撲殺という他の多くの動物よりも残虐な方法をもって処分された。しかし、当時の新聞では処分方法を巡った虚偽報道が行われ、終戦後も園内では暴行死という詳細の公開が規制されていた[80][81]

余談

脚注

外部リンク

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