マダイ
ニザダイ目タイ科に分類される魚類
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マダイ(真鯛、学名:Pagrus major、英語: Red seabream)は、ニザダイ目タイ科に分類される海水魚。日本では重要な食用魚で、「鯛」といえば狭義には真鯛(マダイ)を指し、「魚の王様」[4]「百魚の王[5]」と呼ばれる。
| マダイ | |||||||||||||||||||||||||||
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| 保全状況評価[1] | |||||||||||||||||||||||||||
| LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | |||||||||||||||||||||||||||
| 分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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| 学名 | |||||||||||||||||||||||||||
| Pagrus major (Temminck et Schlegel, 1843)[2] | |||||||||||||||||||||||||||
| 和名 | |||||||||||||||||||||||||||
| マダイ[3] | |||||||||||||||||||||||||||
| 英名 | |||||||||||||||||||||||||||
| Red seabream Japanese red seabream Red seabream snapper |
形態
全長120センチメートル(cm)に達する比較的大型の魚。釣りの対象としては大型の個体が好まれるが、食用として多く流通するのは30 - 70 cm程度である。体は側扁した楕円形で、顎が前方にわずかに突き出る。胸鰭は細長く、全長の半分近くに達する。背鰭は前に棘条12・後に軟条10、尻鰭も同様に棘条3・軟条8からなる。尾鰭は大きく二叉する。口の中には上顎に2対、下顎に3対の鋭い犬歯があり、その奥に2列の臼歯がある[6]。
体色は紫褐色を帯びた光沢のある淡紅色で、青い小斑点が散在する。若魚では体側に5本の不明瞭な横縞が出るが、成魚ではこの横縞がなくなる。また、尾鰭の後縁が黒い点でチダイやキダイと区別できる。
鳴門骨(なるとぼね)と呼ばれる瘤状の骨が、マダイの脊椎の一部に形成されることがある。特に鳴門海峡のような潮流の激しい海域で育った個体に多く見られるとされるが、他海域でも確認されている。この骨は第16〜18椎体の血管棘が過形成したもので、潮流に逆らって泳ぐ際の物理的負荷が一因とされている[7]。江戸時代の文献『本朝食鑑』(1697年)にも鳴門骨とみられる記述があり、「鯛の九つ道具」の一つとして観賞用や縁起物として扱われていたとされる[8]。
生態
成魚は水深30 - 200 mの岩礁や砂礫底の底付近に生息し、群れを作らず単独で行動する。肉食性で、小魚、甲殻類、頭足類、貝類など小動物を幅広く捕食する。頑丈な顎と歯で、エビやカニの硬い殻も噛み砕いて食べてしまう。
マダイの産卵期は早春から盛夏までかなりの幅がある。同一地域内での幅もあり、日向灘における観察では2月下旬から5月まで産卵が見られた[9]。一般に温暖な地域ほど早い。成魚はこの時期になると沖合いの深みから浅い沿岸域に移動する。卵は直径0.8 - 1.2ミリメートル(mm)の分離浮性卵で、海中を漂いながら発生する。産卵数は体重1.1キログラム(kg)のメスで30万 - 40万、体重4 kgのメスで100万、体重6.2 kgのメスで700万というデータがある。2〜3日で孵化する。ただしマダイは卵や稚魚を保護しないため、卵や稚魚のほとんどが他の動物に捕食されてしまう。
小型個体は生活リズムは潮汐に影響が大きいという[10]。
稚魚は浅い海の砂礫底、岩場、藻場などで生活し、小動物を捕食しながら成長する。生後1年で全長約15 cmに成長し、2 - 3年で浅場を離れて深みに移る。寿命は20 - 40年程度とみられる。
分布
分類
オーストラリア海域で漁獲されるマダイは、ゴウシュウマダイ Australasian snapper (Pagrus auratus) という、北太平洋のマダイ (Pagrus major) とは別の学名が与えられている。しかしこの2種は、外観や味では判別が付かない遺伝子レベルの差異にすぎない。さらには両者が遺伝的に非常に近いことから、マダイとゴウシュウマダイは別の学名の種でなく、同種の別亜種の関係にあるとする学説もある[11]。日本では、ゴウシュウマダイを北半球のマダイとして販売する可能性が懸念されている。これはマダイとゴウシュウマダイの種の違いによる味の違いの問題というよりも、ゴウシュウマダイが日本近海産のマダイより原価が安いことを悪用した原産地偽装の問題である。
人間との関わり

食用
淡白な白身の魚である。臭みがなく、日持ちすること、沿岸に生息し捕獲しやすいこと、鮮やかな赤い体色と「めでたい」との語呂合わせから、慶祝事やハレの日、神道の祭において使われる高級食材とされてきた。南方系の魚であり、クエと共にどちらかというと西日本の食文化で珍重される魚である。天然物の水揚げ量は長崎県、福岡県、愛媛県などで多い。旬は冬。
骨が大きく丈夫で判別しやすいこともあり、縄文・弥生時代の貝塚からはしばしばマダイの骨や歯が見付かる。食用にしたあとに捨てられたものである。『古事記』『日本書紀』にもマダイと思われる魚に関する記述がある。『日本書紀』によれば、倭姫命が篠島の鯛を気に入ったことが、伊勢神宮へ捧げられる現代のおんべ鯛奉納祭につながる起源となった[4]。日本最古の和歌集『万葉集』には、「醬酢に蒜搗(つ)き合(あ)へて鯛願ふ我(われ)にな見えそ水葱の羹(あつもの)」という、長忌寸意吉麻呂が詠んだ和歌(巻十六3829)がある。飛鳥時代、7世紀の藤原京跡からは、「多比」「田比」(たひ)と記された46点の木簡が出土した[12]。腊・荒腊(丸干し)、楚割(魚肉を細く切ってから干したもの)、鮨・鮓(寿司、発酵させたなれずし)にして都に送られていた[12]。
平安時代の法令集『延喜式』には、朝廷に献上されるマダイは和泉国、伊勢国、三河国で水揚げされたものに限るといった記述があり、献上されたマダイは宗廊の祭に使われるとある。その後の武家政権時代以降から現代に至るまで、マダイは立派な見かけや赤い体色が盛り付けで見栄えすることから珍重された[4]。江戸時代後期の1785年(天明5年)に刊行された『鯛百珍秘密料理箱』には、鯛を使った料理が約百種類紹介されている[5]。
日本以外の地域では必ずしも高級魚ではない[4]。韓国では「チャムドム」(참돔)と呼ばれ、日本ほど一般的ではないが食用にする地域もある。台湾では「正鯛」「加臘」と呼ばれ、日本のように高級魚扱いはされないが、刺身や中華風の料理で食べられている。オーストラリアでは、大型のモノが簡単に釣れることや、淡白な味がオーストラリア人の好みに合わない理由から評価が低く、日本ほど一般的な食用魚として流通はしていない。日本からの養殖マダイ輸出は、ほとんどが韓国向けである[5]。韓国では2000年代以降日本産マダイが人気が高まっており、取扱量が年平均25%も伸びたこともあった[13]。
飼育

高級魚であり、西日本を中心に養殖がおこなわれている。全国生産量の過半数を占める最大産地は愛媛県で、特に宇和島市を中心とする南予地域が多い。以下、熊本県、三重県と続く。
養殖物は狭い空間で充分な餌を与えられるため、天然ものより身の脂肪分が多い。1.5-2kg程度のものが味が良いとされるが、300gほどの小型のものも出荷される。養殖技術の進歩と共に養殖物が大量に出回るようになって浜値は下がり、スーパーマーケット等にも日常的に並ぶようになった。このため手に入れにくいような「高級魚」ではなくなりつつある。
陽光の差し込む水深では日焼けして体表のメラニンが活性化することで、体色が濃い褐色となる。これで商品価値が下がるため、マダイの養殖生け簀の上には通常黒いネットを張って日焼けを防ぐが、根本的な解決には至っておらず、現在様々な専門機関でマダイの色揚げに関する研究が行われている。
発色改善のためにエビやオキアミ類に含まれるアスタキサンチン投与などが効果があるという[14]。
マダイやトラフグの養殖個体では左右の鼻孔が繋がる鼻孔隔皮欠損という奇形がしばしば見られる。この奇形は生存に特に不利な点はなく、放流個体を識別するための標識としての利用も考えられている[15]。
イリドウイルス病[16][17]、エドワジエラ病、ビブリオ病[18]などウイルスや細菌による致命的な感染症が幾つか知られている。
飼料は、マダイを1キログラム(㎏)太らせるのにカタクチイワシなら4キログラム必要だが、大豆や白ゴマなど植物性素材を使った飼料、陸上養殖できるゲノム編集マダイも開発されている[5]。
遊漁
マダイ専門の釣り船が仕立てられるほど人気のある魚種である。味の良さや縁起のよさだけでなく、体高のある体型から生まれる力強い引きが人気である。
釣り餌は、かつてはシバエビやアカエビ属など、クルマエビ科のエビを活き餌として使っていた。釣りとしては難しい部類だったが、オキアミ類を撒き餌や釣り餌に使うようになって難易度が下がったという。また、ルアー(タイラバ)でも釣れる。また、近年[いつ?]では一つテンヤ釣法などの普及により、難易度が更に下がっている。
種の保全状況評価
国際自然保護連合(IUCN)作成のレッドリストでは、本種の絶滅の可能性について2014年現在で低危険種(Least Concern, LC)と評価している[1]。日本の環境省が作成するレッドリスト(魚類の最新版は2015年作成、2020年最終更新の第四次リスト)には掲載されていない。都道府県が作成するレッドリストでも本種を絶滅危惧種等に指定するところはない。
象徴
西日本の神社を中心に神への捧げものとして使われることがある。伊勢神宮へ捧げられる神饌の一つである。関西では焼いた鯛を正月三が日はにらむ(見る)だけにして、1月4日以降に食べる「にらみ鯛」という風習がある[19]。小さめの鯛を2尾向かい合わせにして藁縄で結んだ縣鯛(かけだい)を祭事に使う習慣も西日本などにあり、西宮神社では御掛鯛として奉納されている[19]。庖丁式で扱われる食材の一つでもある[5]。
日本のことわざには以下のようなものがある。いずれも、食材としての鯛が豪奢であることが由来している。
- 海老で鯛を釣る:マダイの釣り餌に小さなエビを用いることから転じ、小さな元手で大きな利益を得ることを例えたもの。
- 腐っても鯛:たとえ腐ったとしても、高級魚であるその価値が損なわれないことから転じ、本来すぐれた価値を持つものは、おちぶれてもそれなりの値打ちがあることを例えたもの。
- 鯛の尾より鰯の頭:マダイが高級食材であることから転じて、大きい団体で低い地位に甘んじているよりも、小さい団体でもその長となる方が良いことを例えたもの。
名前
日本魚類学会では2020年現在、魚類に厳密に標準和名を定めていないが、「マダイ」が事実上の標準和名に相当する名前として広く使われ、この名前を使う図鑑や目録が多い。同学会が標準和名制定の参考にするとしている『日本産魚類検索:全種の同定Ⅱ 第2版』(2000年)[3]でもこの名前で掲載されている。タイの中では大きくなることから「真の」という意味での命名であるとみられる。
ある程度大きな個体では方言名でも「タイ」に何かを付けた程度のものが多く、種類はそれほど多くない。「ホンダイ」「ホンタイ」(瀬戸内海周辺)、「タイノユウ」(奄美大島周辺)、「マジャー」(有明海周辺)などが知られる。出世魚の一種で小さい方から「マコ」→「オオマコ」→「チュウダイ」→「オオダイ」(東京)、「ネブトコ」→「メダ」→「マダイ」(富山)、「ヤキ」→「ハタイ」(伊勢)、「サンカ」→「クロミダイ」(宇和島)、「シバダイ」→「ヒシコ」→「ニガリダイ」→「コダイ」(長崎)など地域により様々な名前がある。幼魚には変わった名前が多く、他にも「メヌキ」「モンド」(和歌山)、「ジャコ」「チャリコ」(大阪、紀伊半島、四国南部)などがある。「マコ」は原則としてマダイの幼魚だけを指すが、東京周辺の市場における「ベン」、大阪周辺の市場における「カスゴ」は他の近縁別種を含むことがある[20]。
時期や食味に対応した呼称として、「桜鯛」(春の産卵期で脂が乗ったもの。本来は、寒鯛の“身が桜色”になったものを言う)や「紅葉鯛」(秋)[21]、「魚島のたい」(産卵期)、「麦わらだい」(産卵後の味が落ちた状態を表す)[4]がある。なお、サクラダイを標準和名とする魚もいるので注意を要する。
「タイ」「ダイ」という和名を持つ魚は、分類学的には近縁でなくとも白身で食味の良い魚にはよく見られる和名である。
学名 Pagrus majorの種小名 majorはギリシャ語で「大きな」の意味、属名 Pagrusもギリシャ語で現地に住むタイを示す単語である[22]
