マッコウクジラ上科
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マッコウクジラ上科(マッコウクジラじょうか、学名:Physeteroidea)は、ハクジラ小目に属するコマッコウ科とマッコウクジラ科の2科と、これらに近い鯨類をまとめた分類群である。現生種はマッコウクジラ属のマッコウクジラと、コマッコウ属のコマッコウおよびオガワコマッコウの3種である。以前はこの3種がすべてマッコウクジラ科に含まれ、コマッコウ属の2種はコマッコウ亜科 Kogiinae に分類されていた。より最近の研究により、コマッコウ属は独自のコマッコウ科に分類され、マッコウクジラはマッコウクジラ科の唯一の現生種となった。ただし両科に化石種が知られている。
特徴
マッコウクジラは現生のハクジラ類の中でも最大種で、雄成獣は全長約15-18m、体重約45-70トンに達する。コマッコウ属の2種はより小さく、全長約2.5-3.5m、体重350-500kgである。
体型は頑強で、ヒレはパドルのような形をしている。下顎は上顎よりも薄く、小さい。鼻骨は明確に非対称で、噴気孔は体の左側に位置している。噴気孔はマッコウクジラでは頭頂付近に、コマッコウ属ではより前方に位置している。歯の数は多く、形は単純で類似している。上顎の歯は埋没していることが多く、時折全く持たない場合もある。眼は眼窩内で動かすことが出来ず、痕跡的な前眼房が残るのみである。視覚よりも反響定位の方がはるかに重要な感覚となっている[2]。
その他の特徴として鯨蝋があり、これは蝋状の白い脳油で、頭部にある「ケース」と呼ばれる脳油袋を満たしている。この油は反響定位の為のクリック音を発生させ、方向を制御する役割がある[3]。摂餌の為に深海へと潜るが、マッコウクジラはコマッコウ属よりもはるかに深く潜る。イカ、魚類、サメなどが獲物となる。
妊娠期間は種によって異なるが、9-15ヶ月である。一頭の子を産み、幼獣は2年間母親と共に過ごした後に離乳する。性成熟には数年間かかる。雌、幼獣、若い雄から成る群れを作り、コマッコウ属では群れの規模は小さい[2]。
進化
本上科の化石記録は、約2,500万年前の漸新世に遡る[4][5]。その祖先は始新世に、マイルカ科やネズミイルカ科の系統に繋がる他のハクジラ類と分岐した。
中新世にはより一般的であり、ジゴフィセター Zygophyseter やブリグモフィセター Brygmophyseter などの基底的な系統が存在していた。他の化石属として、マッコウクジラ科には Ferecetotherium、Helvicetus、Idiorophus、ディアフォロケタス Diaphorocetus、アウロフィセター Aulophyseter、Orycterocetus、スカルディケタス Scaldicetus、Placoziphius などが、コマッコウ科にはコギオプシス Kogiopsis、Scaphokogia、Praekogia などが知られる[5]。コマッコウ科の最古の化石記録は、約700万年前の後期中新世に遡る[6]。
ミトコンドリアのシトクロムb遺伝子を用いた分子系統学的解析の結果、マッコウクジラ科とコマッコウ科が近縁関係にあることが確認されている。この2科に最も近縁な分類群は、一方の研究ではアカボウクジラ科で、もう一方の研究ではヒゲクジラまたはカワイルカ科とされた。後者はこの2科をマッコウクジラ上科に分類することを支持した[7][8]。2006年の研究によれば、ディアフォロケタス、ジゴフィセター、ブリグモフィセター、アウロフィセターはマッコウクジラ科とコマッコウ科が分岐するよりも前に生息していた可能性があり、マッコウクジラ科にはこの分岐以降に現れた分類群が含まれる[9]。
分類
本上科はハクジラ類に分類され、ヒゲクジラ類の姉妹群とする説もあったが、これは分子および形態学的データによって棄却され、本上科を含むハクジラ類が単系統群であることが証明された[10]。現生群のマッコウクジラ属Physeterとコマッコウ属Kogiaは近縁であり、その上位階級には様々な分類法がある。例えばSimpson (1945) はこの2属をマッコウクジラ科としてまとめ、それぞれをPhyseterinae・Kogiinaeの2亜科に区別した[11]。このように1科2属とする分類は『Mammal Species of the World』の第3版でも採用されている[12]。一方でバーンズ (1991) やRice (1998) はコマッコウ属を独立したコマッコウ科として扱っており[1][13]、2026年時点の世界海棲哺乳類学会の分類体系でもこの分類法が採用されている[14]。
なお、Simpson (1945) はアカボウクジラ科を本上科に含めているが[11]、バーンズ (1991) やRice (1998) は同科をアカボウクジラ上科として区別している[1][13]。
絶滅群としてカトドン科Catodontidaeやフィソドン科Physodontidaeを設けることもあるが、バーンズ (1991) はこれらをマッコウクジラ科のシノニムとして扱っている[1]。
- マッコウクジラ上科 Physeteroidea
- ステムグループ[15]
- †アクロフィセター Acrophyseter
- †アルビケトゥス Albicetus
- †ブリグモフィセター Brygmophyseter
- †ディアフォロケタス Diaphorocetus
- † Eudelphis
- †リヴィアタン Livyatan[16]
- †ミオフィセター Miophyseter[17]
- † Orycterocetus
- † Rhaphicetus[18]
- †ジゴフィセター Zygophyseter
- マッコウクジラ科 Physeteridae
- コマッコウ科 Kogiidae
- ステムグループ[15]
疑問名
- † Eucetus
- † Graphiodon
- † Homocetus
- † Hoplocetus
- † Orcopsis
- † Palaeodelphis
- † Paleophoca
- † Physetodon
- † Physodon
- † Physotherium
- † Priscophyseter
- † Prophyseter
- † Scaptodon
- † Ziphoides