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ロビン・フッド

中世イングランドの伝説上の人物 From Wikipedia, the free encyclopedia

ロビン・フッド (Robin Hood) は、中世イングランドの伝説上の人物である。まれに「ロビン・フード」と表記されることがある。

ロビン・フッド碑

史的物語としてのロビン・フッド

史的物語としての「ロビン・フッド」[1][2]はもともとイングランドの裁判記録に複数みられる「ロビン・フッド」「ロウブ・フッド」「ホッブ・フッド」などと渾名された者たちであり、この名は裁判から逃亡してアウトロー宣告を受けた者たちに対して付される「渾名」であったと考えられている。例えば1225年の裁判[3]や1261年の裁判[4]などに記録が見られ、少なくとも1300年より以前にはこの渾名をもつ人物は8名おり、うち5名はアウトローか刑事犯であった。「ロビン・フッド」は当時のアウトローに付された知られた渾名であり、文学の世界では1377年のウィリアム・ラングランド「農夫ピアズの夢」の中で初めて言及されている[5]。

J.C.ホウルトによれば、1200年代(13世紀)の終わりころまでには「ロビン・フッド」「騎士」「聖マリア修道院長」といった登場人物、そして「騎士が(土地を)抵当を入れて修道院長から借金をし、ロビンから融資を受けて返済する」という基本的なモチーフは存在したようである。ロドニイ・ヒルトンによれば物語は1381年の農民一揆において最高潮に達する農民階級の不満を反映したものだとされ[6]、モーリス・キーンも同調する見解を表明したが[7]、J.C.ホウルトはこの解釈に詳細に反論し[8]、モーリス・キーンはのち自説を撤回しホウルト説に賛同した[9]。

J.C.ホウルトによればロビン・フッド伝説は、当初は王侯貴族やジェントリ、お付きの者たちの間で形成され、また貴族に雇用された吟遊楽人たちによって全国に伝播されたものである。ヨーマン[10]というロビン・フッドの身分属性、州長官(シェリフ[11])との敵対関係、舞台がイングランド北部のバーンズデールやシャーウッドの森に固定されたことなどは後から付け加えられた設定である。ノルマン・コンクエストに抵抗したアングロサクソンの抵抗民と設定されることもあるが、これは「虚構中の虚構[12]」である。1400年代(15世紀)になると5月の祝祭日(メイゲームズ)の知られた演劇の出し物となっており、「金品を金持ちから奪って貧者に施す」というロビン・フッド像は、春の祭典において行われた慈善目的の寄付集めを通じて形成されていったものではないかとJ.C.ホウルトは推測する。

成立と変容

明確な作者がはっきりしていない作品であり、多くの吟遊詩人たち、あるいは彼らをしばしば雇用していた王侯貴族やジェントリらの間で自然発生的に作り上げられた作品と考えられている。元々はロビン・フッドはその設定の通り、街道に跋扈する追いはぎの頭目であり[13]、悪人の殺伐とした活躍譚であったものが、信仰や道徳倫理に合うよう改変され、民衆の溜飲を下げる目的で権力者に敵対的となり、反権力だが民衆には善良で、友情に篤く、名誉を得て、あるいは女性の愛を勝ち取る英雄譚へと、聴衆に好まれるよう改作されていったものである。

「歴史書にも名前が現われる」や「1241年没」という伝承もあるが、実在を裏付ける確かな資料はない。しかしロビン・フッドとその一味の物語が史実として記載されたこともあり、1420年代に作成されたAndrew of Wyntoun「スコットランド原典年代記」、1440年代に作成されたWalter Bower「スコティクロニコン」ではいずれもスコットランド史を記述する中でイングランド側の史実として記載されている。

まとまった物語として「愉快な仲間たち」とともにロビン・フッドが登場する作品は1450年代かそれ以前に作成された「ロビン・フッドと修道士」「ロビン・フッドと陶工」が最も古いものの1つと考えられている。よりまとまった一連の作品として執筆されたのは1500年代の印刷物であると鑑定されている「ロビン・フッドの武勲(譚)」[14]が存在しており、これは1450年代中期には執筆されていたと考えられている。本作ではエドワード王や悪名高いノッティンガムの州長官(保安官)など重要な登場人物が措定され、アウトローながら富裕であり、聖母マリアへの信仰に篤い「善良なアウトロー」としての英雄譚と、あまり冴えない緩慢な最期までが述べられる。「武勲」ではエドワード王の名が登場するが、実在したイングランド王を想定して記述していると仮定すれば、どの時代の「エドワード」であるか確定できる記述はなく、早くとも1272年に即位したエドワード1世から、「武勲」が作成されたであろう1400年代中期に即位したエドワード4世までの可能性がある。

一方で、このような「ロビン・フッド」像とは別に、女性との恋愛を主題とするロビン・フッドの物語も制作されており、もともとは中世抒情詩のひとつのジャンルであるパストゥレルは、騎士と女羊飼いとの恋の駆け引きを描くものであるが、フランス中世のアダン・ド・ラ・アル(1240年頃 - 1287?1304?年頃)は、それを田園牧歌劇形式に書き換え、Jeu de Robin et Marion ジュ・ドゥ・ロバン・エ・マリオン『ロバンとマリオンの劇』という作品に仕上げた[15]。この作品の中ではロバンとマリオンは羊飼いのカップルであり、この劇作そのものかどうかははっきりしないが、この時代、アンジェでは毎年ペンテコステ(聖霊降臨祭)で『ロバンとマリオンの劇』というタイトルの演劇作品が上演された、という。これが17世紀はじめごろには、イギリスの五月祭の参加者の中から王と王妃役の人が選ばれるようになり、彼らは「ロビンフッド」と「マリオン」と呼ばれるようになっていた。

ロビン・フッドは多くの作品にバラッドとして採録されており、何人かの人物にまつわる伝承が合わさって形成された可能性が高い。ノルマン・コンクエストへの抵抗民のモデルとしてはヘリワード・ザ・ウェイク (Hereward the Wake) などが挙げられている[16]。また、13世紀イタリアのアウトロー(法の保護外の者)的人物、ギーノ・ディ・タッコ (Ghino di Tacco) からも「犯罪紳士」のインスピレーションを得ていると憶測する向きもあるようである。ウィリアム・テルの物語との混同、あるいは互いへの参照もあったかもしれない。

18世紀にはロビン・フッドはノルマン・コンクエスト後に継続的にノルマン人に抵抗しつづけているサクソン人の非小作農民ヨーマンとなっており、この設定の普及にはウォルター・スコット卿の『アイヴァンホー』(1819年)とオーギュスタン・ティエリの『ノルマン人によるイングランド征服史』(1825年)が大きく影響した。以降はおおむねリチャード1世(獅子心王)[17]時代の人物と設定され、リチャード1世が十字軍遠征に赴いている間にジョン王の暴政に反抗した人物として描かれるようになったり、またノルマン人に所領を奪われた貴族、義賊、マリアン(ノッティンガムの領主の家族であるが、伝承や作品により、娘・妻・未亡人などの違いがある)とのロマンス、あるいは十字軍帰りなどの設定が加わった。

「愉快な仲間たち」の登場人物の幾人か、あるいはそのキャラクター造形については比較的新しいものである。一方ロビン・フッドが世俗権力やその命令に犯罪的に敵対的であることや、聖母マリアの信仰者であり国王に対する忠誠心を持つこと、弓の名手であること、緑色の服(リンカーンで織られた緑色の織物)をまとう人物としての設定などは古くからあり、1500年代に存在が確認されている「ロビン・フッドの武勲」の中にすでに描写されている。

19世紀以降の話での登場人物

ロビン・フッド
あだ名は大股のロビン(Robin Longstride)、ロクスレイのロビン(Robin of Loxley, or Locksley)など。

「愉快な仲間たち」 (Merry Men) 

ちびのジョン(リトル・ジョン) (Little John) 
あだ名に反して怪力の大男。ロビンの片腕的存在で、丸太橋の上で六尺棒でロビンと戦い仲間になる。
タック修道士 (Friar Tuck) 
怪力の修道士。好戦的と言うよりもむしろビールの一種であるエールを愛する陽気な男。
アーサー・ア・ブランド (Arthur a Bland) 
逃亡中の密猟者で、ロビンと戦って勝って、仲間になる。
粉屋のせがれマッチ (Much the Miller's Son) 
初期のバラッドでは成人で二番手の戦士、後世の物語では愉快な仲間たちの中で最年少となっている。
ウィル・スカーレット (Will Scarlett) 
常に赤い服を着ている伊達男。剣の達人でロビンの甥。
ウィル・スチュートリー (Will Stutely) 
ジョンに自分のあだ名「ちび」を与える。弓術はロビンに次ぐ腕前。ノッティンガムの代官をスパイして捕らえられ、そして救出される。ウィル・スカーレットと時折混同される。
ドンカスターのデイビッド (David of Doncaster) 
ロビンにノッティンガムの代官が開催する弓比べの大会は罠であると教え、行かないように警告する。
アラン・ア・デイル (Alan-a-Dale) 
吟遊詩人。別の男と結婚させられそうになっている恋人をロビンに頼んで救出させる。最近の媒体では、サラセン人(イスラーム教徒)が仲間にいる事が多い。
乙女マリアン (Maid Marian) 
ロビン・フッドの恋人。最近の媒体では、お転婆娘で有能な戦士として描かれることが多い。
リーのリチャード (Richard at the Lee) 
修道院長に土地を担保に借金をしたが返せないため、土地が没収されそうになっている悲しげな騎士。ロビンはその支払いを手伝ってやる。

その他の登場人物

獅子心王
リチャード1世。
ジョン王子(後のイングランド王ジョン)
悪役として描かれる。
ヘアフォード司教 (Bishop of Hereford) 
裕福で強欲なため、ロビンと愉快な仲間たちに強盗を受ける。
ギスボーンのガイ (Guy of Gisbourne) 
ノッティンガムの代官のためにロビンを捕らえるが、ロビンに殺され首を切られる。
ノッティンガムの代官 (Sheriff of Nottingham) 
敵役。ロビンを捕まえようと付け狙う。

ロビン・フッドが主題の作品(近代以降)

文学作品

映画

ドラマ

  • ロビンフッドの冒険(英語版)(1955年 - 1960年、英ITC製作のテレビドラマシリーズ。日本では1957年に日本テレビで放送された[18])
  • ロビン・フッド(2006年、英BBC製作のテレビドラマシリーズ)
  • 仮面ライダーゴースト ロビン・フッド魂

アニメ

ゲーム

楽曲

舞台

  • Rock Reading『ロビン』~「ロビン・フッドの愉快な冒険」より~(2021年、出演:本髙克樹、今野大輝ほか)
  • 宝塚歌劇団雪組公演『ROBIN THE HERO』(2025年 出演:朝美絢・夢白あや 他)

影響

  • ロビン・フッドと名乗って、困っている人にお金をあげる活動をしているギャンブラーがいる[19]。
  • ブラック・サムの名で知られる海賊サミュエル・ベラミーは、自らをロビン・フッドになぞらえ、部下たちをロビン・フッドの仲間たちと称した。

注釈・出典

関連項目

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