ヴァシシュタ
From Wikipedia, the free encyclopedia
『リグ・ヴェーダ』のうち最古層と考えられている巻2から巻7までの6巻は賛歌を作った家系ごとに巻が分かれているが[2]:1.10-11、ヴァシシュタは巻7全体の作者と伝えられる。しかしながらすべての賛歌がただひとりの人物によって作られたとは考えられず、ヴァシシュタを始祖とする家系によるものと考えられる[2]:2.879。巻7全体のなかでヴァシシュタの名は24回にわたって言及されているほか、より時代の新しい巻の中でも言及されている[2]:2.879。
巻7の第33賛歌は、ミトラ=ヴァルナ神がヴァシシュタの父であり、アプサラスのウルヴァシーが母であり、アガスティヤは同族であるとする[2]:2.923-925。このためにヴァシシュタ・マイトラーヴァルニ(ミトラ=ヴァルナの子ヴァシシュタ)と呼ばれている[1]。
巻7の第18賛歌は特に有名で、スダース王に率いられたバラタ族がインドラの助けによってプール族などの十王を破った、いわゆる十王戦争についてヴァシシュタ本人の一人称で歌われているが、この歌の内容がどの程度史実を反映しているかは明らかでない[2]:2.902-903。
一方、後にヴァシシュタのライバルとされるヴィシュヴァーミトラとその一族は巻3の多くの賛歌の作者とされ、ヴィシュヴァーミトラもやはりスダース王の祭官であった[2]:1.464。
ラーマーヤナ
『ラーマーヤナ』ではヴァシシュタはブラフマーの子で明けの明星の女神アルンダティーを妻として百人の息子があった。ダシャラタ王の師であり、ラーマ王子を含むその息子たちを教育した。
巻1では有名なヴァシシュタとヴィシュヴァーミトラの争いの逸話が語られる。それによればヴィシュヴァーミトラは何千年にもわたって地上を支配した王だった。ヴァシシュタは欲したものを何でも出してくれるカーマデーヌという牛を飼っていて、その力でヴィシュヴァーミトラ王をもてなしたが、王は牛を欲しがって力づくで奪った。しかし牛は軍隊を出してヴィシュヴァーミトラの軍を襲った。敗北したヴィシュヴァーミトラは準備を整えてヴァシシュタの庵を攻撃するが、再び敗北したため、軍事力では精神の力に及ばないと知って自らもバラモンになるために苦行を行った。その後、イクシュヴァーク王家のトリシャンク王 (Trishanku) は生身のままで天に登りたいという望みを持った。その望みはヴァシシュタに拒絶されたが、ヴィシュヴァーミトラは王を天に上げた。しかし天上の神々は王を拒絶して落とそうとし、両者の力が釣り合ってトリシャンク王は中空にとどまった。これが南十字星であるという。ヴィシュヴァーミトラはその後も苦行を続け、最終的にヴァシシュタはヴィシュヴァーミトラをブラフマリシと認めた[3]。
巻7の伝える逸話ではイクシュヴァークの子のニミ (Nimi) が王であったときにヴァシシュタの祭儀が終わるのを待たずに別の人物を王が祭官に選んだことからヴァシシュタと王は仲違いし、互いに相手を呪ってその肉体を滅ぼした。その後、ミトラとヴァルナがアプサラスのウルヴァシーの姿に興奮して器に精を放ったが、そこからアガスティヤとヴァシシュタが生まれた。アガスティヤは国を去ったが、再生したヴァシシュタは残ってイクシュヴァーク王家の祭官となった[4]。
