存立危機事態
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定義
事態対処法第2条第4項によって、以下のように定義される。
我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態 — 事態対処法第2条第4号
これは、武力を用いた対処をしなければ、日本が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな事態であるとされる[3]。
対処措置
存立危機事態に際しては、内閣総理大臣は自衛隊に対して防衛出動を命ずることができる[4]。防衛出動を命ずるにあたっては、原則として国会の事前承認が必要であるが、特に緊急の必要があり事前に国会の承認を得るいとまがない場合は事後承認でよい[5]。防衛出動を命じられた自衛隊は、武力行使の新三要件を満たす場合に限り、武力の行使ができる[6]。
その他に、以下のような対処措置が可能となる。
- 米軍等行動関連措置法に基づく行動関連措置
- 外国軍用品等海上輸送規制法に基づく海上輸送規制
手続き
存立危機事態に至ったときは、政府は次の事項を定めた対処基本方針を閣議決定し、国会の承認を求めなければならない[7]。
- 対処すべき事態に関する事項
- 事態の経緯、事態認定の前提事実など
- 日本国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がなく、武力の行使が必要であると認められる理由
- 存立危機事態への対処に関する全般的な方針
- 対処措置に関する重要事項
議論
集団的自衛権行使の可否
本条文は2026年現在、2014年7月の閣議決定を前提として[9]、集団的自衛権による武力行使が可能な場合を規定しているものとされている[10]。すなわち、日本が直接攻撃を受けていない場合においても、密接な関係にある他国が攻撃を受け、政府が存立危機事態と認定した場合、集団的自衛権を行使できるものとされる[11]。
一方、2024年に立憲民主党(当時)の枝野幸男は、2014年の閣議決定を前提とした解釈(法解釈)において安保法制は違憲であり、本条文(存立危機事態)は、個別的自衛権は合憲とする根拠である砂川判決が個別的自衛権の要件として挙げる「我が国に対する急迫不正の侵害があること」の範囲内で解釈可能、すなわち本項は集団的自衛権を定めたものとしてでなく、存立が脅かされる場合における個別的自衛権を定めたものとして解釈可能なものであると主張している[12]。
認定の判断基準
存立危機事態の認定に関しては、基準の曖昧さや拡大解釈の懸念も指摘される[13]。一方で、どのような場合が「存立危機事態」にあたるかについては、具体例を挙げないことで「あいまい戦略」として抑止力を強化しているとの指摘もある[14]。
存立危機事態に該当しうる事例にとして、政府はこれまでに以下の場合を挙げている。
- ホルムズ海峡の地域で紛争が発生し、機雷が敷設され、石油の供給不足で国民生活に死活的な影響が生じる場合[15]。
- 日本の近隣で紛争が発生し、日本に危機が差し迫ってくる可能性がある場合に、警戒にあたる米艦が公海上で攻撃を受けた場合[16]。
- 台湾有事に際して、台湾に対して武力攻撃が発生し、戦艦(広義)によって海上封鎖が行われ、その海上封鎖を解くために米軍が来援するのを防ぐためにさらに武力行使が行われるといった事態が想定される中で、戦艦を使って武力の行使が行われた場合[17]。
それに加えて政府は、「国連憲章上、武力攻撃の発生が自衛権の発動の前提となることから、仮にある国が何ら武力攻撃を受けていないにもかかわらず違法な武力行使を行うことは国際法上認められていない」とし、「我が国が自衛権を発動してそのような国を支援することはない」としている[18]。